青い日記帳 

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「横山華山展」

東京ステーションギャラリーで開催中の
「横山華山展」に行って来ました。


http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

昨年(2017年)に歴史の中で忘れられてしまった画家「没後40年 幻の画家 不染鉄展」を開催し、大きな評判となったのもまだ記憶に新しいところです。

その東京駅ステーションギャラリーで、今日から横山華山(1781/4〜1837)の展覧会が始まりました。不染鉄以上に嘗て名声を得ていたにも関わらず、現在ではその存在がほとんど知られていない横山崋山。

崋山は崋山でも渡辺崋山ではなく、横山崋山です。(ましてや横山大観でもありません。)


横山華山「寒山拾得図
ボストン美術館

この作品画像を目にし、何だか曽我蕭白に似ているな〜と思った方!大正解です!!横山崋山の家は蕭白のパトロンであったため、家に蕭白作品がいくつもあったのです。

画業のスタートをまず蕭白からというのも、ちょっとどうかと思いますが、とにかく横山崋山は蕭白を手本に作品を創り出していったのです。

しかし、ただ模写をしたとかそういったレベルではありません。蕭白を手本としながらも独自表現を模索して行った様子が同じ主題の作品を並べてみることで分かります。


右:曾我蕭白「蝦蟇仙人図」ボストン美術館
左:横山華山「蝦蟇仙人図」個人蔵

ぱっと見た感じでは同じ作品と思えてしまうかもしれません。しかし部分部分を子細に比べていくとかなり違う点が見つかります。

例えば足や腕の表現、それにアイコンであるガマも似ているようでまるっきり違います。この作品だけ比べて観ると横山崋山の方がより動的な表現となっています。まるでガマとダンスを踊っているかのようです。

さて、展覧会会場では、崋山が9歳の時に描いた牛若丸と弁慶の絵が最初に展示されています。


横山崋山「牛若弁慶図

幼い頃から画才に恵まれていたことが分かります。この才能を有しながら養子として入った横山家で曽我蕭白の迫力ある奇想の作品を目にし一気に開眼したのでしょう。絵師としての真の才能を。

崋山が生前から高い評価を受け一流の絵師として京都を中心に名を轟かせていたのには、この素養をベースにし人物画や風景画など幅広い作品を手がけたからに他なりません。

時に大胆で、時に繊細。子どもを描かせると長沢芦雪のような可愛らしい子を、花鳥を描かせれば円山四条派の流れをくむ細やかでやさしいタッチで表現してみせるのです。


横山崋山「桃錦雉・蕣花猫図

上手いと同時にしなやかさが同居している崋山の花鳥画は、江戸時代のどの絵師のそれと被りません。今の時代自己主張が強い絵師が人気ですが、こうしたシンプルに美しい絵もまた観ていて気持ちの良いものです。

尚、「桃錦雉・蕣花猫図」は明治天皇に下賜された作品でもあります。それほどメジャーな絵師だったということになります。

展覧会の構成は以下の通りです。

1:蕭白を学ぶ −華山の出発点−
2:人物 −ユーモラスな表現−
3:花鳥 −多彩なアニマルランド−
4:風俗 −人々の共感−
5:描かれた祇園祭 −《祇園祭礼図巻》の世界−
6:山水 −華山と旅する名所−




それにしても、何故江戸時代から明治にかけて絶大な知名度を誇っていたこれだけ腕のたつ絵師が、現在では知名度がほぼゼロに近い状態となってしまっているのでしょう。

伊藤若冲とは若干違うかもしれませんが、弟子はいても流派に属していなかった点や、明治に入ると優品がまとめて海外へ買われてしまったことなどがあげられます。

展覧会でも扱われることがあまりなく、近年では唯一、2012年に九州国立博物館で開催された「美のワンダーランド 15人の京絵師展」に出ていただけです。



まだまだ歴史の中に埋もれてしまい日の目を見ていない優れた絵師がいるのが現状です。崋山もこの展覧会を契機に再評価され、渡辺崋山や横山大観と名前がごちゃ混ぜにされず「横山崋山」として立派に名の通る日もそう遠くはなさそうです。

それは、何でも一概に再評価すればよいという風潮とは違い、この「横山崋山展」を観ればそれこそ一目瞭然です。兎に角推したくなること間違いありません。どんな天邪鬼であっても。

美術の世界は変なところがあり、皆が良いとするものを「僕はそうは思わないな〜」とわざと斜に構える全く素直ではない人がいることです。

ただし、渡辺崋山については、絶対にそうしたへそ曲がりな意見は出てこないはずです。それは、それだけの作品力があるからです。


横山崋山「花見図

久々に長いこと足を止めてじっくりと観てしまった作品が多くある中から2点だけご紹介しておきます。初めはこの「花見図」です。

ひとりひとりの顔の描写の違いは勿論のこと、花見に集った男女の一挙手一投足が実に子細に表されています。幕席の中央に置かれた重箱に入ったおつまみにも注目です。小さくカットされた蛸が一目で蛸と分かるように描くことの如何に難しいことか。


横山崋山「紅花屏風

京都の紅花問屋から依頼を受け、紅花が商品となるまでの農作業の過程をリアルに描いた傑作です。これを描くために崋山はわざわざ山形まで出向き、徹底した取材をしています。

それも長期間に渡り、作るのが大変とされる紅花が出来るまでの行程を、まるで記録映画のように捉えています。その中にユーモラスな部分も忘れることなく。

「紅花屏風」は10月14日までの展示です。これは絶対に見逃せない今年一番の作品です。


横山華山「祇園祭礼図巻

そして、圧巻は最晩年に描いた「祇園祭礼図巻」です。

江戸時代後期の祇園祭の全貌を、上下巻約30メートルに渡ってこれまた詳細に描いています。

縦幅が短い絵巻に背の高い山鉾巡行をどう描いているのでしょう。それは実物を観てのお楽しみです。大胆な構図とトリミングに唸るはずです。



今年の日本美術の展覧会できっと誰しもが迷うことなく1番にあげるのではないでしょうか。10年後、20年後にこの展覧会を観ておいて良かったと思える(逆に見逃すと後悔する)重要な「横山崋山展」。

西洋美術が上野や六本木で賑わいをみせる今年の秋。じっくりと東京駅で極上の日本美術と向かい合いましょう。そうそう、酒井抱一が好きなら間違いなく崋山も好きになるはずです。

「横山崋山展」は11月11日までです。是非是非!!


「横山崋山展」

会期:2018年9月22日(土) − 11月11日(日)
開館時間:10:00 − 18:00
※金曜日は20:00まで開館
※入館は閉館の30分前まで
休館日:月曜日[9月24日、10月8日、11月5日は開館]、9月25日(火)、10月9日(火)
会場:東京ステーションギャラリー
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
主催:東京ステーションギャラリー(公益財団法人東日本鉄道文化財団)、日本経済新聞社
協力:日本航空
協賛:野崎印刷紙業


『江戸の十二支どうぶつえん』 (面白江戸アートギャラリー)

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注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
横山華山(1781/4〜1837)は、江戸時代後期の京都で活躍した人気絵師です。彼は曾我蕭白(そがしょうはく)に傾倒し、岸駒(がんく)に入門した後、呉春(ごしゅん)に私淑して絵の幅を広げ、多くの流派の画法を身につけました。そして、諸画派に属さず、画壇の潮流に左右されない、自由な画風と筆遣いで人気を博しました。その名声は日本中に広がり、ほかの絵師たちにも大きな影響を与え、門人も抱えました。
華山は作品の画題に合わせて自由自在に筆を操り、幅広い画域を誇りました。本展は、華山の多彩な画業を系統立てて紹介する初めての回顧展です。そんな彼の本領を余すところなく伝える代表作のひとつ、《祇園祭礼図巻(ぎおんさいれいずかん)》も出品します。山鉾や神輿などの祭列を細かく描写する記録性、臨場感を与える構図、店先にいる人々までをも豊かに描き出した華山ならではの作品です。
華山の名は、没後しばらくは有名な書画家の一覧表に掲載されたり、夏目漱石の『坊ちゃん』に登場するなど、知られていたようです。また、フェノロサら海外の研究者やコレクターからも評価され、その優品が何点も欧米の美術館に収蔵されましたが、今や知る人ぞ知る絵師となっています。本展は、ボストン美術館や大英博物館といった海外に渡った作品も里帰りし、曾我蕭白や弟子たちの作品も含め会期中約100点の展示で、華山の画業とその魅力に光を当てようとするものです。
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