弐代目・青い日記帳 

  
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「川端龍子展」
山種美術館で開催中の
没後50年記念「川端龍子ー超ド級の日本画ー」展に行って来ました。


http://www.yamatane-museum.jp/

「会場芸術」という言葉をご存知でしょうか。

当初は龍子の作品を批判するために用いられた会場芸術ですが、多くの人に展覧会会場で身近に鑑賞してもらえる大作として自ら積極的にこの言葉を用いたそうです。

まるで桃山時代の障壁画のような大画面の迫力満点の龍子の作品は、日本画という枠から良い意味ではみ出し観る者に驚きを与えます。


川端龍子「香炉峰」1936年
大田区立龍子記念館蔵

驚愕のあまり後ずさりしてしまいそうなほど迫力のある作品です。戦争中従軍画家として実際に中国で戦闘機(偵察機)に登場した経験のある龍子。

それにしても半透明な戦闘機は一体何なのでしょう。これは決してステルス戦闘機ではなく、あえて半透明にすることで香炉峰の自然が邪魔なく観られるように工夫?されたものです。

龍子曰く「(機体の)迷彩に背景の自然の山を利用した」とのこと。タイトルの「香炉峰」からは戦闘機や戦争ではなく『枕草子』に記されている雅なイメージが先行しがちですが、龍子はあえてそれを逆手にとって付けたのでしょうか。


川端龍子「香炉峰」(部分)

圧倒されっぱなしではいけません。これでもれっきとした日本画ですので近くにぐいっと寄って観て下さい。先頭の部分には黒地に銀が使われていて角度を少し変えただけでキラキラ輝いて見えます。

因みに、操縦性のパイロットは龍子自身の姿だそうです。かなり凛々しくイケメンに描いていますね。


川端龍子「爆弾散華」1945年
大田区立龍子記念館蔵

終戦の3日前に自宅が空襲に遭い、母屋や庭は爆弾で吹き飛ばされてしまいました。その時の庭に植えられていた植物(夏野菜)が飛び散る様子を描いています。

炎や土煙は一先描かずに代わりに金で「爆風」を表現しています。何とも洒落たことをするものだと感心してしまいますが、実際にこの爆撃で使用人2名が亡くなり、龍子も防空壕で危うく一命を取り留めたまさに大惨事だったのです。

2005年に江戸東京博物館で開催された「川端龍子展」以来となる龍子展。やはりなんと言ってもこの「爆弾散華」は欠かせない一枚です。龍子の作品は常に時代と共にあったのです。


爆弾散華」にじっと目をやる会田誠さん。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章:龍子誕生ー洋画、挿絵、そして日本画ー
第2章:青龍社とともにー「会場芸術」と大衆ー
第3章:龍子の素顔ーもう一つの本質ー
鯉、身近なものへの視線、龍子の俳句、大観・玉堂・龍子の合作、龍子と信仰


第1章には小学生時代の絵も紹介されています。絵の上手い人は小さい頃から絵心が嫌味なほどあることを教えられる作品群です。先生の評価も記さており見ていてほのぼのとした気持ちになります。



絵師として駆け出しの頃は、生活費を稼ぐために、雑誌の表紙絵や挿絵を描いていたそうです。当然こうしたものは締切が存在します。龍子はとても生真面目な性格だったらしく一度も締切に遅れたことが無かったそうです。

時代性を大きく反映する雑誌(ジャーナリズム)の仕事に就いていたことが、後の作品にも大きく影響しているのです。

つまり、何か適当な画題を思い付きで描くのではなく、今起こっていることを日本画で伝えんとしたのです。そして当然ながら絵の締切はしっかり守ったそうです。


川端龍子「年賀状(十二支)」1951-62年

見ず知らずの人から来た年賀状にも丁寧に手描きの年賀状を送ったそうです。龍子の生真面目な点がこんなところからもうかがえます。

しかし、単に生真面目なだけでなく、作品制作にいざ取り掛かるとその発想は他の絵師が考えつかないような構図や作品を生み出します。


川端龍子「龍巻」1939年
大田区立龍子記念館蔵

描いている途中で天地を逆転し完成させたこれまた面白い作品です。宇宙では無重力状態ですが、龍子の描く海の中はそれ以上にカオスな世界のようです。

会場を何周しても結局のところ「龍子」とは何なのか。答えが見つかりません。そう、一つの答えにとても集約できないのが龍子の大きな魅力なのです。

良い意味でバカみたいな作品、そして日本画美しさを存分に湛えた作品。今年の日本画の展覧会で間違いなくベスト3に入ります。絶対に観ておかねばなりません。

NHKの日曜美術館でも紹介されるそうです。なるべくお早めにどうぞ!「川端龍子展」は8月20日までです。そうそう「たつこ」ではなく「りゅうし」です。れっきとした男性画家です。


【特別展】没後50年記念 川端龍子 ―超ド級の日本画―」

会期:2017年6月24日(土)〜8月20日(日)
*会期中、一部展示替えあり(前期: 6/24〜7/23、後期: 7/25-8/20)
開館時間:午前10時〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(但し、7/17(月)は開館、7/18(火)は休館)
会場:山種美術館
http://www.yamatane-museum.jp/
主催:山種美術館、日本経済新聞社
協力:大田区立龍子記念館


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注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
「健剛なる芸術」の創造を唱え、大衆に訴える作品を描き続けた日本画家・川端龍子(1885-1966)。洋画から日本画への転向や院展脱退、絵画団体「青龍社」の樹立、規格外の大画面制作など、従来の枠組みを破るため常に挑戦を続けました。迫力に満ち、スケールの大きな龍子作品は、発表当時「昭和の狩野永徳」とも評されています。このたび、山種美術館では、龍子の没後50年を経たことを記念し、初期から晩年にかけての名だたる代表作を取り揃え、その画業を振り返る特別展を開催いたします。

1885(明治18)年、和歌山で生まれた龍子は上京した後、当初は洋画家を目指し文展に入選を果たしました。20代で新聞や雑誌の挿絵画家として職を得たことにより、龍子芸術の特徴の一つでもある、同時代の世相を俯瞰的に見るジャーナリズム性を習得します。やがて洋画修業のため渡米するものの、帰国後間もなく日本画家へと転向しました。

その後、独学で日本画を学んだ龍子は、30歳で再興院展に初入選、2年後には同人へ推挙されます。しかしながら、当時、繊細巧緻な画風が主流であった院展において、大胆な発想と筆致で構成された大画面の龍子の作品は「会場芸術」と批判されたことや院展内の軋轢もあり、脱退にいたります。そして、1929(昭和4)年、自ら主宰する「青龍社」を創立、戦時中も展覧会を開催するなど精力的な活動のなか、一貫して大衆のための作品を発表し続けました。

本展では、画業の初期にあたる洋画や挿絵画家期の資料、院展時代の作品、また青龍展第1回展に出品され記念碑的な《鳴門》(山種美術館)と《請雨曼荼羅》(大田区立龍子記念館)、さらに平安時代の装飾経をヒントに龍子の機知と技術が結集した《草の実》(大田区立龍子記念館)、ジャーナリズム精神の発露といえる《爆弾散華》(大田区立龍子記念館)、《金閣炎上》(東京国立近代美術館)、そして会場芸術の象徴ともいえる横幅7.2メートル超の大作《香炉峰》など一堂に展示します。また、『ホトトギス』同人でもあった龍子が1日1句作り続けた俳句に関わる作品や、小さな子どもや家族を慈しむ姿がうかがえる作品もあわせ、真摯で柔和な龍子の内面性が表れた初公開の作品資料類をご紹介します。

大正から昭和の日本画壇において既存の概念を打ち破ろうと強靭な意志を抱き、在野の雄として生涯描き続けた川端龍子の全貌を、12年ぶりとなるこの回顧展でご覧いただきます。
| 展覧会 | 23:17 | comments(0) | trackbacks(0) |









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