青い日記帳 

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『しぐさで読む美術史』

筑摩書房より刊行となった『しぐさで読む美術史』を読んでみました。


しぐさで読む美術史』 (ちくま文庫)
宮下規久朗(著)

以前こちらでも紹介した、『モチーフで読む美術史』2013年、『モチーフで読む美術史2』2015年、そしてこの『しぐさで読む美術史』の「あとがき」にはそれぞれ宮下先生の亡きお嬢さんへの一句が載せられています。

大学卒業を目前に控えた愛娘・麻耶さんが不治の病におかされ天に召されてしまった宮下先生。あれだけ明るく人一倍精力的に美術に対する熱い情熱を注いできた方が、一時は筆を折ろうかとまで思われたのもご無理はありません。

しばらくこちらかから連絡を取ることは控え、宮下先生の復活を切に願っていました。昨年の「グエルチーノ展」での音声ガイドで久々にその声を聞き、涙が自然とあふれてきたものです。(その後、やはり「グエルチーノ展」の講演会でお会いした際もまた同じく。)


「絶望」

「不死鳥の如くよみがえった宮下先生」ではなく、「ワンステージ上に進んだ宮下先生」が書き記した『しぐさで読む美術史』は、これまで以上に膨大な知識を惜しみなく紙面に放った誰にも真似出来ない名著です。

一度、宮下先生にインタビューさせて頂く機会がありましたが、泉のように湧き出てくる美術に関するありとあらゆる知識には驚かされました。ご専門の西洋美術はもとより、日本美術、東洋美術、現代アートまで実に多岐に渡っています。

美術史家に聞く:宮下規久朗先生

また、神戸にお住まいにも関わらず都内で開催されている展覧会へは必ずと言っていいほど顔を出しています。自分の観ていないギャラリー系の現代アート展からデパート展まで足を運ばれているのには竹刀で胸を突かれたように驚いたものです。

それだけご覧になられていると、点が線となりつながりを見せてくるものです。時に縦糸に時に横糸となり時空を超えて一つの世界を織りなします。宮下先生の文章は全てそのようにして書かれているものばかりなのです。

一例を示しましょう。『しぐさで読む美術史』「天を指す」は見開き一頁のテキストながら、その中には様々な作品が登場します。


ダヴィッド「ソクラテスの死」1787年 メトロポリタン美術館


レオナルド・ダ・ヴィンチ「洗礼者ヨハネ」1513-16年 ルーヴル美術館


誕生釈迦仏立像」8世紀 東大寺


ラファエロ「アテネの学堂」(部分)1509年
ヴァチカン宮殿 著名の間


グエルチーノ「説教する洗礼者ヨハネ」1650年 チェント市立絵画館


『サタデー・ナイト・フィーバー』1977年公開

古今東西。これらの作品がどのように語られているのか、今すぐにでも読みたいですよね。ジョントラボルタやサッカー選手がゴールを決めた際に「天を指す」しぐさも美術史からその秘密が分かってくるのです。

しばしばあることですが、頭の中で理解していても、それを他人に説明するのは大変な困難を要するものです。下手をすると間逆のことが伝わったりもしかねません。

「伝達力」とでもいいましょうか。その力に非常に長けているのが宮下規久朗先生なのです。もし宮下先生の頭の中を覗けたとしても何が何だかさっぱり解らないはずです。それがひとたび整理され筆先に宿るとあら不思議。立て板に水のように伝わるのです。

だから、気分良く読めるのです。
キリスト教にかぎらず、人物によってある意味や物語を表す美術のことを「イストリア」というが、これは日本では「歴史画」とか「物語画」と訳され、西洋美術の美術ジャンルでもっとも上位に位置してきた。そこでは表現された人物たちは身振りによって意味を伝えており、見る者は人物の身振りやしぐさによって、そこで表された感情を把握できるようになっていた。身振りの少ない日本人が西洋のこうした作品を見るとき、表現された身振りを見過ごしてしまいがちである。しかし、西洋絵画を理解する場合、最低限の身振りやしぐさについて知っておく必要があるのだ。(はじめにより)

外国でやってはいけないハンドサイン

実際に海外に出かけると習慣の違いから「しぐさ」が、思わぬことで相手を不快にさせたり、時によってはもめごとの要因にもなったりします。

同様に、絵画を観る場合でも、自国の慣習に基づき多文化の作品を勝手に解釈している可能性も多いに考えられえます。というか、実際にそんな間違いの連続です。

40の様々なしぐさから主に西洋美術を読み解いていく至極の一冊です。日本美術(東洋美術)も随所に登場し人間の根源的な「しぐさ」の諸相にも迫ります。

こうした本は借りて読むのではなく、購入し手元に置いて何度も何度も繰り返し読むのに適しています。その都度新しい発見に出会えます。(今年は「カラヴァッジョ展」もあるしね!)


しぐさで読む美術史』 (ちくま文庫)
宮下規久朗(著)

西洋美術では、身振りや動作で意味や感情を伝える。古今東西の名画を「しぐさ」から解き明かす『モチーフで読む美術史』姉妹編。図版200点以上。


モチーフで読む美術史』2013年
モチーフで読む美術史2』2015年
しぐさで読む美術史』2015年

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