青い日記帳 

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「狩野元信展」

サントリー美術館で開催中の
六本木開館10周年記念展「天下を治めた絵師 狩野元信」に行って来ました。


http://www.suntory.co.jp/sma/

日本最大で最強の絵師集団であった狩野派の二代目、狩野元信(1477?〜1559年)の初めての回顧展がサントリー美術館で開催されています。

狩野派というと、真っ先に頭に浮かぶのか狩野永徳でしょう。教科書に必ず図版入りで紹介されいますし、展覧会でも永徳作品があるととても目を引きます。

その永徳の祖父にあたるのが、狩野元信です。


重要文化財 瀟湘八景図
狩野元信筆 四幅
室町時代 16世紀 京都・東海庵
【展示期間:10/4〜10/16】

見方を変えると、永徳やその孫である狩野探幽が大名や幕府のお抱え絵師として名を天下に馳せることが出来たのも、この元信あってのことです。

狩野派の始祖であり、元信の父親にあたる狩野正信から脈々と続く絵師の専門集団「狩野派」。血縁関係で強く結ばれた狩野派の礎を築いたのが、この元信なのです。


狩野派略系図

それでは、元信はどのようにして狩野派を絵師集団として最強のものにしていったのでしょうか。そのベースとなるものが、画体の確立です。

狩野元信の作品をただ観るのではなく、いかにして彼が「真(しん)・行(ぎょう)・草(そう)」と呼ばれる三種類の画体を生み出し、次の世代に継承させるべく努めたのかが、この展覧会のハイライトとも言えます。

孫の永徳が得意とした、華やかな金壁画や迫力ある金屏風が次から次へと展開されるわけではありません。そうした派手なパッと見の面白さではなく、時間をかけ一枚一枚丁寧に観ていくタイプの真面目な展覧会です。


「狩野元信展」展示風景

京都国立博物館で開催された「桃山時代の狩野派 永徳の後継者たち」「狩野永徳展」や「狩野山楽・山雪展」とは、比べ物にならないほど地味ですが、その分とても勉強になる内容です。

日本美術もそろそろ、次のフェーズへ移行しても良いのではないかな〜と思っていた矢先の「狩野元信展」の開催。流石サントリー美術館さんです。


伝牧谿「猿猴図」個人蔵
伝夏珪「山水図」岡山県立美術館

それともうひとつ、この展覧会のお薦めポイントとして、狩野派や雪舟らが憧れ、師と仰いだ中国絵画の名画がゴロゴロと展示されている点にあります。

室町時代以降の日本美術を観る上で牧谿や夏珪といった中国の絵師たちを抜きにしては、何一つ語ることが出来ません。

狩野派の土台を作った元信作品を紹介しつつ、彼が学んだ中国絵画も見せる。六本木開館10周年記念展にしては地味だな〜なんて思った方、それは大きな間違いです。しっかりと練られた一朝一夕には開催不可能な展覧会なのです。


重要文化財 酒伝童子絵巻
画/狩野元信 詞書/近衛尚通・定法寺公助・青蓮院尊鎮 三巻のうち巻三(部分)
室町時代 大永2年(1522) サントリー美術館
【全期間展示】(ただし展示替あり)

同じ狩野派の絵師でも、江戸時代の狩野派とは違い、元信となると500年以上前に描かれた作品となり、現存する数もかなり少なく数点集められば御の字のところ、今回の展覧会では20点もの元信作品をまとめて観られます。

これから先、何十年も元信だけに焦点をあてた展覧会開かれることはありません。今回しかと目に焼き付けておきましょう。年パスがあるので自分も出来るだけ通うようにします。


「狩野元信展」展示風景

展覧会の構成は以下の通りです。

第1章 天下画工の長となる――障壁画の世界
第2章 名家に倣う ― 人々が憧れた巨匠たち
第3章 画体の確立 ― 真・行・草
第4章 和漢を兼ねる
第5章 信仰を描く
第6章 パトロンの拡大



京都市指定有形文化財 月次風俗図扇面流し屛風
「元信」印 六曲一隻
室町時代 16世紀 京都・光圓寺
【展示期間:10/11〜11/5】

元信が生み出した「真(しん)・行(ぎょう)・草(そう)」と呼ばれる三種類の画体のどれに展示作品があたるのかもキャプションに大きく記されています。

なるほど、このようにして絵というものは描き分けるものなのかと、素人ながら納得納得。また何故、狩野派に作品制作の依頼が多く来たのかその秘密も分かります。

「二代目」というと「ごくつぶし」的なイメージがあるものですが、元信に関してはまるで逆で、これ以降何百年も続く狩野派の礎をしかと作り上げた、非常に知的な絵師であったことが理解できるはずです。


「狩野元信展」展示風景

今の時代に生きていたら、父が興した会社を世界的な規模にまで一気に押し上げるような敏腕社長として辣腕をふるっていたに違いありません。

絵師や画家に会ってみたいとあまり思ったことはありませんが、この展覧会を観ていると無性に、狩野元信という人物に会いたくなってくるから不思議です。

「天下を治めた絵師 狩野元信」展は11月5日までです。是非是非!


六本木開館10周年記念展
「天下を治めた絵師 狩野元信」


会期:2017年9月16日(土)〜11月5日(日)
開館時間:10:00〜18:00(金・土は10:00〜20:00)
※金・土、および9月17日(日)、10月8日(日)、11月2日(木)は20時まで開館
※9月30日(土)は「六本木アートナイト2017」のため22時まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
※shop×cafeは会期中無休
休館日:火曜日
※10月31日は開館
会場:サントリー美術館
http://www.suntory.co.jp/sma/
主催:サントリー美術館、朝日新聞社
協賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、サントリーホールディングス


別太131 狩野派決定版 (別冊太陽―日本のこころ)

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注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
狩野元信(1477?〜1559)は、室町時代より長きにわたり画壇の中心を担ってきた狩野派の二代目です。狩野派とは、血縁関係でつながった「狩野家」を核とする絵師の専門家集団であり、元信は始祖・正信(1434〜1530)の息子として生まれました。絵師としてはもちろん、工房の主宰者としても優れた能力を発揮した元信は、孫・永徳(1543〜90)や永徳の孫・探幽(1602〜74)などへとつながる、それ以後の狩野派の礎を築きました。幕府の御用絵師となった狩野派は、日本絵画史上最大の画派へと成長していきますが、その繁栄は元信なくしては語れません。

狩野派の台頭を支えた大きな要因のひとつに、「画体」の確立があります。従来の漢画系の絵師たちは、中国絵画の名家による手本に倣った「筆様」を巧みに使い分け、注文に応えましたが、元信はそれらの「筆様」を整理・発展させ、真・ 行・草の三種の「画体」を生み出します。そして、その「型」を弟子たちに学ばせることで、集団的な作画活動を可能にしました。襖や屛風などの制作時には弟子たちが元信の手足となって動き、様式として揺るぎ無い、質の高い大画面作品を完成させました。
また、正信は中国絵画を規範とする漢画系の絵師でしたが、元信はさらにレパートリーを広げ、日本の伝統的なやまと絵の分野にも乗り出します。濃彩の絵巻や、金屛風の伝統を引き継ぐ金きん碧画など、形状・技法の導入に加えて、風俗画や歌仙絵など、やまと絵の画題にも積極的に挑戦しました。とくに、それまでやまと絵系の絵師や町絵師が主導していた扇絵制作には熱心に取り組んでいます。

和漢の両分野で力を発揮し、襖や屛風などの大画面から絵巻や扇絵といった小画面にいたるまで、多様な注文に素早く対応することで、元信工房は多くのパトロンを獲得していきます。狩野派は元信の時代に組織として大きく飛躍したといえます。

本展では、元信の代表作を中心に、その幅広い画業をご紹介します。また、元信が学んだ偉大な先人たちの作品も合わせて展示し、人々を魅了した豊かな伝統の世界を浮き彫りにします。
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