![]() 2017.01.23 Monday
「ティツィアーノとヴェネツィア派展」
東京都美術館で開催中の
日伊国交樹立150周年記念「ティツィアーノとヴェネツィア派展」に行って来ました。 ![]() http://titian2017.jp ミケランジェロにラファエロといったイタリア、フィレンツェ・ローマを主な活躍の場としたルネサンス期の作家の展覧会は国内でも頻繁に開かれますが、ヴェネツィア派に光を当てる展覧会はそう多くはありません。 昨年から今年にかけ日伊国交樹立150周年記念としてヴェネツィア派を紹介する展覧会が開かれていることは、イタリアルネサンス期の作品を総合的に捉えるまさに好機と言えます。 国立新美術館での「アカデミア美術館所蔵 ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち」同様、「ティツィアーノとヴェネツィア派展」も見逃せない展覧会です。 ![]() ティツィアーノ・ヴェチェッリオ「マグダラのマリア」1567年 油彩、カンヴァス ナポリ、カポディモンテ美術館 ところで、ヴェネツィア派の絵画が具体的にどんな作風のものが多く描かれたのか、またイタリアルネサンスを代表するフィレンツェ派との違いはどんな点があるのか。この違いが分かっているのといないのでは「ティツィアーノとヴェネツィア派展」の満足度も違いが出てきてしまいます。 事前に公式サイトで敢えて予習をせずに観に行かれる方もいらしゃると思いますが、今回に関しては公式サイトの隅々まで目を通して行かれることをおすすめします。 とりわけ「イタリアルネサンス ヴェネツィア派VSフィレンツェ派」は予習に持って来いです。同じものが会場にもありますが事前に知っておくとどうしてヴェネツィア派の作品って小振りなものが多いのだろう?なんて疑問も初めから解消されます。 http://titian2017.jp/ ![]() ジョヴァンニ・ベッリーニ「聖母子(フリッツォーニの聖母)」1470年頃 テンペラ、板(19世紀にカンヴァスに移し替え) ヴェネツィア、コッレール美術館 最低限、これだけでも頭に入っていると展覧会がぐんと面白くなるはずです。 《ヴェネツィア派》 ・水の都 ・色彩重視 ・油彩画 《フィレンツェ派》 ・花の都 ・素描重視 ・フレスコ画 海に囲まれた特異な立地にあるヴェネツィアでは、湿度の関係でフレスコ画は不向きゆえ、油彩画がメインとなります。サイズもどちらかというと小振りのものが多くなります。 ![]() ベルナルディーノ・リチオーニ「騎士の肖像」1520-25年 カンヴァス、油彩、ウフィツィ美術館、フィレンツェ美術館 「何だ、小さな絵ばかりだな〜」なんて文句言っちゃだめですよ。それこそヴェネツィア派絵画のひとつの大きな特徴なのですから。 展覧会の構成は以下の通りです。 1:もうひとつのルネサンス、ヴェネツィア|1460-1515 2:ティツィアーノの時代|1515-1550 3:ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼー巨匠たちの競合|1550-1581 ヴェネツィア派の版画ースキアヴォーネを中心に さてさて、主役のティツィアーノ作品ですが、全部で7点も来ています。1章から3章まで時代で区分されており各章に彼の代表作と呼べる作品を据えています。 ![]() ティツィアーノ・ヴェチェッリオ「ダナエ」1544-46年頃 油彩、カンヴァス ナポリ、カポディモンテ美術館 ウフィツィ美術館の至宝ティツィアーノ「フローラ」に関しては今更なにも説明は要りません。ただ作品の前に立ちうっとりするだけです。そして出来れば色を重ねることで美しい画面を創り上げていることが分かればそれだけでこの展覧会に来た価値があります。 そして初来日となる「ダナエ」が同じフロアにあるのですから、イタリア絵画ファンならずとも感涙ものです。 ティツィアーノをわざわざ訪ねこの「ダナエ」を目にしたミケランジェロがそのあまりの美しさに嫉妬したことも納得できます。ミケランジェロ曰く。「色彩も様式も気に入ったが、素描の修練が足りないことが悔やまれる」 「線のフィレンツェ、色のヴェネツィア」とは本当に上手くそれぞれの特徴を捉えている表現です。 ![]() ヤコポ・ティントレット「ディアナとエンディミオン(もしくはウェヌスとアドニス)」1543-44年 油彩、カンヴァス、フィレンツェ、ウフィツィ美術館 こちらの記事にも書きましたが、ヴェネツィア派を代表するティツィアーノ作品は、印象派の画家たちとりわけルノワールに大きな影響を与えることになります。 ルノワールが敬愛し、その画風を学んだティツィアーノ。線でなく明るい色彩で構成された画面は観る者を幸せな世界へ誘います。1000年以上も平和が続いたヴェネツィアだからこそそうした作品が描けたとも言えます。 極上ティツィアーノ作品とヴェネツィア派の特徴についてとても分かりやすく学べる好機です。一つだけ難点を言えばこの展覧会観ちゃうと無性にベニスに行きたくなってしまうことです。水の都が呼んでいます。 「ティツィアーノとヴェネツィア派展」は4月2日までです。是非! ![]() 日伊国交樹立150周年記念 「ティツィアーノとヴェネツィア派展」 会期:2017年1月21日(土)〜4月2日(日) 休館日:月曜日、3月21日(火) ※ただし、3月20日(月・祝)、27日(月)は開館 開館時間:9:30〜17:30(入室は閉室の30分前まで) ※金曜日は9:30〜20:00(入室は閉室の30分前まで) 主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社 後援:イタリア大使館 協賛:大日本印刷 協力:アリタリア-イタリア航空、日本貨物航空 特設WEBサイト:http://titian2017.jp ![]() 展覧会オフィシャルショップで販売されていた中で最も目を引いたのが「今治ガーゼストール」。オールシーズン使える優れモノだそうです。 「ティツィアーノとヴェネツィア派展」鑑賞前と鑑賞後に何度でも読みたい充実の内容。展覧会で紹介されていないヴェネツィアの知られざる側面も具に書かれている名著です。 ↓ ![]() 『ヴェネツィア――美の都の一千年』 (岩波新書) 宮下規久朗(著) 水の都ヴェネツィアは、たぐい稀な「美の都」でもある。千年以上にわたり独立を保ち「アドリア海の女王」と呼ばれた都市国家は、ティツィアーノらの天才画家を生み、ヨーロッパ中から一流芸術家が集まった。町のあちこちに息づき、いまも新しさを加えている建築や美術を切り口に、ヴェネツィアの歴史と魅力を存分に紹介する。(カラー写真多数) Twitterやってます。 ![]() Facebookもチェック! この記事のURL http://bluediary2.jugem.jp/?eid=4603 JUGEMテーマ:アート・デザイン 注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。 アドリア海に面する水の都ヴェネツィアは、15世紀から16世紀にかけて、海洋交易によって飛躍的に繁栄するとともに、フィレンツェ、ローマと並ぶルネサンス美術の中心地として輝かしい発展を遂げました。 ![]() |