青い日記帳 

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ミュージアムグッズ初の3Dプリンターで制作したバルテュス・フィギュア

「バルテュス展」特設ミュージアムショップに、バルテュス若き日の自画像でもある「猫たちの王」1935年 のフィギュアが販売され注目を集めています。

「バルテュス展」展覧会公式サイト:http://balthus2014.jp/


バルテュス《猫たちの王》1935年 
油彩、カンヴァス 78x49.5cm
バルテュス財団 (ヴヴェ、イエニッシュ美術館寄託) © Fondation Balthus, dépôt Musée Jenisch Vevey

ミュージアムグッズ業界初の3Dプリンターを使って作られたフィギュアであることが、その一番の要因です。しかし何事でも初めてとなると色々と苦労もあったはず。

完成に至るまでの苦労話しや、実際の工程などを制作・販売を担っている(株)East代表の開さんにお話を伺ってきました。

http://east-inc.co.jp/

聞いてびっくり!我々が想像もしていなかった苦労がそこにはありました。3Dバルテュス・フィギュアは、まさに苦難の道を経てやっと(ある意味奇跡的に)ショップに並んでいるのです。どうぞじっくりと読んで下さい。


「バルテュス展」特設ショップ

Tak「そもそも、3Dプリンターでバルテュス・フィギュアを作ろうという計画はいつごろ思いついたことなのでしょう?」

(株)East代表・開さん(以下、開さん)「当社、初の3Dプリンターグッズであるこのプロジェクトのきっかけは、昨年11月に、スイス ロシニエールに節子夫人を訪ねた際、バルテュス作品の特徴のひとつは、デフォルメされた人物のバランスの妙である事が話題になった事でした。日本にはソフトビニール製の人形や、樹脂製の食玩など、世界を先行するフィギュア製作文化があるから、展示作品のひとつを立体化して、そのフォルムの面白さを紹介出来たら!と、盛り上がったのです。」

Tak「節子夫人とお話ししていながら、自然な流れで出てきた話しなのですね。」

開さん「はい。それを受け帰国後、様々な方法で作品の3D化を検討しました。」

Tak「実際に作るとなると試行錯誤も色々とあったと思いますが、幾つか教えて下さい。」

開さん「最も精密にフィギュアを作るのならば、これ迄の実績と歴史、その製作サイドの人材の充実度から、樹脂を型に流し入れてパーツを作り、それを組み合わせていく、いわゆるアキバ系のフィギュア製作方法が適しています。」

Tak「アキバ系フィギュアでバルテュスww」



開さん「そうなると製造、彩色は主に中国の工場で最終仕上げが行われます。その再現力は今や完成の極みまで来ていると言っても過言ではありません。ただ、それではバルテュス作品が、アニメの主人公と同じような扱いになってしまいます。」

Tak「節子夫人にはOKもらねいないでしょうが、それもすっごく見たいですね(笑)でも、通常の制作方法以外の道を探らないといけないことに自然となりましたね。」

開さん「簡略化され過ぎてもダメ、完成度が高過ぎてもダメ、3D化は出来たらシャレの効いた、軽やかさを残したものにしたいと考えていました。」

Tak「そこで白羽の矢が立ったのが!」

開さん「そう!3Dプリンターの登場です。」


今回実際に使用した3Dプリンター

Tak「来ましたね〜いよいよ本題が。」

開さん「3Dプリンターの一番の魅力は、型を作らず、いきなり立体を生み出す事が出来る事です。それは、極端な話、一体からでも作る事ができます。でも、それをビジネスにする為には高さ20センチ程のフィギュアを受注製作して、一体、約一万円〜二万円での販売という方法が主流です。それではシャレで買えません。そこで、もうひとつの3Dプリンター作品の魅力「適度なユルさ」を活かしたものを、数百単位で製作し、3000円前後で販売するという目標に向かって試作を重ねる事となりました。」

Tak「やっとミュージアムショップにも3Dプリンターで作られたグッズが登場する日が来ましたね。もう少し早く出てくるかな〜とも思っていたのですが。」

開さん「3Dプリンターが身近になったと言われ始めて数年になりますが、私達が考える、ミュージアムショップ クォリティのモノを適正価格で世に出すというチャンスが本当に近づいたのは、まだまだ最近の事です。」

Tak「なるほど〜 因みにこれは日本で作れるものなのですか」

開さん「はい。まずは、叩き台となる試作第一号を作り、そこから着地点を探るという作業です。3D化には、文化堂印刷の児玉さんと、デザイナーの穂谷野さんに、協力していただきました。この二人の粘り強さと、職人魂がなければ今回の成功はあり得ませんでした。」


写真は記念すべき一号サンプル。まだ、台座も無く自立しない。再現性は少ないが、3Dプリンター独特の味わいがあり、最後までこのユルさを残す事に苦心した。

Tak「結構この時点でもよく出来ているように素人目には見えますが…」

開さん「それがここからが大変だったのです。何故なら、この試作一号から、現在、販売されている認可ヴァージョンになるまで、繰り返し、繰り返しサンプル提出が必要となったからです。」

Tak「具体的には?」

開さん「絵画作品の3D化は、見えない部分は職人が想像してデータ化する必要があります。そのレベルで、出来上がりは大きく違って来ます。出力は機械になっても、結局はまだヒトの手作業が重要な部分を多く占めているわけです。」

Tak「確かに、立体物を3Dプリンターで作るのと、二次元の絵画を立体化するのでは同じようでまるで違いますね。」

開さん「今回、特に難しい事になったのは、選んだ作品がバルテュスの自画像でもあった事でした。」

Tak「自画像であることがネックに?」

開さん「私達にとっては、平面の絵を立体化したこのフィギュアは、著作権者の節子さん、ハルミさん(お嬢さん)にとっては、ご主人であり、お父様でもあるわけです。絵には無い横顔も、後ろ姿も、記憶の中のバルテュスさんと比較されます。これには正直参りました。」


篠山紀信さんが撮影した生前のバルテュスの写真も特別公開されています。

Tak「いくら3Dプリンターでリアルに作ったとしても大切な愛すべき“バルテュス”と少しでもイメージが違いがあってはお二人、首肯しかねますよね。」

開さん「ここでOKが出なければ、もう、開幕には間に合わない、そう思いながら何度目かスイスに送ったサンプルに対し、ハルミさんから届いたメールには、『この件は諦めて欲しい』と書かれていました。」

Tak「ここまでの努力が…」

開さん「デスクの上には、何種類もバルテュス人形が積み上がっていました。でも、お蔵入り…諦めるしかないと思うと残念でなりませんでした。」

Tak「多くの方が関わっていらっしゃいましたからね。」

開さん「仕方なく、児玉さん、穂谷野さんにも伝えました。『とても残念だけど、今回は出せないかもしれない…』でも、もう一度だけ作ってみよう!諦めの悪い私達は開幕時の直談判のラストチャンスに賭ける事にしたのです。それは節子さんからのメールに少しだけチャンスを残して下さっているニュアンスがあったからです。」

Tak「そこにはなんと書かれていたのですか?!」


会場内に再現されたバルテュスのアトリエに立つ節子夫人

開さん「『バルテウスの顔独特の額の傾斜,鼻の線、口元など資料をもとにご研究なさる必要が有ると思います。』です。」

Tak「こ・れ・は!ですね。粘ってみるものです。何事も。」

開さん「このヒントを元に、改良を加えた“最後の最終サンプル”を美術館のショップの裏に隠して、節子さん、ハルミさんに直接お見せするチャンスを待ちました。」

Tak「それは、大きな賭けですよね。ダメ元の段階は過ぎているわけで、まさに『泣きの一回』!」

開さん「既に諦めて欲しいと正式に言われているモノです。しつこくすれば、とても気分を害されるかもしれません。一日目は結局お見せする勇気は出ませんでした。二日目、もう今日お見せ出来なければお蔵入り確定…そんな中、開会式も済み、招待客でいつになく賑わうショップに節子さん、ハルミさん達がご家族で立寄って下さいました。ショップは大盛況で、その事をとても喜んでくださっています。その時、当社の田島が、今しかない!と隠してあったサンプルを手に、ハルミさんに話しかけました。(ハルミさんとは英語でのやり取りです。)「しつこくてごめんなさい、、、」ハルミさんが少し呆れたようなオドロキの表情の後、サンプルを見てくださり、「良くなったわね、製作していいわよ。」という内容の短い言葉で製作サイドの労をねぎらって下さったのです。いつもお美しいのですが、ことさらに美しく優しい笑顔で!」

Tak「映画化できそうな話じゃないですか!誰かに本にしてもらいましょうよ、こんなブログに載せないで(笑)もったいないですよ。」

開さん「思い出すと、今でも泣けちゃいます(T_T)」

Tak「業界初の3Dプリンターで作ったグッズのお話を聞きに来て、業界一素敵なお話を聞け、自分としてもとてもラッキーでした。」

開さん「こういう仕事で、著作権者が画家のご家族である事は、そう、ある事ではありません。だからこそ、今回のバルテュス展のショップは特別なモノにしようと思っていました。 節子さんに、ハルミさんに、そして、もしも叶うならバルテュス氏に少しでも喜んでもらいたい、そんな思いを込めてつくりました。」

Tak「まだまだ幾らでもグッズ制作にまつわるお話し聞けそうですが、ひとまず今回はこの辺で終わりにしたいと思います。最後にひと言お願いします。」

開さん「会期も終盤にさしかかってきましたが(東京展は6月22日まで。その後、京都市美術館へ巡回)、連日大盛況です。多くの来場者の方達がショップに立ち寄る事も愉しんで下さっています。企画展のショップ、美術館のショップを手がける中でこういう出会いがある事は何よりの幸せです。中でも3Dバルテュスは、そのショップの中でも特に印象に残るモノになりそうです。主催者さんを含め、ご協力、応援下さった皆さんに心から感謝します。」


「バルテュス展」展覧会公式サイト:http://balthus2014.jp/

展覧会開幕前日にOKが出た3Dバルテュスフィギュア。それから大急ぎで(丁寧に)ひとつひとつ制作し、何とかGWには間に合ったそうです。

これから「バルテュス展」観に行かれる方、要チェックです!そしてこんな制作秘話があったらしいわよ〜とお友達に教えてあげて下さい。


デザイナー穂谷野さんに説明してもらった
<3Dバルテュスができるまで>


1:原画を参考に3Dソフトで人物らしい奥行きをモデリング。


実際にバルテュスと同じポーズをとった、成人男性の3Dスキャンデータを参考にしつつ、絵の中のバルテュスに似せて肉付けしていきます。ここで色も決定します。

2:3Dデータが出来たら、早速プリントします。 原理は 家庭用インクジェットプリンタとほとんど同じ。


3D石膏プリンターの場合、0.25mm刻みに石膏の粉が敷かれ、 そこにバルテュスを輪切りにした断面図を印刷していきます。

接着剤入りのインクが塗布されることで石膏が固まり、 断面図が少しずつ積層されていくことで立体となるのです。


プリント直後、石膏の粉に埋もれているバルテュスを取り出し、エアブラシなどで余分な粉を丁寧に落としていきます。

3:仕上げに強度を高める ボンドを塗って完成です!



「バルテュス展」特設ショップで皆さまをお待ちしてます!



東京都美術館での「バルテュス展」はいよいよ6月22日までとなりました。まだご覧になられていない方、これ見逃すと泣きますよ〜

我々の思考の中に、いつの間にやらこびりついてしまた、近代的な倫理観や価値観をいとも容易く取り払ってくれるのがバルテュス作品。実に不思議な魅力をはらんだ画家です。

個人的に一押しの作品は「空中ごまで遊ぶ少女」1930年 一時間でも二時間でもこの絵の前でなら立っていられます。大好き!

「バルテュス展」レビュー


「バルテュス展」
Balthus: A Retrospective


会期:2014年4月19日(土) 〜 6月22日(日)
会場:東京都美術館
休館日:月曜日、5月7日(水) 
開室時間:9:30〜17:30 (入室は閉室の30分前まで)
夜間開室:毎週金曜日は9:30〜20:00 (入室は閉室の30分前まで)
主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
後援:スイス大使館、フランス大使館 / アンスティチュ・フランセ日本
協賛:凸版印刷、三井住友海上
協力:エールフランス航空、スイスインターナショナルエアラインズ、全日本空輸、日本貨物航空

巡回:京都市美術館 2014年7月5日(土)〜9月7日(日)

公式サイト:http://balthus2014.jp/

注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影されたものです。


『ド・ローラ節子が語る バルテュス 猫とアトリエ』
夏目典子 (編集), NHK出版 (編集)

節子夫人が語る、
バルテュス芸術の原点

一見スキャンダラスな、しかし静謐で緊張感に満ちた絵画を残したバルテュス。ピカソは彼を「20世紀最後の巨匠」と称している。作品の産屋となったアトリエと、画家の化身である「猫」が描かれた作品を手がかりに、その創作の源を探る。2014年4月開催の大回顧展『バルテュス展』を深く楽しめる一冊。猫の油彩18点をはじめ、作品を多数収載。
没後初の大回顧展『バルテュス展』で、バルテュスのアトリエを初めて再現。そこに出展されるバルテュスの美学を伝える画材や愛用品を、節子夫人の語りとともに本書で紹介。

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@taktwi

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この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=3627

JUGEMテーマ:アート・デザイン


ピカソをして「20世紀最後の巨匠」と言わしめた画家バルテュス(本名バルタザール・クロソフスキー・ド・ローラ、1908-2001)。 時が止まったように静謐な風景画や、バルテュス曰く「この上なく完璧な美の象徴」である少女のいる室内画など、どこか神秘的で緊張感に満ちたバルテュスの絵画は、多くの人々に愛され続けています。

本展は、バルテュスの初期から晩年までの作品を通して、画家の創造の軌跡をたどる大回顧展です。 ポンピドゥー・センターやメトロポリタン美術館のコレクション、また個人蔵の作品など、世界各国から集めた40点以上の油彩画に加えて、素描や愛用品など、あわせて約100点を紹介するとともに、晩年を過ごしたスイスの「グラン・シャレ」と呼ばれる住居に残るアトリエを初めて展覧会場で再現し、孤高の画家バルテュスの芸術が生み出された背景を探ります。
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