青い日記帳 

  
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「廃墟の美術史」
渋谷区立松濤美術館で開催中の
「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」展に行って来ました。


http://www.shoto-museum.jp/

Instagramで「#廃墟」と検索すると30万件以上の投稿があります。



「廃墟萌え」や「廃墟病院」などややマニアックな投稿も多くみられるほど、「廃墟」は現代における一種のパワーワードとしてその地位を確立しています。

それにしても、何故にこれほどまで廃墟に現代人は惹かれるのでしょう。そもそもいつの時代から廃墟に人々は興味関心を向け始めたのでしょうか。


ユベール・ロベール「ローマのパンテオンのある建築的奇想画」1763年
ヤマザキマザック美術館蔵
リチャード・ウィルソン「キケロの別荘」18世紀
郡山市立美術館蔵

美術史の側面から廃墟を捉える意欲的な展覧会が渋谷区立松濤美術館で開催されています。背景の一部として小さく描かれたきた廃墟が、絵画の主役として表舞台に上がったのは18世紀のことです。

「廃墟画」の誕生からまず展覧会は静かにスタートします。(今回は松濤美術館2階展示室が第一会場となっています)


ジョン・セル・コットマン「城門と城壁の廃墟、ライジング城の城郭、ノーフォーク」1817年 他
郡山市立美術館蔵

かつてそこに人が住み、生活を営んでいた家、または栄華を極めていた王侯貴族の城。廃墟となるには「人」が欠かせない要素です。

今はもう人がいなくなってしまい建物だけが空しく残される。そこにある人はセンチメンタリズムを感じ、ある人は人生の儚さを思うでしょう。

そう、廃墟には人の様々な想像力をかき立てるものがあるのです。ある程度生活にゆとりがないと自分の生活に手いっぱいで、廃墟には目が向きません。

18世紀から19世紀に廃墟画が登場したのは、そうした理由が大きいのではないでしょうか。勿論現在の#廃墟もその延長線上にあります。


藤島武二「ポンペイの廃墟」1908年頃
茨城県近代美術館蔵

展覧会の解説にはこの時代に盛んとなった考古学への関心や「グランドツアー」の影響により、廃墟画が多く描かれたとありました。

展覧会の構成以下の通りです。

1章 絵になる廃墟:西洋美術における古典的な廃墟モティーフ
2章 奇想の遺跡、廃墟
3章 廃墟に出会った日本の画家たち: 近世と近代の日本の美術と廃墟主題
4章 幻想のなかの廃墟:昭和期の日本における廃墟的世界
5章 遠い未来を夢見て:いつかの日を描き出す現代画家たち




第二会場の地下展示室は廃墟への憧れから一歩先に進み、廃墟を積極的に作品内にモチーフとして取り入れたポール・デルヴォーやルネ・マグリット、キリコなど所謂シュールレアリスムの画家たちの絵が展開されます。

その影響を受けた「昭和期の日本における廃墟的世界」は知らない作家も多く大変興味深い一角となっていました。文学の世界では安部公房の『砂の女』や『箱男』が書かれた頃です。

シュールな世界の表現に廃墟は最も使い勝手のよいアイテムだったのでしょう。

平成に入ってからも現代アートの世界では廃墟を積極的にテーマとして取り上げる作家が多くいます。最終章では大岩オスカールの2点が最も優れており目を引きます。


大岩オスカール「動物園」1997年
東京都現代美術館寄託

元田久治や野又穫の近未来に起こりうる新たな「廃墟」作品で展覧会は締めくくられます。

そうそう、日本では江戸時代から廃墟画が描かれていました。


伝 歌川豊春「阿蘭陀フランスカノ伽藍之図」 文化期(1804−18)頃
町田市立国際版画美術館

ヨーロッパからもたらされたローマ遺跡の版画を目にした日本人が写した浮世絵です。廃墟画が早くも江戸時代に伝播していたことを今に伝える重要な作品です。「廃墟萌え」の萌芽が江戸時代にあったとは!

日本人が人の居なくなった廃墟に興味関心を示すのは西洋の影響もあるかもしれませんが、元々「誰が袖図」(たがそで:桃山時代から江戸時代にかけて流行した種々の豪華な婦人の衣装を衣桁にかけた図。)などを好んだ点も見逃してはいけません。

いずれにせよとても意欲的で多くの刺激を受ける展覧会でした。「廃墟の美術史展」は2019年1月31日までです。是非是非!


「終わりのむこうへ : 廃墟の美術史」

会期:2018年12月8日(土)〜2019年1月31日(木)
休館日:12月10日(月)、17日(月)、25日(火)、12月29日(土)〜1月3日(木)、1月7日(月)、15日(火)、21日(月)、28日(月)
開館時間:午前10時〜午後6時(金曜のみ午後8時まで)
会場:渋谷区立松濤美術館
http://www.shoto-museum.jp/
主催:渋谷区立松濤美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会
協賛:ライオン、大日本印刷、損保ジャパン日本興亜


アンリ・ルソー「廃墟のある風景」1906年頃
ポーラ美術館

ルソーが廃墟を描くと全く廃墟らしさが消えてしまうのは面白いですね。「カワイイ廃墟」


幽幻廃墟

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注:会場内の画像は主催者の許可を得て撮影したものです。
栄華や文明の痕跡を残しながら崩れ落ちようとする建造物や遺跡。「廃墟」は西洋美術のなかで、風景画の一角にくりかえし描かれていました。18世紀から19世紀にかけて、興味深いことにいわゆる廃墟趣味が流行すると、「廃墟」は絵画の主役の地位を確立していきます。
「廃墟」を愛でること、描くこと−この美学は、近代に日本の美術のなかにも伝播しました。廃墟の画家として名を馳せた18世紀のユベール・ロベール、版画家ピラネージから、19世紀のコンスタブル、20世紀のアンリ・ルソー、マグリット、デルヴォー、そして日本の江戸時代から近現代の画家たち、亜欧堂田善、藤島武二、岡鹿之助、元田久治、大岩オスカール、野又穫まで、廃墟の主題は描き継がれているのです。
なぜ人々は、流れる時間のなかで滅びた、またはいつか滅びてしまう、遠い昔のあるいは遠い未来の光景に、惹きつけられるのでしょう。
この展覧会では、西洋古典から現代日本までの廃墟・遺跡・都市をテーマとした作品を集め、これら「廃墟の美術史」をたどります。
| 展覧会 | 23:51 | comments(0) | trackbacks(0) |









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