青い日記帳 

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「扇の国、日本」

サントリー美術館で開催中の
「扇の国、日本」展に行って来ました。


https://www.suntory.co.jp/sma/

昨年(2018年)11月28日から展覧会が始まってすぐに観に行きつつも、中々記事が上手くまとめられず紹介できず、気が付けば会期末(1月20日まで)となってしまいました。

2018年 展覧会ベスト10の3位に入れたにも関わらず。
日本で生まれ発展した扇を扱う展覧会。あまりにも内容が濃くて未だにブログに感想を書けていません。扇をテーマにこれほど豊かな展示が可能なのかとただひたすら感心してしまうばかり。道具としての扇だけでな勿論なく、美術・工芸作品にも多く用いられた扇を多様な視点で紹介しています。それも名品を各地から集めてきています。

舞踊図 六面のうち一面
江戸時代 17世紀 サントリー美術館
【全期間展示】(ただし場面替あり)

あまりにもアンテナに引っ掛かる好き要素が多すぎる展覧会も紹介しにくいものです。それが万人受けするような要素では決してないので。

一般的に我々が扇として認識しているのは、平安時代初期に作られるようになった「紙扇(かみおうぎ)」と呼ばれるもので、竹骨に紙や絹を張ったお馴染みの扇です。

その前身として、薄い板を綴じ重ねた「檜扇(ひおうぎ)」が奈良時代には作られたとのこと。現存する檜扇は非常に少なく国宝や重文指定を受けているものがほとんどです。


重要文化財 彩絵檜扇 一握 平安時代 12世紀
島根・佐太神社(島根県立古代出雲歴史博物館寄託)
【展示期間:11/28〜12/24】

檜扇のころは、風を発生させ涼を求めるという使い方よりも、神事の大事な道具としての役割が大きかったとのこと。まだまだこの時点では扇は身近なものではありませんでした。

「扇の呪力」と題されたセクションでその点について紹介されています。儀礼や祭祀の場や貴族のアイテムだった扇がぐんと身近な存在となる時間軸がひとつの展覧会の柱としています。

ただ、それだけだと平板的な展示となります。「扇の国、日本」展の凄い点はその縦軸に横軸を幾重にも絡ませて幅を持たせているところにあります。


重要文化財 扇面流図(名古屋城御湯殿書院一之間北側襖絵) 四面
江戸時代 寛永10年(1633)頃 名古屋城総合事務所
【全期間展示】

京都の車折神社の「三船祭」で今でも平安装束を身に纏った人が船から扇を川に流す「扇面流し」(「扇流」)が行われています。

車折神社が祭りに取り入れたのは昭和になってからのことです。中世の貴族の遊びが継続して現在に至っているわけではありません。

しかし、重文「扇面流図」に描かれているように、中世から近世にかけて実際に行われていたことは確かです。こうした雅やかな行事は長い歴史の中で途絶えてしまうことが往々にしてあります。

例えば、五節句の中で九月の重陽の節句だけ、現在ではすっかり忘れられてしまっているのと同様に。

このようにこの展覧会では、扇を主軸に据え、絵画、文献、歴史、文学、年中行事、風俗、民俗学といった幅広い展開で見る者を魅了します。


扇面画帖 一帖
室町〜桃山時代 15〜16世紀 奈良国立博物館
(撮影:森村欣司)【全期間展示】(ただし場面替あり)

展覧会の構成は以下の通りです。

序章 ここは扇の国
第1章 扇の呪力
第2章 流れゆく扇
第3章 扇の流通
第4章 扇と文芸
第5章 花ひらく扇
終章 ひろがる扇



扇屋軒先図 二曲一隻
江戸時代 17世紀 大阪市立美術館 (田万コレクション)
【全期間展示】

江戸時代になると、庶民の間にも扇は広がっていき、こうした扇屋が街中で店を構えたり、扇売りの姿も浮世絵などに描かれるようになります。


見立那須与一 屋島の合戦 鈴木春信 一枚
江戸時代 明和3〜4年(1766〜67)頃 個人蔵
【展示期間:12/26〜1/20】

黒い扇型の三段ケースの中にはバラエティー豊かな紙扇が収められているのでしょう。夏となると金魚売りと同じようにこうした扇売りが江戸市中に季節の到来を知らせつつ闊歩していたのです。

宗達派をはじめ、当時の人気絵師たちが扇の絵柄をこぞって描きました。尾形光琳、池大雅、与謝蕪村、酒井芳一、中村芳中、長沢芦雪、浦上玉堂、葛飾北斎、河鍋暁斎といった絵師たちによる扇が「花ひらく扇」のセクションに贅沢に展示されていました。

絵画展としても、非常に高いクオリティーを誇っている展覧会です。というのも、扇の形や大きさはほぼ決まっています。つまり定型にいかにして自分の個性を出すのか。その絵師たちの競い合いが観られるのです。


源氏物語絵扇面散屛風 六曲一双のうち左隻
室町時代 16世紀前半 広島・浄土寺
(撮影:村上宏治)【全期間展示】(ただし場面替あり)

『源氏物語』にまず目が行きますが、気になったのは一緒に描かれている植物です。葛の葉と蔦でしょうか、5章に展示されていた「葛下絵扇面散屏風」(泉屋博古館)と同じ葉のようです。

葛は秋の七草に数えられている植物です。つまりここに描かれている季節は秋。扇を必要とする夏が終わり、秋となると不用品となります。そこで「葛下絵扇面散屏風」のような屏風絵が生まれたのでしょう。
葛は風に揺れる様子がしばしば和歌に詠まれる秋草。屏風に貼られた扇には使用された跡があり、秋になって捨て置かれてしまう扇と、秋風に翻弄される葛の儚さが響き合います。
なるほど、納得です。それにしても浄土寺の有名な「源氏物語絵扇面散屛風」を観られるとはラッキーでした。


織部扇面形蓋物 一合
桃山時代 17世紀 梅澤記念館
【全期間展示】

この展覧会、サントリー美術館所蔵の作品は僅か2点だけで、それ以外165点を全て他の美術館・博物館、寺社仏閣から借りてきています。宮内庁からも。「せんすがいいね。」ととぼけていますが、中身はほんと凄いです。

展示構成も展示作品もとにかく素晴らしく、知的好奇心をビシビシと刺激する作品で溢れています。普段使っている扇をテーマにこれだけの展覧会を作ってしまうとは恐れ入りました。

真面目一直線と思いきや、4階から3階へ降りる階段の手前に「扇流禁止」という標識(サイン)を掲げていたりと茶目っ気も忘れていません。

「扇の国、日本」は1月20日までです。ようやく紹介出来ました。会期あと僅かですが、是非是非〜こういう展覧会こそ行かねばなりません。


扇の国、日本

会期:2018年11月28日(水)〜2019年1月20日(日)
開館時間:10時〜18時
※金・土および12月23日(日・祝)、1月13日(日)は20時まで開館。ただし12月29日(土)は18時まで開館。
※いずれも入館は閉館の30分前まで
休館日:火曜日(ただし1月15日は18時まで開館)、12月30日(日)〜1月1日(火・祝)
会場:サントリー美術館
https://www.suntory.co.jp/sma/
主催:サントリー美術館、朝日新聞社
協賛:三井不動産、三井住友海上火災保険、サントリーホールディングス

因みにリニューアルのため、サントリー美術館休館します(2019年11月11日〜2020年5月中旬予定)。


カフェのある美術館 感動の余韻を味わう
青い日記帳(編)

先月世界文化社より発売となった『カフェのある美術館 感動の余韻を味わう』にてサントリー美術館「café Produced by 加賀麩 不室屋(かがふふむろや)」 を紹介しています。

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【素敵カフェ多し】大人気本『カフェのある美術館』がよりオシャレに!

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「扇」は、日本で生まれ発展したものです。その起源は詳らかではありませんが、早く10世紀末には中国や朝鮮半島に特産品としてもたらされ、中国の文献には、それまで一般的だった団扇と区別して、折り畳む意味の「摺」の字をあてた「摺扇」「摺畳扇」や「倭扇」などと登場します。すなわち、扇が日本のオリジナルであったことを物語っています。
宗教祭祀や日常生活での用具としてだけでなく、気分や場所、季節に応じて取りかえ携帯できる扇は、貴賤を問わずいつでもどこでも楽しめる、最も身近な美術品でした。
和歌や絵が施された扇は、贈答品として大量に流通し、また、人と人をつなぐコミュニケーション・ツールの役割も担いました。
さらに扇は、屛風や巻物、そして工芸や染織などとも結びついて、多彩な作品を生み出していきます。あらゆるジャンル、あらゆる流派と交わる扇には、日本人が求めた美のエッセンスが凝縮されているのです。
本展では、日本人が愛した「扇」をめぐる美の世界を、幅広い時代と視点からご紹介します。手中の扇がひらひら翻るたび表情を変えるように、「扇」の多面的な世界をお楽しみください。
展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

使い捨てられる扇面の美!
pinewood | 2019/01/19 8:37 PM
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