青い日記帳 

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土曜講座「レンブラント、フェルメールの時代─オランダの光を訪ねて」

先週に引き続きブリヂストン美術館で行われた講演会
「レンブラント、フェルメールの時代─オランダの光を訪ねて」を
聴講して来ました。



目白大学教授教授の小林頼子先生による講演でした。
小林先生は日本におけるフェルメール研究の第一人者です。
フェルメール論―神話解体の試み
『フェルメール論―神話解体の試み』小林 頼子
↑フェルメール好きの自分にとってこの本はバイブルのように
大切にしいつも手の届く位置に置いてある一冊です。
(サインしていただき更に自分の中での「価値」がアップしました)

また最近こちらの本も翻訳なされ上梓なされたそうです。
講演会終了後、控え室で先生と直接お話させていただき
その際にこちらの本も拝見させていただきましたが
大変内容の充実した一冊です。
オランダ絵画のイコノロジー―テーマとモチーフを読み解く
『オランダ絵画のイコノロジー―テーマとモチーフを読み解く』
エディ・デ ヨング, Eddy de Jongh, 小林 頼子

少し高いですが買います。

2時間の予定の講演を30分も延長してお話してくださった後に
先生は全く嫌な顔ひとつなさらずに笑顔で対応してくださいました。
感謝感謝です。

先生が美術史家として海外で研究を始められた頃は
日本人の美術史家が何しに来たんだ?!といった扱いも
多く受けたそうですが、今では随分あちらの認識も変わり
昔と比べ物にならないほど受け入れてもらえるようになったそうです。

小林先生たちのご努力により今の「道」はあると言っても過言ではありません。
これから美術史家を目指す若い人に対してまずはとにかく英語力を
身に付けておくように伝えたいとおっしゃっていました。

また、講演会があると必ずこれだけは話しておくことがあるそうです。
それは今日のお話の中にも出てきたことです。

フェルメールとカメラ・オブスクーラとの関連性」についてです。

日本はとかく何か身近にあるものとの関連性を見つけ出しそれだけを
大きくまことしやかにテレビなどで放送するので誤った認識を
我々見る者に与えてしまうという危惧の念を抱かれていました。

確かに17世紀のオランダは望遠鏡をリッペルシャイが、顕微鏡をフェルメールと同郷のレーフェンフックが、レンズをスピザノがそれぞれ「発明」「発見」「発展」させるなど光学分野の目覚しい進展のあった時代です。それらとフェルメール作品との関連性が強く色濃くあったのではと考えたいのも一理あります。

漫画やテレビ番組を作るとしたら、ただフェルメールの作品を紹介するよりもカメラ・オブスクーラとの関連性を強調させた方が「面白味」が増しますし、上記の理由からももっともらしく見えます。

フェルメール―大いなる世界は小さき室内に宿る
フェルメール―大いなる世界は小さき室内に宿る
小林 頼子, 藤原 怜子, 蜷川 順子, 徳丸 仁, 阿部 純子

こちらの↑本の中で徳丸仁氏は具体的な例をあげフェルメールがカメラ・オブスクーラを用いて絵を描いたとは思えないと書かれています。

ただ理屈を千万言尽くすより今日の小林先生のお話の方が強く納得できました。

曰く「フェルメールは見えたとおりを描いたわけではなく、彼の描きたいイメージに沿って見えたものに手を加えて描いた。」

カメら・オブスクーラを勿論覗いてどのように見えるか経験したことはあるかもしれません。でもそれを見たままに絵にしたとは考えられません。それではあまりにもフェルメールのことを知らな過ぎです。

今日のお話にもありましたが
牛乳を注ぐ女」の消失点は
牛乳を注ぐ手のすぐ上にあります。

ここに消失点を持ってくることは主題に関わる重要な点であること。
見る者の視線を含め全てのものがここに集まる点であること。
それらを強く意識してわざわざそこにフェルメールは消失点を設定しているとのことでした。

因みに先生はもしもらえるのであればこの絵か「デルフトの眺望」が欲しいそうです。

また「青い牛乳」については今日言われて初めて気が付きました!(注いでいる牛乳の一部に青色が使われています。)


ミルクメイドあれこれ
↑こちらにはデルフトで撮影した街中で見つけた「牛乳を注ぐ女」です。

フェルメールの現存する作品の中で唯一のプライベートコレクション(エリザベス女王)である「音楽の稽古」の室内の光の影の付け方についても興味深いお話をされていました。

本来なら左側の窓から光が差し込むのであればもっと影がついたりするのをフェルメールはその見える影を効果的に敢えて表現していないということでした。
こらは「OLDCITY's3D CG Vermeer」様のCGによる再現でも良く分かります。


「我々が目にしているものだけが本当の現実ではないかもしれない。」という疑問をフェルメールは投げかけているわけです。それは先生曰く「画家の現実」に出会うことだと。

フェルメールが現在これだけ人気を博しているのは、今我々が暮らしている社会が何が本当の「現実」なのか分かりにくくなってきているからではないでしょうか。

それをJohannes Vermeerという日本の江戸時代前半にオランダの地で日常を「再構築」し自分の目で「画家の現実」を描きだした一人の画家に求めているからではないでしょうか。

そんな考えが今日の講演会を聞き終え頭の中にふっと浮かびました。

今日から立春。季節も変わりました。これからまた違った視点から
大好きなフェルメールの作品を観ていく楽しみができました。

謎解き フェルメール
謎解き フェルメール
小林 頼子, 朽木 ゆり子

フェルメールの話ばかりをついつい書いてしまいましたが
講演内容は勿論こればかりではありません。

先生がご提示して下さったキーワードご紹介しておきます。

17世紀オランダを考えるキーワード
王族、貴族不在の市民国家
経済の隆盛
プロテスタント(新教)

17世紀オランダ美術を考えるキーワード
日常に向けられた視線
写実的なジャンルの勃興
写実的な描写
当時のモラルの反映
近年展示する機会の少なかった17-19世紀ヨーロッパ絵画を展示しています。それらに関連した土曜講座を開催いたします。
17世紀に黄金時代を迎えたオランダ絵画の巨匠たち。18世紀の宮廷文化において美と快楽を追求したロココ美術の華やかな世界。長い間作者不明だった18世紀初頭のイタリア絵画の作者推定の経緯と、輝かしいヴェネツィア美術の歴史。そして田園風景に魅せられ、風景画への新しい扉を開くことによって、印象派誕生の先駆的な役割を果たしたバルビゾン芸術…。今回も魅力あふれる講演をお楽しみいただけます。
講演会 | permalink | comments(11) | trackbacks(4)

この記事に対するコメント

Takさん

今日はお仕事の後、会場に駆けつけられたようで
お疲れ様でした。その後、すぐにこれだけお書きに
なられてすごいです!!

オランダの歴史からレンブラント、フェルメールまで
2時間半を一番前の席で贅沢に拝聴することができて
素晴しい時間を過ごせました。

みんなで2Fの展覧会を観た後に、お茶(アルコール入り)で興奮しながら今回の講演を振り返りました。
また明日、出直して参りますね(゚-^*)ノ 

PS: 昨日、伊勢物語辺りでTakさんの影を拝見したような〜?

Julia | 2006/02/04 11:30 PM
Takさん

やはりフェルメールについての解説はTakさんでないと!
今日は興味深いお話が聞けて大変勉強になりました。

レンブラントとフェルメールを見る目がちょっと変わった気がしました。小林頼子氏の著作も、私も読んでみたいと思います。
Nikki | 2006/02/05 1:23 AM
@Juliaさん
こんにちは。

あれから美術館を出てtoshi館長夫妻と
コレドでお食事して帰りました。
帰りの電車内では流石に疲れてしまい
うつらうつら。。。

皆さんと一緒に美味しいビールも
飲みたかったな〜
ま、それはまた次回にとっておきましょう。

出光の伊勢物語の前、一番長くいたかもしれません。
好きなんです。伊勢。
偶然でしたね!!

@Nikkiさん
こんにちは。
TBありがとうございます。

これだけ読むとフェルメールの話が
中心だったように見えてしまいますね。。。。
いけませんいけません。

レンブラントのあの絵は?を抱いていたので
例の研究報告書読んでみたいと思います。

また日をあらためて一杯やりましょう
Tak管理人 | 2006/02/05 11:04 AM
Takさん

昨日は良かったですね。小林頼子教授のお人柄と聴衆の熱気が絡み合ったホールの雰囲気が最高でした。

記憶補助装置代わりのHP ↓http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/Opinion.htm#060204 にメモを書きました。うろ覚えのところもあリますが、命長ければ恥多し・・・乞御寛恕。
とら | 2006/02/05 12:40 PM
http://www.amazon.de/exec/obidos/ASIN/3888973813/qid=1139134813/sr=1-1/ref=sr_1_2_1/303-9534128-6298611

Das Doppelleben des Vermeer という本を本屋で見かけました。他に読む本が沢山すぎてあきらめましたけど。
そのほんの前でTAKさんを思い浮かべました。
もちろんお目にかかってないのでBLOGを思い浮かべたんですけど。。。。
seedsbook | 2006/02/05 7:23 PM
昨日、帰りの電車を降りたら雪でした。
2cmくらい積もってました。

小林先生のお話は、分かりやすく、且つ、まとまっていて良かったですね。
土曜講座は、大学レベルを目指しているとかで、時には素人には難しいときもあります。
鼎 | 2006/02/05 11:26 PM
@とらさん
こんにちは。

あれだけの量を一気にお話なさるのは
並大抵のことではありませんよね。
単なる「場馴れ」しているだけでは出来ません。
大学でもあんな濃い内容の授業なさるのでしょうか?
学生さんが羨ましいです。

とらさんのサイト拝読させていただきました。
これがあればいつでも私も記憶甦らせることできます。
ありがとうございます。

@seedsbookさん
こんにちは。

異国の地で自分のことを思い出して下さるなんて。。。
嬉涙がぽろーりぽろーりです。
また本のご紹介ありがとうございます。

本は知らず知らずのうちに(意識的でもありますが)
増える一方です。これがまた楽しく嬉しかったりします。

@鼎さん
こんにちは。

雪ですか、、、今夜も積もるなんて天気予報でいってました。
今年は本当に寒い日が多いですね。
温暖化はいずこへ??

小林先生は目線を我々にちゃんと合わせてお話くださるので
とても有り難かったです。「分かる」と嬉しいですよね。
Tak管理人 | 2006/02/06 4:35 PM
こんにちは。先日は、私のつたない記事にTBありがとうございます。
(小林先生の気さくな語り口が大変楽しかったのでつい書いて見たのです)
>「フェルメールは見えたとおりを描いたわけではなく、彼の描きたいイメージに沿って見えたものに手を加えて描いた。」
時々自分でも忘れてしまうことなのでこれはしっかり覚えておこうと思うのです。
ぐるぐる | 2006/02/06 6:08 PM
@ぐるぐるさん
こんばんは。
コメントありがとうございます。

大勢の人の前であれだけリラックスして
時折ジョークも交えてお話できる方
中々いらっしゃらないのでしょうか。
本を読んでいるだけでは分からない
お人柄がうかがえた一日でした。
Tak管理人 | 2006/02/06 9:14 PM
こんにちわ、アンダルシアのtorres8です。
発見されたフェルメールの画像UPしました。
他には、アンダルシアの生活写真を多数のせています。
お時間ある時にぜひおよりください。
torres8 | 2006/04/01 6:24 AM
@torres8さん
こんにちは。
コメントありがとうございます。

早速拝見しました。
うーーんフェルメールには思えないですね、これ。
なんて素人判断ですが。
これから色々と分析されたりお墨付きをもらったりして
そのうちオークションにまた出てくるかもしれませんね。

貴重な情報ありがとうございました。
Tak管理人 | 2006/04/02 12:00 PM
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