弐代目・青い日記帳 

  
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「スサノヲの到来」
DIC川村記念美術館で開催中の
「スサノヲの到来―いのち、いかり、いのり」展に行って来ました。


http://kawamura-museum.dic.co.jp/

民俗学をかじっていた自分にとっては、まさにドンピシャな展覧会。あつらえてくれたような内容で最初から最後まで興奮しっぱなしでした。

平田篤胤を扱った第5章や折口信夫、南方熊楠、田中正造を「スサノヲ」と「清らかないかり」というキーワードでひとまとめにし紹介する「第6章:スサノヲを生きた人々」は、美術展という枠組みの中に幾らでも民俗学的なまた自然科学的な要素が潜んでいることを広く知らしめる格好の機会となっていたように思えます。

さり気なく、円空仏や堀田本「稲生物怪録絵巻」が展示してあり、仏像展や絵画展では感じ取ることの出来ない違った側面からそれぞれの自然にアプローチ出来、作品の新たな魅力に気付かせてくれます。


狩野時信「素戔嗚神
江戸時代 出雲大社蔵

アマテラスにしてもツクヨミにしても、そもそも姿形は目に見えないものですが、イザナギが鼻を禊いだ際に生まれたスサノヲは、イメージ化されある程度の認識を現代の我々でも共有しています。

「第1章:神話のなかのスサノヲ」「第2章:スサノヲの変容」は、そうしたイメージがどのように確立されていったかを示しています。

今、ゲームやアニメに登場するスサノヲのイメージは、江戸末期に月岡芳年が『大日本名将鑑』や『日本略史』に描いた素戔嗚尊(ヤマタノオロを退治する勇猛果敢な姿)が源泉となっています。

ただしそれ自体がこの展覧会のテーマでないことは明らかです。「足なんて飾りです。」ではありませんが、絵画化されたスサノヲは、イエス像と比べるまでもなく「おぼろげなるもの」に過ぎません。

一枚だけ衝撃的だったのは「下総東葛飾郡院内八坂神社素戔嗚尊像図」です。古来の社の姿とスサノヲが合体している非常に珍しい一枚です。これ観られただけでも佐倉まで行った甲斐があります。


佐々木誠「八拳須(やつかひげ)」2011年 作家蔵

展覧会の構成は以下の通りです。

序章:日本神話と縄文の神々
第1章:神話のなかのスサノヲ
第2章:スサノヲの変容
第3章:うたとスサノヲ
第4章:マレビトたちの祈りとうた
第5章:平田篤胤
第6章:スサノヲを生きた人々ー清らかないかり
第7章:スサノヲの予感


川村記念美術館の常設展示室と特別展示室をほぼ全て使っての振り幅の非常に広い展覧会です。内容も一見多岐に渡っているように思えますが、しっかりと一本太い筋が通っているので、破綻なく展開されています。

合間にあるマーク・ロスコやモーリス・ルイス、ロバート・ライマンらの川村記念美術館の所蔵作品も、スサノヲに感化されいつもよりもスピリチャルな魅力を湛えているように目に映ります。

エンツォ・クッキ「無題(黄色い壁) 」に描かれたちょっととぼけたよな黒い人物さえも、アマテラスの元へ向かうスサノヲのように見えてしまうから不思議です。



強大なフランク・ステラの野外彫刻「リュネヴィル」もまた…

現代アートに造詣の深い人でも「第7章:スサノヲの予感」で紹介されている作家をどれだけ知っているでしょうか。最後の章だけでもひとつの展覧会となるボリュームがあります。

金井南龍、黒須信雄の作品は必見です。そしてかつてこのブログでも何度も紹介した岡田真宏も3点出ています。岡田さんは色鉛筆での作品もそうですが、以前制作されていた鉄錆の作品もこの展覧会のスサノヲ的なイメージに当てはまるかもしれません。

尚、この展覧会は2014年 美連協大賞(美術館表彰)を受賞しています。
http://event.yomiuri.co.jp/jaam/list2014.cfm/

ひとつひとつ心の琴線に触れる作品(展示物)ばかりでした。この展覧会企画された方とは美味い酒が呑めそうです。「スサノヲの到来―いのち、いかり、いのり」展は3月22日までです。


人と自然のあいだの「精神」と「芸術」
「スサノヲの到来―いのち、いかり、いのり」


会期:2015年1月24日(土)〜3月22日(日)
開館時間:午前9時30分〜午後5時
(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜
会場:DIC川村記念美術館
http://kawamura-museum.dic.co.jp/

主催:DIC株式会社、読売新聞社、美術館連絡協議会
協賛:ライオン、清水建設、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜、日本テレビ放送網
後援:千葉県、千葉県教育委員会、佐倉市、佐倉市教育員会

出展者:ヨルク・シュマイサー/棟方志功/狩野時信/八雲華溪/月岡芳年/平沢定/古澤岩美/谷本蘇牛/手錢官三郎/松本喜三郎/大野明山/中山琴主/出口王仁三郎/出口ナオ/木食知足/高野山法印大圓老師/鵬海/秋山知徳/円空/川柳金蔵/貞秀兼次郎/西行/松尾芭蕉/本居宣長/平田篤胤/田中正造/南方熊楠/折口信夫/岡本天明/金井南龍/成瀬杏子/牧島如鳩/長谷川沼田居/岡本太郎/藤山ハン/恵藤求/古西律 /若林奮/清水晃/多和圭三/黒川弘毅/岡田真宏/橋本倫/黒須信雄/佐々木誠/竹内啓/赤木仁/タカユキオバナ/栃木美保/藤白尊

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折口信夫――いきどほる心 (再発見 日本の哲学)

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人間は太古より自然に向き合う生活の中から豊かな精神を育んできました。自然や神話に関する精神は芸術の分野でも重要なテーマとなっています。日本人は古来自然と密接に関わってきましたが、古事記や日本書紀をひもとくとき、人と自然の関係の象徴として見いだされるのがスサノヲです。スサノヲには、荒ぶる神としてのイメージがありますが、同時に、和歌の始祖として繊細な美意識をあわせ持ち、既存のものを原点にもどし新たな文化を創造する神でもあります。そして、物事の本質を気づかせる喚起力、事態を反転する起爆力、芸術家にインスピレーションを与える力によって、時代の変革期に重要な示唆をわれわれに与えてきました。本展はスサノヲ的な表象をたどることで、自然や、知性を超えたものと、人間とのあいだの精神の深層をあらためて見つめ、現在における芸術のあり方を捉え直そうとするものです。
展示では、縄文土器にはじまり、神像などの歴史的資料や、芭蕉、円空など文学や芸能に関わる資料、平田篤胤、田中正造、南方熊楠、折口信夫らの探求(異界・妖怪研究の絵図、菌類彩色図譜、書など)、さらには岡本太郎、若林奮ほかスサノヲの精神を共有する現代の美術作品を一堂に紹介します。また、当館では、これらの資料や作品約260点を、コレクション展示室を交えながら、美術館全体を用いて展覧します。本展が文化の精神的基層に触れ、芸術作品をさらに深く理解する機会となればと考えています。

[コレクションとの関わり]
自然や神話に関する精神は欧米の美術でも重要なテーマであり、それらは当館のコレクションにも見ることができます。マイヨールの《ヴィーナス》やブールデルの《果実》はローマ神話の女神を題材とし、シャガールの《ダヴィデ王の夢》は旧約聖書の古代イスラエルの王が描かれ、また、カンディンスキーは神話的世界や神秘主義思想から大きな影響を受けています。さらにロスコはその活動初期において神話を研究し古代芸術の象徴に基づいた作品を描いた後に、独自の芸術を完成させています。
「スサノヲの到来―いのち、いかり、いのり」展では、当館のコレクション展示とともにご覧いただける構成を予定しており、あわせて、自然と人間の境界を彫刻で探求した若林奮の代表作《振動尺》(当館コレクション)を特別展示します。東西の表現を見比べながら、新たな観点から当館のコレクション作品をご鑑賞ください。
| 展覧会 | 23:43 | comments(0) | trackbacks(0) |









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