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「ホイッスラー展」

横浜美術館で開催中の
横浜美術館開館25周年「ホイッスラー展」に行って来ました。


ホイッスラー展 ジャポニスムの巨匠、ついに日本へ(公式サイト)
横浜美術館

昨年(2014年)国立新美術館で開催された「オルセー美術館展」で、ひと際目を惹いていた「灰色と黒のアレンジメント:母の肖像」(1871年)また、少し前になりますが、1998年の「テート・ギャラリー展」(東京都美術館)で出逢った「シシリー・アレキサンダー嬢:灰と緑のハーモニー」(1872-4年)など、ホイッスラーの作品は数を多く観ていないにも関わらず、必ず心に鮮烈な印象を残しています。

ところが、作品の印象は強く心に残っていても、国内で開催される展覧会では、ホイッスラーの作品が、大抵1点しか出展されていなかったりと、ある意味その他大勢の中に与されてしまうのでどうしても、ホイッスラーが一体どんな画家だったのかが掴み切れずに終わってしまいます。

まとめて観たいのになかなか回顧展が開かれなかったホイッスラーが、満を持して(実に日本では27年ぶり、世界でも20年ぶり)に横浜美術館で開催されています。(京都国立近代美術館では時間切れで観られませんでした…)


ジェームズ・マクニール・ホイッスラー「灰色と黒のアレンジメント No.2:トーマス・カーライルの肖像」1872-73年 グラスゴー美術館
橋口五葉 夏目漱石「カーライル博物館」扉絵(『漾虚集』収録)1906年 個人蔵

前述のオルセー美術館所蔵「灰色と黒のアレンジメント:母の肖像」と同じ構図の作品です。描かれている歴史家・批評家のカーライルはいたくこの作品を気に入っていたらしく、同じポーズで描かれることを快諾したそうです。

参考作品とてして展示されている、夏目漱石「カーライル博物館」扉絵が「灰色と黒のアレンジメント No.2:トーマス・カーライルの肖像」に描かれた男性の横顔を反転したもの。五葉もホイッスラーのことを知っていたことになります。またロンドン滞在中に夏目漱石は実際の作品を観ている可能性があります。

では、明治時代、生前から既に日本に知られていたホイッスラーとはどの年代のどんな画家なのでしょう。


黒のアレンジメント3:スペイン王フェリペ2世に扮したサー・ヘンリー・アーヴィング」1876年 メトロポリタン美
黄色と金色のハーモニー:ゴールド・ガール−コニー・ギルクリスト」1876-77年頃 メトロポリタン美術館

ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(1834−1903)因みにドガと同い年で、マネより2つ年下です。当初クールベ(1819-1877)の影響を強く受けた作品を残しています。

アメリカ・マサチューセッツ州に生まれ、幼少期をロシアで過ごした後、1855年、21歳の時に画家になることを志しパリに渡りました。

そして意外なことに、何とアメリカ人なのです。19世紀の美術年表(国別)にどうりで見当たらないはずです。また現在でもアメリカの美術館に多く彼の作品があることも納得できます。

尚、今回の「ホイッスラー展」にはアメリカをはじめ、イギリス、フランスの20箇所以上の美術館から油彩・水彩・版画作品約130点が集まっています。この機会を見逃してしまうと少なくともあと四半世紀は待たねばなりません。

あの名画ハンターのいづつやさんもブログで熱く語っています!(2014年年間ベスト10入りを果たしています)→・予想を上回る傑作が揃った‘ホイッスラー展’!


肌色と緑色の黄昏:バルパライソ」1866年 テート美術館

収穫の多いホイッスラーの風景画!

厚塗りのクールベに似た風景画を描いていたホイッスラーに転機が訪れたのは、南米チリを旅さいた際に描いたこの作品。これまでとは明らかに違い薄塗りで色同士の調和によって画面が心地よいバランスの中に保たれています。

5年前に描いた「ブルターニュの海岸(ひとり潮汐に)」や「オールド・ウェストミンスター・ブリッジの最後」と比較すると同じ画家の風景画とは思えないほどの違いです。


ブルターニュの海岸(ひとり潮汐に)」1861年 ワズワース・アテニウム美術館

転機となった作品「肌色と緑色の黄昏:バルパライソ」と、このように比較しながら観られる配慮もされています。また水彩で描いた風景画も見どころのひとつです。水墨画に通ずるような余白を活かした横長の小さな作品は持ち帰りたくなるほど素敵です。

展覧会の構成は以下の通りシンプルなものとなっています。

第1章:人物画
第2章:風景画
第3章:ジャポニズム
ピーコック・ルーム


子ども向けですが、大人も予習復習に大活躍するジュニアガイドも必見です。


紫とバラ色:6つのマークのランゲ・ライゼン」1864年 フィラデルフィア美術館
白のシンフォニー No.2:小さなホワイト・ガール」1864年 テート美術館
白のシンフォニー No.3」1865-67年 バーバー美術館(バーミンガム大学附属)

タイトルにある「6つのマーク」とは「大清康熙年製」の6文字の漢字(銘)のことを指しています。「ランゲ・ライゼン」は長身の女性像が描かれた東洋風のデルフト焼にちなむそうです。面白いのは金色の額縁に「大」「清」「康」「熙」「年」「製」の漢字が刻まれている点です。

名所江戸百景「大はしあたけの夕立」を模写したゴッホが周りに記されていた漢字を周りに写しているのに通ずる趣味です。

ジャポニズムとオリエンタリズムがごちゃ混ぜになっているのはご愛敬としても、必ず浮世絵の影響を受けた西洋画家としてホイッスラーの名前があがる理由も今回の回顧展で良く分かります。


ジェームズ・マクニール・ホイッスラー「《肌色と緑色のヴァリエーション:バルコニー》のための習作」1864/65年 ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)
鳥居清長「美南見十二候 品海汐干」1784年頃 大英博物館

他にも、歌川広重『名所江戸百景』のうち《京橋竹がし》とホイッスラーの「ノクターン:青と金色−オールド・バターシー・ブリッジ」が並べて展示してあるなど、浮世絵から「何を」学び取ったのかが一目瞭然です。

「アレンジメント(編曲)」、「ハーモニー(和音)」、「シンフォニー(交響曲)」、「ノクターン(夜想曲)」と音楽用語を作品タイトルに多く付けているホイッスラーですが、最も作品とマッチしているのが、ノクターン(夜想曲)」だと強く感じるはずです。

数点「ノクターン」と題された作品が展示されていますが、前述した風景画の転機となった「肌色と緑色の黄昏:バルパライソ」で用いた薄塗りの画法がまさにノクターンシリーズで極まれり!といった感があります。非常に精神性の高い作品を残しているこの時代としては稀有な画家です。


ノクターン」1875-77年 ハンテリアン美術館(グラスゴー大学附属)
青と銀色のノクターン」1872-78年 イェール英国芸術センター

“ジャポニズムの巨匠”という単純な枠では捉えきれない、バリエーション豊富な魅力的な作品を残してるジェームズ・マクニール・ホイッスラー(1834−1903)。

広重や清長だけでなく、アルバート・ムーアの影響なども交えて捉えてみると新たな発見が在るように思えます。それと青木繁とかも含めて。

あのバーン=ジョーンズ(1833−1898)と同時代にロンドン、パリを股にかけラファエル前派や印象派とは違い徹底的に絵画と向き合った孤高の精神の持ち主だったのかもしれません。

めちゃくちゃ女性にモテたそうですけどね。

そうそう、こんなものも展示されています。

いろは引紋帳』(ホイッスラー旧蔵)
ホイッスラー著『敵をつくる優美な方法』1890年

ホイッスラーのサインは蝶を象ったもので、非常に日本的なデザインです。ちょっとずつ作品によって違うので作品や額縁に入れられた蝶のマークのサインを見つけてみるのも一興です。

「ホイッスラー展」は3月1日までです。まだ余裕があると思っているとあっと言う間に会期末となってしまいます。お見逃し無きように。是非是非!


横浜美術館開館25周年「ホイッスラー展」

会期:2014年12月6日(土)〜2015年3月1日(日)
休館日:木曜日、2014年12月29日(月)〜2015年1月2日(金) 
開館時間:10時〜18時(入館は17時30分まで)
※夜間開館:2014年12月22日(月)〜12月24日(水)は20時まで開館
(入館は19時30分まで)
会場:横浜美術館
http://yokohama.art.museum/
主催:横浜美術館、NHK、NHKプロモーション
協賛:あいおいニッセイ同和損保、テラ・アメリカ美術基金、日本写真印刷
協力:FMヨコハマ、神奈川新聞社、首都高速道路株式会社、日本航空、みなとみらい線、横浜ケーブルビジョン

「ホイッスラー展」公式サイト
http://www.jm-whistler.jp/

ミュージアム・ショップは髭押しでした!


注:展示室の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

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ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(1834−1903)は、アメリカ・マサチューセッツ州に生まれ、幼少期をロシアで過ごした後、1855年、21歳の時に画家になることを志しパリに渡りました。パリでは、シャルル・グレールのアトリエに通う一方で、ギュスターヴ・クールベと出会い、レアリスム(写実主義)に感銘を受けます。そのため、ホイッスラーの初期の油彩画やエッチングなどの主題の選択や表現には、クールベの影響が色濃く表れています。

19世紀欧米の画壇において、最も影響力のあった画家の一人であるホイッスラーは、ロンドンとパリを主な拠点として活躍し、クロード・モネなど印象派の画家たちとも親交がありました。また、構図や画面空間、色彩の調和などに関して、日本美術からインスピレーションを得て独自のスタイルを確立したジャポニスムの画家として世界的に知られています。 ヴィクトリア朝の英国では、道徳主義を反映した、教訓的意味が含まれる絵画が隆盛を極めていましたが、ホイッスラーは、絵画は教訓を伝えるために存在するのではないと考え、「芸術のための芸術」を唱えた唯美主義を主導しました。

“音楽は音の詩であるように、絵画は視覚の詩である。
そして、主題は音や色彩のハーモニーとは何のかかわりもないのである”

ホイッスラーはこう語り、1865年以降“ シンフォニー”、“ ハーモニー”、“ ノクターン” といった音楽用語を用いて、絵画の主題性や物語性を否定しました。同時代の潮流である、レアリスム(写実主義)、ラファエル前派、古典主義、象徴主義、ジャポニスムなど、さまざまな要素を取り入れて、唯美主義者として独自のスタイルを確立し、同時代、そして次世代の芸術家たちに広く影響を与えました。

本展は、新たな芸術誕生の牽引者となった、ジャポニスムの巨匠・ホイッスラーの全貌を紹介する、日本では四半世紀ぶりとなる大規模な回顧展です。
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- | 2015/01/09 11:44 AM
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ホイッスラー展@横浜美術館 | Life with Art | 2015/01/10 3:01 PM