青い日記帳 

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「幕末の探検家 松浦武四郎」

静嘉堂文庫美術館で開催中の
「幕末の探検家 松浦武四郎」に行って来ました。


http://www.seikado.or.jp/

「北海道の名付け親」として、または「一畳敷」の書斎を造ったことでも名の知れている松浦武四郎の偉業(「異業」かもしれません…)を紹介する展覧会が、世田谷の静嘉堂文庫美術館で開催されています。

静嘉堂といえば、三菱財閥の第2代社長・岩崎彌之助と第4代社長・岩崎小弥太によって集められた美術コレクション(絵画、彫刻、書跡、漆芸、茶道具、刀剣など)を収蔵していることで知られています。
静嘉堂文庫美術館「父子二代によるこれくしょん」

それらの中には、国宝「曜変天目茶碗」や国宝「源氏物語関屋澪標図屏風」(俵屋宗達)も含まれています。


静嘉堂文庫 http://www.seikado.or.jp/

数多くの所蔵品の中に、近年になってから松浦武四郎が収集した古物も多数所蔵していることが明らかとなり、國學院大學の考古学専門の内川准教授に調査研究を依頼。足掛け4年に渡る調査を終え初めて美術館での公開。その数実に900点にものぼります!

1881年にこの世を去った松浦武四郎が蒐集した膨大なコレクションがどのような経緯でまとめて静嘉堂文庫へ収まったのか未だはっきりしたことは分からないそうですが、とにもかくにも100年以上ひっそりと「蔵」の中で眠っていたとは驚きです。


「松浦武四郎展」展示風景

さてまずは、松浦武四郎(1818年〜1881年)という人物について知らねばなりません。ところがこれが一筋縄ではいかないのです。実にマルチな活躍をした人なのです。ざっとあげただけでも…

大旅行家」…伊勢(現在の三重県松阪市出身)で、自分の足で日本全国津々浦々を歩いた。

探検家」…アイヌの人々の中に溶け込み(自身アイヌ語が話せた)、幕末の蝦夷地・クナシリ・エトロフ島を自分の足で調査。(「北海道」という地名の名付け親)

ジャーナリスト」…調査した土地の地理・風俗・人情・自然などを詳細に記録し、出版して世に問う。

大コレクター」…歴史ある遺物を、独自の感性で愛好し蒐集。(この一部が静嘉堂文庫に収められた)


松浦武四郎「知床日誌」1863年刊

16歳の時から日本全国を旅して歩いていた武四郎が、蝦夷地(北海道)へ初めて渡ったのが25歳。生涯6度もかの地を訪れ、アイヌの人々と交わりながら植物、動物、遺跡、そしてアイヌ語など実に多岐にわたる調査を行い、詳らかに記録しこうした本として世に送り出しました。

蝦夷地に関する150冊の調査記録と、9800箇所のアイヌ語地名を収めた地図を出版したというのですから驚きです。そして彼のアイヌの地に向けたまなざしがとても温かく血の通っていたものであることも伺い知ることが出来ます(明治政府から「開拓判官」に命ぜられても一年で辞してしまった理由もよく分かります)

誰から命じられたわけでもなく、自ら進んでこうした調査探検、出版を行った武四郎。遺業を成し遂げるこのパワーの源はどこにあったのか、そして彼を突き動かしたものは何なのかとても興味関心があります。



武四郎と同郷の国学者・本居宣長(1730〜1801)が蒐集した古鈴の絵を目にしたことが、古物へ興味を持ったきっかけとなったと言われているそうです。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章:松浦武四郎の紹介
第2章:好事家 松浦武四郎


2011年にINAXギャラリーで開催された「幕末の探検家 松浦武四郎と一畳敷展」を拝見し、日本にこんな人物がいたのか!と衝撃を受けると同時に強く惹かれました。(今回も会場内に「一畳敷」を再現しています)

第1章は、その感動がよみがえって来る主に「北海道」に関する展示でしたが、今回の静嘉堂美術館での白眉は実は第2章にあります。

彼のもう一つの側面である「好事家」(大コレクター)としての顔です。


「第2章:好事家 松浦武四郎」展示風景

縄文時代から近代まで、そして日本だけにとどまらずアジア、エジプト、ヨーロッパの彼の古物を蒐集。武四郎の独自の美意識によるコレクションはまさに圧巻です。

そして何よりも手に入れたものを具に研究し、それを収納しておく箱を作らせ、また箱書きを能書家に依頼するなどとにかくそのスタイルは徹底しています。

ただ、無造作に集めるだけでなく目的意識を持ち、集めたものを体系化。さながら「武四郎博物館」のようです。


「第2章:好事家 松浦武四郎」展示風景

そして何よりも「箱」(函)へのこだわりは尋常ではありません。思わず京極夏彦の小説『魍魎の匣』の世界が静嘉堂の展示室に現出したかのような錯覚に襲われたほどです。

古物がぴったりと(指の隙間もないほどに)造られた箱たちを観ているだけでも、ゾクゾクしちゃいます。

しかし、こういう旦那をもった奥さんはさぞかし大変だったでしょうね。潔癖症とも超A型とも違う何か達観した別次元の世界に生きた人のように思えてなりません。


川鍋暁斎「武四郎涅槃図」1886年

お釈迦様が入滅された姿を描いた「涅槃図」を、釈迦を自分自身に置き換え描かせたその名も「武四郎涅槃図」。生前、川鍋暁斎と喧嘩しながら(笑)5年もの歳月をかけ描かせた大作です。

今回は諸般の事情があり実物は展示されていませんが、大きく引き伸ばしたバナーが展示されています。そして何とその中に描かれている20品が、静嘉堂文庫コレクションの中で確認されたそうです。


川鍋暁斎「武四郎涅槃図」(部分)




尚、この作品に関する、安村敏信先生の講演会が予定されているそうです。聴きに行かれる方レポートお願いしまーす!(拝聴したい!!)

「珍品「武四郎涅槃図」という名の寿像をめぐって」
日時:11月9日(土)午後1時30分から
講師:安村敏信氏(萬美術家)
場所・定員:地階講堂にて先着150名


また、日本美術全集16 激動期の美術』 (日本美術全集(全20巻))にも一頁にどーーんと「武四郎涅槃図」掲載されています。

今回の「松浦武四郎展」はこれまでの静嘉堂さんの展覧会とは一味も二味も違う要素がありました。展示内容も勿論そうですが、何よりも見せ方に工夫が凝らされています。

立体感を持たせつつ、壁面を大きくおもいきり使い、極力文字情報を少なくしています。そして新しいメディア(DNPによる「みどころルーペ」)も採用しています。展示物が古物中心であるにも関わらず、ぐいっと惹き寄せられる効果を十分に果たしているかと。


松浦武四郎「大首飾り」

チラシやポスターに採用されている武四郎の肖像写真(65歳に撮影されたものだそうです)で彼が首から提げている「大首飾り」です。

研究者の間でもどこにあるのか分からなかったものが何と、静嘉堂文庫にあったわけです。140cmもの長さの首飾りは縄文時代の勾玉から近代のガラス等240点を組み合わせて作られた武四郎オリジナル。

最後にもうひとつ武四郎の特徴として、相当な「お洒落さん」だったことを付け加えておきましょう。

「幕末の探検家 松浦武四郎」展は12月8日までです。展示作品数が多過ぎて全然まだまだ紹介しきれていません。武四郎の魅力こんなもんじゃありません!是非会場で!!


幕末の探検家 松浦武四郎

会期:2013年10月5日(土)〜12月8日(日)
休館日:毎月曜日(10月14日、11月4日は開館)、10月15日(火)、11月5日(火)
開館時間:10:00〜16:30(入館は16:00まで)
会場:静嘉堂文庫美術館
http://www.seikado.or.jp/

協力:
國學院大學学術資料センター/松浦武四郎記念館(三重県松阪市)
北海道開拓記念館(北海道札幌市)

作品解説:
展示室または講堂にて
午前11時から…10月12日(土)・11月23日(土・祝)・11月30日(土)
午後2時から…10月24日(木)・10月31日(木)


「幕末の探検家 松浦武四郎」図録がとっても素敵です。
静嘉堂文庫美術館初の左開き(横書き)の図録だとか…遠方で会場まで行かれない方もこの図録だけは手に入れたいものですね。

静嘉堂文庫美術館
http://www.seikado.or.jp/

注:会場内の写真は主催者の許可を得て撮影したものです。

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「幕末の北方探検家」「北海道の名付け親」として有名な松浦(まつうら)武四郎(たけしろう)(1818—1888)は、伊勢国一志郡須川村(現、三重県松阪市)の郷士の家に生まれました。少年の頃から日本全国、旅をして歩きましたが、時勢の中で特に北方に強い関心を持ち、弘化2年(1845)から安政5年(1858)まで、13年間に計6回にわたり、東西・北蝦夷地(えぞち)、クナシリ、エトロフ島を探査。アイヌの人々とも深く交流し、関連する多くの著書を刊行しました。その後、開拓使判官になるも1年で辞し、以後全国遊歴と著述の日々を送りました。このような旅の巨人武四郎はまた古物に興味を持ち、考古遺物の大コレクターとしても知られています。

今回、静嘉堂が所蔵する武四郎旧蔵考古遺物コレクションの中より主要な物を選び、初公開致します。今まで全く世に知られていなかったこの幻のコレクションには、古墳時代の美しいヒスイの勾玉や大きな古鈴、また歴史時代の考古遺物など、学問上重要な資料となるものも含まれています。
本展では、それらの考古遺物を中心に、幕末・明治に生きた特異な探検家、松浦武四郎の生涯と人物像を紹介してまいります。
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