青い日記帳 

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「旅と芸術」展

埼玉県立近代美術館で開催中の
「旅と芸術ー発見・驚異・夢想」展に行って来ました。


http://www.pref.spec.ed.jp/momas/

「旅と芸術」と聞くと、広重の東海道五十三次の浮世絵シリーズや、大津絵などがまず頭に浮かんできます。現代の写真やお土産の役割を芸術が果たしていた時代がありました。

「写真」や「お土産」のない旅なんて成立しませんからね、今も昔も。

旅先での愉しい思い出もひとたび日常に戻ってきてしまうと、もう決して対象化できなくなります。そんな時に「写真」や「お土産」が、頭の中に薄い喜びが流れ出させてくれるものです。

展覧会を観に行って、ミュージアムショップで何かお土産をついつい買ってしまうのも同じことです。



話がソフトに逸れてしまいましたが、埼玉県立近代美術館さんで始まった「旅と芸術ー発見・驚異・夢想」展は、その旅の本質や変遷、そして現代的意義について多面的に捉える魅惑的な展覧会です。

でも、「旅」という概念が漠然とし過ぎていて大風呂敷を広げ過ぎて収拾がつかなくなっているのでは…と、ちと心配しながら京浜東北線に揺ら北浦和まで出向いたのですが、全くの杞憂でした。


クロード・モネ「貨物列車」1872年 
ポーラ美術館所蔵
クロード・モネ「ルエルの眺め」1858年
丸沼芸術の森所蔵(埼玉県立近代美術館寄託)

普遍的でありながら、定義付けが難しい「旅」に“多様性に巡り合う(発見)”というテーマを与え、展覧会を構成しています。なるほどこれなら支離滅裂にならずに「流れ」に沿って観られます。

展示構成は以下の通りです。

第1部:旅への誘い
第2部:オリエントの魅惑
第3部:自然・観光・鉄道
第4部:世紀末のエグゾティスム
第5部:空想の旅・超現実の旅
第6部:旅行者の見た日本の自然


第1部から第5部まではほぼ時代順に作品が展示され、最後の第6部は幕末から明治にかけて来日した欧米人から見た日本をエピローグ的に紹介されています。

「旅とは?」と難しいこと考えずに素直に順序立てて観ていくだけでも十分に楽しめる展覧会となっています。


館の扉を飾る装飾欄間(シヴァ神像)」18世紀
個人蔵

展示構成もさることながら、「旅と芸術展」には軸になるコレクションが存在しているのも大きな特徴です。それは個人コレクターによる19世紀後半から20世紀初頭に撮影された膨大な写真です。

この古写真をひとつの基調とし、それに関連付けるように絵画や彫刻が展示されています。オリエンタリズムや、鉄道の発達による旅の変化、そしてシュルレアリスムにおける超現実を発見する旅まで。

多くの作品がうねうねと展示されている会場を観て回るだけで、時空を超えた旅気分を味わえます。ここ数年、家庭内の出来事や仕事に右往左往し、ゆっくりと旅行を楽しむ時間が持てない自分にとっては最良の空間だったのかもしれません。


アルフォンス・ミュシャ「モナコ・モンテカルロ/P.L.M.鉄道」1897年
三浦コレクション・川崎市民ミュージアム蔵
アルフォンス・ミュシャ「題名不詳」1900年頃
個人蔵

パリからリヨンを経て地中海まで鉄道で行けるようになったことを告げる観光ポスター。鉄道の車輪や線路を植物で表しているのがミュシャらしいところ。

そして注目すべきはそのミュシャ自身が撮影した女性像が展示されていることです。写真の女性をモデルにしたかは定かではありませんが、見比べてみると…(ミュシャが現実をどのようにデフォルメしたかが垣間見られます。)


ポール・デルヴォー「」1948年
埼玉県立近代美術館蔵
ポール・デルヴォー「女帝」1974年「」1971年
姫路市立美術館蔵
トワイヤン画、ラドヴァン・イヴシッチ詩
版画集『射撃場:12のデッサン1939-1940』より
1973年刊 個人蔵

さて、もうひとつ注目すべきは、明治学院大学名誉教授の巖谷國士先生が展覧会の監修を務められている点です。ジュール・ヴェルヌ、ルイス・キャロル、デルヴォー、シャガールらによる、第5部「空想の旅・超現実の旅」が、殊のほか充実しています。

巖谷國士先生による連続講演会も関連イベントとして予定されています。詳しくは埼玉県立近代美術館のサイトで!図録もとっても良くできています。


「旅と芸術ー発見・驚異・夢想」展は2016年1月31日までです。過去に想いを馳せながら現在、未来を生き抜いていくために「旅」はなくてはならぬものなのかもしれません。今も昔も。


「旅と芸術ー発見・驚異・夢想」

会期:2015年11月14日(土)〜2016年1月31日(日)
※会期中に一部展示替えがあります。
前期:11月14日(土)〜12月20日(日) 後期:1月5日(火)〜31日(日)
休館日:月曜日(11月23日、1月11日は開館)および年末年始(12月21日〜1月4日)
開館時間:10:00 〜 17:30(入場は17:00まで)
会場:埼玉県立近代美術館
http://www.pref.spec.ed.jp/momas/
主催:埼玉県立近代美術館
監修:巖谷國士
協力:JR東日本大宮支社、FM NACK5
企画協力:アートプランニング レイ


MOMASコレクション第3期

会期:2015年10月10日 (土)〜 2016年1月17日 (日)

絵画の景色 − 近代から現代へ
風景表現の魅力と色彩表現の可能性を探りながら、近現代の絵画を中心に紹介します。

辰野登恵子 − まだ見ぬかたちを
象徴的な形を色彩豊かに描き、独自の絵画空間を追求した辰野登恵子の世界を、特別出品の作品を交えた特集展示で紹介します。

現代の写真 − こころをうつす
新収蔵の市川美幸、杉山晶子、安田千絵の写真作品を、心象風景をキーワードに紹介します。


旅と芸術: 発見・驚異・夢想
巖谷國士 (著)

異郷、ノスタルジア、空想など、旅を巡る美術テーマを、絵画、写真、版画、挿絵本を通して旅と芸術の物語へと誘う。

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この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=4160

JUGEMテーマ:アート・デザイン


注:展示室の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
 旅とは何でしょうか。日常生活を離れて別の土地へと移動し、そこで出会うものに驚き、感動をおぼえ、世界の多様性を感じとることでしょう。その驚きと感動を記憶するために、あるいは家族や友人、世間にも伝えるために、旅人たちは日誌をつけたり手紙を書いたり、記念の品を持ち帰ったり、風景や人物を描いたりしてきました。さらに写真という技術が実用化されてからは、旅先での光景を撮影するようにもなったのです。

 やがて交通と観光の発達につれて、また社会環境の変化につれて、旅のもつ意味も大きく変化してきました。異郷への好奇心やエグゾティスム、遠い過去へのノスタルジア、近郊の田園の再発見、空想世界への憧れなど、旅への想いは時代や社会の姿を敏感に映してきたのです。

 この展覧会は、旅をめぐるさまざまなテーマを、主に西洋近代の絵画や版画、写真、挿絵本などを通して読み解きながら、みなさんを「旅と芸術」のすてきな物語へと誘います。

展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

旅人となって世界漫遊と心の旅に出たような好企画です。ドレの版画を基にした映像もいい!老航士の詩、その譚にも酔えます…。
PineWood | 2016/01/30 6:21 AM
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