青い日記帳 

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「ゲルハルト・リヒター展」

川村記念美術館で開催中の
「開館15周年記念特別展 ゲルハルト・リヒター―絵画の彼方へ―展」に
行って来ました。



静かな、そして穏やかな興奮に包まれる展覧会です。

もしかして、今開催されている展覧会の中で
最も観ておかなくてはならないものかもしれません。

ゲルハルト・リヒターは1932年生まれ。
現役で作品を創作し続けている「現役」の画家さんです。

「現代美術はちょっと・・・」という方にもお勧めです。
(逆にお嫌いな方こそ是非)

なぜならリヒターの「作品」を観る場でありながら
実は作品を観ている「自分」を観る場でもあるような気がするからです。

「世界最高峰の画家」
「世界で最も注目されている画家」
なんて修飾語を付けられると、ついつい「本当かな〜」と
穿った気持ちになってしまいます。

でもそれらの言葉もまんざら嘘ではないように思えました。

リヒターはこの著書の中でこう述べています。はっきりと。
ゲルハルト・リヒター写真論/絵画論
ゲルハルト・リヒター写真論/絵画論
ゲルハルト リヒター, 清水 穣, ワコウワークスオブアート

デュシャン以来、作られるものはレディメイドだけである。
たとえ自分が作ったとしても・・・


更に展覧会会場内で流されていたビデオの中でこうも言っています。
デュシャンが登場して絵画は死んだ。

現在の画家が置かれた状況をよく把握し理解しているからこそ言える言葉です。

「ゲルハルト・リヒターにとってデュシャンは目の上のこぶである」と
清水穣氏が語っている言葉がそれを端的に表しています。

GERHARD RICHTER  ゲルハルト・リヒター (DVD付)
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アルミン・ツヴァイテ, 清水 穣, 林 道郎, 畠山 直哉
 ↑
この展覧会のカタログはアマゾンでも購入できます!
美術館で流されている映像のDVDも付いています!
しかもこちらで買う方がお得。。。!!
(しまった!)

また「こぶ」はリヒターにとって何もデュシャンだけではありません。
それよりも前に登場した「写真」もまた「こぶ」なのでしょう。

雑誌の白黒写真をもとにした「フォト・ペインティング」や
デュシャンを強く意識したような「ガラス」の作品などはすぐに
「それ」だと観て分かるものばかりです。

この他にも色見本のような「カラー・チャート」や灰色の作品「グレイ・ペインティング」また、「アブストラクト・ペインティング」などなど制作テーマは非常に豊富でこれといったスタイルを持っていないかのようです。
(別の表現では多様性を持っているといえます)

リヒターは「写真」や「デュシャン」を目にしてしまった以上
「絵画」の生き残る道はこれ(多様性)しかないと考えたのでしょう。
あえて自らを一元化していない作家。それがリヒター。

『芸術新潮』8月号にリヒターのインタビューが載っていました。
その中でリヒターは「絵画とはあるいは、別の状態になっていくということです。そう、すでにアインシュタインのあのエネルギーと質量の公式です。質量、エネルギー、そうなのです。

これを展覧会を観た後あらためてこれ読みました。
どこかで聞いたことのある内容だなーと思い、資料をあさってみると…
芸術家の岡田真宏氏が同じような話をなさっていました。
驚くくらいに同じ内容です。
長文なので、私のサイトにページを作りそちらに文章載せました。
岡田氏も快く承諾して下さいました。この場を借りてお礼申し上げます。

岡田氏の文章はこちらです。(読み応えあります)

岡田氏は「ゆらぎ」
『芸術新潮』は「ブレやボケ」と表現しているものがあります。

これこそリヒターの作品を紐解く鍵となる言葉「Schein」(シャイン)です。

「Schein」を独和辞典で調べてみると…
仝、明り、輝き
外観、見かけ、仮象(哲)
証明書、許可証、認定書
せ翳

一般的には,琉嫐で用いられます。
因みに我が家の窓枠の色は「シャイングレイ」です。
キラキラ光る光沢のある灰色です。

リヒターはこの意味と△琉嫐を絵画に持たせたようです。
「見かけと実際」「実存と仮象」

虚が実になり、実が虚となる。
デュシャンや写真家・杉本博司の作品を見ればそれは明白です。

リヒターの作品は全てがそうではないのですが
自己主張していないものが多いと思いました。
アメリカンアートとは対照的です。

ガラス板」(2002)や「グレイ・ペインティング」シリーズは作者の自己主張は
ほとんどゼロに近く、作品かどうかさえも果たして疑問です。

しかし、その「絵」の前に立ち鑑賞すると「シャイン」(仮象)が観えます。
もちろん、自分の姿が写っただけですが、それが「作品」です。

リヒターの使用しているガラス板は反射性の高いものだそうです。

この記事のはじめに
「実は作品を観ている「自分」を観る場でもあるような気がするからです。」
と記しましたがそれはこの事を表しています。

「見かけと実際」「実存と仮象」

ゆらいで見える自分の姿はまさにシャインに他なりません。
自分の姿だけでなく写っている会場もまたシャインです。

この「ガラス板」を川村記念美術館の美しい自然の中に持ちこんだら・・・
持ち込んでみたい!!と強く感じました。

この展覧会は今年の2月12日から
デュッセルドルフ・K20州立美術館、ミュンヘン・市立レーンバッハギャラリー、
金沢21世紀美術館を経て現在川村記念美術館で開催している展覧会です。

川村のサブタイトルが「絵画の彼方へ」です。
金沢21世紀美術館では「鏡の絵画」でした。
両方の美術館ともこのタイトルを付けた学芸員さんに脱帽です!!
(それと、川村の学芸員さん色々教えて頂き、ありがとうございました)



自分を作品に写して観る作品。(それもぼんやりと写ります。)
できれば開館してすぐの時間。まだ会場に他の人が居ない時に
行かれるのがベストでしょう。
そして「見かけ」を気にするのならとびっきりのお洒落をして!
逆に勇気があるなら部屋着のままの姿で。

ドイツの辞書引いたらこんな諺がありました。
Der Schein trugt

見かけは当てにならない」という意味だそうです。



本展は、世界で今最も大きな注目を集めているドイツの現代画家、ゲルハルト・リヒター(1932- )の40年にわたる画業を展観する日本初の回顧展です。
 2001年に当館で開催された『ゲルハルト・リヒター ATLAS』展では、リヒターのライフワークである写真とドローイングによる膨大なイメージ・アーカイヴ《ATLAS》が日本で初公開され、多くのリヒター・ファンを生みました。そして、川村記念美術館の開館15周年を迎えた2005年、リヒター氏本人の全面的協力を得て、1960年代から2004年の最新作に至る約50点を一挙にご紹介する、待望の回顧展が実現しました。
 多くの人がリヒター芸術の真髄に触れる、またとない機会となることを願っています。
展覧会 | permalink | comments(8) | trackbacks(10)

この記事に対するコメント

 シャイングレーということはT○STEMですね!というどうでもいい突っ込みは置いておいて。。。(笑)

 なるほど、千葉市方面に出かける際はこういう組み合わせ方があるのですか。参考になります。こちらは会期がまだ1ヵ月半あるので、機会を見て行ってこようと思います。
mizdesign | 2005/12/07 9:59 AM
ご無沙汰です。

現代美術の中でもとりわけ好きな画家のひとりです。コンセプトが確かにデュシャンと通ずる部分が多いですよね。

>なぜならリヒターの「作品」を観る場でありながら
>実は作品を観ている「自分」を観る場でもあるような気がするからです。

思わず「ブラボー」って叫んじゃいましたよ。素晴らしく適確な表現だと思います。

本当にTakさんの造詣はいろんな分野で深いですね。素晴らしいです。

シルフ | 2005/12/07 12:32 PM
記事を書いてくれてありがとうございます。

佐倉は、ちょっと遠いですが、必ず行こうと思ってます。

今後も記事を楽しみにしてます。(^^)
lignponto | 2005/12/07 4:07 PM
@mizdesignさん
こんばんは。

はい。トステムです。
一発でこの色に選びました。
家の外壁やカーテンなどと
あわせるのが容易ですし
なによりあの輝き・シャインがたまらないです!

リヒター展は是非!お勧めです。

@シルフさん
こんばんは。

こちらではご無沙汰です。
お忙しい中コメント頂戴しありがとうございました。

更に更にシルフさんに褒めていただけるなんて
嬉しい!!
今日も実は近代美術館でリヒターを見てきたのですが
川村ほど印象的ではありませんでした。
やっぱり彼の作品はシャインでないと。

@lignpontoさん
こんばんは。

気持ちを上手く言葉にできなくて
すみません。分かりにくい文となってしまいました。

ただ、百聞は一見にしかず。
おめかししてお出かけになってください。


Tak管理人 | 2005/12/07 10:09 PM
>実は作品を観ている「自分」を観る場でもあるような気がするからです

この方の写真風絵画に騙されっぱなしだった自分は、所詮君の目なんて
その程度のもんなんだよ、と作者に言われてるような気がしてなりませ
んでした。(試されている感じといえばよいのでしょうか。)

戦略的で作者の意図を感じさせる作品が多かったように思います。
うまく言葉にできないのですが、非常に(!)刺激的な展覧会でした。
「ATLAS」を実際に観てみたくて仕方ありません。
code_null | 2005/12/09 12:42 AM
@code_nullさん
こんばんは。

色々な画家の作品がこの展覧会では
頭をよぎりました。
ロスコ・ルームと隣あわせなのも
意図的なのでしょうか?
できたらフランクステラの初期の作品も
展示してほしかったなーと思いました。

私も騙されているので、まだ。
年が明けたらもう一度行って観てきます。
そして多分、また騙されて帰ってくるでしょう。
Tak管理人 | 2005/12/09 6:42 PM
Takさん、ようやく先週行ってきました。
いやはや良かったです。久々に図録も購入しました。
DVD見返してます。

>実は作品を観ている「自分」を観る場でもあるような気がするからです

全く同感です。
それにしてもガラスの作品は、
その点をズバリ的確に、しかも実に美しく見せていましたよね。
抽象画もフォト・ペインティングもしかり。
体系的に見たことのない方だったので、
あれほど研ぎすまされた感性と、
考え抜かれたアプローチをお持ちとは思いませんでした。
脱帽です。
はろるど | 2006/01/20 1:01 AM
@はろるどさん
こんばんは。

行かれましたか!!
そして感動してもらえましたか!!
それは嬉しいな〜

今日MOTの常設でリヒターが一枚だけ
展示してあったのですが、一枚だけ
他の作品に紛れて展示してあっても
感動はほとんどわいてきません。

今回のような展覧会だからこそ
「分かる」(分かった気になる)のでしょうね。
佐倉はちょっと遠いけど
あそこで静かにやってくれるからこそだと思います。
Tak管理人 | 2006/01/20 10:22 PM
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