青い日記帳 

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「ムンク展」

東京都美術館で開催中の
「ムンク展―共鳴する魂の叫び」に行って来ました。


https://munch2018.jp/

世界一有名な絵画と言ってもあながち間違いではないムンクの「叫び」。


エドヴァルド・ムンク「叫び」1910?年 テンペラ、油彩
オスロ市立ムンク美術館蔵

ムンクはその生涯で4点の「叫び」を手がけています。29歳頃に初めて描いた「叫び」はクレヨンだけの下絵的なものと、テンペラとクレヨンで描いた2バージョン。

技法を変えて、31歳頃にはパステルで、46歳頃にはテンペラと油彩でそれぞれ「叫び」を描いています。このほかにもリトグラフの「叫び」も存在します。

今回初来日を果たしている「叫び」は46歳頃に描かれた作品で4点の中でも最もはっきりとした色彩が特徴です。会場内に叫び4点を比べた解説パネルがあるのでそちらを要チェックです。



【衝撃】《叫び》は○○だった!?ムンクの3つの意外な真実

しかしながら、「叫び」が実は4点も描かれていたことや、それぞれの違いはそれほど気にすることはないと思います。それよりも何故これほどまで多くの人がこの絵に惹かれるのかが知りたくなります。

自分が行ったのは金曜日の夜間開館の時間帯でしたが、平日の夕方にも関わらず沢山の方がムンクの絵特に「叫び」を観に来られていました。


エドヴァルド・ムンク《生命のダンス》1925年 油彩、カンヴァス 143×208cm

誰もが知る名画が来ているから観に行く。シンプル尚且つ一番分かりやすい理由です。フェルメール「真珠の耳飾りの少女」と同じのりです。

「ムンク展」で気になったのは、一人で観に来ている若い男性が他の展覧会よりも断然多くみられたことでしょうか。ちょっと他の展覧会ではあり得ないことです。

土日となると老若男女実に幅広い年齢層の方が押し寄せているそうで、ムンクの圧倒的な知名度と支持率の高さはどこにあるのか政治家さんも研究してみるとよいかもしれません。


「ムンク展」会場風景

明治43年、1910年頃に4点目として描かれた「叫び」だけでなく、ムンクという画家の描き出した唯一無二、誰にも真似できない(したくない)世界観がちょうど現代人の心と強く共鳴するところがあるのでしょう。

例えば、自分が学生の頃は生まれつき身体の弱い子はいても、気持ち(心)を病んでしまい、学校に来られないまたは友人とコミュニケーションが取れないなんて子は滅多にいませんでした。

今ではどこの学校にもカウンセリングルームが設置され、専属のカウンセラーがいるそうです。保健室は怪我をした時に行く場所ではなく「心の避難場所」なのだとか。


エドヴァルド・ムンク《病める子》1896年 リトグラフ 43.2×57.1cm

子どもからして精神的に追い詰められているのですから、況や大人をやです。便利な道具に囲まれ一見幸せそうに見えても、自ら命を絶つ人が後を絶たない今の時代。ムンクとのシンクロ率は、彼が生きた時代よりも遥かに上昇しています。

生に対する私の恐れは病気とともに私には必要なものだ。不安と病気なしには、私は櫂のない舟のようなものだ。

病むことで時の画家として名を馳せたムンク。ゴッホも同じく悩んで悩んで描いていますが、世間に認められる前にこの世を去ってしまいました。

ムンクは国からも認められた立派な大画家となっても常に不安と悩みを抱えていました。多くの女性とお付き合いはしたものの生涯独身を貫いた理由も彼の心に根差す闇があったからに違いありません。


エドヴァルド・ムンク《星月夜》1922-24年 油彩、カンヴァス 120.5×100.5cm

展覧会の構成は以下の通りです。

1:ムンクとは誰か
2:家族ー死と喪失
3:夏の夜ー孤独と憂鬱
4:魂の叫びー不安と絶望
5:接吻、吸血鬼、マドンナ
6:男と女ー愛、嫉妬、別れ
7:肖像画
8:躍動する風景
9:画家の晩年


100%ムンク作品の展覧会という点はお見事。油彩画も60点あり見応え十分です。この展覧会を通して観ると「叫び」が突然変異のように誕生したわけでは無いことに気付かされます。偶然でなく必然。そこに至るまでの画業を振り替えると実に多彩な面が見えてきます。

ゴッホの晩年の作品に惹かれるのと同様に、閾値を超えた精神状態で描かれた作品は観る人の心に土足で踏み込んでくるような迫力があります。


エドヴァルド・ムンク「メランコリー」1894-96年

そうそう、ノルウェーの自然を描いた作品も他の画家にはない魅力を湛えています。そこに描かれている人物が梶井基次郎の『Kの昇天―或はKの溺死』とイメージが重なります。

影と『ドッペルゲンゲル』。私はこの二つに、月夜になれば憑かれるんですよ。この世のものでないというような、そんなものを見たときの感じ。――その感じになじんでいると、現実の世界が全く身に合わなく思われて来るのです。だから昼間は阿片喫煙者のように倦怠です

生まれつき病弱で、母親と姉を病気で亡くすなど常に死と隣り合わせだった彼の生涯は常に暗い影が付きまとっていました。家族を描いたセクションもぐっとくるものがあると共に比較的客観的に描いているのが分かります。



名声を得てからはムンクに肖像画の依頼が多く来たそうです。あの「神は死んだ!」のフリードリヒ・ニーチェの全身像も描いています。

それ以上に多いのが自画像です。若い頃から80歳近くまで、これほどヴァリエーション豊富なありとあらゆる自画像を描いたのはちょっと意外でした。ムンク自身は自分のこと決して嫌いではなかったどころか、自分大好き人間だったようです。

「叫び」だけが独り歩きしている感のあるムンクですが、今回の「ムンク展」で固定化されたムンクのイメージがどう変わるか楽しみですね。


エドヴァルド・ムンク《絶望》1894年 油彩、カンヴァス 92×73cm 

とても見応えのある展覧会でした。これだけ内容がしっかりしていると観に行った甲斐があるものです。

「ムンク展―共鳴する魂の叫び」は2019年1月20日までです。是非是非。


「ムンク展―共鳴する魂の叫び」

会期:2018年10月27日(土)〜2019年1月20日(日)
休館日:月曜日、12月25日(火)、1月1日(火・祝)、15日(火)
※ただし、11月26日(月)、12月10日(月)、24日(月・休)、1月14日(月・祝)は開室
開館時間:9:30〜17:30(入室は閉室の30分前まで)
会場:東京都美術館
https://www.tobikan.jp/
主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、朝日新聞社、テレビ朝日、BS朝日
後援:ノルウェー大使館
協賛:アトレ、鹿島建設、コーセー、ショップチャンネル、セコム、ソニーマーケティング、東レ、凸版印刷
制作協力:P.I.C.S.、博報堂DYメディアパートナーズ
協力:日本航空、フィンエアー
https://munch2018.jp/

作品はすべてオスロ市立ムンク美術館所蔵 All Photographs ©Munchmuseet


「ムンク展」を観る前と後でこの3冊の本を購入し読みました。自分自身ムンクについてあまりにも無知でした。こうした機会にまとめて関連書籍を読むのも楽しみのひとつとなっています。


『ムンク展 共鳴する魂の叫び』 公式ガイドブック (AERAムック)


もっと知りたいムンク (アート・ビギナーズ・コレクション)


ムンクへの招待


「ムンク展」ミュージアムグッズ

JUGEMテーマ:アート・デザイン



注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
世界で最もよく知られる名画の一つ《叫び》を描いた西洋近代絵画の巨匠、エドヴァルド・ムンク(1863−1944)。画家の故郷、ノルウェーの首都にあるオスロ市立ムンク美術館が誇る世界最大のコレクションを中心に、約60点の油彩画に版画などを加えた約100点により構成される大回顧展です。
複数描かれた《叫び》のうち、ムンク美術館が所蔵するテンペラ・油彩画の《叫び》は今回が待望の初来日となります。愛や絶望、嫉妬、孤独など人間の内面が強烈なまでに表現された代表作の数々から、ノルウェーの自然を描いた美しい風景画、明るい色に彩られた晩年の作品に至るまで、約60年にわたるムンクの画業を振り返ります。
展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

これだけ内容の充実したムンク展,この日は都美術館では一寸狭い位混みあっていて,見る側が作品以上に悲鳴をあげる程なのでした!同時代の写真観や文学作品や劇作家、哲学者等とムンクの作品が結びついていると感じさせられた展示です。ニーチェの像等が恰もゴッホの自画像のタッチだったのもゴッホへの傾倒ぶりが分かります。
pinewood | 2019/01/19 7:48 AM
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