弐代目・青い日記帳 

  
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「ロバート・ライマン −至福の絵画」展
千葉県佐倉市にある川村記念美術館で開催中の
「ロバート・ライマン −至福の絵画」展に行って来ました。

私はこれまで白い絵を描こうとしたことは一度もありません。
今も違います。自分が白い絵を描いていると思ったことすらありません。
白は、絵画におけるいくつかの要素をあらわにして、
その姿を明らかにするための手段なのです。
白によって、他のさまざまなことが目に見えてくるのです。


ライマン自身の言葉です。
白い絵を描こうとしたことは一度もない。川村記念美術館の2階の展示室には
白っぽい作品がおよそ30点一見アンバランスに展示してありました。

いつもこの場所にあるフランク・ステラのような異形で色遣いの激しい作品とは全く対照的な雰囲気の展示室になっていました。
「面白みのない展覧会。」何だ、白だけじゃん。「パワーに欠ける展覧会。」

そんな事ないですよ。とっても良い展覧会。ここでしか観られない展覧会です。

ー感想の前にちょっと時間を巻き戻しますー

どこの美術館でも、閉館はだいたい午後5時。
入館はその30分前。ここの美術館もまた同じ。

今日、川村に行こうと決めたのが、午後3時半。
あと一時間で到着しないといけません。
居た場所は幕張。無理は承知。

助手席からも無理との指示。
でも不思議と行ける気がした。
休日夕方の渋滞時間帯なのに・・・

「白い」車は一路佐倉へ。
久しぶりに荒い運転。
助手席は呆れ顔。でも行ける。根拠はないけど。

国道14号はやはり渋滞。
横道、裏道使ってもさして変らず、時間だけが過ぎてゆく。
でも不思議と行ける気がした。

京葉道路の側道から、国道51号線へ。
降っていた雨も止んできた。
分刻み、秒刻み。

信号待ちがこんなに恨めしく思ったことはない。
でも不思議と行ける気がした。
そしてタイムリミット。美術館駐車場前。

電話を入れる。美術館の方曰く
「どうぞ、いらして下さい。」
なんて優しい美術館。入館したのが4時33分だった。

   

息は特に弾んではいなかった。でもまだ焦りが心に残っていた。
そしてそのままライマンの展示室へ・・・
目の前に白っぽい作品が広がる。
そして前述のこの言葉が書かれてあった。

私はこれまで白い絵を描こうとしたことは一度もありません。
今も違います。自分が白い絵を描いていると思ったことすらありません。
白は、絵画におけるいくつかの要素をあらわにして、
その姿を明らかにするための手段なのです。
白によって、他のさまざまなことが目に見えてくるのです。


もう一度展示室の隅から会場にある絵を見渡した。
すーーーと、気持ちが和らいだ。
間に合って良かった安堵感とライマン展に救われた不思議な気持ちが交差。
白い作品で善かった。ステラでなくてよかった。

こんな特別な経験を通さなくても、ロバート・ライマン展は充分観る価値ある展覧会。
この展示は全てライマン本人が来日し、佐倉まで来て、この場所で指示をした。
だから、言ってみれば、この会場全体が彼の作品。

例えば、作品タイトルなどが書かれているキャプション。
これが今回壁に貼ってない。
ライマンの作品は白っぽい四角い作品。壁もまた白。
(川村この為に壁随分と綺麗にした。)
その作品の脇に四角い文字が書かれた板があっては「邪魔」になる。

よって、ライマンの指示通り、作品タイトルその他は茶色い床に白い文字で
直接書かれているスタイルをとっている。
これがまた洒落ている。「これ以上絵に近づかないで下さい」というラインの役割も兼ねているような位置に白い文字で書かれてある。

また、ライマンの作品は様々な素材が使われている。
油絵具、グラファイト、防食塗料、スティール、取付金具、青ボールペン、発泡スチロール、麻カンヴァス、膠、ニス・・・
(同じ白い作品であっても、同じ白には見えない。)

そこで拘ったのがライティング。光の当て方によって作品の見え方が
随分と変ってしまうと言う。一番美しく見えるようにライマン本人が
ライティングも調整したそうだ。

これに合わせて、作品の展示する上下の位置も変化している。
連作以外は上下まちまちに展示してある。
これも作品が一番美しく見える位置に配置したそうだ。
よって顔を上げて見上げるような作品もあった。

ライマンのこの展覧会に対する意気込みがこうして随所に表れている。
白だけのツマラナイ展覧会では決してない。
上品で育ちの良い展覧会。
観る者を力でねじ伏せることなく、逆に心を開いて観る展覧会。

それは、ライマンが「観る立場」から出発した画家だからだろう。
ライマンは初めジャズ・ミュージシャンを志しNYへ渡ったそうだ。
生活を支えるため、MoMAの監視員のバイトをした。
ここに5年以上も勤めた彼は当然のように多くの画家の作品から
インスパイアされ、画家の道へ・・・マティス、ゴッホ、ロスコ、クライン…
   ロバート・ライマンの略歴

Robert Ryman: Art Ed Books and Kit (Art Ed Kits)
Robert Ryman: Art Ed Books and Kit (Art Ed Kits)


ライマンの作品はこちらから。
Robert Ryman

展覧会のサブタイトル「至福の絵画」まさにその通り。
ロバート・ライマンは自分のことを芸術家ではなく
ただのペインターだと卑下して言います。
そんな彼もまた好きです。

そして、画家ではマティスが一番好きだそうです。
なるほど〜

川村記念美術館のサイトより
「あなたの絵がいっぱい飾られた部屋にやってきた人に、どんなことを感じてもらいたいですか?」という質問に、ライマンはこう答えています。

「数年前にメトロポリタン美術館でフェルメール展を見に行ったとき…、一枚の絵をじっとみつめる女性が、本当に幸せそうな表情を浮かべていたのを覚えています。それは小さな笑みで、彼女は長い間そこに佇んでいました。そのとき私はこう思ったんです。『やっぱり、絵画にとって一番肝心なのは、喜びを与えることなんじゃないだろうか』ってね。もしも誰かが絵を見て喜びを感じたとしたら、それに勝るものはないでしょう。」


以下、プレスリリース。
このたび、川村記念美術館では現代アメリカ美術の代表作家のひとりロバート・ライマン(Robert Ryman, 1930−)の回顧展を開催いたします。
本展は作家本人とニューヨークのペースウィルデンスタイン画廊の全面的な協力を得て実現するアジア初のライマン回顧展です。作家が所蔵する作品を中心に、グッゲンハイム美術館、サンフランシスコ近代美術館などから、ライマン自身の目で選りすぐられた約25点をライマンによる展示でご紹介する予定です。

| 展覧会 | 00:00 | comments(11) | trackbacks(3) |
こんばんは.おけはざま です.
拙blogにコメントありがとうございます.
行かれましたか.川村記念美術館.
ロバート・ライマン展は本当に贅沢な時間と空間だったと思います.ぼくは地方の美術館って関心薄かったのですが,目が覚めました.美術館自体,イイ感じですよね.

| おけはざま | 2004/10/11 10:50 PM |

はじめまして。いつも拝見しています。
私も先日ライマン展へ行ってきました。

「観る者を力でねじ伏せることなく、逆に心を開いて観る展覧会。」

本当に上手い表現ですねえ。全くその通りだったと思います。ライマン自身の解説も何やらあたたかい雰囲気でした。お聞きになられましたでしょうか。

少し旗色の異なる拙いブログですが、トラックバックさせていただきました。よろしくお願いします。
| ROSINA | 2004/10/12 9:01 PM |

ロバート・ライマン素敵な画家。初めて知りました。
白をあんなふうに自由に表現できるなんて、素晴らしいですね。
作品をいくつか見てみました。とても興味深かったのは、
その素材が様々なところです。リネン、スチール等に油絵の具、
ジェッソ、チョーク、ペンなどで描かれた白の表現、そして
それらは照明の効果で一段と輝くのでしょうね。
至福の絵画、・・・その通りですね!
私も人を喜ばせるような絵を描きたいです。
| nana | 2004/10/12 11:49 PM |

@おけはざまさん
コメントありがとうございます。
ここの美術館環境が飛びぬけて良いですよね。
ロンドン郊外にあるケンウッドハウスのような雰囲気備えてます。企業の美術館としては珍しいです。森林浴もできるし、白鳥さんも居るし。お抹茶もいただけるし。毎回展覧会毎に行っています。

@ROSINAさん
コメントありがとうございます。
時間がなかったので慌てて観たのですが、それでも
不思議と落ち着いて時間が長く感じられるほど堪能できました。

イヤホンガイド、 iPodでしたか?
最近流行りつつあります、これ。
私はビデオしか観られなかったのですが
ライマンの優しい雰囲気モニターからも伝わってきました。

>トラックバックさせていただきました。
こちらもさせていただきます。
宜しくお願い致します。

@nanaさん
コメントありがとうございます。
素材確かに色々使っていました。
でも、素材に頼っているわけではないところが凄いです。
素材感で勝負ではなく、あくまでも白が中心。
作品がそれぞれ生かされている感じがしました。
アクリルのケースに入って苦しそうにしている
作品なんかありませんでしたから(^^♪

nanaさんの作品も充分素敵だと思いますよ。
| Tak管理人 | 2004/10/13 4:49 PM |

Tak管理人様。
ご丁寧なコメントとトラックバック、どうもありがとうございました。

イヤホンガイド、ipodでした。
私は普段、あまり音声解説を聞かないのですが、今回は「ライマン本人による。」という売り文句についひかれて聞いてしまいました。
内容は、そうですね・・・、「解説」というよりもライマンの感性をそのまま言葉にしたような感じでしたね。Tak管理人様の仰る通り、ライマンの優しい人柄が感じられるものでした。
| rosina | 2004/10/13 8:18 PM |

Takさま、コメントありがとうございます。
 HP拝見させていただきましたが、美しいですね。少し参考にさせていただきます。
 美しい青色のことで、まえにしらべたのですが、CITY BANKの紺色が、葛飾北斎の富岳36景の紺ににていると思っていたのですが、北斎の使っていた色は「べろあい」といってオランダからの輸入品。さらに調べると、ベルリンブルーというカラーで北斎が輸入する少し前に作られた色らしいのです。芸術の速さはすごい。
もう一つの話題ですが、その記事を7月16日にブログにしようと思って、手短なところにあったシティバンクの郵便物をスキャナーでとったり、カメラで撮影すると、画像上、まったく違う色になるのです。何か特殊なインクを使っているようです。
 ところで、幕張にお住まいみたいですが、数十年前、幕張に住んでいました。幕張小学校にも少しいました。
ではまた、
| おおた葉一郎 | 2004/10/13 8:30 PM |

@rosinaさん
コメントありがとうございます。
ipodでしたかーーやっぱり。あれ流行ですね。
これから加速度的に増えそうな予感。
大きさ全然違いますからね、今までのものと。

時間がなく借りませんでしたが、ビデオは少しだけ見られました。
真面目に真摯に作品と向かい合い、展覧会への意気込み感じられました。

今後とも宜しくお願いします。

@おおた葉一郎さん
コメントありがとうございます。
本館にまで足を運んでいただき恐縮です。
青は良いです。
季節、冬が好きなのですが、冬にまた青が寒さを
よりいっそう際立たせてくれて。。。好きです。気分は清少納言。
「冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず。」

色は目で見るのと一度何かに通すのとでは全く見え方が
変ってきてしまいますね。展覧会の図録がそうです。
琳派展で図録欲しかったのですが、如何せん色合いが・・・金ピカ。
ご覧になられたかもしれませんが「美の巨人たち」で以前
ベロ藍を取り上げていました。
http://www.tv-tokyo.co.jp/kyojin/picture/000729.htm
中々面白い放送でした。

追記:住まいは市川になります。幕張は用あって出かけていました。
   海浜幕張の方は同じ幕張でも随分と趣きの違う町並みですね。
| Tak管理人 | 2004/10/14 9:36 PM |

 はじめまして。良い展覧会でしたね。ロスコも良かったのですが、今回は、観たあといっぱいおみやげをもらったような気になりました。また観たいものですね。
| koonel | 2005/02/26 11:57 AM |

@koonelさん
こんばんは、初めまして。
今でもあの白いやわらかな空間を
思い起こすことができます。
こんな展覧会滅多にないです。

いつも川村は「良いお土産」くれる気がします。
| Tak管理人 | 2005/02/27 1:05 AM |

こんばんは。

ライマンは、一番好きなアーチストです。
川村記念美術館での展覧会を見逃してしまったこと、やっぱり悔やみますね。
その時期、私事でバタバタしてて、展覧会の情報すら知らなかったです。

又、いつかやる時は、今度こそ見逃さないようにしたいですね。
| KH | 2006/03/07 10:57 PM |

@KHさん
こんにちは。
コメントありがとうございます。

私も見逃した展覧会いっぱいあります。
映画も最近は観ようと思っているだけで
観られたためしがありませんん。。。
4月から私も忙しくなるので
今まで通り展覧会に行けるかどうか・・・

ライマンまた観たいです。
| Tak管理人 | 2006/03/08 4:53 PM |










http://bluediary2.jugem.jp/trackback/34
川村記念美術館
川村記念美術館にいってきた. 大日本インキ化学工業が設立した美術館で,千葉県佐倉
| 昼間の青い月 | 2004/10/11 10:51 PM |
川村記念美術館 「ロバート・ライマン」展
川村記念美術館(佐倉市) 「ロバートライマン−至福の絵画−」 2004/7/10〜10/24 こんにちは。 今日はちょっと足を伸ばしまして、千葉県の佐倉市にある川村記念美術館へ行ってきました。ロバート・ライマンは、1930年のアメリカ生まれで、ニューヨークの美術館の監視
| はろるど・わーど | 2004/10/14 12:32 AM |
ロバート・ライマン
ART TRACE 出版の「絵画は二度死ぬ、あるいは死なない」のロバート・ライマン編を制作の傍ら、最近読んでます。 ロバート・ライマンに関する文献は、2004年の川村記念美術館での展覧会カタログを除くと、意外と日本では見られないので、これが唯一のライマンの文献
| Thinking | 2006/03/07 10:43 PM |

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