弐代目・青い日記帳 

  
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山本勉先生講演会「運慶のまなざし−全作品47体と眼の表現」
『日本美術全集』刊行記念企画 第5弾 文化講演会「運慶のまなざし−全作品47体と眼の表現」に行って来ました。

講師を務められたのは『日本美術全集』「7巻 運慶・快慶と中世寺院」の責任編集者である山本勉先生(清泉女子大学教授)です。


http://www.shogakukan.co.jp/pr/nichibi/

90分の講演会でしたが、まさにあっと言う間に時間が過ぎてしまい、まだまだお話沢山お聞きしたい!と思わせる超充実した内容でした。

受付で配られた山本勉先生がお作りになられたレジメと自分の心細いメモで「運慶のまなざし−全作品47体と眼の表現」を振り返ってみたいと思います。

講演会のポイントは以下の3点。

1)運慶の生涯と運慶作品47体
2)あらたにくわえた運慶作品
3)運慶作品の眼の表現


この順番に沿って時に笑いを交えつつ、豊富なパワポ画像を駆使なされお話が進みました。以下その概略です。

1)運慶の生涯と運慶作品47体

・運慶の生涯
1150年頃 誕生
1173年(承安3) 長男・湛慶生まれる (20代?)
1176年(安元2) 円成寺大日如来像  (20代?)
1180年(治承4) (平家による南都焼き討ち)
1223年(貞応2) 12月11日 没する (70代?)

仏師系図
定朝→覚助→頼助→康助→康朝→
→成朝(この後、直系が途絶える)
→康慶→運慶→湛慶・康運・康弁・康勝・運賀・運助
   →定覚
   →快慶
   →定慶


頼助以降を「奈良仏師」(興福寺にかかわる造仏・修理を担当する仏師の系譜)と呼び、更に康慶以降を「慶派と呼んでいる。

・運慶作品には4段階の認定レベルがある。

A……作品自体に造像当初の銘記あるいは像内納入品があり、そこに運慶あるいは運慶工房の仏師の名が記されている作品。
B……同時代の確実な資料に運慶作品として記述されているものに明らかに該当する作品。
C……後世の資料に運慶の作であると記されていて作風もそれに矛盾しない作品。(伝運慶作)
D……作風・構造技法や伝来状況に関する現代の美術史研究により運慶作と考えられる作品(「運慶作」とは表記しない)

絵画と違い、彫刻では文献や資料等から厳格な違いを求める傾向が強いため、新たな発見があったりと常にホットな話題が運慶に関して出てくる。

こうした中、今回の『日本美術全集』で、新たに2件、16体の仏像を運慶作として取り上げている。これにより運慶の作品と考えられるものは14件、47体となった。(UNK47)



因みに、興福寺北円堂本尊、木造弥勒如来坐像の中には、厨子入弥勒菩薩立像が像内仏として収められている。現在では観ることができないが、過去に撮影された写真が残っている。

キリッとした眼差しのこの像内仏も運慶の手によるものと考えると合計48体となる。(「UNK48」の成立!?)

2)あらたにくわえた運慶作品

今回の『日本美術全集』に以前より運慶作ではないかと言われてきた2件、16体の仏像を議論はまだ続いているものの運慶作として加えた。

◎「興福寺 南円堂 四天王像」(4体)

興福寺内の四天王像は製作された時に納められていた場所(中金堂、東金堂、北円堂、南円堂etc…)と、現在の場所に相違がある。

今回新たに運慶作とした南円堂四天王像は、それが東金堂あるいは北円堂から移されたものとする仮説があり、議論の的になっている。


日本美術全集7 運慶・快慶と中世寺院より。

今回、現在南円堂にある四天王像は、かつて北円堂にあったものと考え、運慶仏とした。その根拠としてこれまで挙げられたものには以下の4点がある。

・用材がカツラである点。弥勒仏、無著・世親とも共通する。興福寺の杣(そま)にはカツラが多かったのだろう。

・「興福寺曼荼羅図」の北円堂四天王との類似。完全に一致はしないものの大方現在の南円堂の四天王像と一致する。

・四天王の身色と貞慶との関係。興福寺内の多聞密教系の採用は解脱房貞慶(鎌倉時代初期の僧、運慶と同期)が主導。貞慶は「興福寺僧綱等北円堂勧進状」の起草者。

・四天王台座の八角框と弥勒三尊台座八角框、北円堂の八角須弥壇との形の符号。四角の隅を切り落とした特徴的な「八角形」。

◎「浄瑠璃寺旧蔵十二神将立像」(12体)

明治時代まで京都・浄瑠璃寺にあった十二神将立像。現在は東京の静嘉堂文庫美術館に7体(子・丑・寅・卯・午・酉・亥)と東京国立博物館に5体(辰・巳・未・申・戌)が分蔵されている。


日本美術全集7 運慶・快慶と中世寺院より。

参考:
・静嘉堂文庫美術館の「木造十二神将立像 亥神
・東京国立博物館の「十二神将立像 戌神

これらの体内に運慶の銘文があったことが、明治35年の『横浜毎日新聞』の記事として残されている。“其腹内に「上坊別當執筆、大佛師運慶の銘さへあるとを發見したり”と記されている。

単に「大佛師運慶」だけでなく「上坊別當執筆」の文字が記されていたと報告する点が信憑性を高めている。

参考:運慶仏の可能性 浄瑠璃寺旧蔵、鎌倉時代の十二神将立像
http://mainichi.jp/feature/news/20130412ddn013040072000c.html

『浄瑠璃寺流記事』に1212年に薬師如来像に御帳を懸けたとする記事があり、この頃の製作と考えられる。

3)運慶作品の眼の表現

運慶が手掛けた仏像のうち、浄楽寺像以降の運慶作品における眼の表現技法の使い分けが従来注目されてきた。

運慶は初期の頃から玉眼技法を熟知し、効果的に用いていた。仏像のランクによって眼の表現技法を使い分けていたとする考え。

・「如来」、「菩薩」…彫眼(木に直接彫った眼)
・「明王」、「天」、「人」(肖像)…玉眼(水晶を用いた眼)

彫眼を使うことで、仏の持つ気高さを表現し、逆に人や天部には生々しさを表現するために玉眼を用いその違いを明確にした。これは他の仏師にはない運慶特有の配慮。

これは確かにあったと思うが、その原則にあてはまらないものも出てきた(たとえば興福寺北円堂[現南円堂]四天王像など)。

群像表現として仏像を作る場合は、その群像全体を見据え、その中の仏像たちの相互の関係を考慮し彫眼、玉眼を使い分けたと考えるべきではないか。

高野山の八大童子の玉眼を比べてみると…


玉眼を用い、一体一体に「眼の表情」を見事に与えることに成功している。

お堂では暗くてよく見えないが、興福寺の木造無著・世親立像(二体の名称には異説もある)にも玉眼が用いられている。群像の中で、この二体だけに玉眼を用いることで、この二体が弥勒のおわす兜率天に参じて弥勒の法を学んだ無著と、その法を伝えた人間たちであることを示している。



『日本美術全集』刊行記念企画 第5弾 文化講演会
タイトル:運慶のまなざし−全作品47体と眼の表現−
講師:山本 勉氏(清泉女子大学教授)
日時:2014年2月2日(日)13時30分開場、14時開演
開場:丸ビルホール(東京都千代田区)
主催:小学館・一ツ橋綜合財団


今回お話して下さったことをはじめ、運慶・快慶仏についての最も新しい論文を日本美術全集7 運慶・快慶と中世寺院で読むことが出来ます。

写真はもちろんのこと、テキストも充実しているのが『日本美術全集』の大きなウリのひとつです!その概要は『日本美術全集』公式サイトのこちらで読めます。

•はじめに 山本 勉(清泉女子大学教授)
•運慶と快慶 山本 勉(清泉女子大学教授)
•中世前期の仏師と仏像 山本 勉(清泉女子大学教授)
•生身信仰と鎌倉彫刻 奧 健夫(文化庁主任文化財調査官)
•中世仏堂の空間と様式―寺院建築の重層性 上野勝久(東京藝術大学大学院教授)
•コラム/仏像の耳と仏師―快慶・行快師弟がつくった耳 寺島典人(大津市歴史博物館学芸員)
•図解/仏像の姿とかたち



日本美術全集7 運慶・快慶と中世寺院

朝日カルチャーセンターでは山本勉先生の講座も開講されます。
運慶と快慶
小学館日本美術全集「運慶・快慶と中世寺院」出版記念



「運慶の単純化した抽象的造形はピカソの彫刻作品と通ずるものがある。」


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