青い日記帳 

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『眦臾扈熟 光と闇、魂の軌跡』

東京美術出版から刊行された『眦臾扈熟 光と闇、魂の軌跡』を読んでみました。


眦臾扈熟 光と闇、魂の軌跡
高島 野十郎 (著)
西本匡伸/高山百合/山田敦雄/江尻潔 編集・執筆

高島野十郎(たかしま やじゅうろう)という画家の名前は聞いたことがありますでしょうか。今年で没後40年を迎える孤高の画家です。(1890年〈明治23年〉8月6日 - 1975年〈昭和50年〉9月17日)

名前は知らなくても作品を観れば「あっ!この画家さんね!!」とすぐにわかるはずです。最もよく知られている作品がこちらです。


眦臾扈熟此蠟燭」大正期、福岡県立美術館蔵

そう高島は別名「蝋燭の画家」としても知られています。緻密に描かれ神秘的な光を画面から発する蝋燭の炎は、まさに彼のトレードマークです。

こんな素敵な絵、一枚部屋に飾りたいものですよね。高島は同じ主題で蝋燭を何十枚とリクエストに応じ描いています。この本にも約20点の「蝋燭」が収録されていますが、ひとつとして同じものはありません。



しかし、一枚として同じ作品はありません。蝋燭の炎が一瞬一瞬姿を変えるのですから当たり前と言ってしまえばそれまでですが、その違いにこそ高島の写実に対する姿勢が表れているように思えます。

自らの理想とする写実絵画の在り方を追求し続けた高島のスタンスが伝わってきます。絵画に打ち込むために家族も持たず生涯孤独と貫いたストイックさも同時に。


眦臾扈熟此からすうり」昭和23年以降、個人蔵

これまで、高島の画業を伝える書籍は、求龍堂さんの『高島野十郎画集―作品と遺稿』しかありませんでした。(巻末に全体の説明が掲載されています)

今回新たに発売となった『眦臾扈熟』個々の作品にそれぞれ解説を載せ、新たに発見された作品も掲載しております。

また、井浦新さんへのインタビューや野十郎ファンでもある川上弘美さんのコラムや写真家の十文字さんのコラムもあります。

専門的な文章では「高島野十郎《蝋燭》の知られざる光」(高山百合)他が収録されています。科学分析結果を踏まえた充実した内容で、野十郎ファンとしては必読の論考です。


眦臾扈熟此雨 法隆寺塔」昭和40年頃、個人蔵

数奇な運命を背負わされた「雨 法隆寺塔」にまつわるエピソードも詳細で読み応えのあるレポートとなっています。

盗難に遭い、「水害」に遭い、そして火事に見舞われた「雨 法隆寺塔」。ドラマ化されても不思議ではないこの作品の修復の過程も明らかにされています。

孤高の画家の新たな全貌を詳らかにする展覧会「没後40年 高島野十郎展」の公式図録としての役割も兼ねていだけあって、とにかく掲載作品数から作品解説までパーフェクトの内容です。


眦臾扈熟此すもも」昭和23年以降、個人蔵

【目次】
第1章 初期作品 理想に燃えて
第2章 滞欧期 心軽やかな異国体験
第3章 風景 旅する画家
第4章 静物 小さな宇宙
第5章 光と闇 太陽 月 蝋燭


展覧会を観に行ってから読もうかな〜と思ったのですが、先に注文し読んでおいて大正解でした。高島その人、高島作品に対してあまりにも知らないことが多過ぎました。

やはり展覧会にはある程度の知識を持って観に行かないと、後悔すること多くあるものです。目黒、足利、九州と巡回する「高島野十郎展」の予習・復習だけでなく、立派な高島野十郎の画集として持っておきたい一冊です。(お値段も良心的!)


眦臾扈熟 光と闇、魂の軌跡
高島 野十郎 (著)
西本匡伸/高山百合/山田敦雄/江尻潔 編集・執筆

高島野十郎
明治23年(1890)、現在の福岡県久留米市の酒造業を営む資産家の家に生まれる。本名は高嶋彌壽。東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業するも、周囲の期待に反して画家の道へと進む。終生画壇と交わることなく、独学で絵を学び、一貫して独自の写実表現を追求した。晩年は千葉県柏市の郊外に自ら設計した質素なアトリエを建て、電気、ガス、水道のない環境で“晴耕雨描”の生活を送る。昭和50年(1975)死去。享年85歳。その存在は生前ほとんど知られることがなかったが、没後、福岡県立美術館をはじめとする各地の展覧会を機に評価が高まっている。


没後40年 眦臾扈熟催
http://www.tnc.co.jp/takashimayajuro40/

2015年12月4日(金)〜2016年1月31日(日)
福岡県立美術館

2016年4月9日(土)〜6月5日(土)
目黒区美術館

2016年6月18日(土)〜7月31日(日)
足利市立美術館

2016年8月7日(日)〜9月22日(木)
九州芸文館

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@taktwi

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高島野十郎(1890-1975)は「孤高の画家」あるいは「蠟燭の画家」として知られる洋画家です。生前にはほとんどその存在が知られることはありませんでしたが、没後の展覧会をきっかけに、近年ますます評価が高まっています。卓越した技量に裏付けられた、息詰まるような緊張感さえ感じさせるその作品のみならず、自己の信念に誠実であろうとした画家としての生き方にもまた多くの人々が魅了され続けています。

明治23(1890)年、福岡県久留米市に酒造家に生まれた野十郎は、東京帝国大学農学部水産学科を首席で卒業しながらも、周囲の期待に反して、念願であった画家への道を選び、敢然と歩みだしました。「世の画壇と全く無縁になることが小生の研究と精進です」とする野十郎は、独学で絵を学び、美術団体にも所属せず、家庭を持つことさえ望まず、流行や時代の趨勢におもねることなく、自らの理想とする絵画をひたすら追求する超俗的な生活を送りました。

野十郎の絵画は、一貫して写実に貫かれています。しかしながら、彼の写実は単なる再現的描写にとどまらず、その表現や対象の捉え方に独特の個性が光り、それゆえ画面は生き生きとした生命感に満ちあふれています。
没後40年を記念する本展では、「からすうり」や「菜の花」をはじめとする静物画や風景画などの代表作や、野十郎の独自性が発揮された「蠟燭」や「月」シリーズ、さらには初公開作品をも含む約150点を、最新の研究成果とともにご紹介します。人々の心と目を引き付けてやまない高島野十郎の深遠なる絵画世界の新たな全貌、そして魂の軌跡をどうぞご堪能ください。
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