弐代目・青い日記帳 

  
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『ニキとヨーコ』
NHK出版より刊行となった『ニキとヨーコ―下町の女将からニキ・ド・サンファルのコレクターへ』を読んでみました。


ニキとヨーコ―下町の女将からニキ・ド・サンファルのコレクターへ
黒岩有希 (著)

女性彫刻家ニキ・ド・サンファルのコレクターであるYOKO増田静江の半生を綴った一冊。上野の日本料理屋の長女として生まれた静江が、いつしかニキの世界的コレクターになり、美術館まで作ってしまうという「おとぎ話」のような実話が克明に書表されています。

ニキと静江は生まれた年がひとつしか違いません。

YOKO増田静江(1931〜2009)
ニキ・ド・サンファル(Niki de Saint Phalle, 1930〜2002)


しかし、静江が、ニキの美術館を日本に作ろうと思い立ったのが彼女が50歳の時です。年齢だけ見ると動き出しが遅いように思えますが、そもそも静江自身がアートの世界に足を踏み入れたのが45歳を過ぎてからのこと。

それまでは、実家の存続や旦那の会社に振り回される毎日でした。そんな忙しない日々のストレス解消とタロットカードを探しに出かけた隣りのギャラリーで出会ったのがニキの版画「恋人へのラブレター」でした。

ニキとの鮮烈な出会いを「まるで、魂が吸い寄せられるような、強烈な体験。自分の中の何かが、パッと解放され、満たされていくような出会いだった。」と後に回想しています。

ニキの作品は、
私を裸の女の子に戻した。


人生何がきっかけで梶を大きく切るか分からないものです。ベンツを買うためにNYに出かけ若冲の水墨画に一目惚れし、残りの人生を日本絵画蒐集に注いでいるジョー・プライス氏のように。

それにしても、偶然見かけたニキの作品タイトルが「恋人へのラブレター」というのもあまりにも浪漫的ではありませんか!ニキと静江は出会うべくして出会った。そんな二人なのです。


「ニキ・ド・サンファル展」
会期:2015年9月18日(金)〜12月14日(月)
会場:国立新美術館
ニキ展公式サイト:http://niki2015.jp/

1960年代後半から世界的に盛り上がりを見せた女性解放運動においてアート界で、先鞭をつけたひとりがニキ・ド・サンファルです。

1980年にニキ作品と出会い、コレクションを始めた静江。当時の日本では中々理解してもらえないニキについて、こんなことも周りに言っていたそうです。

「60年代にニキが射撃絵画で撃った弾が、20年かけて地球を回って私の心臓(ハート)に命中したんです。ニキは民族性とか時代性とか地域性を超えている作家なんです。」

静江のニキに対するあふれんばかりの情熱に、読んでいて引いてしまうどころか、とても羨ましく思ってしまいます。果たして自分にはそこまでのめり込めるものがあるのかと。

「ヨーコ増田静江」という名前もニキが「静江」と発音するのが難しいというので、“静かな入り江”ではなく、“広い大海原”を意味する「洋子」と名乗ることにしたそうです。

ニキによって結果的に新しく「Yoko」と名付けられたことは、静江の第二の人生の出発のメタファーだったのかもしれません。


「ニキ・ド・サンファル展」
会期:2015年9月18日(金)〜12月14日(月)
会場:国立新美術館
ニキ展公式サイト:http://niki2015.jp/

フランスまでニキに飛行機嫌いの静江が会いに行ったり、500通もの手紙(ファックスを含む)をやりとりするなど、単なる作家とコレクターの関係の枠を大きく超えた関係が二人の間には存在しました。

しかし、そんな静江もアートの世界ではまだまだ経験も浅く失敗も多かったことも『ニキとヨーコ―下町の女将からニキ・ド・サンファルのコレクターへ』には記されています。

例えば、ニキの許諾無しに作品をプリントした反物を作り彼女にプレゼントとして贈ったものの、逆にニキの大きな怒りをかってしまったり、ニキ美術館を那須高原に建てるにあたり「まさか」と思うよなミスを犯したり…

それでも前向きに、自分の惚れ込んだアーティストの美術館を日本に建て、多くの人と同じ感動を分かち合いたいと願う信念は決して揺るぎません。



「裸の女の子」にリセットされたものの静江の第二の人生は、ニキという最良の「伴侶」を得たことにより、より強い輝きを放って行きます。

1994年10月6日。世界で唯一、ニキの名前を冠し、ニキの作品だけを所蔵する美術館が、栃木県那須町にオープンしました。名前はずばり「ニキ美術館」。
http://niki-museum.jp/

個人的には一度しか伺ったことがありませんでしたが、建物と自然そして作品が見事に融合した美術館でした。過去形で書いているのは残念ながら2011年8月に閉館してしまったからです。

この秋、久々に国立新美術館での大回顧展でニキの作品に対面できるとあって、興奮を抑えつつこの本に目を通しました。(収まるどころか余計に観たくなってしまいましたが…)

彫刻家のジャン・ティンゲリーの大作「地獄の首都 No.1」が、軽井沢のセゾン現代美術館にあります。毎年夏になるとよく観に行ったものです。ニケがティンゲリーの夫であると知ると、不思議と二人の作品の共通項が見えてくるものです。

「ニキ・ド・サンファル展」をより愉しむ為に、必読の一冊が『ニキとヨーコ―下町の女将からニキ・ド・サンファルのコレクターへ』です。

「私は私として生きていこう」「どんあ時も自分を肯定して生きていこう」と思えるようになったのは、ニキのおかげだと語られています。

口先だけでない強い二人の女性の生きざまに、必ずや勇気づけられ、自分が本当にしたいことを思い起こすきっかけの一冊となるはずです。


ニキとヨーコ―下町の女将からニキ・ド・サンファルのコレクターへ
黒岩有希 (著)

彫刻家ニキ・ド・サンファルのコレクター、ヨーコ増田静江。戦争、駆け落ち、日本料理屋の女将、パルコ会長となる夫、家業と夫婦の危機――。生き方を模索する中、49歳のときに偶然出会ったニキの作品が、彼女をまさかの第二の人生へ導いた。喜んで、落ち込んで、また立ち上がる。“下町生まれの向こう見ず”で美術館まで建てた、ヨーコの波乱の生涯。

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「ニキ・ド・サンファル展」
ニキ・ド・サンファル(1930−2002)は、戦後を代表する美術家のひとりです。1950年代に絵画制作を始めたニキは、戦後のアメリカやフランスの抽象絵画に影響を受けるなどして独自のスタイルを作り上げていきました。そして、1961年に発表した「射撃絵画」で、一躍その名が知られることになります。絵具を入れた缶や袋を石膏で付着した絵画に向けて銃を放つという作品制作は、パフォーマンスの先駆例として美術史上高く評価されています。また、その後発表された「ナナ」シリーズでは、鮮やかな色彩を用いて解放的な女性像を示し、今日まで多くの人々を魅了しています。ニキは、このほかにも舞台や映画の制作を手がけ、また、「タロット・ガーデン」と称する彫刻庭園を作るなど、美術家として様々な活動を展開していきました。
没後10年を経て今秋より、パリで大規模な回顧展が開催され、再評価の気運が高まっています。日本展では、この回顧展の基本構成を踏まえながら、日本独自の展示要素も加えて、ニキの作品が持つ世界観をあますところなく紹介します。
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