青い日記帳 

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「星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」

世田谷文学館で開催中の
「星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」に行って来ました。


http://www.setabun.or.jp/

吉田浩美さんと吉田篤弘さんによるクラフト・エヴィング商會(craft ebbing & co.)。お二人は「クラフト・エヴィング商會ってなんですか?」と聞かれると、「屋号です。」と答えるようにしているそうです。

そう確かにユニット名というよりも屋号という響きがしっくりきます。

では、「クラフト・エヴィング商會」という屋号を掲げ、実際にお二人はどんな仕事をされているのでしょう。それこそ答えに窮する質問です。

この展覧会入口に(ほとんど夫婦漫才のように)いつも二兎を追っています。つまり答えは二つあると記されていました。その二兎とは…

・小説を書きながらデザインの仕事をしています。
・デザイナーではあるけれど、アート作品も作っています。
・架空の品物を取り扱いつつ、町の書店に並ぶ本のデザインもしています。


誰しもが一度は憧れるような職業を複数掛け持ちしています。そう、そんな何とも羨ましい仕事をしているのが「クラフト・エヴィング商會」なのです。まさに羨望の的です。

言い換えるなら、夢を売っている仕事なのかもしれません。そう考えると「星を賣る店」という展覧会タイトルは実に端的で見事なものと言えます。



実際に「星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」は夢で満ち溢れています!例えばチケット(正方形のユニークな形をしています)の中心は星形に型抜かれています。

これだけでしたら、ちょっとお洒落だな〜程度で感動して終りなのですが、そこから一歩先に踏み込んじゃうのが、クラフト・エヴィング商會の流儀。

商品番号 6265番「星」として「店先」に型抜かれた数多の星たちが並んでいるのです!


今回の展覧会の入場券から打ち抜かれた星です。すべてここにあります。いま貴方が手にしているチケットがこれらの星を作りました。貴方の星がこの中にあります!

前述した「二兎を追う」ことがチケットと展示作品という形でも示されているのです。この展覧会ほどチケットを大事に持ち帰ったことはありません!

ポスター、チラシをよく見ると、やはり中心の星だけ違っているのに気が付きますよね。小さくその中心の星には「Arrow Through Me」と書かれています。吉田さんのお好きなポール・マッカートニーの曲名から取ったものでしょうか。

そうそう、会場にはビートルズの「ホワイト・アルバム」(商品番号 2562番)も展示されています。


黒猫Thinkの冒険の記録」(商品番号|1055番)
ホワイト・アルバム」(商品番号|2562番)

さて、今回の展覧会ですが、通常の展覧会にありがちな入口付近に主催者の「口上」=ご挨拶が記されたパネルが見当たりません。これは展覧会にすっと入って行ける為に敢えて設置しなかったそうです。

また展示作品には文学館によるキャプション(説明書き)も一切付けられていません。確かに、クラフト・エヴィング商會の世界観に没入するのに言葉や説明は不要です。

解説を加えないとは、学芸員さん思いきったことしたな〜と感じるかもしれませんが、ご覧になってみると饒舌な解説がない分だけ鑑賞者の想像力が働き、展覧会を愉しむこと、クラフト・エヴィング商會の魅力に迫ることが出来ます。


古書「一角獣」

展覧会は大きく3つのゾーンに分かれています。それぞれメリハリの利いた展示空間に「商品」が時に、たな卸し風に、古書店風に、はたまた作業室風にと趣向を凝らした見せ方をしています。

古書「一角獣」のショーケースに並べられた本たちは吉田さんが実際にお持ちのもの古本たち。

30冊近い数のカフカの『変身』(文庫本)が重ね置きされていたり(出版年代により装丁や値段、ISBNコードの有無など同じ『変身』でも少しずつ変身して行っている様子が一目瞭然に!)小村雪岱の画集があったりと実にバラエティーに富んでいます。

また実際には存在しない本も混じっています。例えば、村上春樹『風の歌を聴け』の中に登場する架空の小説家デレク・ハートフィールドが書いた『夢はいつだってここにある』等々。


「星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」展示風景

東宝の映画セットを作っている会社にお願いして制作してもらった展示ゾーン。実際にどこにも存在しない夜の街角をゼロから創り出すのはさぞかし大変だったことでしょう。

でも、それってクラフト・エヴィング商會にとってはお得意のものですよね。

こうした展示空間があることで、まるで映画や演劇を観ているような気にもなります。先ほど、この展覧会にはキャプションが無いと書きましたが、ここでもそれが実に奏功しています。


商品番号|0021番「ムーン・シャイナー

『クラウド・コレクター』(1998年 筑摩書房)に登場する密造酒たちです。勿論これらすべて架空の品。どこにも販売されていません。それにも関わらずどうです、この存在感たるや!

「密造酒なので見つからないように小瓶に入れられている」なんて物語付き。無いものが在るということは…そうです、これら全てラベルから何から創り出したものなのです。

展示ケースが曇っているのは、東宝の映画セット制作者がわざと手を加えたもの。拘ってますよね〜〜それにしても、仕事熱心な掃除係りの方が間違えて拭き取ったりしないか心配です。


クラフト・エヴィング商會 工作室

今回の展覧会では作品だけでなく、クラフト・エヴィング商會の創作の裏側も見ることが出来ちゃいます。例えばこの工作室に置かれた椅子とテーブルは実際にお二人が作業をなさっているものをご自宅から持って来てしまったそうです。

なので、時折、吉田さんが展覧会会場を訪れこの工作室で仕事をなさるとか。今回はいらっしゃってませんでしたが、ラッキーならご本人に会える大チャンスですよね!

壁にはびっしり吉田さんが実際に書いたアイディア・メモが、びっしりと貼り付けられています。これから更に増えて行くでしょうね。

↓(クリックで拡大します)


ちょっと書きだしただけでもどれも「何か」を予感させるものばかりです。

・小さな考えの冒険
・本当にそうか?
・イイモノ探知機
・言いたいことはいつも2つある。
・万物、皆、笑う
・人はどれだけ多重的に生きられるか。
・ある意味→という言葉の多用。
・つまらないことのおもしろさ。


「物語の扉を作る。」ことに驚くほど長けていらっしゃいます。それは単なる「アイディア・マン」とはどこか質が違います。だからこそ多くの方が「クラフト・エヴィング商會」に惹かれるのでしょう。

そういえば、壁新聞も貼ってありました。吉田さんは子供の頃、誰に頼まれもしないで壁新聞を作り学校で披露していたそうです。

展覧会の入口ではその壁新聞を配布しています。そしてこれにもこだわりがあり、何と朝日新聞を印刷しているのと同じ輪転機で刷ったそうです。(新聞少年の夢叶えたり!)


商品番号|6263番『天国の探偵

虚構と現実をアートとデザインに置き換えつつ、物語を編んでいるクラフト・エヴィング商會。そんな二人のテキスト化されていないここの会場でしか聞けない書き下ろしの「物語」も用意されています。

会場限定です!ファン必聴ですね!これは。

展覧会終盤には、これまで現実の世界へ送り出してきた1000冊以上にものぼるブックデザインの中から可能な限りの本が、どーーんと展示されています。

デザインもアートもこなすお二人ですが、敢えて言うなら文学者でると強く感じました。だからこそ世田谷文学館で開催する意義があるのだと。

ジョゼフ・コーネルや瀧口修造をふと感じる一面も持ち合わせています。クラフト・エヴィング商會を知らずとも十分に楽しめる展覧会です。(逆に知らない方が観たらそれはそれで新鮮かも)

「星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」は3月30日までです。是非是非!!会場には「ないもの、あります」きっと。


星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会

会期:2014年1月25日(土)〜3月30日(日)
会場:世田谷文学館 2階展示室
http://www.setabun.or.jp/

休館日:月曜日
開館時間:午前10時〜午後6時
(入館は午後5時30分まで)
主催:公益財団法人せたがや文化財団 世田谷文学館
協力:平凡社
後援:世田谷区、世田谷区教育委員会
助成:公益財団法人花王芸術・科学財団、芸術文化振興基金

注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。


クラフト・エヴィング商會+A.K Labo「昼と夜のライス・チョコ」
一日30個の限定販売!!今回の展覧会に合わせて作られたオリジナルチョコです。

展覧会図録は一般書籍としても販売されています。


星を賣る店』(平凡社)
(著)クラフト・エヴィング商會

【世田谷文学館展覧会スケジュール】
「茨木のり子展」
「日本SF展」(仮称)
「水上勉展」(仮称)
「岡崎京子展」(仮称)
注目の「岡崎京子展」は2015年1月24日〜3月31日開催予定!


コレクション展
旅についての断章
Fragments of Journeys: Selections from the Permanent Collection

会期:2013年10月5日(土)〜2014年4月6日(日)

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@taktwi

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クラフト・エヴィング商會
朝日新聞出版

クラフト・エヴィング商會(craft ebbing & co.)は吉田浩美と吉田篤弘によるユニット名。著作の執筆と、装幀を中心としたデザイン・ワークを主として活動している。これまでに発表された著作は以下のとおり。

どこかにいってしまったものたち(1997 年 筑摩書房)
クラウド・コレクター / 雲をつかむような話(1998 年 筑摩書房)
すぐそこの遠い場所(1998 年 晶文社)
らくだこぶ書房21世紀古書目録(2000 年 筑摩書房)
ないもの、あります( 2001年 筑摩書房)
じつは、わたくしこういうものです(2002 年 平凡社)
テーブルの上のファーブル(2004 年 筑摩書房)
アナ・トレントの鞄(2005 年 新潮社)
おかしな本棚(2011 年 朝日新聞出版)
注文の多い注文書(2014 年 筑摩書房)*小川洋子との共著

これらの著作のほとんどに、「クラフト・エヴィング商會」は物語の中の二次元的存在として登場するため、ユニット自体が架空の存在と思われがちだが、実際に存在し、これまでにおよそ1000 点を超える書籍・雑誌等の装幀デザインを担当し、2001 年講談社出版文化賞ブックデザイン賞を受賞した。
同時に、自著に登場する架空の品々を「ないもの、あります」の謳い文句のもと、さまざまな手法によって具現化し、自著と展覧会を通して数多く発表している。それらは「作品」ではなく、あくまで「クラフト・エヴィング商會」というセレクト・ショップが仕入れた「商品」として取り扱っている。
また、吉田篤弘は並行して小説家として活動し、以下の作品を発表してきた。

フィンガーボウルの話のつづき(2001 年 新潮社)
つむじ風食堂の夜(2002 年 筑摩書房)
針がとぶ Goodbye Porkpie Hat(2003 年 新潮社)
百鼠(2005 年 筑摩書房)
78 ナナハチ(2005 年 小学館)
十字路のあるところ(2005 年 朝日新聞社)*坂本真典との共著
空ばかり見ていた(2006 年 文藝春秋)
という、はなし(2006 年 筑摩書房)*フジモトマサルとの共著
それからはスープのことばかり考えて暮らした(2006 年 暮しの手帖社)
小さな男*静かな声(2008 年 マガジンハウス)
圏外へ(2009 年 小学館)
パロール・ジュレと紙屑の都(2010 年 角川書店)
モナ・リザの背中(2011 年 中央公論新社)
木挽町月光夜咄(2011 年 筑摩書房)
なにごともなく、晴天。(2013 年 毎日新聞社)
イッタイゼンタイ(2013 年 徳間書店)
つむじ風食堂と僕(2013 年 筑摩書房)
ガリヴァーの帽子(2013 年 文藝春秋)
うかんむりのこども(2013 年 新潮社)
また、吉田浩美の著作に、
a piece of cake(2002 年 筑摩書房)
吉田音名義による著作に、
Think 夜に猫が身をひそめるところ(1999 年 筑摩書房)
Bolero 世界でいちばん幸せな屋上(2000 年 筑摩書房)
がある。
本展はこれまでの活動を総括した商會初の棚卸し的展覧会である。
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「星を賣る店 クラフト・エヴィング商會のおかしな展覧会」を観に世田谷文学館まで。 最終日前の土曜日に行ったせいか、予想以上に混んでいました。 一つ一つもっとゆっくり観たかったなぁという思いはあるものの、ワクワク、興奮する展示でした。 展示されている作品