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「佐藤雅晴−東京尾行」

原美術館で開催中の
「ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴—東京尾行」展に行って来ました。


http://www.haramuseum.or.jp/

現代アートの展覧会で映像作品をきちんと全て最初から最後までご覧になられたことありますか?かく云う自分も途中で観るのをやめてしまったりすることしばしば。よほど琴線に触れる作品でないと、立ったまま何十分も鑑賞していることは難しいものです。

でも、安心して下さい。「佐藤雅晴−東京尾行」展ではたとえ佐藤雅晴さんの映像作品を一度も観たことのない方であっても、最初から最後まで、きちんと観られます。それだけでなく、もう一度、二度と何度でも観たくなるそんな映像作品が並びます。


「佐藤雅晴−東京尾行」展示風景

誰しもが興味関心を示し、ぐっと魅入ってしまう映像作品とはどのようなものなのでしょう。最新作「東京尾行」では、作家自身が東京の街中の様子が、短いもので数秒、長くても数分モニターに映し出されます。

12画面のモニターに90シーンの映像。

「そんなにあるの?!」とお思いになるかもしれませんが、行かれたら「もっともっと他のも観たい!」となること間違いありません。なにせ自分を含め会場に居た全ての人の目がそう語っていたのですから。


ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴―東京尾行 / Hara Documents 10: Masaharu Sato - Tokyo Trace

百聞は一見に如かずです。まずはYouTubeで公開されている最新作「東京尾行」のダイジェスト動画を2分間ご覧下さい。

東京のどこかの日常のひとコマの映像ですが、どこかちょっとだけ違和感を覚える点があろうかと。「東京尾行」では、作家が撮影した実写映像の一部がアニメーションに置き換えられています。

このことを「トレース」と作家は称しています。実写にアニメで人物や花を紛れ込ませたのではなく、実写段階で既にあったそれらをなぞり(トレースして)アニメーション化しているのです。


佐藤雅晴「東京尾行」2015-2016年

↑この画像のどこか一か所も実写をトレースしたアニメーションです。

「東京尾行」ははじめは面白く時に笑ってしまうものもありますが、観ていくうちに虚実の境目が次第に曖昧になって行くのが自分でも解ります。

もしかして原美術館で映像作品を観ているという行為自体も実は実体を伴っていない虚ろなものなのではと梶井基次郎的な焦燥感に駆られます。

「影と『ドッペルゲンゲル』。私はこの二つに、月夜になれば憑かれるんですよ。この世のものでないというような、そんなものを見たときの感じ。――その感じになじんでいると、現実の世界が全く身に合わなく思われて来るのです。だから昼間は阿片喫煙者のように倦怠です」
梶井基次郎『Kの昇天――或はKの溺死』



「佐藤雅晴−東京尾行」展示風景

映像を撮ってきてパソコン上でその一部をアニメに置き換えるだけの単純作業のように思えるかもしれませんが、実際の作品を観れば、決してそうでないことがすぐに理解できます。

めちゃくちゃ時間がかかるそうで、たった3秒のシーンを作るのに何週間も撮影しパソコンの前で格闘したこともあるそうです。

大友克洋の『童夢』の単行本が出たのが1983年。

それまでの漫画の概念を覆す(現在にまで尚影響を与え続けている)超リアルで緻密な描写を初めて目にした時の「違和感」と今回の「東京尾行」で感じたそれは非常に似ているものがありました。



『童夢』から20年以上が経過した現在、現実がアニメのように感じてしまう逆転現象が、起こっていることを佐藤氏は「東京尾行」で露わにしてしまったのです。


佐藤雅晴氏

大病と闘いながら完成させた最新作「東京尾行」はこれまでの佐藤雅晴氏が手がけてきた作品のひとつの大きな到達点に達していると共に、これから先の新たな一歩となる大変重要な作品です。

そうそう、会場内には自動演奏ピアノにより、ドビュッシーの「月の光」が奏でられています。この曲は実際に展示室で演奏したものを記憶させたものだそうです。こちらは音のトレース?!

非常に満足度の高い展覧会です。

「佐藤雅晴−東京尾行」は5月8日までです。是非!是非!


ハラドキュメンツ10 佐藤雅晴—東京尾行

会期:2016年1月23日(土)〜5月8日(日)
開館時間:11:00-17:00(祝日を除く水曜は20:00まで)入館は閉館30分前まで
休館日:月(ただし3/21は開館)、3/22
会場:原美術館
http://www.haramuseum.or.jp/
主催:原美術館
協賛:原美術館賛助会員 原美術館賛助会員 原美術館賛助会員
協力:イムラアートギャラリー


ソフィ・カル「限局性激痛」(第2部)1999年

2階は「トレース」をキーワードに原美術館コレクション(ソフィ・カル、森村泰昌、シンディ・シャーマン、ベルント&ヒラ・ベッヒャー、ジェイソン・テラオカ)を紹介しています。

原美術館
公式サイトhttp://www.haramuseum.or.jp
携帯サイトhttp://mobile.haramuseum.or.jp
ブログhttp://www.art-it.asia/u/HaraMuseum

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注:展示室の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
原美術館がキュレーターの育成や若手作家の支援を目的に開催する不定期のプロジェクト、「ハラドキュメンツ」の第10弾として「佐藤雅晴―東京尾行」展を開催します。
佐藤雅晴(さとう まさはる、1973年、大分県生まれ)は、パソコンソフトのペンツールを用いて実写をトレースしたアニメーション作品に取り組んでいます。佐藤にとってトレースとは、対象を「自分の中に取り込む」ことだといいます。それは、自身の暮らす土地や目の前の光景への理解を深め、関係を結ぶ行為とも言えるでしょう。一方、佐藤の作品を見る私たちは、実写とのわずかな差異から生じる違和感や、現実と非現実を行き来するような知覚のゆらぎをおぼえます。人それぞれに多様な感情や感覚を呼び起こす佐藤の作品は、見ることや認識することの奥深さと豊かさを教えてくれます。
今回は、佐藤が作家として日本で注目されるきっかけとなったアニメーション作品、『Calling』(ドイツ編、2009‐2010年)を始め、「トレースとは尾行である」という新たな発想の下、2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて変わり行く東京の今を描いた最新のアニメーション作品『東京尾行』(2015-2016年)、さらに平面作品数点を加え、作家の表現の変遷を展観します。

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