青い日記帳 

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『かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪』

新潮社(とんぼの本)より刊行となった『かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪』を読んでみました。


かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪
岡田 秀之 (著)

長沢芦雪(ながわさろせつ)ってなんか損な役回りをしている絵師のように思えてなりません。名前も「長沢蘆雪」、「長澤蘆雪」などと表記されることもあり落ち着きません。

若冲が「わかおき」とよまれてしまう愛らしさ、親しみやすさがあまり感じられません。可愛らしいワンコの絵は描いているのですけどね。


長沢芦雪「降雪狗児図」「月夜山水図

そもそも、活躍したタイミングもあまりよろしくないのです。

伊藤若冲(1716年〜1800年)
曾我蕭白(1730年〜1781年)
円山応挙(1733年〜1795年)


京都で活躍した若冲をはじめとする今人気絶頂の絵師たちよりも、芦雪はひと世代あとの生まれとなるのです。

長沢芦雪(1754年〜1799年)

つまり、自分が絵筆をとった時にはすでに、世の人々をアッと言わせていた奇想画家の若冲や蕭白、写生画の天才応挙が活躍をしていたのです。

すげーやりずらい状況ですよね。絵師として。日本美術史上で最も生まれてはいけない時代に、呱々の声をあげてしまった芦雪。


長沢芦雪「群鶴図

そんな、勝ち目無しの状況下にあってこそ闘志を燃やすのが長沢芦雪その人なのです。

奇想派の先輩(目の上のたんこぶ)である若冲や蕭白、それに師匠である応挙(目の上のたんこぶ)に追いつけ追い越せのそれはそれはすごい勢いで学べるものは全て貪欲に自らのものとしていきます。

その辺をふまえ、『かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪』はとてもキャッチな小見出しをつけ、芦雪の魅力をカラー図版(クローズアップあり)で存分に紹介しています。

かわいいものを描く
小さきものを描く
幼きものを描く
さまざまな顔を描く
妖しきものを描く
大きいものを小さく描く
切りとって描く
対比させて描く
酔って描く
一筆で描く
指で描く
その場で描く
しつこく描く


これだけでもワクワクしちゃいますでしょ!でもまだまだ40ページ足らず三分の一にも満ちません。


かわいいものを描く

このあと、辻惟雄先生と河野元昭先生による芦雪対談が収録されています。題して、「人工の奇想」の画家・芦雪の魅力を語り尽くす

体よくまとめられていますが、これ絶対活字にするの大変だったはず。あのお二人に対談してもらいそれをテキスト化するのがどれだけ骨の折れることか…

ただ、日本美術の泰斗であるお二人の中身の濃い貴重なお話が、まとまった形で読めるのは本当にありがたいことです。この部分だけ読むだけでも買う価値あります。



そうそう、以前に何度かこのブログでも紹介しましたが、芦雪の最期は殺されてしまったという説がまことしやかに伝えらています。

歴史小説の大家、司馬遼太郎さんの短編に『蘆雪を殺す』というタイトルの小説があります。こちらの古い記事で内容についても紹介しているので関心のある方は読んでみて下さい。

最後の伊賀者という短編集の中に収録されています。


新装版 最後の伊賀者』 (講談社文庫)
司馬遼太郎

かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪』の著書である岡田氏はこの説について懐疑的な見解を示されています。

I 1754-1786
謎につつまれた出自から、当代一の絵師・応挙先生に入門まで
応挙入門前/応挙先生のもとで/応挙先生のワザを完全マスター/応挙から自由に
II 1786-1790
南紀でのびのび襖絵を描きまくり、芦雪らしさ爆発
無量寺/草堂寺/成就寺/円光寺/持宝寺/徳泉寺/高山寺/南紀前/南紀後
III 1790-1799
ますます「奇」の度合いは増して、晩年のスタイル極まれり
応挙門下の大競作/広島にて/大画面/禅の境地/故事の世界/動物たち/幽玄の世界


現在の江戸絵画ブームの火付け役を果たし、若冲をはじめとする奇想の江戸絵師たちの存在を世に知らしめた辻惟雄先生の名著『奇想の系譜』には当初、芦雪は入っていませんでした。

辻先生は今回のとんぼの本に収録された対談で、芦雪を「人工の奇想」画家として位置付けています。若冲、蕭白といった「天然の奇想」画家に影響されつつ自分の道を探るべく闘志を燃やした芦雪。

人工が必ずしも天然に劣るとは限りませんからね。

また『かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪』では、芦雪の師である丸山応挙との関連についてもこれまで以上に丁寧に書かれています。



今年の秋、満を持して開催される「長沢芦雪展」(愛知県美術館 2017年10月6日〜11月19日)に備えるべく、絶対に読んでおきたい一冊です。
http://www.chunichi.co.jp/event/rosetsu/


かわいい こわい おもしろい 長沢芦雪
岡田 秀之 (著)

愛らしい仔犬から不気味な山姥まで超絶技巧の写実力に、酔いにまかせた早描きも! 新出作品もたっぷりと、「奇想派」の一人として注目を集める絵師のびっくり絵画と波瀾の人生を新進の研究者がご案内します。日本美術史の泰斗、辻惟雄氏×河野元昭氏の「芦雪放談」も必読。画布に現された千変万化の「奇想」を目撃せよ!

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この記事に対するコメント

この度は当研究所メンバーの本を取り上げて下さり、誠に有難うございました。記事にして頂いていることに気づき、一同大変嬉しく思っております。
嵯峨嵐山日本美術研究所 | 2017/08/21 11:16 AM
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