青い日記帳 

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「吉村順三建築展」

東京藝術大学大学美術館で開催中の
「吉村順三建築展」に行って来ました。



美術館3階の展示室で吉村順三展は開催されています。
いつものようにエレベーターで3階まで上がりました。→※

展覧会に行く際に、展示してある作品や作家について
あらかじめ知識を入れて行くことはしばしばあります。
今回も新日曜美術館を観てから行ったので吉村順三という建築家については
一応、はなちゃんのほんわかした感想を元に予習してありました。

ところが、展示室がどのようになっているかは
全然、全く想像もしていきませんでした。(普通のことですが)

→※そして、係りの人の指示に従い右手の展示室へ入りました。→※

目の前には今まで見たことない藝大美術館の展示室が横たわっていました。
「横たわっていた」という表現がまんざら嘘でもないことは
行って来られた方にはよく分かるかと思います。

展示室全体が吉村順三の足跡を俯瞰する「作品」でした。

→※観る順序は人それぞれ、初めから観なくても構いません。普通は。

ところがこの展覧会は観る順序も重要です。
なにせ、会場自体が「作品」のようなのですから。

係りの人の指示に従い展示室入口まで着たら慎重にならなくてはなりません。
「一家の楽しそうな生活が感じられる時が、建築家として最も嬉しい時です。」
という、吉村氏の言葉が書かれた壁の文字を読んで気分を高めたら
間違っても右へ進んではいけません。そちらは出口です。

北斎展は最後の部屋から観ても楽しめました。
吉村展は最後の部屋から観ては楽しめません。

迷わず、左へ進んで順序通りに観ましょう。

展示室は「++ 八島建築設計事務所」の八島正年氏による構成です。
八島氏も東京藝術大学建築科の卒業生だそうです。
(この美術館自体も同じ学科卒の六角鬼丈氏の設計ですね)

こちら側が入口中央の図面などが展示されている横長の展示台の周囲をぐるりとまわるように鑑賞していきます。右奥の部屋はビデオコーナー。また家具・照明が展示してあります。


中央の図面などが展示してある台の上部には
展示台と同じくらいの大きさの木板が吊り下げられていました。
これがいつもの展示室とは違った顔の演出に効果を発揮しています。

中央の展示台にある図面の建築物の模型やパネルがその周りに
規則正しく配置されています。大変観やすい会場構成です。

私のような素人には図面を見てもよく分かりませんので
そこは軽く見て、周りのパネル写真や立体建築模型などと
見比べて楽しんできました。



建築は奇をてらわず、単純明快でなければならない。」

「人の生活、心の豊かさを作り出す場としての建築でなければならない。」

展示室の壁の所々に紹介されている吉村氏の言葉はとても心に響きます。
建築家・吉村氏の言葉は、「建築」をそのまま様々な職業・職種に当てはめたとしても通用すると思います。勿論、全く違う仕事に就く自分の職種であってもです。

目白にある吉村順三記念ギャラリー(旧吉村順三設計事務所)や八ヶ岳高原音楽堂にも行ってみたいと思いました。

 
 チラシやポスターに使われている軽井沢の山荘。
その図面(矩計図)を原寸大に拡大し美術館正門前の大看板に展示してあります。

また「東京藝術大学・韓国藝術綜合学校交流展」も同時開催中でした。


展覧会会場には吉村氏が考案した「折りたたみ椅子」も
展示、紹介されていました。八ヶ岳音楽堂でも使われているそうです。

椅子が折りたためて、必要のない時にはしまえるという発想は
日本の座布団にあると氏は語っています。

それは、まさに古来からあった日本的な考え方の一つの象徴でもあります。
変幻自在な場がある住まい。移動可能な家具。そして灯り。

「一家団欒」という言葉がまだ実生活に存在した昭和までの家の中には
その空間はどこの家庭にもごく当たり前にあったものです。

少々長くなりますが、多木浩二氏と栗田勇氏の文章を以下に引用しておきます。


 日本の家には実体的な強さはなく、実体の視点からみれば空虚である。それが無意味なのではなく、逆に意味に浸透されている例をわれわれの日常生活のなかから拾いだすことは容易である。たとえば――ある家を訪れると先客がいる。その先客はあとからやってきた私に、いままで自分の坐っていた座布団を裏返して差出し、自分は畳にすべりおりる――このようなしぐさはいろいろな場合に経験する。この操作でいままでかれに敷かれていた経過は消滅し、座布団は新しい物になった。裏返しは自分の体温の移っていない面を出すという生理的な配慮以上に象徴的なしぐさなのである。この所作は、お互いの了解するところであるから、すでに文化的なコード(慣習)というべきであろう。

 たしかに客に新しい座布団を提供することは礼儀に適ったことかもしれない。ある民族では、人の住んでいた「家」に引越して住むことは到底考えられない屈辱で、移住に際して自分の「家」を新しく建てるというほどである。それほどでなくても新しい物をおろすことは、日本人の生活のひとつのけじめである。しかしここで問題になるのは、実際に新しくするのではなく裏返すと事情が一変するという現象である。a実体は連続して存在しているが意味の上ではこの連続が断ち切れている。物は実体として存在するだけでなく、意味の次元に存在していることがにわかに明らかになる。われわれはこの両方の次元において物を理解するが、重要なのはむしろ意味である。いまの場合、意味の次元はしぐさによって構成されている。このしぐさは後につづく行為の場面全体を変えるのだから、「家」はつねに象徴的なしぐさによって様相を変えているといってよいわけである。おそらくそこから身体の記号論がうかんでくるし、そのような記号論のなりたつ場として、家の演劇的な理解がひらけてくるように思う。

 たしかにこの種の象徴の働きは、人類にとって共通のものである。しかし、そのなかにも差異がある。西洋の建物は「空間」が象徴化する。中心性のある教会のドームを挙げるまでもないだろう。はるかに地上的なロココの、一枚の布を空に抛りあげたような天井におおわれた部屋の場合でも、空間という概念で語るべき世界である。それらは物質と物質的でないものが対比される二元論的構造にもとづいている。これに対してどうやら私たちはこの対立のあいだに生じる不確かで曖昧な領域にいる。客観的なものから主観的なものへ、またその逆といった二元的な対立のあいだをとびかうのではなく、本来この対立に生じた、そしてどんなに二元論的である人間もそれを意識しはじめれば免れない不確かさのなかに、われわれは最初にはいりこんでいる。対立を厳密にしないのではなく、この曖昧さをむしろ本質的な世界として、逆に私と外の世界をそのなかで分節している可変的関係として見出している。

生きられた家―経験と象徴
『生きられた家―経験と象徴』
多木 浩二


 西欧では、空間の持続とは永遠の不動を意味しているのにたいして、日本では、明滅というか、折々に、出没しながら繰り返すリズムのうちにあるということになる。だから、持続とは断絶であるという逆説さえ成立つ。
 
 また、これもよく知られていることだが、西欧の家具は、一つの部屋にとっては、確固不動の位置を占め、時には、部屋という囲いは、この不動の家具の造型によって空間となり得ているといっていい。そして、これもまた永続を希って、永持ちさせるのに腐心している。ところが、もう、今の生活では失われてしまっているが、日本間というものは、もともと、無一物を本質とした。主客があらわれて、はじめて家具が持ち出される。座布団、火鉢、衝立など、みな、その場その場でとりそろえられ、かつ、役がおわると引きはらわれて倉に収められるべきものである。これもまた、ときに応じて、ある場面を演出するための小道具として、一時的な空間の成立に働いて姿を消す。しかし、決して全く消滅するわけではなく、ふたたび必要があれば出現して活々とした空間をつくり出して、古びることがない。こうした習慣は失われているが、夏冬の建具や家具は、いつも、取り出されては収うというリズムを繰返していた。西欧ではこうしたことがない。

栗田勇『思索の風景』


「建築家として、もっともうれしいときは、建築ができ、そこへ人が入って、そこでいい生活がおこなわれているのを見ることである。日暮れどき、一軒の家の前を通ったとき、家の中に明るい灯がついて、一家の楽しそうな生活が感じられるとしたら、それが建築家にとっては、もっともうれしいときなのではあるまいか」−吉村順三・1965年
 建築家・吉村順三は、建築にたずさわる喜びをこの飾りけのない言葉が示す深い心根に置き、生涯にわたって人々の日々の暮らしの場に温かなまなざしを向け続け、日本の自然や固有な文化風土に根ざす数多くの秀作を残しました。
 本展は、その温かな人間愛と深い生活への洞察をとおして取り組んだ住宅作品をはじめ、多様な公共性を持つ建築への取り組みを一堂に集め、建築家・吉村順三の創作世界とその今日的な意味を再考しようとするものです。
展覧会 | permalink | comments(11) | trackbacks(7)

この記事に対するコメント

はじめまして。 コメント頂きありがとうございます。
建築に携わっていない方がとても見やすく楽しめた展覧会、
吉村先生の素晴らしさが全て詰まった感想ですね。
八ヶ岳の音楽堂は大好きな建築です。
少し縁があり、この音楽堂のオープニングのお手伝いをしましたことは今でもよく覚えています。

TBさせて頂きました。
studio-tsumugi | 2005/12/17 8:25 AM
@studio-tsumugiさん
こんばんは。

TBありがとうございます。
八ヶ岳の音楽堂にとにかく行ってみたいです。
これからの季節は無理でしょうから
来年までおあずけですね。
オープニングに携われることできたなんて
素晴らしい思い出をお持ちですね。

建築素人にもすんなり鑑賞することのできる
とても良い展覧会でした。
Tak管理人 | 2005/12/18 2:41 AM
昨年のマティス展にTBさせていただいたことのあるfuRuです。
ごぶさたしております。
ここのところ、美術展にもなかなか行っていないのですが
これには行ってきましたので
拙記事をTBさせていただきます。
fuRu | 2005/12/19 2:54 PM
@fuRuさん
こんにちは。

TBありがとうございます。
吉村展良かったですよねーー
かなり満足しています。
外にあった原寸大の設計図も
木々の合間から見ると上野ではなく
軽井沢にいるような錯覚さえ覚えました。
Tak管理人 | 2005/12/19 3:31 PM
初めまして。zuboraなものです。展覧会についての文を、楽しく読ませていただいております。
今回の吉村展も、とても丁寧に見ていただいたようで感謝、感謝な気持ちになりました。ありがとうございまいた。
zubora | 2005/12/21 12:37 AM
 八ヶ岳の音楽堂は本当に素敵な場所だそうですよ。機会を作って観に行かないとなと思っています。

 「ガンダム展」と「吉村順三建築展」の組み合わせで回る人が僕以外にもおられて少しホッとしました(笑)。
mizdesign | 2005/12/24 12:50 PM
@zuboraさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

素人目にもとても分かりやすい展覧会でした。
吉村氏の伝えたかったこと、残したかったことが
ストレートでシンプル。それでいてとても大切なことばかり。

展示会場もとてもとても良かったです。

@mizdesignさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

八ヶ岳、今頃は深い雪に覆われているのでしょうか。
夏になったら涼しさを求めて行ってみたいものです。

「ガンダム展」と「吉村順三建築展」の組み合わせ・・・
狙ったわけではないのですが、この組み合わせになってしまいました。
比較の対象にはなりませんけどね。
Tak管理人 | 2005/12/27 12:58 AM
こんにちは
吉村さんの建築は本当にいいですよね
あのスケール感としっくりしたたたずまい
ああいう、すばらしい建築を作れるようになりたいです
zattchi | 2005/12/29 1:49 PM
@zattchiさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

何気ないことをいとも簡単にやってしまう。
凄いことだと思いました。
建築だけでなく色々な分野でもいえることかもしれません。
使う人の気持ちになって行動する。
心がけたいです。
Tak管理人 | 2005/12/30 12:31 AM
TBありがとうございます。

建築学科生としても 本当に素敵な建築展だったと思います。
建築を志す人間の一人として とても考えさせられるモノが
多かった展示でした。

やはり何かを極めた人の言葉というのは響きますね。
言葉の重みと意志を引き継いで
これからの建築を生み出していきたいと思っています。
kn_nk | 2006/01/03 11:57 PM
@kn_nkさん
こんにちは。
コメントありがとうございます。

>建築を志す人間の一人として とても考えさせられるモノが
>多かった展示でした。
やはりご専門の方がご覧になっても素晴らしい内容だったのですね。

数多の言葉より、吉村氏の言葉には
説得力がありました。
建築のみならず、他の世界でも
同じようなことがいえると
自分にも言い聞かせました。
Tak管理人 | 2006/01/06 10:55 AM
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