弐代目・青い日記帳 

  
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「名画を切り、名器を継ぐ」
根津美術館で開催中の
新創開館5周年記念特別展「名画を切り、名器を継ぐ 美術にみる愛蔵のかたち」に行って来ました。


http://www.nezu-muse.or.jp/

名品、名作と讃えられるものを、自分でも所有したいと思う気持ちは今も昔も変わりありません。

現在なら精巧な複製画や美麗な印刷物がその欲求を少なからず満たすことが出来ますが、昔はそうはいきません。それが戦国時代となると一つのコレクションが権力の象徴にまでなりました。

所望していた物を手に入れた時の喜びは、現在の我々の想像をはるかに超えたものだったに違いありません。


牧谿筆「国宝 瀟湘八景図 漁村夕照」1幅
中国・南宋時代 13世紀 根津美術館蔵
(10月19日(日)まで。それ以降は徳川美術館所蔵の作品とチェンジ)

国宝に指定されている牧谿の瀟湘八景図も、中国から日本へ伝来した当初は八景全てを収めた巻物であったそうです。所蔵していた足利義満によって現在のような姿に改変されたとのこと。

つまり、巻物を切断し、瀟湘八景の景色それぞれをバラバラに掛物として改装したのです。

「どうして?」と疑問符が頭の中に浮かびます。理由は拍子抜けするほど単純で、掛物に改装すれば座敷飾りとして使えるから。そんな恣意的な理由で当時としてもお宝中のお宝であった牧谿の巻物を切断可能なのは、時の権力者故といえばそれまでですが…何とも複雑な気分も同時に湧き起こります。

手に入れた工芸品を自分好みに改変してしまうこともまた、我々には思いもよらぬことです。古の名刀を自らの身の丈に合うような寸法に直してしまう(「刀 無銘 切付銘 名物 籠手切正宗」)等々。

こちらの大井戸茶碗はただ大きいという理由で寸法を小さく改変されたものです。


大井戸茶碗 銘 須弥(別銘 十文字)」1口
朝鮮・朝鮮時代 16世紀 東京・三井記念美術館蔵
(通期展示)

「十文字」の名の通り、十文字に切断され寸法を小さくし再び継いだ奇妙な名品です。古田織部が絡んでいるとのキャプションを読んで、何となく納得が。切ることをしたかっただけかもしれませんね。

井戸茶碗 銘 古織割高台」も井戸茶碗の特徴のひとつである高台をわざわざ1cmほど削り取られています。こちらもまた古田織部所持との伝来があるそうで、やはり何か手を加えなくては気が済まなかった人なのでしょう。

意識的に分断されたり、切断されたりされた作品と対峙すると「何でそんなことを…」と思ってしまうかもしれません。現代の価値観から鑑みればとんでもないことでも、所有者たちの作品に対する深い所有欲や想いの前では理屈や常識は通じません。

実は、悲観的なことばかりではありません。むしろ分断してくれたからこそ、部分的にでも今の時代にまで奇蹟的に継承されている例も珍しくありません。

例えば「地獄草紙断簡」は平安時代、12世紀に描かれたものの一部です。1000年も前に紙に描かれた絵が、この高温多湿でしかも戦争や自然災害に幾度となく見舞われた日本に於いて現存していることを奇蹟と言わずして何と表せばよいのでしょう。

そして、そうした作品と今でも対面出来ることも。


平治物語絵巻 六波羅合戦巻断簡」1幅
日本・鎌倉時代 13世紀 個人蔵
(9/20-10/13展示)

「三条殿夜討巻」(ボストン美術館蔵)などと同じセットとして制作された「六波羅合戦巻」の断簡。この巻の絵は、破損した1巻から切り取ったと推定される14図の小画面しか現存しない。洋画家・安井曽太郎旧蔵の1幅。

重要文化財「佐竹本三十六歌仙絵」のうち、現在「斎宮女御」「小大君」「小野小町」の三姫が10月13日まで並んで展示されています(これらが揃ったのっていつ以来なのでしょうね)。

こちらも元々は秋田の佐竹侯所蔵の巻物でしたが、お家の事情で手放すこととなり、各歌仙毎に切断され大正8年に当時の財界の数寄屋たちに売却されたもの。

軸装に仕立てる際に、手に入れた数寄屋たちの趣味や歌仙のイメージに沿った表装に仕立てられました。巻物の状態では決して味わえない「違い」を堪能出来ます。

展覧会の構成は以下の通りです。

・唐絵の切断から
・古筆切と手鑑
・絵巻、歌仙絵の分割
・さまざまな改装
・茶道具への愛着



重要文化財「石山切 伊勢集」伝藤原公任筆 1幅
日本・平安時代 12世紀 東京・梅澤記念館蔵
(通期展示)

本願寺本三十六人家集のうちの「伊勢集」と「貫之集・下」の2帖を、昭和4年にページごとに分割し、財界人らに売却して、西本願寺が女子大学創設のための資金とした。なかでもこの断簡は、書と料紙装飾の技術の高さを示す名幅である。

「改変」をテーマとした初めての展覧会です。将軍や茶人たりが愛した、国宝4件、重要文化財35件を含む約100件の名品が根津美術館に集っています。

中には関東大震災で罹災し壊れてしまった桃山時代の陶芸家・長次郎作「赤楽茶碗」の小さな破片のひとつを組み込んで昭和9年に樂家13代惺入が元の形に再生した茶碗も展示されます。破片の部分と新たに加えた部分の色を敢えて違えている所に趣きが感じ取れます。

個人蔵の「白描絵入源氏物語断簡 早蕨」雲母引きの料紙が今出来あがったばかりのようにキラキラしていました。近年発見され今回が初お披露目とのこと。久々に作品を目にし身震いしました。

普段、美術館や博物館で目にしている日本美術も何かしらこうした手が加えられていることを知ると、今までとは違った新たな見方、接し方が出来るようになります。

チャレンジングな展覧会であり、歴史に残る展覧会であることは間違いありません。今年の年間ベスト10に入れたい充実した内容です。

「名画を切り、名器を継ぐ」は11月3日までです。お見逃しなく!


新創開館5周年特別記念展
名画を切り、名器を継ぐ 美術にみる愛蔵のかたち

会期:2014年9月20日(土)〜11月3日(月・祝)
休館日:月曜日 ただし10月13日(月・祝)は開館し、翌日休館
開館時間:午前10時‐午後5時
(入館は午後4時30分まで)


根津美術館
http://www.nezu-muse.or.jp/

根津美術館の庭園内にはお茶室だけでなく「根津美術館八景」と称される見どころスポットが点在していることご存じですか?→そぞろ歩きが楽しい大都会のオアシス

《次回展》

誰が袖図 描かれたきもの
2014年11月13日(木)〜12月23日(火・祝)

※今年も開催します!三館合同キャンペーン「秋の三館 美をめぐる」

【特典1】下記展覧会の観覧済み入館券をご提示いただいた方は、ほかの2展覧会の入館料が割引になります。*観覧済み入館券1枚につき、お1人様・1展覧会の入館料割引が適用されます。

【特典2】さらに下記の3展覧会すべてをご覧になった方は、3館のうち1館の次回展が無料でご覧いただけます。*3展覧会すべての観覧済み入館券の提出が必要です。必ず保管してお持ちください。

■対象展覧会:
・根津美術館「名画を切り、名器を継ぐ ―美術にみる愛蔵のかたち―」 9月20日(土)〜11月3日(月・祝)
・三井記念美術館「東山御物の美 ―足利将軍家の至宝―」 10月4日(土)〜11月24日(月・振替休)
・五島美術館「存星 ―漆芸の彩り―」 10月25日(土)〜12月7日(日)

■上記3展覧会すべての観覧済み入館券の提出で入館が無料となる展覧会(いずれかひとつ):
・根津美術館「誰が袖図 −描かれたきもの−」 11月13日(木)〜12月23日(火・祝)
・三井記念美術館「雪と月と花 〜国宝「雪松図」と四季の草花〜」 12月11日(木)〜 1月24日(土)
・五島美術館「茶道具取合せ展」 12月13日(土)〜2月15日(日)

10年に一度の展覧会もいよいよ10月4日からです!


三井記念美術館「東山御物の美 ―足利将軍家の至宝―
10月4日(土)〜11月24日(月・振替休)
http://www.mitsui-museum.jp/

唐物が崇拝された室町文化、その頂点に君臨したのが足利義満以降の将軍家によって収集されたコレクション「東山御物」でした。それらは当時の中国的な感性を代表したのみならず、その後の日本人にとって美意識の規範となりました。「東山御物」の絵画・工芸から、当時より極めて高い評価を受けてきた唐物の至宝をご堪能ください。

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今日私たちが目にしている古美術品は、長い年月を人から人へと受け継がれてきました。その間、経年変化や、所有した人あるいは時代の好みにより、切断されて新たに表装された絵巻や古筆、破損して補修された茶道具など、制作時と形を変えたものが少なくありません。それらは、私たちが今日当たり前のように享受している鑑賞スタイルや作品のあり方、美しさの感じ方にひとかたならぬ影響を与えています。
本展は、将軍や茶人をはじめとする所有者たちによる改変が、どれほどの深い愛情と驚くほどの創造力をもって行なわれたかを、国宝4件、重要文化財35件を含む約100件の名品によって知る機会といたします。

| 展覧会 | 23:00 | comments(0) | trackbacks(0) |









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