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「バルテュス展」前代未聞のアートディレクション!

東京都美術館でいよいよ2014年4月19日(土)から始まる「バルテュス展 Balthus: A Retrospective」。

ピカソをして「20世紀最後の巨匠」と言わしめた画家バルテュス(本名バルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ、1908-2001)の待望の回顧展です。


バルテュス展特設サイト:http://balthus2014.jp/

この「バルテュス展」のアートワーク(図録、チラシ、ポスター等々)をひとつの会社が全て一手に引き受けいると知って、これはえらいこっちゃと思い(そんなこと基本的にあり得ませんからね)早速お話を伺いに行って来ました。

会社の名前は「ADARTS(アドアーツ)」http://www.adarts.jp/

美術館のグッズ・図録、食品や化粧品、ゲームなどのエンターテインメント系まで幅広いジャンルのポスター・カタログなどのグラフィックやパッケージ、書籍・雑誌のエディトリアルを手がけているデザインプロダクションです。


さくらの名所 千鳥ヶ淵公園からすぐそばにある何とも羨ましいロケーションにアドアーツさんはあります。
http://www.adarts.jp/

しかし、そもそもどこの会社がチラシや図録を作ると決めるのか分かりませんよね。まずはその辺のお話から伺ってみました。

「バルテュス展」のプレチラシのデザインコンペが昨年(2013年)の夏頃行われたそうです。使える画像数点のうちから一点を選び様々なデザインパターンを考え出し、コンペに臨んだところ、見事勝ち取ってしまったそうです。

そしてみなさんの中にもお持ちの方も多いと思いますが、昨年10月頃(「バルテュス展」オープン半年前)にこのプレチラシが完成し美術館等に置かれたそうです。


「バルテュス展」プレチラシ

プレチラシが配布されると、色んな意見が主催者さんにあがってくるそうです。その中には当然「反省点」も含まれます。

そうした意見を生かして、本チラシやポスターの制作にあたっていくのだそうです。ここでは自分たちが良しと思っていたことも、変更を余儀なくされることも勿論あるはずです。

因みに現在、配布されている本チラシはこちら。



大きく変わりましたね。まず何と言ってもメインビジュアル(作品)が変更になっています。それに伴い横判から縦判に。

展覧会タイトル表記も「バルテュス展」から「Balthus」となり、コピーもありがちな「20世紀最後の巨匠、待望の大回顧展」から、「称賛と誤解だらけの、20世紀最後の巨匠。」となりました。この本チラシ(第二弾チラシ)が完成したのが昨年末だそうです。

同じ展覧会のたった一枚のチラシでもこれだけの変更点があるとは驚きです。中々比べてみることありませんからね。しかし陰では展覧会を如何に知ってもらうか、興味を持ってもらうかに心血注いでいることがよく分かります。

この他にも大事なものとして「交通広告」があります。駅構内に展開されるポスターなどです。こちらも本チラシと並行してデザインを行ったそうです。


「バルテュス展」交通広告

あれ?こちらは英表記でなく「バルテュス」のままです。これは一体どういうことなのでしょう??

チラシなどの手にとってじっくり読むタイプのもの(本チラシとなると他の画像や講演会情報などテキストデータも多く掲載されています)と、駅のホームで通勤・通学の途中にチラッと目にする交通広告とでは、自ずとその性質も変えざるを得なくなるそうです。

つまり、ぱっと見て一瞬で「バルテュス展」と分かってもらうためにはカタカナ表記のままが良いのです。こうしたこちが分かると明日から駅で見かける展覧会ポスターも違った見方が出来ますね。

チラシとの違いは文字だけではありません。コピーも新たに加わっています。「その核心には、観た者しか迫れない。」またあらためて画像を見るとかなり余白があることが分かります。

本来ならもっといつから始まるとか、どこの美術館で開催するとか大きく書き表すところですが、今回は出来るだけそれを最小限に抑え、とにかく「バルテュス」の名前を目立たせる努力をした結果こうなったそうです。


「バルテュス展」アートワークを手掛けたアドアーツの仲快晴さんと小林歩さん

子供の頃から東洋に憧れを抱き、若干11歳で『MITSOU』という最初の小さな本を出したバルテュス。MITSOUとは飼い猫「ミツ」のことで、「光(みつ)」から付けた名前だそうです。因みに今回の展覧会ではこの「ミツ」の絵も展示されます!

余白の美を生かしたポスターをもしバルテュス本人が目にしたら、ざぞかし喜んだことでしょうね。こうしたバルテュスの思いを出来るだけポスターや交通広告で表したかっとアドアーツの仲快晴さんや小林歩さんは語っていました。

そして極力、展覧会ポスターにありがちな「没後○○年」とか「世紀の大回顧展」等といったキャッチコピーは使わず、「何これ?」とちょっとバルテュスについて考え、感じてもらえるようなものを目指したそうです。

お話を伺っていると、デザイナーとして一本太い筋が通っている感じを強く受けました。語り口は穏やかですが、言葉のひとつひとつに説得力がありました。

さて、ポスター作りは年末から年始にかけて行われたそうです。路線や駅によって様々なリクエスト(もしくはダメだし)があるので数種類のものを作らなければならないのでチラシよりも大変かもしれません。サイズも色々ありますからね。

これらのポスターは4月1日から都内の駅でお目見えするそうです。見かけたら写真に撮ってツイートでもして下さい!@taktwi 宛てに!!


「バルテュス展」プレス向け資料

また、これらと並行して「プレス資料」の制作もしたそうです。一般の方には目にしないものですが、展覧会の魅力をプレスの方々に伝える大事な資料です。封筒の「赤」(ボルドー)はバルテュスから最初に湧き起ってきたイメージカラーだそうです。

表に出ないものですので、ある意味で手を抜こうとすれば幾らでもできそうなものですが、アド・アーツさんは資料を綴じるホチキスの針の色にまでこだわり、封筒と同じく「赤」(ボルドー)を使っているのです。これに気が付いたプレスの方ってどれくらいいるのでしょうね。

また封筒の銀文字の部分はインクではなく、玩具等に使用する塗料を敢えて使い銀色のキラキラ感を出しています。

デザインは勿論のこと、こうした細部へのこだわりが評判となり、これから後のデザインフォーマットとなっていったそうです。とにかくバルテュスの格好良さを理解してもらいたくて無理をしたそうです。(映画のパンフレットでもこんな手の込んだことしていませんよね中々。)


「バルテュス展」図録トビラ(最初のページ)

そして、最難関ともいうべき図録は年明けから一気に仕上げたそうです。これまた今までにないものとなっています。

当初は表紙を赤一色で「Balthus」とする案もあったそうですが、あまりに斬新なためそれは取り下げたそうです。それでも核心的な図録となっていることは間違いありません。

資料的な価値もとても高いものとなっています。バルテュスが元とした古典絵画の図版や自身の同じような作品図版も多数掲載されています。

また、図録の他に一般書籍として『ド・ローラ節子が語る バルテュス 猫とアトリエ』夏目典子(著)NHK出版 が4月18日に刊行されます。


ド・ローラ節子が語る バルテュス 猫とアトリエ
ド・ローラ節子/〔著〕 夏目典子/編 NHK出版/編

節子夫人が語る、バルテュス芸術の原点。ピカソに「20世紀最後の巨匠」と称されたバルテュス。作品の産屋となったアトリエと、画家の化身である「猫」が描かれた作品を手がかりに、その創作の源を探る

図録とは対照的に可愛らしい内容の一冊となっています。こちらも全てアドアーツさんがデザインを手掛けたそうです。

これまでにはなかったチラシからポスター、図録そして関連書籍のトータルデザイン。ひとつのチームでこれら全てのアートワークを手掛けることはまさに前代未聞のこと。「バルテュス展」にかける強く太い思いが全面に出ています。

今後も新聞広告など、展覧会が始まってからもまだデザインの仕事は続くそうです。そうだ!チケットデザインもアド・アーツさんの仕事です。手元に前売り券お持ちの方いらしたらあと約20日の間、それを見ながら「バルテュス展」に想いを募らせて下さい!


「バルテュス展」
Balthus: A Retrospective


会期:2014年4月19日(土) 〜 6月22日(日)
会場:東京都美術館
休館日:月曜日、5月7日(水) 
※ただし4月28日(月)、5月5日(月・祝)は開室
開室時間:9:30〜17:30 (入室は閉室の30分前まで)
夜間開室:毎週金曜日は9:30〜20:00 (入室は閉室の30分前まで)
主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
後援:スイス大使館、フランス大使館 / アンスティチュ・フランセ日本
協賛:凸版印刷、三井住友海上
協力:エールフランス航空、スイスインターナショナルエアラインズ、全日本空輸、日本貨物航空

公式サイト:http://balthus2014.jp/

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ピカソをして「20世紀最後の巨匠」と言わしめた画家バルテュス(本名バルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ、1908-2001)。 時が止まったように静謐な風景画や、バルテュス曰く「この上なく完璧な美の象徴」である少女のいる室内画など、どこか神秘的で緊張感に満ちたバルテュスの絵画は、多くの人々に愛され続けています。

本展は、バルテュスの初期から晩年までの作品を通して、画家の創造の軌跡をたどる大回顧展です。 ポンピドゥー・センターやメトロポリタン美術館のコレクション、また個人蔵の作品など、世界各国から集めた40点以上の油彩画に加えて、素描や愛用品など、あわせて約100点を紹介するとともに、晩年を過ごしたスイスの「グラン・シャレ」と呼ばれる住居に残るアトリエを初めて展覧会場で再現し、孤高の画家バルテュスの芸術が生み出された背景を探ります。
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この記事に対するコメント

コメント失礼いたします。

アートワーク(図録、チラシ、ポスター等々)そしてグッズも、ひとつの会社で引き受けること、ありますよ。
私は同業者なのですが、確かによくあることでは無いにしても、いままでに何度かあります。
とはいえ、アドアーツさんのこだわり(特にインクなど)のお話は非常に興味深く拝見しました。

これからもブログ楽しませていただきます。
いっち | 2014/04/01 12:16 AM
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