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「ミケランジェロと理想の身体」

国立西洋美術館で開催中の
「ミケランジェロと理想の身体」展に行って来ました。


公式サイト:http://michelangelo2018.jp/

世界中に約30点しか存在しないミケランジェロの丸彫りの大理石彫刻。絵画も気圧や温湿度の管理など海外から日本へ運んでくるには困難を伴いますが、それ以上に人の背丈ほどある大理石彫刻を空輸することがどれだけ大変なことか容易に想像できます。

しかも、「貸してください」「はいどうぞ」と事が上手く進むはずもありません。公式Twitterもこんなことつぶやいていますが、それは大変なことです。

ミケランジェロ・ブオナローティ作《ダヴィデ=アポロ》と《若き洗礼者ヨハネ》が2体揃って初来日。勿論日本で初めてのことです。

壮年期に生み出した傑作《ダヴィデ=アポロ》

ミケランジェロ・ブオナローティ《ダヴィデ=アポロ》(部分)
1530年頃 フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館蔵

若き日に古代ギリシャ・ローマ彫刻の影響をうけてつくった《若き洗礼者 ヨハネ》

ミケランジェロ・ブオナローティ《若き洗礼者ヨハネ》(部分)
1495-96年 ウベダ、エル・サルバドル聖堂/ハエン(スペイン)、エル・サルバドル聖堂財団法人蔵

展覧会はそれぞれ楽しみ方があるものです。今回の「ミケランジェロと理想の身体」展の場合は、大きく2つの見方があると思います。

1つ目は「ミケランジェロ展」として捉えて観る見方です。

前述したように、ミケランジェロの全身大理石彫刻が2点も来日するのは、これが最初で最後のことです。思う存分にに神のごときミケランジェロが手掛けた彫刻を隅から隅まで味わいつくすのです。

でも、彫刻2点をそんなに長く観ていられない…と、お思いかもしれません。心配はご無用です。2点ともとにかく見どころと謎の多い作品なのでいくらでも眺めていられます。


ミケランジェロ・ブオナローティ《ダヴィデ=アポロ
1530年頃 フィレンツェ、バルジェッロ国立美術館蔵

露出展示で、360度どの角度からも観られるような展示となっています。ダヴィデなのかアポロなのか、最後の大事な部分(武器)を仕上げなかったミケランジェロのおかげで、一粒で2度味わえる稀有な像でもあります。

さらに↑の画像だと女性像にも見えてきますよね。もう舐めまわすように堪能しちゃってください。鑿の跡も残っていたりします。


ミケランジェロ・ブオナローティ《若き洗礼者ヨハネ》
1495-96年 ウベダ、エル・サルバドル聖堂/ハエン(スペイン)、エル・サルバドル聖堂財団法人蔵

もう一点、《若き洗礼者ヨハネ》は悲運な歴史から奇跡の復活を遂げたストーリーが用意されています。20世紀前半のスペイン内戦で破壊されてしまったこの作品が、今の状態に修復されたのは僅か5年前のことなのです。

頭部から目の部分の黒ずんだ部分は、戦禍にさらされた「傷跡」です。しかし両目が残っているのでヨハネの表情はしっかりと読み取れます。

修復された顔の部分がまるでヴェネチアカーニバルの仮面をつけているようにも見えます。


ミケランジェロ・ブオナローティ《若き洗礼者ヨハネ》(部分)
1495-96年 ウベダ、エル・サルバドル聖堂/ハエン(スペイン)、エル・サルバドル聖堂財団法人蔵

会場内にはどの部分が修復され補完されたところなのかを示すボードも用意されています。

ミケランジェロの2点の大理石彫刻に関してはまだまだ逸話が数多く残されており、それが全て見どころとなっています。会場内のキャプションや音声ガイドを見聞きしながら観ているとあっという間に一時間が経ってしまいます。


ミケランジェロの肖像》パッシニャーノ 
17世紀初頭 個人蔵 120.5×95.5cm 油彩/カンヴァス

第2章と第3章を中心に見ると「ミケランジェロ展」となるでしょう。

展覧会の構成は以下の通りです。

1:人間の時代ー美の規範、古代からルネサンスへ
・子どもと青年の美
・顔の完成
・アスリートと戦士
・神々と英雄
2:ミケランジェロと男性美の理想
3:伝説上のミケランジェロ



「ミケランジェロと理想の身体」展示風景

2つ目は「古代からルネサンス 人体美の受容展」として捉えて観る見方です。

展覧会の大部分は第1章「人間の時代ー美の規範、古代からルネサンスへ」が占めています。古代ギリシャ・ローマで追求された人体美を彫刻や絵画などを通じて丁寧に展開していきます。

紀元前4世紀ころに作られたヘラクレス像など、イタリアの各美術館・博物館からよくぞまぁ集めたものだと思える先品が出ています。


聖セバスティアヌス》マリオット・アルベルティネッリ 1509-1510年 個人蔵 130×45cm 油彩/板

まさに「理想の身体」とタイトルにある通りです。横浜美術館の「ヌード展」が主に近現代の女性の身体美を社会の変遷と共に紹介した展覧会でしたが、今回は全て「理想の男性美」です。

古代ギリシャ・ローマからルネサンス期の男性美の受容。それは現在のイケメンの価値基準にも大きく影響を与え続けている揺るがし難い美の系譜でもあります。


「ミケランジェロと理想の身体」展示風景

万人受けしないような展覧会に思えて、実は老若男女誰しもが大好物な理想の男性像だけで構成された上質な展覧会です。

深い知識が無くても楽しめるのもまた良いかもしれません。だって美しいものに説明は不要ではありませんか。


ミケランジェロ周辺の芸術家《磔にされた罪人》1550年頃
フィレンツェフィレンツェ、ステファノ・パルディーニ美術館

「ミケランジェロ展」と「古代からルネサンス 人体美の受容展」のどちらも楽しめる(じつはちゃんと繋がっています)「ミケランジェロと理想の身体」展。混雑する前に是非是非〜

「ミケランジェロと理想の身体」展は9月24日までです。


「ミケランジェロと理想の身体」

会期:2018年6月19日(火)〜2018年9月24日(月・休)
開館時間:午前9時30分〜午後5時30分
毎週金・土曜日:午前9時30分〜午後9時
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日、7月17日(火)(ただし、7月16日(月・祝)、8月13日(月)、9月17日(月・祝)、9月24日(月・休)は開館)
会場:国立西洋美術館
http://www.nmwa.go.jp/
主催:国立西洋美術館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
後援:外務省、イタリア大使館
協賛:大日本印刷
協力:アリタリア-イタリア航空、日本貨物航空、西洋美術振興財団

【関連エントリ】
ミケランジェロの大理石彫刻が上野にやって来る!


「ラオコーン」は撮影可能です!


ルネサンスの世渡り術
壺屋めり(著)

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注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
彫刻、絵画、建築のすべての分野で名をなし「神のごとき」と称された男、ミケランジェロ・ブオナローティ(1475-1564)。彼がシスティーナ礼拝堂に描いた《アダムの創造》と《最後の審判》はあまりにも有名です。しかし、自らを語る時、彼はあくまで「彫刻家」という肩書にこだわりました。

二十代前半に完成させたサン・ピエトロ大聖堂の《ピエタ》、フィレンツェ共和国の象徴とされる巨大な《ダヴィデ》など、その卓越した技と美意識が表現された大型彫刻作品は、各地で至宝とされています。そのため、これらの作品を中心に据えたミケランジェロの展覧会は、これまで日本では実現がきわめて困難でした。

本展は、《ダヴィデ=アポロ》《若き洗礼者ヨハネ》というミケランジェロ彫刻の傑作を核に、古代ギリシャ・ローマとルネサンスの作品約70点の対比を通して、両時代の芸術家が創りあげた理想の身体美の表現に迫ります。
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この記事に対するコメント

こんにちは。
いつもながら、美術展の本質の理解に基づいたレポートを大変興味を持ってブログを読ませていただきました。

結びの、「ミケランジェロと理想の身体」展ハローワーク、「ミケランジェロ展」と「古代からルネサンス 人体美の受容展」のどちらも楽しめるというご感想は共感いたしました。古代ギリシャ・ローマとルネサンスの作品を対比することにより、古代ギリシャ・ローマとルネサンスの芸術家が考えていた理想の身体美の表現の違いを感ずることができて、ルネサンス美術に対する理解を深めることができました。

私は、ミケランジェロの傑作『ダヴィデ=アポロ』と『若き洗礼者ヨハネ』を初めて生で鑑賞して感じたすばらしさと、成熟期の傑作ミケランジェロの若き日から晩年に至るまでの芸術の変化との過程と、成熟期の記念碑的な傑作・システィーナ礼拝堂の天井画『アダムの創造』を中心とした『創世記』のフレスコ画と『最後の審判』への道程についてレポートしてみました。 ぜひ目一度を通してみていただくようお願いします。
dezire | 2018/09/15 3:22 PM
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