青い日記帳 

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「マルセル・デュシャンと日本美術」

東京国立博物館で開催中の
東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展「マルセル・デュシャンと日本美術」に行って来ました。


http://www.duchamp2018.jp/

美術館に何度か通い慣れてくると、誰の前にも突然「デュシャン」という壁がそそり立つものです。壁といっても決して高くなくひょいと一跨ぎできそうでありながら、一向に超えることの出来ない四次元ポケットのような存在です。

正攻法で攻めてもダメ、裏をかこうとしてもダメ、まるで高名な禅僧と禅問答をしているかのように一向に「答え」が見つかる気配すらつかめないマルセル・デュシャン。


マルセル・デュシャン「階段を降りる裸体 No.2」1912年

ピカソより六歳若いマルセル・デュシャン(Marcel Duchamp、1887- 1968年)とはどんな画家なのでしょう。画家と表現しましたが、彼が絵を描いていたのは二〇代まででそれ以降、画家らしい活動はしていません。芸術活動自体も三〇代半ばでやめてしまい、あとはもっぱら趣味であったチェス(かなりの腕前だったそうです)に没頭する毎日を送った、かなり変わった遍歴の持ち主です。ピカソが九〇歳を過ぎてもなお旺盛に作品制作を続けたのとは対照的です。
いちばんやさしい美術鑑賞』より。

デュシャンの作品をまとめて国内で観られる機会はほとんどありません。しかし、今回のトーハクでの「デュシャン展」は、世界有数のデュシャン・コレクションを誇るフィラデルフィア美術館の主催展です。

「マルセル・デュシャンと日本美術」展となっていますが、「マルセル・デュシャン」展として最強のラインナップとなっています。デュシャンは現代アートを語り、考える上で最重要人物ですのでもし、今興味が無かったとしても観ておくことは今後のためにとてもとても大事です。

「ぜんぶデュシャンのせいだ。」
いちばんやさしい美術鑑賞』より。

展覧会の構成は以下の通りです。

第1部 マルセル・デュシャン没後50年記念 「デュシャン 人と作品」
第1章 画家としてのデュシャン
第2章 「芸術」でないような作品をつくることができようか
第3章 ローズ・セラヴィ
第4章 《遺作》 欲望の女

第2部 「デュシャンの向こうに日本がみえる。」
第1章 400年前のレディメイド
第2章 日本のリアリズム
第3章 日本の時間の進み方
第4章 オリジナルとコピー
第5章 書という「芸術」



マルセル・デュシャン「ブランヴィルの教会」、「ブランヴィルの庭と礼拝堂」1902年


マルセル・デュシャン「芸術家の父親の肖像」1910年

第1章 画家としてのデュシャンだけでも観に行く価値十分にあります。デュシャンは変に神格化されたり「便器の作家」といイメージが強烈ですが、ちゃんと油彩画に取り組んでいたのです。

色々と見どころは多く、観たことのないデュシャン作品が沢山出ており、興奮しっぱなしでしたが、中でも初期絵画は衝撃的でした。真面目に絵を描いていた時代があり、しかも印象派やセザンヌの影響をもろに受けているのです。

こんな絵を観ちゃうと「デュシャンも人の子ね」ととても愛着がわいてきてしまいます。「こんなに素直でいい子だだったのに何故…」的な展開がこの後待っていますけどね。


マルセル・デュシャン(オリジナル)東京版監修:瀧口修造、東野芳明「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも(大ガラス)東京版
1980年(複製/オリジナル1915–23年)
東京大学 駒場博物館所蔵

謎多きデュシャン作品の中でも最高峰に君臨する「彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも」通称「大ガラス」。オリジナルは物理的に動かせないので展覧会には東京ヴァージョンが出ています。

高さ272.5cm、幅175.8cmもある巨大な鉄の枠で固定された2枚のガラスによって形作られている中に、油彩やワニス、鉛、針金などで機械的なものや謎の物体が表現されています。タイトルはつけられているので、「花嫁」や「独身者」が表現されているのではないかということは分かりますが、それがどこを差し、一体どうしてそのような形態で表されているのかは、いくら考えても答えにたどり着けそうにありません。
いちばんやさしい美術鑑賞』より。

ただ考えることを放棄してしまうと、デュシャン作品はちっとも面白くありません。そこになにが意図されているのか、はたまた盛大なはったりなのか、色々と思考を巡らせてみることが大事です。「正解」はありませんので。

世界で最も有名な便器(磁器製小便器)も出ています。写真撮影も一部を除き基本OKです。しかし便器にiPhoneを向け映える写真を撮っている姿を見ていると、これもまたデュシャンが仕込んだことなのでは邪推してしまいます。


マルセル・デュシャン「」1950年(レプリカ/オリジナル1917年)

それにしても、初期油彩画からレディメイド、関連資料・写真など約150点で構成される(しかもフィラデルフィア美術館コレクション!)超贅沢な「デュシャン展」です。デュシャンは美術の世界において「麻疹」のようなものです。一度感染しておかないと先へ進めません。

何故これがアートなのか、この展示に果たしてお金を払う価値があるのか等々腑に落ちないこともあるかもしれません。でも、それらが全て今後の肥やしになるのです。観ておきましょう。



因みに、フィラデルフィア美術館のデュシャン・コレクションが自館以外でこのようにまとまって公開される初の機会だそうです。ではなぜトーハクでそれが実現したのか?不思議ですよね。

何でもトーハクの日本美術をあちらに随分と貸しているらしいのです。フィラデルフィア美術館で過去に開催された「本阿弥光悦展」(2000年)、「池大雅・徳山玉瀾」展(2007年)、「狩野派展」(2015年)等々。

こうした交流があってこそ実現した今回の「デュシャン展」。第2部「デュシャンの向こうに日本がみえる。」は企画倒れ的な面もありますが、第1部のデュシャン作品を観られるだけで十分満足できます。



会場デザインもとても優れていて、デュシャン作品を実によく引き立ていると同時に随所に展示されているデュシャンの写真がこれまたイケメンなのです。

フランス生まれで、生活に苦労しないチェス好きなエロい色男。←一番質が悪そうですよね。。。だからこそみんなデュシャンが大好きで憧憬の念を抱いているのです。

「マルセル・デュシャンと日本美術」展は12月9日までです。これを見逃すと韓国国立現代美術館(韓国・ソウル)、ニューサウスウェールズ州立美術館(オーストラリア・シドニー)まで観に行かねばなりません。上野で日本美術と共にしっかりと観ておきましょう!


東京国立博物館・フィラデルフィア美術館交流企画特別展
「マルセル・デュシャンと日本美術」


会期:2018年10月2日(火)〜12月9日(日)
開館時間:9:30〜17:00(入館は閉館の30分前まで)
(ただし、金曜・土曜、10月31日(水)、11月1日(木)は21:00まで開館)
休館日:月曜日(ただし10月8日(月・祝)は開館)、10月9日(火)
会場:東京国立博物館(上野公園) 
平成館 特別展示室 第1室・第2室
https://www.tnm.jp/
主催:東京国立博物館、フィラデルフィア美術館
特別協力:キヤノン株式会社
協力:日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社、ミネベアミツミ株式会社
後援:J-WAVE、TBSラジオ
http://www.duchamp2018.jp/

平成館のもう半分ではこちらの展覧会を開催中です。

特別展「京都 大報恩寺 快慶・定慶のみほとけ」


マルセル・デュシャン アフタヌーン・インタヴューズ: アート、アーティスト、そして人生について
河出書房新社


百年の《泉》 ―便器が芸術になるとき―
平芳幸浩 (編集), 京都国立近代美術館 (編集)

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@taktwi

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JUGEMテーマ:アート・デザイン



マルセル・デュシャン(1887-1968)は、伝統的な西洋芸術の価値観を大きく揺るがし、20世紀の美術に衝撃的な影響を与えた作家です。

この展覧会は2部構成となります。
第1部「デュシャン 人と作品」(原題 The Essential Duchamp)展は、米国・フィラデルフィア美術館が企画・監修する国際巡回展で、同館所蔵の世界に冠たるデュシャン・コレクションより、油彩画、レディメイド、関連資料・写真など計150余点によって、彼の創作活動の足跡をご覧いただきます。

第2部「デュシャンの向こうに日本がみえる。」展は、東京国立博物館の日本美術コレクションで構成、もともと西洋とは異なった社会環境のなかで作られた日本の美術の意味や、価値観を浮かび上がらせ、日本の美の楽しみ方を新たに提案しようとするものです。

フィラデルフィア美術館のデュシャン・コレクションが自館以外でこのようにまとまって公開される初の機会であり、
それを日本美術品と比べて見ることのできる大変貴重な機会となります。
この展覧会では「芸術」をみるのではなく「考える」ことで、さまざまな知的興奮を呼び起こしてください。
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