青い日記帳 

  
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「岡本神草の時代展」
千葉市美術館で開催中の
「岡本神草の時代展」に行って来ました。



岡本神草(1894-1933)の初めての大規模回顧展が千葉市美術館で開催されています。明治から昭和にかけての激動期に官能美あふれる独特の作品を描いた岡本神草。

38歳の若さでこの世を去ってしまったことや、作品制作に時間をかけたこともあり、完成している作品が少ない作家でもあります。


岡本神草「口紅」1918年
京都市立芸術大学芸術資料館蔵

今回のポスターに採用されている岡本を代表するこの一枚も、京都市立絵画専門学校の卒業作品として描かれたものです。

ただし初めからこうした蠱惑的な舞妓を描いていたわけではありません。大正時代の作家であればだれもが「麻疹」のように影響を受けた竹久夢二的な作品をはじめは多く描いていました。

1914年頃に描いた「無花果(竹久夢二作)」模写、「姉と弟(竹久夢二作)」模写などが、初めの頃はひと際目に付きます。(かわいらしい愛犬を描いた作品も!)


甲斐庄楠音「横櫛」1916年頃
京都国立近代美術館蔵

そのまま夢二風の作品を描いていたかもしれません。周りに甲斐庄楠音や稲垣仲静らがいなければ。僅か数年で夢二的な作品から「口紅」が誕生するとは驚きです。

お互いが競い合うように、浮世離れしたおどろしい女性像をこぞって描いた時代が、短い大正時代に京都でおこったことは大変興味深い点です。

描かれた対象が市井の人ではなく、舞妓・芸子であることも大きなポイントです。丁度パリでは、ロートレックが踊り子や娼婦たちを描いていた頃と重なります。


トゥールーズ=ロートレック「イヴェット・ギルベール」1894年

腕や脚に固執しそこを執拗に描くさまは甲斐庄楠音にもロートレックにも見て取れます。そして勿論、岡本神草にも。とりわけ岡本の場合は腕(指)へのこだわりは尋常ではありません。

逸話ばかりが先行してしまう、この有名な作品も実は見どころは「指」だったりします。


岡本神草「拳を打てる三人の舞妓の習作」1920年
京都国立近代美術館蔵

中央にある四角い線は嘗てこの作品が切り取られてしまった痕跡です。絵を切り取るなんて一体誰が?!と犯人捜しをしたくなりますが、実は岡本自身の手で切られたのです。

理由は簡単明快「締切前に描きあがらなかったから」です。第3回国展(公募展)へ出品すべく描いていましたが、全体は完成に至らず…やむを得なく描き終えていた中央部分だけをトリミングして出展したのです。


京都国立近代美術館で昨年(2017年)に開催された同展覧会のチラシはズバリこれでした。「覚悟の裁断」とありますね。

どうしても出品したく苦肉の策と言えますが、もう少し計画的に描いていれば…この作品に限らず岡本は納得のいくまで下絵(草稿)を描きました。

今回そうした下絵が沢山出ています。他にも完成に至らなかったものも多数。自分が納得のいくまでとことん突き詰めるタイプだったようです。


岡本神草「婦女遊戯」1932年
株式会社ロイヤルホテル蔵

指にこだわった感応的な女性を描いていた岡本ですが、時代が昭和となるとこんな作品を描くようになります。まるで憑き物が落ちたかのように。

亡くなる前年に描かれたのがこの作品というのもどこか納得がいく気がします。歴史にもしはありませんが、仮に岡本が長生きし第二次世界大戦を経験したとしたら、その後どんな展開を見せていたか気になるところです。

数少ない完成作品の他に、素描・下図・資料類約100点の岡本作品が一堂に会しています。また甲斐庄楠音など共に競い合った仲間や師の菊池契月などの作品も展示されています。


稲垣仲静「太夫」1919年頃
京都国立近代美術館蔵

京都にハレー彗星の如く起こった、デロリとした妖艶な美人画。今あらためて彼らが注目を集めているのも時代の変革期だからかもしれません。

「岡本神草の時代展」は7月8日までです。関東では千葉市美術館だけでの開催となります。出かけるだけの価値ありますよ〜

同時開催中の「浮世絵黄金期からの展開」を見ると、浮世絵からのつながりも明々白々です。


岡本神草の時代展

開催期間:2018年5月30日(水)〜 7月8日(日)
開館時間:日〜木曜日 10:00〜18:00、金・土曜日 10:00〜20:00
※入場受付は閉館の30分前まで
休館日:6月4日(月)、18日(月)、7月2日(月)
会場:千葉市美術館
http://www.ccma-net.jp/
主催:千葉市美術館、京都国立近代美術館


あやしい美人画

日本美術の流れにあやしく輝く、時におそろしささえ感じさせる美人画の数々。表面的な美しさではなく、女性の内面に潜む哀しみ、怒り、嘆きを表現しようと力を尽くす、江戸から現代に至る画家たちの「美」への挑戦状です。

【取り上げている画家】 池田輝方/稲垣仲静/岩佐又兵衛/上村松園/歌川国芳/岡本神草/甲斐庄楠音/葛飾応為/葛飾北斎/狩野 長信/鏑木清方/河鍋暁斎/祇園井特/菊池契月/岸田劉生/喜多川歌麿/北野恒富/木村斯光/渓斎英泉/ 小林かいち/小林清親/小村雪岱/柴田是真/島成園/下村観山/曽我蕭白/高橋しん/高橋由一/橘小夢/ 月岡芳年/中澤弘光/長沢蘆雪/西山翠嶂/速水御舟/菱田春草/牧島如鳩/松岡映丘/梥本一洋/松本喜三 郎/丸尾末広/村山槐多/村上華岳


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 岡本神草(本名・敏郎)は明治27(1894)年、神戸市に生まれました。彼は大正4年に京都市立美術工芸学校絵画科を卒業後、京都市立絵画専門学校に進学します。
  最初は当時広く流行していた新南画風の作品を描いていましたが、大正5年頃から生涯のモティーフとなった舞妓を竹久夢二風に描くようになります。その世界は浮世絵の影響を受けてしだいに濃厚な官能性を帯びるようになり、大正7年の第1回国画創作協会展(国展)に入選した《口紅》によって一気に開花し、新興美人画作家として注目を集めました。
  大正9年、第3回国展に出品した《拳を打てる三人の舞妓の習作》では官能性の先にある神秘的な存在感を追究し、将来を期待されるようになります。その後菊池契月に師事し、新たな展開を模索するなか、昭和8(1933)年に38歳の若さで急逝しました。

 今回は《口紅》、《拳を打てる三人の舞妓の習作》等のこれまでに知られている作品をはじめ、寡作で知られる岡本神草の数少ない完成作を可能な限り集め、素描・下図・資料類約100点の他に甲斐庄楠音など共に競い合った仲間や師の契月などの作品も展示します。
 本展覧会は昨秋京都国立近代美術館で開催され、大きな反響を呼びました。東日本で唯一本展を開催する千葉市美術館は、巡回の最終会場となります。
| 展覧会 | 22:36 | comments(0) | trackbacks(0) |









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