青い日記帳 

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特別展「描かれた都−開封・杭州・京都・江戸」

大倉集古館で開催中の
特別展「描かれた都(みやこ)―開封・杭州・京都・江戸―」に行って来ました。


大倉集古館:http://www.shukokan.org/

まずは、この展覧会の構成から。

第一部:北宋の都,開封―水辺の都市の変容,蘇州へ
第二部:南宋の都,杭州―憧憬の西湖
第三部:京都―花洛尽くしの世界
第四部:江戸―新たな東都,現代へ


中国の2つの描かれた都(開封、杭州)を1階展示室で。2階では日本の描かれた都・京都、江戸(東京)を紹介しています。でも単純に4つの都が描かれた作品を並べているだけではありません。

開封→杭州→(海を渡り)→京都→江戸といった一連の文化の受容をベースに据え、それぞれの作品が展示されています。数々の「都」が存在する中国の長い歴史の中から、開封・杭州を選んだのは、絵画史上日本に影響を最も与えた宋代の都だったからに他なりません。

そして何よりこの4つの都はそれぞれ「絵になる都」だったのです。

我々のよく知る、洛陽や長安そして北京ではなく、開封・杭州をどうして取り上げているのか、その理由が分からないと、単なる「都情景比べ」に堕してしまいます。

Wikipediaで予習予習!
・開封市(かいほうし)…中国でも最も歴史が古い都市の一つであり、北宋の首都であった。11世紀から12世紀にかけて世界最大級の都市であった。

・杭州市(こうしゅうし)…中国八大古都の一つ。南宋時代には事実上の首都、臨安府が置かれた。13世紀は世界最大の都市であった。


古今東西、都の眺望。清明上河図から狩野永徳、山口晃まで―。」とチラシにあります。

開封を描いたお宝中のお宝「清明上河図」(故宮博物院蔵)から、過去と現代が入り混じった東京・六本木を描いた山口晃「東京圖 六本木昼図」まで40点でそれぞれの都の魅力に迫りつつ、様々な課題を提示して行きます。

第一部:北宋の都,開封―水辺の都市の変容,蘇州へ

中国美術史上屈指の名画といわれる北京・故宮博物院の「清明上河図」(北宋時代)が、東京国立博物館で開催された特別展「北京故宮博物院200選」(2012年1月2日〜2月19日)に期間限定で出品され、展覧会には長蛇の列が出来たのも記憶に新しいところです。

中国の至宝とされる「清明上河図」が国外に初めて貸し出されるとあって、日本国内はもとより、中国国内でも大きな話題となりました。

その「清明上河図」の模本が3点(民代1点、清代2点)「描かれた都展」に展示されています。なんだ、模造品か…と言うこと勿れ。

当時も本物の「清明上河図」を傍らに置いて写しとるなんてほとんど不可能だったはず。でも、どうしても「清明上河図」を観たい(手元に置きたい)という人々の強い思いから、こうした模本が生まれ、その幾つかが日本に伝来しています。

本物の「清明上河図」がパネルで紹介されているので、それと見比べてみると意外なことにあちこちに「違い」を発見出来ます。これは注文主のリクエストにより自分(注文主)の住む町を描き込んでもらったりしたことによるものだそうです。

それと現代のように画像資料がなかったわけで、街中で賑わいをみせる人々の様子もある意味イメージで描かれていたとしてもおかしくありません。

こうなって来ると、「模本」というよりもタイトルだけ「清明上河図」で中身は違う作品と言っても過言ではありません。同じ画題やテーマでも描かれる内容が変わることは現代では当たり前のことです。明、清代となると“画題としての「清明上河図」”が確立していたのでしょう。

名作「清明上河図」が生み出したひとつの文化であるとも言えます。「描かれた都展」で公開されている3点の「清明上河図」を模本、贋作と言ってしまっては元も子もありません。色眼鏡を外して観ればそれぞれ実に特徴のある愉しい作品です!

第二部:南宋の都,杭州―憧憬の西湖

現在、ユネスコの世界遺産にも登録されている西湖 (杭州市)は、室町から江戸時代の日本人にとって「憧憬の西湖」であったようです。

山水画(風景画)を描くにあたり、理想の水辺として西湖は画家の頭の中に厳然として存在していたことが、今回の展覧会に出ているバラエティー豊かな「西湖図」から容易に伺い知ることが出来ます。

ネットはおろか写真すら存在しなかった時代。憧れの南宋の都・杭州にある西湖は、一体どんなものとして当時の画家の心に映ったのでしょう。情報が乏しければ乏しいほどイマジネーションは膨らむものです。

たとえ、実景は観たことがなくても、画家の中で独自の西湖を作り上げ、杭州という都のイメージを増幅させていったのでしょう。

実際の西湖とほぼ変わらぬ風景が描かれている作品もあれば、湖と堤防があるだけで、西湖とはとても思えない作品もあります。先の「清明上河図」同様に、実景を離れて美術のモチーフとして定着した西湖は、実に深いテーマを抱えている画題です。

狩野山楽、狩野探幽、狩野梅笑そして曽我蕭白がどのようにして「憧憬の西湖」を描いたのか比べてみて下さい。(前期に出ていた池大雅「西湖勝覧図」を見逃したので図録で我慢…)



第三部:京都―花洛尽くしの世界

京都を描いた作品と言えば「洛中洛外図屏風」です。トーハクで開催中の特別展「京都」ではこれでもか〜と国宝・重要文化財の「洛中洛外図屏風」を拝見出来ますが、大倉集古館ではもう少し掘り下げて鑑賞できるようになっています。

それと、長谷川法橋巴龍「洛中洛外図」も、森美術館の「笑い展」以来のご登場。「アウトサイダー系洛中洛外図屏風」(山下裕二先生)とまで言わしめた超必見の一点。世界に一つだけの花ならぬ「世界に一つだけの洛中洛外図」です。

また京都国立博物館「狩野永徳展」で初公開された、狩野永徳「洛外名所遊楽図」も展示されています。隣りには約2年間の修復を終えお披露目となる久隅守景「賀茂競馬・宇治茶摘図」(重要文化財)もあり、贅沢な空間となっています。

ところで、永徳や久隅守景らの作品のような京都の一地域(名所)を描いた作品が先か、それとも京都全体を俯瞰するように描いた「洛中洛外図」が成立上先か専門家の間でも意見が分かれているそうです。

全体図である「洛中洛外図」がまずあり、その中から好きな名所だけをピックアップし描かせたとも考えられますし、展示されている狩野派「元秀」印の「京名所図貼」のような各名所を描いた扇面を屏風に貼ったものが「洛中洛外図屏風」の元ネタなのか…さてさてじっくり会場で考えてみて下さい。

全体図(洛中洛外図)一地域(名所図)
一地域(名所図)全体図(洛中洛外図)

そうそう、伊藤若冲「乗興舟」も出てます!図録には佐藤康宏先生による伊藤若冲「乗興舟」論「黒い光の中、舟は二都の縁を巡る」が掲載されています。これは必読ですよ〜

第四部:江戸―新たな東都,現代へ

京都「洛中洛外図」のような作品は江戸には存在しません。どうしてでしょう?名所が多過ぎて屏風に収まりきらないから?それとも人々の風俗に興味関心が移ったから?

江戸時代となると時の権力者が都を鳥瞰するような作品ではなく、庶民が好きな名所を買い求めることが出来たのも大きな変化です。そう版画技術の発達による浮世絵の登場です。

歌川広重の「名所江戸百景」があれだけ人気を博したのも言わずもがなです。

庶民が好む題材、テーマが絵のモチーフとなります。そして京都と決定的に違うのは江戸という都が「水」と多く関わっている点にあります。

隅田川をはじめとする水都・江戸。鍬形澪悄東都繁盛図巻」では大きな川の手前に庶民の生き生きした姿を、橋を画面奥に渡って行くのは大名行列。「此岸と彼岸」が江戸ッ子が好んだ作品の中にはさり気なく盛り込まれています。そして水都と言えば、「南宋の都,杭州―憧憬の西湖」です。

4つの都がどのようにして描かれ受容されたのか、実に分かりやすく(時に可笑しく)構成された展覧会です。板倉聖哲先生が監修を務められていると知り首肯。日本で一番展覧会をご覧になっている研究者のひとりですからね。

どの作品とどの作品を、どのように展示したら、展覧会にひとつの太い線が通るのか良く心得ていらっしゃいます。展示の最後に山口晃さんの「東京圖 六本木昼図」、「東京圖 広尾−六本木図」を持って来られているのも素晴らしい!

ある一時期のものを描いたとしても、それが普遍性をもつようにするのが大事です。そしてその普遍性と云うのが、描かれた時点での現代性を表している事も大切なのです。そう云う絵になっているとよいのですが……」山口晃(展覧会カタログより)

「洛中洛外図屏風」に描かれた金雲と、山口晃さんが用いる金雲の違いが、同じ展示室で比べて観て初めて分かりました。様々なことが時空を超えて繋がる山口さんの作品のように、特別展「描かれた都−開封・杭州・京都・江戸」を観るのも一興かもしれません。

個人蔵の作品が多く、今回初めて展覧会デビューするものも。これだけの作品が「都」というテーマで、一堂に会する機会はこれが最初で最後でしょう。すぐにでも大倉集古館へ!

特別展「描かれた都−開封・杭州・京都・江戸」は12月15日までです。是非是非!こういう展覧会大好き!!


特別展「描かれた都−開封・杭州・京都・江戸」

会期:2013年10月5日(土)〜12月15日(日)
開館時間:10:00 〜 16:30(入館は16:00まで)
休館日:月曜日(休日は開館)
主催:大倉集古館
監修:板倉聖哲(東京大学東洋文化研究所教授)
後援:読売新聞社
協力:(株)ホテルオークラ東京、大成建設(株)、特種東海製紙(株)、(一財)東京大学出版会

展覧会へ行けない方も、東京大学出版会より本となって発売されています。(展覧会図録もこちらの本です)


描かれた都: 開封・杭州・京都・江戸
板倉 聖哲 (監修), 大倉集古館 (編集)

中世から近世における中・日の4つのメトロポリス,開封,杭州,京都,江戸.時代の中心をなす文化の発信地としての首都のイメージは,描かれることにより増幅され,再生産されていく.絵画が時空を超え,相互に影響しあって成立していく過程を体感する.カラー図版120頁.小論(伊原 弘,板倉聖哲,佐藤康宏)

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日本と中国の絵画において都市の景観や風俗などを画いた作品を中心に展観します。時代の中心をなす文化の発信地としての都市のイメージは、描かれることにより増幅され、地域や時間を超えて継承され、再生産されていきます。主に中世から近世の両国を代表するメトロポリスであり、画題としても好まれた4つの都、開封、杭州、そして京都、江戸をテーマとし、それぞれの都市とそこに生活する人々を画いた図が、互いに影響し合いながら時代を超えて成立していく様を見てゆきます。また、期間中に久隅守景筆「賀茂競馬・宇治茶摘図」(重要文化財)を修理後初公開いたします。
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 これは連休前の金曜日のこと。天気が良いので、大倉集古館まで足を延ばした。連休中は天気が悪く、ドラマチックな日本シリーズを見て過ごした。第一部 北宋の都、開封 〜水辺の都市の変容、蘇州へ ・《清明上河図》摸本: 北宋時代の張擇端筆の《清明上河図》北