青い日記帳 

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『モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん 修復家・岩井希久子の仕事』

美術出版社より刊行された『モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん 修復家・岩井希久子の仕事』を読んでみました。


モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん 修復家・岩井希久子の仕事
岩井希久子 (著)

NHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でも紹介された岩井希久子さん。35年間、第一線で活躍する「絵画修復」のエキスパートです。

彼女が実際に修復に携わった数多くの作品とのエピソードを交えつつ、丁寧に平易な言葉で絵画修復の現場を紹介してくれる、名著です。

絵画ファンであるならば、必ず読んでおくべき一冊です。この夏読んだ中で、最も価値がある一冊でした。大袈裟でも何でもなくこの本に出会えたことを感謝しています。

これまで何気なく拝見していた、展覧会や常設展の作品を観る目が、間違いなく変わります。「観る眼」が増えるということは、絵画鑑賞に幅を持たせてくれます。


バーネット・ニューマン「アンナの光」 1968年
アクリル、カンヴァス 276.0 x 611.0cm 川村記念美術館

川村記念美術館のお宝といえば、マーク・ロスコ(1903-1970)のシーグラムシリーズとこのバーネット・ニューマン(1905-1970)の「アンナの光」。

6メートル以上もある「アンナの光」は、ふたつの木枠で継いであったそうですが、作品の自重によりその木枠が変形してしまっていた為、2001年に中性の保存パネル(ハニカムパネル)に張り替えたそうです。

当初は美術館側からOKが貰えなかったそうですが、「絵のお医者さん」としてはこれから益々病状が悪化する「患者」を目の前にし放っておくことはできません。

アメリカの修復部門の担当者に修復方法について賛同が得られたことが後押しとなり、最終的には「アンナの光」の大手術が行われることになったそうです。

修復をしたことにより、空輸にも耐えられるようになり、海外の「バーネット・ニューマン展」にも貸し出しが出来るように。「アンナの光」はそれだけ重要な作品でもあるのです。

しかし、一言で「修復」と言ってもその手法は実に様々です。絵のコンディションに応じ、臨機応変に対応していかねばなりません。一朝一夕に判断を下せるものでもなく、経験やチームワークも大事な要素となってきます。


「フェルメールからのラブレター展」開催に向け、作品の状態をチェックする岩井氏。

モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん
修復家・岩井希久子の仕事
』【目次】

第1章 
さまざまな「病気」にかかった、名画の修復
ゴッホ《ひまわり》の修復
異なる運命をたどったふたつのピカソ
修復家への道のり
多忙な日々のはじまり

第2章 
世界でいちばん絵にやさしい修復を目指して
自分らしい修復とは? 地中美術館のモネ
現代アート、セル画、多彩な表現に挑む
かつてない修復方法に挑んだ、山下清の貼り絵
修復を通じて感じた日本の美術館の問題
芸術の意味を再認識した絵との出会い
シベリア抑留体験が描かれた作品

対談 宮本信子(俳優)× 岩井希久子
対談 秋元雄史(金沢21世紀美術館 館長)× 岩井希久子

第3章 
未来へ託す「タイムカプセル」をつくりたい
ベトナム絹絵修復プロジェクト
福島で発見された絵をめぐって


この他に、「修復の道具とは?」「作品のコンディションチェックとは?」「『低酸素密閉』とは?」「身近にある絵の修復方法とは?」など、絵画修復というある種秘密のベールに包まれている世界の様子を詳らかに、丁寧に紹介してくれています。

とにかく、ありとあらゆる作品を「診察」していらっしゃるので、読み手としても飽きることなくページをめくっていけます。

また居丈高に構えることなく、とても丁寧で平易な、語りかけるような文体であるのも、この本の優れた点です。普段、見ることのできない、裏方さんの仕事は新鮮な発見と驚きに満ち溢れています。


池中美術館のモネ「水連の池」を修復する岩井氏

カラー図版や写真も多く掲載されている贅沢な一冊です。

普段何気なく、観ている作品にもこんなドラマがあったのか!と思わず膝をポンっと叩きたくなる一冊です。

そしてこの本を読むと、実際に絵を観たくなります(今すぐにでも!)。そう、岩井氏の仕事(それにこの本)は美術愛で溢れているのです。

全てのアートファン必読の良書です!
こういう本をこれからもどんどん出して欲しいです!!


モネ、ゴッホ、ピカソも治療した絵のお医者さん 修復家・岩井希久子の仕事
岩井希久子 (著)

NHKプロフェッショナルにも登場し、35年間日本の絵画修復の第一線で活躍する岩井希久子さん。
モネ《睡蓮》(地中美術館)、ゴッホ《ひまわり》(損保ジャパン)、ピカソ(DIC川村記念美術館)やロスコ、ニューマンなどの現代アートやディズニーのセル画まで。修復を手がける中で起こった数々のドラマや、修復家だけが知っている絵の秘密などが語られています。
名画の8割は過去の悪しき修復によってオリジナルの輝きが失われている現実や、大胆な発想で絵が消滅する危機を救った秘話、女性として仕事を続けてきた涙を誘うエピソードなど、読み物としても面白く、また絵の新しい見方がわかる一冊。
本編のほかに、俳優・宮本信子さん、金沢21世紀美術館館長・秋元雄史さんとの対談ほか、修復技法がわかるコラム、身近にある絵の保存方法なども掲載しています。



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