弐代目・青い日記帳 

  
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「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」
国立新美術館で開催中の
「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」に行って来ました。


http://www.buehrle2018.jp/

展覧会入口で妙にソワソワしいかにも落ち着きのない様子の池上英洋先生にばったり出会いました。彼をそんなにさせる理由は分かっています。

「彼女」が東京・六本木にやって来ているからです。それは小学生の頃の初恋の彼女だそうです。

イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢》通称「可愛いイレーヌ」よ呼ばれ多くの人に愛されているルノワールの最高傑作のひとつが、その初恋の人です。


ピエール=オーギュスト・ルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》1880年油彩、カンヴァス65×54cm

画集で目にし恋に落ち、それがひとつのきっかけとなり美術の道へと進んだ池上先生。実物に出会えるのですがら、それは気もそぞろになってもおかしくはありません。

どんか絵画でもそうですが、印刷物や液晶の画面と、実物を観るのでは雲泥の差があります。《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》の肌感などは、実際に目にしないとその美しさが分かりません。

透明な絵具によるグレーズ技法によって、筆の痕跡がまったく見えません。まさにそこに「肌」があるように見えます。

2010年に国立新美術館と国立国際美術館(大阪)で開催された「ルノワール展」の目玉作品がこのイレーヌでしたが、出品者の意向により大阪展のみの展示となり、東京では見られませんでした。(→大阪まで行きました。)


ピエール=オーギュスト・ルノワール《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)

初恋の相手と対面し気持ちも最高潮まで高ぶると、一転急に冷静になるものです。現実に戻りこの絵が内包している悲しい歴史を知ると、ただ可愛らしいだけでない、違った見方が出来ます。

イレーヌ8歳の時に描かれたこの作品は、その後まさに歴史に翻弄されます。第二次世界大戦中にナチス・ドイツに没収されてしまいます。カーン・ダンヴェール家はユダヤ人だったのです。

終戦後、74歳のイレーヌへ返還されます。その間、娘と孫はアウシュビッツで亡くなっています。1949年に競売にかけられ落札したのがエミール・G・ビュールレです。当時の金額で約2億4000万円で購入しました。

工業機器や武器を扱い巨万の富を得ていたビュールレ。その一部はナチス・ドイツから得たものであることを思うと実に複雑であり、単に美しいお嬢さんの肖像画とは思えなくなります。『ルノワールへの招待』に詳しく解説が書かれています。


ポール・セザンヌ《赤いチョッキの少年》1888/90年頃油彩、カンヴァス79.5×64cm

自分の一番のお目当ては、セザンヌのこの作品でした。こちらは一度、1991年に横浜美術館で観たのですが、その後2008年に何と盗難に遭ってしまったのです。これはネットでも大きな話題として取り上げられました。(当時の記事

モネの「ヴェトゥイユ近郊のケシ畑」、ファン・ゴッホの「花咲くマロニエの枝」、エドガー・ドガ「リュドヴィック・ルピック伯爵とその娘たち」とこのセザンヌの4点が、セルビア人の武装強盗団によって盗まれてしまいました。

最終的に2012年には4点とも無事保護され美術館に戻されました。この盗難事件がひとつの契機となり、2015年にビュールレ・コレクション美術館を閉館し、作品を全て2020年にチューリッヒ美術館(新館)に移管することになりました。

つまり、新しい美術館が完成するまでの間だけ、まとめて貸し出し出来る千載一遇のチャンスが巡ってきた結果「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」開催となったのです。


ポール・セザンヌ《赤いチョッキの少年》1888/90年頃
ポール・セザンヌ《パレットを持つ自画像》1890年頃

話がセザンヌから横道にそれてしまいました。《赤いチョッキの少年》をもう一度観ましょう。よく見ると手長猿のように右腕が長く、桐谷美玲よりもずっと小顔な少年。

これのどこが名画なのか、これのどこがそんなに好きなのかと、たまに聞かれます。シンプルに答えるなら「この当時、こんな絵を描いたのはセザンヌだけだったから。」でしょうか。

ただし、絵のバランス(構図)としては完璧にハマっています。つまり、構図を整えるには腕の長さや顔の大きさも自由自在に変えちゃうのがセザンヌなのです。


ポール・セザンヌ《庭師ヴァリエ(老庭師)》1904/06年頃

赤いチョッキの少年》をセザンヌが描いたのが50歳の頃、それから15年後,65歳を過ぎた頃の作品がこの《庭師ヴァリエ(老庭師)》です。

セザンヌがさらに進化を遂げていることが見てとれます。1906年に亡くなったセザンヌの最高傑作と呼ぶに相応しい一枚です。これが観られるだけでもこの展覧会は行く価値があります。

ビュールレ・コレクションで最も充実しているのがセザンヌであることは異論がないはずです。


フィンセント・ファン・ゴッホ《種まく人》1888年油彩、カンヴァス73×92cm

展覧会の構成は以下の通りです。

1章 肖像画
2章 ヨーロッパの都市
3章 19世紀のフランス絵画
4章 印象派の風景 ―マネ、モネ、ピサロ、シスレー
5章 印象派の人物 ―ドガとルノワール
6章 ポール・セザンヌ
7章 フィンセント・ファン・ゴッホ
8章 20世紀初頭のフランス絵画
9章 モダン・アート
10章 新たなる絵画の地平


最終章「10章 新たなる絵画の地平」が何が展示されているのかちょっと意味不明かもしれませんが、ここに横幅2mもあるモネの《睡蓮の池、緑の反映》が待っているのです。最後の最後にこんな大作が!!


クロード・モネの《睡蓮の池、緑の反映》1920/26年頃油彩、カンヴァス200×425cm

今回の展覧会には多くの日本初公開作品が含まれていますが、中でもこのモネの大作は、ビュールレ氏が購入した1952年以来、はじめてスイスを出る特別な作品です。

こんな良質な印象派のコレクション展を拝見したのは、久々です。中々このレベルの作品を日本で観ることが難しくなっている昨今。実に眼福で有難い展覧会です。

「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」は5月7日までです。タイトルに偽りなしです!!是非。


至上の印象派展 ビュールレ・コレクション

会期:2018年2月14日(水)〜5月7日(月)
休館日:毎週火曜日 
※ただし5月1日(火)は開館
開館時間:10:00〜18:00
※毎週金曜日・土曜日、4月28日(土)〜5月6日(日)は20:00まで
※入場は閉館の30分前まで
会場:国立新美術館 企画展示室1E
http://www.nact.jp/
主催:国立新美術館、東京新聞、NHK、NHKプロモーション
後援:外務省、スイス大使館
協賛:ジュリアス・ベア・グループ、損保ジャパン日本興亜
協力:スイス政府観光局、スイス インターナショナル エアラインズ、日本貨物航空、ヤマトロジスティクス
公式サイト:http://www.buehrle2018.jp/

《巡回予定》
福岡展 九州国立博物館
2018年5月19日(土) 〜 7月16日(月・祝)

名古屋展 名古屋市美術館
2018年7月28日(土) 〜 9月24日(月・祝)

All images: ©Foundation E.G. Bührle Collection, Zurich (Switzerland) Photo: SIK-ISEA, Zurich (J.-P. Kuhn)


印象派への招待

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注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
スイスの大実業家エミール・ゲオルク・ビュールレ(1890-1956年)は、生涯を通じ絵画収集に情熱を注いだ傑出したコレクターとして知られています。主に17世紀のオランダ絵画から20世紀の近代絵画に至る作品、中でも印象派・ポスト印象派の作品は傑作中の傑作が揃い、そのコレクションの質の高さゆえ世界中の美術ファンから注目されています。 この度、ビュールレ・コレクションの全ての作品がチューリヒ美術館に移管されることになり、コレクションの全体像を紹介する最後の機会として、日本での展覧会が実現することとなりました。

本展では、近代美術の精華といえる作品64点を展示し、その半数は日本初公開です。絵画史上、最も有名な少女像ともいわれる《イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢(可愛いイレーヌ)》、スイス国外に初めて貸し出されることになった4メートルを超えるモネ晩年の睡蓮の大作など、極め付きの名品で構成されるこの幻のコレクションの魅力のすべてを、多くの方々にご堪能いただきたいと思います。
| 展覧会 | 22:37 | comments(2) | trackbacks(0) |
良さそうな展覧会ですね
| 小原正靖 | 2018/03/13 6:34 AM |

管理者の承認待ちコメントです。
| - | 2018/04/02 8:50 PM |










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