青い日記帳 

TB&リンク大歓迎です!
<< September 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>
<< 『人が集まる「つなぎ場」のつくり方 都市型茶室「6次元」の発想とは』 | main | 「特別展 小林古径生誕130年記念 古径と土牛」(@山種美術館)をリアルタイムでレポートしよう! >>

「カイユボット展」

ブリヂストン美術館で開催中の
「カイユボット展−都市の印象派」に行って来ました。


「カイユボット展」公式サイト
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/caillebotte/

「印象派展」に自ら何度も作品を出品した画家としての側面と、モネ、ルノワール、ピサロ、シスレーそしてセザンヌらの仲間たちを経済的に支援したコレクターとしての二つの大きな顔を合わせ持つギュスターヴ・カイユボットを紹介する展覧会がブリヂストン美術館で開催されています。

主な印象派の画家たちをあげてみると…

カミーユ・ピサロ(1830年-1903年)
エドゥアール・マネ(1832年- 1883年)
エドガー・ドガ(1834年-1917年)
ポール・セザンヌ(1839年-1906年)
アルフレッド・シスレー(1839年-1899年)
クロード・モネ(1840年-1926年)
ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841年-1919年)
ギュスターヴ・カイユボット(1848年-1894年)

こうしてあらためて見てみると、印象派の錚々たるメンバーの中で、カイユボットの知名度が極端に低いことが分かります。

その理由についてブリヂストン美術館の島田紀夫館長は、「印象派グループ展のなかのカイユボットの位置−ルノワールへの信頼、モネとの友情、そしてドガとの確執」(「カイユボット展」図録)の中で、大きく3つの理由を提示されています。

1:45歳という若さでこの世を去り、作品数がそれほど多くない。
2:作品を売ることに興味はなく、友人たちを経済面で支えた。
3:都市の情景を専ら描いた為、印象派周辺の画家として捉えられた。


裕福な家庭に生まれたカイユボットは、ルノワールのように自分で作品を売り、生計を立てる必要性に駆られることはありませんでした。

自ら興味・関心を示した対象を丁寧に描き上げる。それで十分満足だったわけです。厳しい世間の評価に好んで曝されることを好まなかったのかもしれません。

島田館長が示した他の印象派の画家たちに比べカイユボットがあまり知られていない理由の中で、最も注目すべきは3番目です。

素早い筆触で自然の一瞬の光景を画面に定着する風景画を印象派の最大の成果だと仮定すると(中略)都市の情景だけが注目されるカイユボットは、その周辺に位置付づけされてしまうのである。

ここで注意せねばならぬのは「都市の情景だけが注目されるカイユボット」であり「都市の情景だけを描いたカイユボット」ではない点です。

確かに展覧会サブタイルに「都市の印象派」とある通り、都市の情景を多く描いたカイユボットです。しかし、それだけではないことを今回の回顧展では知ることが出来ます。

モネと共に描いた光あふれる自然の風景や、綿密に考え抜かれた構図で構成された静物画、そして実の弟で写真家でもあるマルシャル・カイユボットからの影響等々、これまで一元的に紹介されてこなかったカイユボットを、多角的に捉えている良質な展示内容となっています。



「カイユボット展」の構成は以下の通りです。

1:自画像
2:室内、肖像画
3:近代都市パリの風景
4:イエール、ノルマンディー、プティ・ジュヌヴィリエ
5:静物画
6:マルシャル・カイユボットの写真


舟遊び、切手蒐集、ガーデニングを趣味とし、自らの芸術性を高めていったカイユボットが、都市の風景に何故ゆえそれほどまでに興味関心を寄せたのでしょう。

ジョルジュ・オスマンによるフランス最大の都市整備事業(所謂「パリ改造」)により誕生した近代的な建造物やその街で生活する人たちの姿を「新たな風景画」として、カイユボットは描きました。

他の印象派の画家たちも大きく変貌を遂げるパリの風景を描いてはいますが、古典的な表現手法に則って描かれたカイユボットの都市風景画は、明らかに一線を画するものがあります。

果たして、「印象派」のカテゴリーに入れてしまってよのか戸惑うほどです。どれだけ弟の写真が絵画制作に影響を与えたか分かりませんが、キリッと引き締まった彼の風景画は実にモダンです。

とりわけ、画中に効果的に用いられている斜めのラインがより一層作品を引き締め、時に緊張感さえ与えます。この点でも他の印象派の画家たちとは大きな違いが見受けられます。

前述した通り、ここまで「3:近代都市パリの風景」でしたら、僅かに知る彼の作品イメージと重なり「カイユボットらしい作品」となるのですが、その後に連なる「4:イエール、ノルマンディー、プティ・ジュヌヴィリエ」(郊外の風景画)、「5:静物画」は、初めて目にする作品ばかりです。

郊外の光あふれる風景を描いた作品はモネやシスレーと非常に似ており、やっと印象派の仲間らしさが出てきます。それでも、カイユボット特有の視点があり、同じような自然風景でも違いがあります。

色味的には大きく変わりはないように思えたのですが、構図が他の印象派の画家たちとどこか違うものを感じました。今後比べて観る機会が訪れることを願ってやみません。



そして何よりも驚かされるのが静物画です。

ジビエが規則正しく並べられている「鶏と猟鳥の陳列」は、一見静かな画面ながら様々な「声」が聞こえてきそうな不思議な魅力に包まれた作品です。

また、「キンレンカ」は神戸智行さんの作品かと見間違えたほど斬新です。そして壁紙として描かれたとしか思えない「ひな菊の花壇」等、装飾的な作品にも出会えます。

とにかく、目にするもの全て新鮮な驚き(初見の驚きもありますが、既知の事実に揺さぶりをかけるような驚きも)に溢れた展覧会でした。

カイユボットは、人間的にガツガツしていなかったのでしょうね、きっと。いずれの絵画も心の余裕が感じられ、こちらも安心して観ることが出来る画家です。Twitterをもしやっていたら絶対愚痴とかツイートしないタイプです。だって育ちが違いますから。

芸術の秋。多くの展覧会が開催されている中で、最も大事な展覧会であり、観ておかねばならぬものです。

「カイユボット展 −都市の印象派」は12月29日までです。是非とも!


カイユボット展 −都市の印象派

会期:2013年10月10日(木)〜2013年12月29日(日)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館)、4月21日(日)
開館時間:10:00〜18:00(毎週金曜日は20:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
会場:ブリヂストン美術館
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/

主催:公益財団法人石橋財団ブリヂストン美術館
後援:在日フランス大使館 / アンスティチュ・フランセ日本、公益財団法人日仏会館、日仏会館フランス事務所
特別協賛:株式会社ブリヂストン
協賛:株式会社高島屋、株式会社みずほ銀行、大日本印刷株式会社
展示協力:株式会社DNPアートコミュニケーションズ、シャープビジネスソリューション株式会社
協力:日本航空

「カイユボット展」公式サイト
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/caillebotte/

【関連企画】
スライドトーク
日程毎週水曜日・金曜日 15:00 - 16:00会場ブリヂストン美術館ホール

土曜講座 「印象派の画家ギュスターヴ・カイユボット」
時間14:00 - 16:00(開場13:30)会場ブリヂストン美術館ホール
定員130名(先着順)聴講料各400円

11月23日「近代都市パリとカイユボット」坂上桂子氏(早稲田大学文学学術院教授)
11月30日「印象派にとっての写真、写真にとっての印象派」鈴木理策氏(写真家)×倉石信乃氏(明治大学教授)
12月7日「印象派グループ展のなかのカイユボット」島田紀夫(ブリヂストン美術館館長)
12月14日「都市の印象派、カイユボット」新畑泰秀(ブリヂストン美術館学芸課長)



美術館、博物館にお勤めの学芸員さんやスタッフさんに、ランチで利用しているお店や仕事帰りに立ち寄っているミュージアム近隣の美味しいお店を紹介して頂く新企画「ミュージアムごはん」

「ブリヂストン美術館編」も要チェックです!
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3331

Twitterやってます。
@taktwi

Facebookもチェック!


この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3404

JUGEMテーマ:アート・デザイン


ギュスターヴ・カイユボット(1848-1894)はモネやルノワールとともに印象派を代表する画家です。1876年の第2回印象派展以降主たる印象派展に参加し、一方で仲間の作品を購入することによって経済的に彼らを支え、印象派展の開催の継続にも尽力しました。しかし近年では画家としての活動に関心が集まり、近代都市パリの新しい風俗や都市風景を光溢れる繊細な筆致で描いた作品に関心が高まっています。
世界各地から集められた画家の代表作が集結する本展は、いまだ知られざる画家、カイユボットの全貌を日本、そしてアジアで初めて紹介するものです。

展覧会 | permalink | comments(0) | trackbacks(1)

この記事に対するコメント

コメントする









この記事のトラックバックURL
http://bluediary2.jugem.jp/trackback/3404
この記事に対するトラックバック
ブリヂストン美術館 「カイユボット展ー都市の印象派」  10/10-12/29 ブリヂストン美術館で開催中の「カイユボット展ー都市の印象派」のプレスプレビューに参加してきました。 モネやルノワールとともに印象派展(計5回)に参加した画家、ギュスターヴ・カイユボッ