青い日記帳 

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「アルチンボルド展」

国立西洋美術館で開催中の
「アルチンボルド展」へ行って来ました。


http://arcimboldo2017.jp/

ジュゼッペ・アルチンボルド(Giuseppe Arcimboldo, 1526年 - 1593年7月11日)の名前は知らなくても、彼が描いた奇妙奇天烈な絵は一度はどこかで目にしたことがあるはずです。

そして、「何だ!これは!!」とその発想に驚いたことでしょう。Bunkamuraザ・ミュージアムでの「だまし絵展」ではアルチンボルドの作品がメインビジュアルに起用さたのもまだまだ記憶に新しいところです。


ジュゼッペ・アルチンボルド《》 1572年 油彩/カンヴァス デンバー美術館蔵
©Denver Art Museum Collection: Funds from Helen Dill bequest, 1961.56
Photo courtesy of the Denver Art Museum

スーパーマーケットへ買い物へ行けばここに描かれている野菜や果物のほとんどが揃ってしまうでしょう。しかしエルチンボルドがこの絵を描いたのは16世紀です。関ヶ原の戦いよりも前、もちろん冷蔵庫なんてありませんし、宅急便も存在しなかった時代です。

自分の生まれた土地から一歩も出ずに同じ国で過ごしたとすると、せいぜい生涯に数種類の果物を目にするのがやっとでしょう。同じことは野菜や花そして魚についても言えます。


ジュゼッペ・アルチンボルド《》 1566年 油彩/板 ウィーン美術史美術館蔵
©KHM-Museumsverband

《水》には実に約60種類もの水棲生物が描き込まれています!それもとても想像でなくきちんとした観察に基づいた博物学的観点からも十分耐えうるリアルさで描かれています。

では、一体アルチンボルドは身近に存在しなかった魚や野菜、果物などをどのようにして知ったのでしょう?狩野派のように粉本でもあったのでしょうか。それとも若冲のように実家が八百屋だったのでしょうか。

その答えを解く鍵はアルチンボルドが仕えた人たちにあります。イタリアのミラノで生まれ画家の父と共に教会の絵などを手掛けていたアルチンボルドは、その才能を買われ36歳の時にウィーンへ招聘されます。彼を呼んだのは後の皇帝マクシミリアン2世でした。


アルチンボルドが仕えたハプスブルク家皇帝や皇女たちの肖像画も展示されています。

マクシミリアン2世が亡くなった後も息子のルドルフ2世に仕え、なんと25年間もウィーンの街で宮廷画家として過ごしたのです。だんだん答えが見えてきましたね。そうアルチンボルドは一般の人が目にすることの出来ない珍しい野菜や果物、花、そして動物などを実際に観察することが出来たのです。

皇帝たちは世界中の珍しい動物を集めた動物園まで有していました。アルチンボルドはそこで珍しい動物たちを存分に写生できたのでしょう。

歴史に「もし」はありませんが、もしアルチンボルドが生まれ故郷のミラノに留まっていたら、こうした奇妙奇天烈な作品は生まれなかったのです。


ジュゼッペ・アルチンボルド《秋》 1572年 油彩/カンヴァス デンヴァー美術館蔵
©Denver Art Museum Collection: Gift of John Hardy Jones, 2009.729 Photo courtesy of the Denver Art Museum

時は丁度大航海時代、博物学がブームとなっていた時代です。皇帝たちは、ヨーロッパのみならず世界中から珍しい動物や植物を集め、学者たちに研究させていたのです。まさに「クンストカンマー」(ヴンダーカンマー)の時代です。

皇帝をはじめこの絵を当時観た人たちは、だまし絵的な面白さよりもそこに描き込まれたまだ目にしたことのない異国の花や動物たちに強く惹かれたに違いありません。ワクワクしながら。


「アルチンボルド展」展覧会風景

展覧会の構成は以下の通りです。

1:アルチンボルドとミラノ
2:アプスブルク宮廷
3:自然描写
4:自然の奇跡
5:寄せ絵
6:職業絵とカリカチュアの誕生
7:上下絵から静物画へ


アルチンボルドほど作品のイメージがひとり歩きしている画家も滅多にいません。レオナルド・ダ・ヴィンチやヨハネス・フェルメールのように、人口に膾炙していないところも逆にアルチンボルドの魅力なのかもしれません。

しかし、「だまし絵の名手」とか「奇想の宮廷画家」という修飾語は彼の画業のほんの一点しか捉えていない誤ったものと言えます。

日本で初めて開催となる(多分もう出来ない)「アルチンボルド展」では、そんな彼の間違ったイメージを払拭するような展示構成になっています。

第6勝では「職業絵」を、第7勝では「上下絵」をそれぞれ紹介しています。


ジュゼッペ・アルチンボルド《司書》 油彩/カンヴァス スコークロステル城蔵
©Skokloster Slott/Samuel Uhrdin

ソムリエや法律家を描いた作品も展示されていますが、これらには皇帝の繁栄を願い描いた「春夏秋冬」や「四大元素」シリーズと違い、どれも強烈な皮肉が込められています。とりわけ「法律家」は必見です。ここまで酷く描かれるなんて何か作家とトラブルがあったのでしょうか。


ジュゼッペ・アルチンボルド《コック/肉》 1570年頃 油彩/板 ストックホルム国立美術館蔵
©Photo: Bodil Karlsson/Nationalmuseum

上下絵はミラノ滞在の晩期に描いたユニークな作品です。お肉が皿に盛られていますが、これを180度回転させるとあら不思議!人間の顔が現れます。この肉料理を調理したコックさんの!!

奇想の画家やトリックアート、だまし絵作家的な捉え方が先行してしまっているアルチンボルドですが、ハプスブルク家に使えた宮廷画家であり当時の最先端のものを巧みに組み合わせ人物像に仕立てたとてもウィットに富んだ人物でした。

そして、アルチンボルド作品の全体から感じる気持ち悪さ(グロテスクな感じ)の根源もこの展覧会で明らかにしています。それはあのレオナルド・ダ・ヴィンチだったのです。


レオナルド・ダ・ヴィンチに基づく《グロテスクな3つの頭部のカリカチュア》 ペン、褐色インク/紙 大英博物館蔵
©The Trustees of the British Museum 

このようなレオナルドが描いた風刺的グロテスク画をミラノ時代に、アルチンボルドは目にしていたのです。

何と贅沢なことに、「アルチンボルド展」にウィンザー城(イギリス王国コレクション)所蔵のレオナルドの素描が「参考画」として展示されているのです。

いや〜びっくりしました。これもっともっと話題になってよいと思います。だって普段観たくても観られないのですから。



そうそう、アルチンボルドの代表作「四季」(春、夏、秋、冬)と「四大元素」(大気、火、大地、水)がぞれぞれペアになっていることを大きなボードで紹介しているコーナーもありました。

ここで初めて、どうして右向きと左向きの肖像画があるのだろう?という謎が解けました。それぞれセットだったのですね、向かい合うように。


「アルチンボルド展」展覧会風景

日本で初めて開催される本格的な「アルチンボルド展」。待ち望んでいた人も多いはずです。油彩作品数が少なく、所蔵している海外の美術館から借りるのがとても難しいアルチンボルドの油彩が10数点集結しています。

これだけまとめて観られることは二度とないでしょう。今年の年間ベスト10入り間違いなしの内容です。混雑する前になるべく早めに観に行きましょう〜。

「アルチンボルド展」は9月24日までです。是非!


「アルチンボルド展」

会期:2017年6月20日(火)〜2017年9月24日(日)
開館時間:午前9時30分〜午後5時30分
毎週金・土曜日:午前9時30分〜午後9時
(ただし6月23日、24日は午前9時30分〜午後8時)
※入館は閉館の30分前まで
会場:国立西洋美術館
http://www.nmwa.go.jp/
休館日:月曜日(ただし、7月17日、8月14日、9月18日は開館)、7月18日(火)
主催:国立西洋美術館、NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社
協賛:損保ジャパン日本興亜、大日本印刷、ブレンボ、三井住友銀行
協力:アリタリア‐イタリア航空、全日本空輸、西洋美術振興財団
特設サイト:http://arcimboldo2017.jp/

「だまし絵画家」とだまされるな!日本初の「アルチンボルド展」


会場入り口付近にある「アルチンボルドメーカー」で自分の顔をアルチンボルド風の3D絵に。似てますかね〜


奇想の宮廷画家 アルチンボルドの世界

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注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
ジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593年)は、16世紀後半にウィーンとプラハのハプスブルク家の宮廷で活躍した、イタリア・ミラノ生まれの画家です。自然科学に深い関心を示したマクシミリアン2世、稀代の芸術愛好家として知られるルドルフ2世という神聖ローマ皇帝たちに寵愛されたアルチンボルドは、歴史上でもひときわ異彩を放つ、宮廷の演出家でした。そんな「アルチンボルド」の名は何よりも、果物や野菜、魚や書物といったモティーフを思いがけないかたちで組み合わせた、寓意的な肖像画の数々によって広く記憶されています。奇想と知、驚異と論理とが分かちがたく交錯するそれらの絵画は、暗号のようにして豊かな絵解きを誘い、20世紀のシュルレアリスム以後のアーティストたちにも、大きな刺激を与えました。

本展は、世界各地の主要美術館が所蔵するアルチンボルドの油彩約10点や素描を中心に、およそ100点の出品作品により、この画家のイメージ世界の生成の秘密に迫り、同時代の文脈の中に彼の芸術を位置づけ直す試みです。日本で初めて、アルチンボルドのユーモアある知略の芸術を本格的にご紹介するこの機会を、どうかご期待ください。
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この記事に対するコメント

会期末とあって、かなりの賑わいです。シュールレアリズムの元祖と言う観点で観て視ると又、違った味わいが有りました。庭師像には性のシンボルが豊饒なイメージとして隠されています。皇帝へのオマージュの代表作も、生き物の息遣いや生命力溢れた魅力が感じられて来ました。
pinewood | 2017/09/20 5:02 PM
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ジュゼッペ・アルチンボルド展を鑑賞してきた。 ジュゼッペ・アルチンボルド(1526-1593年)は、16世紀後半にウィーンとプラハのハプスブルク家の宮廷で活躍したイタリア・ミラノ生まれの画家。 果物や野菜、魚や書物といったモティーフを思いがけないかたちを組み合わ
アルチンボルド展 | もののはじめblog | 2017/08/06 9:12 AM