青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< October 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< 「五線譜に描いた夢 ─ 日本近代音楽の150年」展 | main | 「国宝『卯花墻』と桃山の名陶」 >>

『岩佐又兵衛作品集』

東京美術出版より刊行された『岩佐又兵衛作品集』を読んでみました。


岩佐又兵衛作品集―MOA美術館所蔵全作品
矢代 勝也 (著)

辻惟雄先生が著した『奇想の系譜』により、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢蘆雪、歌川国芳らと共に一躍脚光を浴びることになった忘れ去られていた絵師・岩佐又兵衛。

中でも極彩色の美麗な絵巻物の中に、血しぶきが観ている側にまで飛び散ってきそうな勢いで描かれている「山中常盤物語絵巻」は、「美の巨人たち」でも取り上げられ、今やその存在を知らぬ人はいないほどメジャーな作品となっています。

ところが、悲しいかな所蔵するMOA美術館では、尾形光琳「国宝 紅白梅図屏風」と比べるまでもなく、滅多に公開されることがありません。

あの、いづつやさんでも昨年(2012年)に約10年ぶりに全巻公開された際は、欣喜雀躍し喜びの声を熱くブログで綴っていらっしゃいます。
岩佐又兵衛の‘山中常盤物語絵巻’がやっとみれた!


「山中常盤物語絵巻」第5巻-1(部分)
宿の主人に問われ、常盤は自らの身分と名を明かす。


また、MOA美術館には「山中常盤物語絵巻」の他にも又兵衛による絵巻物「浄瑠璃物語絵巻」、「堀江物語絵巻」を所蔵しており、これまた中々全てを観る機会に恵まれません。

3年前に「浄瑠璃物語絵巻」を観る機会に恵まれ、熱海まで出かけて来ましたが、辻惟雄先生をして「全十二巻。紙本濃彩色。各巻縦三十四センチ、長さ十・二八メートル〜十一・八一メートル、全長約百二十メートル。長さはやや短いが、これに要した制作費は他を圧して膨大だったと思われる。私は大学院時代、これを初めて見て、「山中常盤」とは別の、異様なまでの「かざり」への情熱に圧倒された。日本美術の特色である「かざり」の結晶といってよい要素がここにある。」(引用『岩佐又兵衛』)と言わしめるだけある、目がくらくらするような壮麗な作品でした。

目に焼き付けて帰るのはとても無理なので、図録を購入しようと勇んでミュージアムショップに立ち寄ったのですが、「浄瑠璃物語絵巻」の数枚のポストカードが販売されているだけで、全貌を知る資料的な書籍はありませんでした。

MOA美術館が所蔵する又兵衛を語るうえで欠くことのできない重要文化財4点、重要美術品3点を含む、14点の又兵衛コレクションを紹介する図録や書籍は全くありませんでした。

ショップの店員さんに「せめて、又兵衛の絵巻作品を解説する本は置いて欲しい」と、肩を落としつつお願いしてきたことを今でも鮮明に覚えています。


「浄瑠璃物語絵巻」第5巻-4(部分)
牛若は自らの素性を打ち明け、互いに精進中の身であるから差し障りはないと言う。浄瑠璃は、断りきれないと覚悟し、心を寄せる。


しかし、想いや願いは通じるものです。今回、東京美術より長大な三絵巻の全場面をカラー画像で紹介した岩佐又兵衛作品集―MOA美術館所蔵全作品が発売になったのです。

この本には、「山中常盤物語絵巻」「浄瑠璃物語絵巻」「堀江物語絵巻」を含む、MOA美術館所蔵の又兵衛作品すべてが収録されています。勿論カラー&解説付きで!

著者の矢代勝也氏はMOA美術館の学芸課長を務める方で、岩佐又兵衛関連の展覧会をこれまで数多く手掛けて来られた、又兵衛のスペシャリストです。

岩佐又兵衛作品集では、それぞれの絵巻物の解説と、全てを以下のような見やすい構成により書籍化しています。


(クリックで拡大)

場面ごとに解説が付され、大事な場面や絵的に優れている箇所はグンとクローズアップし掲載。時に、A4サイズの見開き全てを用いトーンと又兵衛の執念の筆使いを魅せてくれます。

人物にどうしても目が行ってしまいがちですが、この本であらためて見ると植物(木々や草)の描き方が実に多様であることが分かります。

展覧会会場ではどうしても細部まで全て観ることはできませんが、こうして書籍化してもらうと好きな時間に好きな場面だけじっくり「観察」出来ちゃいます。


「山中常盤物語絵巻」全詞書

また、絵画だけでなく詞書も全てテキスト化し掲載してくれているのも、嬉しいポイントです。

衝撃的な絵に惹かれしばし又兵衛の絵画世界に浸かった後は、じっくりと詞書を読み、ストーリーを知ることで、更に又兵衛の絵巻の虜に…

【目次】
岩佐又兵衛の生涯
MOA美術館について
一 章  山中常盤物語絵巻
      あらすじ/解説
      山中常盤物語絵巻
      詞書
二 章  浄瑠璃物語絵巻
      あらすじ/解説
      浄瑠璃物語絵巻
      詞書
三 章  堀江物語絵巻
      あらすじ/解説
      堀江物語絵巻
      詞書
四 章  故事人物画・物語絵
柿本人麿・紀貫之図/寂光院図/伊勢物語図(鹿と貴人図)/官女図/楊貴妃/歌仙図 小野小町/歌仙図 斎宮女御/歌仙図 中納言兼輔/歌仙図 貫之/歌仙図 猿丸太夫/自画像


岩佐又兵衛作品集―MOA美術館所蔵全作品(裏表紙)
上:「浄瑠璃物語絵巻」
下:「堀江物語絵巻


岩佐又兵衛ファンのみならず、全ての日本美術好きの方にとってまさに待望の一冊です。

発売を記念して「岩佐又兵衛展」開催してくれないかな〜MOA美術館さん。でも願いは通じるものです。近い将来きっと観られることでしょう。それまでこの本でしっかり見どころ押さえておきます。

宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の岩佐又兵衛「小栗判官物語絵巻」の全巻を収録した「小栗判官と照手姫」と合わせて是非!


ミラクル絵巻で楽しむ「小栗判官と照手姫」―伝岩佐又兵衛画
(広げてわくわくシリーズ)

太田彩/監修


岩佐又兵衛作品集―MOA美術館所蔵全作品
矢代 勝也 (著)

□現代のマンガにも通じる個性的な画風と、卓抜した表現力で若い世代の江戸絵画ファンを増やした岩佐又兵衛。本書は、根強いファンをもつ岩佐又兵衛の多岐にわたる画業のなかで、最も人気が高い絵巻作品を全画面掲載し、ノーカット・フルカラーで楽しめる待望の一冊です。
□「山中常盤物語絵巻」「浄瑠璃物語絵巻」「堀江物語絵巻」を含む、MOA美術館所蔵の又兵衛作品すべてを収録しています。




ほんのほんのちょっとだけご協力した本が発売になります。


『窓へ 社会と文化を映しだすもの』
五十嵐 太郎 (著) 日刊建設通信新聞社

Twitterやってます。
@taktwi

Facebookもチェック!


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3396

JUGEMテーマ:アート・デザイン


読書 | permalink | comments(0) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://bluediary2.jugem.jp/trackback/3396
この記事に対するトラックバック