青い日記帳 

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「パリ・グラフィック」

三菱一号館美術館で開催中の
「パリ・グラフィック −ロートレックとアートになった版画・ポスター展」に行って来ました。


http://mimt.jp/parigura

19世紀末のパリの街に斬新な構図で華やかに彩りを添えたロートレックのポスター。絵画を観始めたまだまだごく初期のころ、ロートレックの作品に夢中になり彼の伝記を読んだりもしたものです。

都内でも何年に一度か定期的にロートレックをはじめとするポスター版画の展覧会が、開催されています。

「パリ・グラフィック」展もそうした展覧会のひとつだと勝手に思い込んでいました。ところが…。


アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《ディヴァン・ジャポネ
1893年 多色刷りリトグラフ 三菱一号館美術館

「パリ・グラフィック」展を拝見し、チラシやwebで得られる情報(または勝手な思い込み)は、やはり展覧会のつかみや、一部でしかないことをあらためて知ることになりました。

出かける前は、ロートレックやスランタン、ボナールなどのポスター版画がメインであろうと勝手に思い込んでいましたが、実はそれらはほんの一部に過ぎません。(とはいえ、大事なコンテンツであることは確かです。)

サブタイトルに「アートになった版画」とあるように、この時代になって初めて版画が油彩画の下絵的なものではなく、独立したアートとしての地位を確立したのです。


ピエール・ボナール《「フランス=シャンパン」のためのポスター
1891年 多色刷りリトグラフ アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館

パリ・グラフィック: ロートレックとアートになった版画・ポスター展』や作品リストに「Prints in Paris 1900:From Elite to the Street」とあります。

ここで注目すべきが「From Elite to the Street」の部分。版画が、庶民(ストリート)向けのものから知的階層(エリート)向けまで幅広くその存在を広く一般に認知された時代だったのです。

展覧会も大きく「ストリート」と「エリート」にセクション分けがなされています。そして驚くことにその大半を知的階層向けの版画が占めているのです。

展覧会の構成は以下の通りです。

はじめに:崇高(ハイ)から低俗(ロー)まで
第1章:庶民(ストリート)向けの版画
第2章:知的階層(エリート)向けの版画



ルイ・カリエ=ベルーズ「鍋修理」1882年
個人蔵

当時のパリの街中の様子を描いた油彩画。壁一面に雑然と様々なポスターが貼られています。こうした中にロートレックやヴァイヤールのものも含まれていたのでしょう。

それでは一体、知的階層(エリート)向けの版画とはどのようなものだったのでしょうか。


フェリックス・ヴァロットン《お金(アンティミテ后法
1898年 木版 三菱一号館美術館


ポール・ゴーガン「ブルターニュの水浴する人々(「ヴォルビーニ・シリーズ」より)1889年
ファン・ゴッホ美術館

商品や劇場、歌い手を宣伝するために人目を惹く華やかなポスターとは随分と雰囲気が違います。

個人がひとり部屋で楽しんだり、家の壁に掛けることを目的としたこうしたエリート層の版画はサイズも小さく、内容やトーンもストリートのものと比べると同じ版画でも似て非なるものに見えます。

浮世絵の春画的な要素もあったようで、街頭に堂々と貼れないエロチックな作品も幾つかありました。



パリで活躍した写真家ドルナックが撮影した19世紀末から20世紀初頭にかけての文筆家や芸術家の書斎や仕事場の写真がパネルで紹介されていました。

どの偉人たちも風格ありますが、それよりも何よりも壁に掛けられた複数の版画に注目せざるを得ません。版画が芸術作品として需要されていたことを示す貴重な写真です。

また会場には、ファン・ゴッホ美術館所蔵のとても貴重なものが展示されていました。それがこちらです。



ロートレックが実際にリトグラフを摺るために使用した石板が今でも残っているのには驚きました。まだ摺ろうと思えば版画出来るそうです。

リトグラフは、石版石(石灰岩)や金属板(アルミ板・ジンク板)の平らな版面(平版)を、油性インクを引き付ける部分と水分を保つ部分(インクを弾く部分)に化学的処理で分離し、水と油の反発作用を利用して専用のプレス機により刷る版画です。
武蔵野美術大学 造形ファイルより

そうそう、ファン・ゴッホ美術館所蔵の作品がやたらと多いのに気が付いたかと思います。実はこの展覧会、まず初めにオランダのゴッホ美術館で開催されたものなのです。

ファン・ゴッホ美術館はゴッホ作品だけでなく、版画のコレクションでも有名で現在でも作品を購入しているそうです。



ゴッホ+版画とくれば…そう!浮世絵です。ファン・ゴッホ美術館所蔵のゴッホが持っていた(実際に手にして愛でたであろう)浮世絵も最後の展示室にあります。

東京都美術館「ゴッホ展 巡りゆく日本の夢」と合わせてゴッホファンであれば、「パリ・グラフィック」展も観に行かねばなりませんね。

渓斎英泉や広重のとても状態の良い(色がとても綺麗に残っています)浮世絵が観られるとは何ともラッキーでした。これもチラシでは分からないもののひとつでした。


館長タカハシの納得パリグラ展|パリ♥グラフィック―ロートレックとアートになった版画・ポスター展|三菱一号館美術館(東京・丸の内)

ロートレック等の華やかなストリート版画と対照的な暗い側面を抱えたエリート版画。まだまだ全然紹介し切れていない面白い発見が後者に沢山あります。

是非、展覧会に足を運んで「From Elite to the Street」を堪能して下さい!「パリ・グラフィック展」は、2018年1月8日までです。年末年始混雑する前に!!


パリ・グラフィック −ロートレックとアートになった版画・ポスター展」 

会期:2017年10月18日(水)〜2018年1月8日(月)
開館時間:10:00〜18:00(祝日を除く金曜、11月8日、12月13日、1月4日、1月5日は21:00まで)
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜休館(但し、1月8日と、「トークフリーデー」の10月30日(月)、11月27日(月)、12月25日(月)は開館)
年末年始休館:2017年12月29日〜2018年1月1日
会場:三菱一号館美術館(東京都千代田区丸の内2-6-2) 
http://mimt.jp/
主催:三菱一号館美術館、アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館
後援:オランダ王国大使館
協賛:大日本印刷
協力:ヤマトロジスティクス(株)、エールフランス航空、KLMオランダ航空
公式サイト:http://mimt.jp/parigura

今回の展覧会図録は筑摩書房より一般書籍として発売となっています。ファン・ゴッホ美術館のキュレーターの熱異論文(長文)や展覧会に出ていない参考図版も沢山掲載されています。


パリ・グラフィック: ロートレックとアートになった版画・ポスター展 (単行本)

ショップがこれまた素敵です!

新しいカウンター什器に魅力的なオリジナル商品がわんさか。


原寸のトートバッグや原寸大のTシャツも!!ロートレックファン垂涎。カードも使えちゃううんですよね〜最近のショップってハート

JUGEMテーマ:アート・デザイン



注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
19世紀末のパリ、様々な芸術運動が勃興するなか、版画は新たな芸術表現を切り柘く重要なメディアとなりました。それまで単に複製や情報伝達のための手段でしかなかった版画は、トゥールーズ=口ートレックや世紀末の前衛芸術家たちにより、絵画と同じく芸術の域まで高められ、それらを収集する愛好家も出現しました。一方、大衆文化とともに発展したポスター芸術をはじめ、かつてないほど多くの複製イメージが都市に溢れ、美術は人々の暮らしにまで浸透しました。

世紀末パリにおいて、「グラフィック・アート」はまさに生活と芸術の結節点であり、だからこそ前衛芸術家たちの最も実験的な精神が発揮された、時代を映すメディアであったと言えるでしょう。

本展はこうした19世紀末パリにおける版画の多様な広がりを検証するものです。当館およびアムステルダム、ファン・ゴッホ美術館の貴重な19世紀末版画コレクションから、リトグラフ・ポスター等を中心に、油彩・挿絵本等を加えた計約140点を展覧します。

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