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「クラーナハ展」

国立西洋美術館で開催中の
「クラーナハ展―500年後の誘惑」に行って来ました。


「クラーナハ展」公式サイト
http://www.tbs.co.jp/vienna2016/

ドイツ・ルネサンスを代表する画家、ルーカス・クラーナハ(父、1472年〜1553年)の日本で開催される初めての展覧会が、上野・国立西洋美術館で始まりました。

アルプスを隔てたイタリアで花開いたルネサンス。レオナルドをはじめとする三大巨匠とクラーナハは同時代にドイツで活躍した画家です。同じくドイツの画家、アルブレヒト・デューラー(1471年〜1528年)もまた同時代人です。

レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年〜1519年)
ミケランジェロ(1475年〜1564年)
ラファエロ(1483年〜1520年)



ルカス・クラーナハ(父)《アダムとイヴ》1537年
ウィーン美術史美術館
©KHM Museumsverband

歴史のある地点において、このように後世に大きな影響を与え名を残す人物が、雨後の筍のごとく不思議と時を同じくして登場するものです。

同時発生し現代においても絶大な人気を誇るルネサンス期の画家たち。日本ではイタリア・ルネサンス期の画家にこれまで注目が集まっていましたが、次第にその周縁の存在にも目が向けられるようになりつつあります。

ドイツ・ルネサンスを代表するクラーナハやデューラーは、知名度こそあれど日本での展覧会は皆無に近い状況にあります。(2008年にロンドンで開催された「クラーナハ展」色んな意味で話題となりました。)



やっとのことで日本でも「クラーナハ展」が開催されました。待てば海路の日和ありとはまさにこのこと。後世日本の展覧会の歴史を振り返ってみた時に、今年(2016年)は「ドイツ・ルネサンス元年」であったと思い起こすはずです。

煽るわけでも何でもなく、今回の規模で「クラーナハ展」を日本国内で開催するのはこれが最初で最後です。これだけの作品を世界中の美術館から集めてくることを想像しただけでも眩暈がします。

作品数が思っていたよりも少ないとネットで拝見しましたが、どこをどう考えれば少ないと思えるのか全く理解に苦しみます。1500年代に描かれた板絵を海外の美術館からこれだけ借りてきたことはまさに奇跡です。

きっと「すごい展覧会が2016年に西美で開催されたんだよ〜」と語り草になることでしょう。歴史の生き証人となるべくいざ西美へ!


ルカス・クラーナハ(父)《泉のニンフ》1537年以降
ワシントン・ナショナル・ギャラリー

展覧会の構成は以下の通りです。

1:蛇の紋章とともに─宮廷画家としてのクラーナハ
2:時代の相貌─肖像画家としてのクラーナハ
3:グラフィズムの実験─版画家としてのクラーナハ
4:時を超えるアンビヴァレンス─裸体表現の諸相
5:誘惑する絵─「女のちから」というテーマ系
6:宗教改革の「顔」たち─ルターを超えて


イタリア・ルネサンス期の画家に比べるとクラーナハについての知識はあまり持ち合わせていないかもしれません。でも安心してください。もし全く知らなかったとしてもどんな画家で、どんな活躍をし、後世にどんな影響を与えた画家なのかがわかる丁寧な展覧会構成となっています。

ウィーン美術史美術館、ロンドン・ナショナル・ギャラリー、メトロポリタン美術館、ウフィツィ美術館、アムステルダム国立美術館、ブリストル市立美術館、トリエステ国立古典絵画館、ブダペスト国立西洋美術館、奇美美術館、ガゴシアン・ギャラリーそして個人蔵。。。

これらの美術館にとっても大事な大事な宝であるクラーナハの作品を上野に集結させてしまったのですから驚きです。どんな魔法を使ったのでしょう。



ラファエロの聖母子像やボッティチェリのヴィーナスに比べると華やかさに大きく欠けるところがあります。しかし、そこがドイツ・ルネサンス絵画の真骨頂でもあるのです。そう華奢で重い瞼に笑みのない表情そして微妙にエロで蠱惑的な点こそが。

デューラーはベネチアへ実際に足を運びイタリアの光を浴びているので、北方的な要素が若干和らいでいます。それに比べクラーナハはどうでしょう。

アルプス山脈を挟み北の大地で醸成された禁欲的でありつつ蠱惑的な白い肌。(第4章:時を超えるアンビヴァレンス─裸体表現の諸相 のタイトル流石です。)


ルカス・クラーナハ(父)《ロトと娘たち》1528年
ウィーン美術史美術館
©KHM Museumsverband

誘惑する女性たちを描かせたらクラーナハの右に出る者はいません。ここがイタリア絵画とは決定的に違う点です。ビロードの服や派手過ぎる装飾品の表現は是非会場で単眼鏡を使い細部まで見てください。これぞ北方ルネサンス!

それとなんと言っても女性たちの目線(視線)の描写です。「目力がある」といった表現を今ではよく使いますが、クラーナハの女性たちは目力ではなく、目線力(視線力)にその魅力が集約されています。目線の先の空気までもが彼女たちの支配下に置かれてしまったかのようです。況や男性をや。

日本で最初で最後の開催となる「クラーナハ展」会場には彼から影響を受け制作された後世のアーティストの作品も展示されています。


レイラ・パズーキ「ルカス・クラーナハ(父)《正義の寓意》1537年による絵画コンペティション
2011年 作家蔵

ポスター、チラシも使われている「正義の寓意」を中国の絵画村で模写作品を生産している職業画家たちに時間の制約を設け描いてもらった作品が壁一面に並べられています。すべて違う画家の手によるものです。

西洋絵画を東洋の画家に模写させること、アートバブル絶頂期の中国でそれを行ったこと、それらは一見奇妙なことに思えるかもしれませんが、実はクラーナハ自身も行っていたことなのです。

クラーナハもまた大きな工房を構え、クライアントのリクエストに応じ好みの絵画を描いていたそうです。人気のある作品は「複製」され「再生産」されていたのです。

レイラ・パズーキはそれを承知しこうしたプロジェクトを行いました。しかも選んだ絵画が「正義の寓意」というのもなんともシニカルではありませんか。


ルカス・クラーナハ(父)《正義の寓意》1537年
個人蔵

この他にもピカソ、マルセル・デュシャン、マン・レイ、ジョン・カリンそして岸田劉生(サインまで真似しています)までも!ただしあくまでも「クラーナハ展」なので関連する絵画作品は微妙にずらして展示してあります。あ、そうだ森村泰昌さんも。

ポスターに使用されている《ホロフェルネスの首を持つユディト》は数年間にわたる修復を終え今回初お披露目となっています。webや紙媒体でもこれだけ美しいのです。本物の前に立ちその顔を見つめたらしばらく動けなくなるはずです。

手元にある生々しいホロフェルネスの首が自分の顔に見えてきたら完全にクラーナハの魅力にやられてしまった証左です。

「クラーナハ展」は2017年1月15日までです。若冲展のように爆発的な混雑はしないかと思います。それでもなるべく早めに観に行かれた方が得策です。この展覧会観ずして西洋絵画は語れません。

今年の展覧会ベスト5入り間違いなし!超必見です!!


クラーナハ展―500年後の誘惑

会期:2016年10月15日(土)〜2017年1月15日(日)
開館時間:午前9時30分〜午後5時30分
毎週金曜日:午前9時30分〜午後8時
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日(ただし、2017年1月2日(月)は開館)、2016年12月28日(水)〜2017年1月1日(日)
会場:国立西洋美術館(巡回:国立国際美術館)
http://www.nmwa.go.jp/
主催:国立西洋美術館、ウィーン美術史美術館、
TBS、朝日新聞社
後援:外務省、オーストリア大使館、BS-TBS、TBSラジオ、J-WAVE
特別協賛:大和ハウス工業
協賛:大日本印刷
協力:オーストリア航空、ルフトハンザカーゴ AG、日本通運、西洋美術振興財団

公式サイト
http://www.tbs.co.jp/vienna2016/
Twitter
https://twitter.com/tbs_vienna2016

世界遺産に登録された国立西洋美術館を10倍楽しむ5つの方法。


ルカス・クラーナハ 流行服を纏った聖女たちの誘惑

【次回展】

シャセリオー展
会期:2017年2月28日〜5月28日
会場:国立西洋美術館

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@taktwi

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この記事のURL
http://bluediary2.jugem.jp/?eid=4505

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注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
ルカス・クラーナハ(父、1472-1553年)は、ヴィッテンベルクの宮廷画家として名を馳せた、ドイツ・ルネサンスを代表する芸術家です。大型の工房を運営して絵画の大量生産を行うなど、先駆的なビジネス感覚を備えていた彼は、一方でマルティン・ルターにはじまる宗教改革にも、きわめて深く関与しました。けれども、この画家の名を何よりも忘れがたいものにしているのは、ユディトやサロメ、ヴィーナスやルクレティアといった物語上のヒロインたちを、特異というほかないエロティシズムで描きだしたイメージの数々でしょう。艶っぽくも醒めた、蠱惑的でありながら軽妙なそれらの女性像は、当時の鑑賞者だけでなく、遠く後世の人々をも強く魅了してきました。

日本初のクラーナハ展となる本展では、そうした画家の芸術の全貌を明らかにすると同時に、彼の死後、近現代におけるその影響にも迫ります。1517年に開始された宗教改革から、ちょうど500年を数える2016-17年に開催されるこの展覧会は、クラーナハの絵画が時を超えて放つ「誘惑」を体感する、またとない場になるはずです。
展覧会 | permalink | comments(2) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

この展覧会大阪は来年なんだけれど、楽しみにしております
シルフ | 2016/11/01 12:47 PM
血の一滴、髪の毛の一本さえも細心の注意を払う正に北方のモナリサ、ヴィーナスですね。背景が黒いのでブラックボードのキャンバスから描き起こした手法かと思いきや、そうでは無くて透明水彩画の様に元の白さを最大にキープする薄塗りの手法だと言う。思索的な内面性があって神がかった憑かれた様な表情にも思えて不思議です。上野東京都美術館で観たヴェネチア派展でもジョバンニ・ベリーニの聖母子像等も高揚感或いは恍惚感があってその頬の赤みが魅力的でした。テイチィアーノのダナエやマグダラのマリアもそうでした…。でも、目玉のフローラはそう言った官能性を抑制していてやや表情が畏まって固いのかなあ…。
PineWood | 2017/03/12 8:54 PM
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