弐代目・青い日記帳 

  
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「風景画の誕生展」
Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中の
「ウィーン美術史美術館所蔵 風景画の誕生」展に行って来ました。


http://www.bunkamura.co.jp/museum/

意外かもしれませんが、西洋絵画には長い間、厳然たるヒエラルキー(階級分け)が存在していました。上手い下手ではなく、描かれている絵の内容によって上下関係が決まっていたのです。

ヨーロッパの美術館へ行くと、キリスト教を主題とした作品ばかり、よくも飽きずにこんなにも描いたものだと呆れてしまうほどあります。

パトロンが教会だった時代が長く続いたことも大きな理由のひとつですが、それよりも何よりも、歴史画(宗教画・物語画)が絵画の中で最高位にランクされていたからこそ。


南ネーデルラントの画家《東方三博士の礼拝》1520年頃
油彩・板
ウィーン美術史美術館所蔵

因みに、フランス王立アカデミーでの絵画の順位付けは、1位:歴史画。2位:肖像画。3位:静物画。の順でした。

風景画がアカデミーで公認されるのは18世紀後半まで待ねばなりませんでした。そう考えると風景画の歴史はとても浅いものだと言えます。

そう考えると、今回の展覧会タイトル「風景画の誕生」にグッと重みが増してきます。

アカデミーがポジションを付与する前から画家たちは「風景」を描いていました。ただしそれは我々が良く知る風景画ではなく、あくまでも聖書などの歴史的な場面の描写としての「風景画」でした。

第1章 風景画の誕生、第1節 聖書および神話を主題とした作品中に現れる風景は、もしかしてこの展覧会の最大の見どころかもしれません。


ドメニコ・フェッティ「エジプトへの逃避」1622-23年頃
油彩・板
ウィーン美術史美術館所蔵

展覧会の構成は以下の通りです。
第1章 風景画の誕生
第1節 聖書および神話を主題とした作品中に現れる風景
第2節 1年12カ月の月暦(カレンダー)画中に現れる風景
第3節 牧歌を主題とした作品中に現れる風景

第2章 風景画の展開
第1節 自立的な風景画
第2節 都市景観(ヴェドゥータ)としての風景画



ヨアヒム・パティニール《聖カタリナの車輪の奇跡
1515年以前 油彩・板
ウィーン美術史美術館所蔵

初めはイエスにマリア、聖人たちが大きく描かれ、風景はいわば刺身のつまのような存在でしたが、次第に主従が逆転してくるのが分かります。

「聖カタリナの車輪の奇跡」では、人物は小さく描かれ、よ〜く探さないとどれが聖カタリナか判別つきません。

歴史画(宗教画・物語画)に占める風景画の変遷を辿っていくだけでも十分楽しめます。

キリスト教的な神や価値観が近代化が進みにつれ、次第に小さくなり、影響力が弱まるのと呼応するかのように、宗教画と風景画の立ち位置、絵画に占める割合に変化が生じるようです。


アダム・ペイナーケル《ティボリ付近の風景》1648年頃
油彩・板
ウィーン美術史美術館所蔵

廃墟や牧歌的な風景を描いた作品を経て、第2章 風景画の展開に歩を進めると、そこにはもうどこにも神や聖人の姿はありません。

「自立的な風景画」つまり、我々の認識と同じ風景画作品が現れます。ほっとすると共に、どこか味気なさを感じてしまうのは、それまでたっぷりと濃い目の宗教画に描かれた風景画を観てきたからこそ。

第2章から先に観て、その後で第1章を観るのも良いかもしれません。Bunkamura ザ・ミュージアムさんはぐるぐると何度でも観て回れるますからね、好きなだけ。


アールト・ファン・デル・ネール《月明かりの下の船のある川の風景
1665/70年頃 油彩・キャンヴァス
ウィーン美術史美術館所蔵

17世紀、オランダで風景画が隆盛を極めた大きな要因のひとつは、この国がプロテスタント(カトリックのスペインから独立を勝ち取って。司馬遼太郎曰く。世界で初めての市民革命を起こした国)であることは間違いありません。

フェルメールの傑作「デルフトの眺望」や「小路」も17世紀のオランダだからこそ生まれたものです。

それにしても、低地ばかりで山らしい山のないオランダで「自立した風景画」が確立したというのも面白いことですね。


「1年12カ月の月暦(カレンダー)画中に現れる風景」展示風景

洛中洛外図屏風他、日本人(東洋)では風景が主題として古くから描かれ好まれて来ました。異国の風景であってもスッとその中に入れる感覚を持ち合わせています。

肩の力を抜いて、いつもよりリラックスしながら西洋絵画と向かい合える展覧会です。と同時に本や講座とは違い、本物の作品を通して、風景画が如何にして誕生したかを観て取れる良質の展覧会です。


(クリックで拡大)

「ウィーン美術史美術館所蔵 風景画の誕生」展では、夜間開館の時間帯に展覧会タブレットガイドを貸し出します。(タブレットガイドの貸出時間は、9月25日(金)〜12月7日(月)の毎週金曜日、土曜日の18:00〜21:00)

また、Bunkamura館内主要エリアで、iPhone、スマートフォン、タブレット端末等から無料でインターネットに接続できるWi-Fi環境も完備されました。

次回は、タブレット端末を実際に使ってみたいと思います。「風景画の誕生展」は12月7日までです。是非是非!!


「ウィーン美術史美術館所蔵 風景画の誕生」展

開催期間:2015年9月9日(水)〜12月7日(月)
*10/5(月)のみ休館
開館時間:10:00−19:00(入館は18:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
http://www.bunkamura.co.jp/museum/

主催:Bunkamura、TBS、読売新聞社
企画協力:ウィーン美術史美術館
This exhibition is organized in collaboration with the Kunsthistorisches Museum Wien.
特別協賛:キヤノン
協賛:花王
特別協力:大塚国際美術館
協力:ルフトハンザ カーゴ AG、オーストリア航空、ヤマトロジスティクス
後援:オーストリア大使館、オーストリア政府観光局、ウィーン在日代表部、J-WAVE 81.3FM



特別プログラム「キヤノン・ミュージアム・キャンパス」

10月5日(月)の休館日は大学生(大学院生、短期大学生、専門学校生、高等専門学校の4・5年生)のための「ウィーン美術史美術館所蔵 風景画の誕生」展無料観覧日です!
http://canon.jp/event/art/museumwien2015/index.html




風景画論 (ちくま学芸文庫)
ケネス クラーク (著)

神話や象徴の世界の表現から現実の表現へ。背景を描く際の便利なシンボルとしての風景は、ファン・エイク、ベリーニ、ボス、レオナルド、ロラン、クールベらを経て、光を描こうとした画家ターナーにより絵画の中心的なテーマへと引き上げられてゆく。中世末期から現代にいたるまでの画家たちの心象と製作意図を読み解き、風景画の変遷をたどる。西洋美術史の碩学がさまざまな画家や作品を縦横に語りつくし、西洋美術の奥底に潜む、信仰心、欲望、想像力を浮き彫りにした名著。

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http://bluediary2.jugem.jp/?eid=4094

注:展示室の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。

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ウィーン美術史美術館には、オーストリア・ハプスブルク家のコレクションに始まる膨大な数の美術作品が所蔵されています。その優れたコレクションの中には、ヨーロッパ美術の歴史において最初に自立的な風景画を生みだすことになった17世紀のオランダやフランドルの美術作品をはじめとして、ヨーロッパ各国の魅力的な風景画作品が数多く含まれています。本展では、ウィーン美術史美術館の所蔵する絵画作品のなかから「風景」に焦点をあてて選んだ約70点の作品により、「聖書」や「神話」の物語の舞台として描かれ、季節の営みや牧歌の主題などと結びつきながら次第に独立したジャンルとして確立されていくヨーロッパにおける風景表現の歩みを、その誕生から展開に至るまで展観していきます。
| 展覧会 | 22:46 | comments(0) | trackbacks(0) |









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