青い日記帳 

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『中野京子と読み解く 運命の絵 もう逃れられない』

文芸春秋社より刊行となった『中野京子と読み解く 運命の絵 もう逃れられない』を読んでみました。


中野京子と読み解く 運命の絵 もう逃れられない
中野京子(著)

「運命の分岐点に立つあなたの前を、ふと孤独が木枯らしのようによぎった……。」

あなたにとっての「運命の絵」と呼ぶに相応しい絵画はありますか。人生を大きく変えたような絵画との出会いをされた方も周りに多くいらっしゃいます。

運命の絵 もう逃れられない』では、様々な観点から「運命」をキーワードとし、名画を読み解いていく、『怖い絵』『名画の謎』に続く中野先生の新シリーズ第二弾です。


フレデリック・ワッツ「選択」1864年
ナショナル・ポートレート・ギャラリー(イギリス)

『怖い絵』シリーズでは、「怖い」がテーマでしたので程度の差こそあれ結論は自ずと分かりましたが、『運命の絵』シリーズは、一体何の「運命」なのかが読み進めないかぎり分かりません。

たとえば、描かれた女性の運命なのか、作家自身の運命なのか、はたまた国民全体の運命なのか。このあたりを中野先生は絶妙な匙加減で料理しています。

文章が飽きないのは、当然ですが、テーマとしても各章でそれぞれ違った角度の「運命」が語られているので、次は何かな〜とワクワクしながら先に進めます。そして気が付けば一冊を読み終えているのです。


ウィンスロウ・ホーマー「メキシコ湾流」1899年
メトロポリタン美術館(アメリカ)

それは各章の見出しを目にしただけでもわかるはずです。「日比谷公園との関係」(ルーベンス)、「駄犬じゃけえ」(ブリューゲル)、「大金持ちのゴミ屋敷」(モロー)、「女神とイージス艦」(クリムト)等々。一刻も早く読みたくなりますでしょ!

運命の絵 もう逃れられない【目次】

・若さと綺麗な顔だけを武器に――マネ『フォリー・ベルジェールのバー』/ロートレック『二日酔い』
・車輪は廻り続ける――バーン゠ジョーンズ『運命の車輪』
・生還できるか――ホーマー『メキシコ湾流』『ハリケーンの後で』/ジェリコー『メデュース号の筏』
・日比谷公園との関係――ルーベンス『ロムルスとレムス』
・駄犬じゃけえ――ブリューゲル『雪中の狩人』
・遺書になりそこねた大作――ゴーギャン『我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか』『レ・ミゼラブルの自画像』『死霊が見ている』
・死びとは駆けるのが速い――ヴェルネ『レノーレのバラード』/シェフェール『レノーレ―死者は駆けるのが速い』
・敗戦の将をいたわる――ベラスケス『ブレダ開城』/ルーベンス『侯爵夫人ブリジーダ・スピノラ゠ドーリア』
・表現者になるため生まれてきた――ワッツ『選択』/サージェント『マクベス夫人に扮したエレン・テリー』
・聖書を破り捨てて――ムンカーチ『死刑囚の監房』『ハンガリー軍服姿の皇帝フランツ・ヨーゼフ1世』
・大金持ちのゴミ屋敷――モロー『ユピテルとセメレ』
・若き英雄の誕生――グロ『アルコレ橋のナポレオン』『ヤッファのペスト患者を見舞うナポレオン』
・老兵はただ消え去るのみ――ターナー『戦艦テメレール号』
・久米仙人との違い――ボス『聖アントニウスの誘惑』/テニールス『聖アントニウスの誘惑』
・胸塞がる物語――ティツィアーノ『マルシュアスの皮剝ぎ』/ペルジーノ『アポロンとマルシュアス』
・女神とイージス艦――クリムト『パラス・アテナ』/ルーベンス『メドゥーサの首』
・荒々しい馬市――ボヌール『馬市』『バッファロー・ビル肖像』


ギュスターヴ・モロー「ユピテルとセメレ」1889〜95年
ギュスターヴ・モロー美術館(フランス)

数多の神々をこれでもか〜と一枚の作品の中に描き込んだモローの作品をして「大金持ちのゴミ屋敷」と表現できるのは世界広しと言えども中野先生以外にはいらっしゃいません。

決してディスっているわけではなく、読み手に分かりやすいようにしているのです。「本稿も前半と後半でいささか継ぎ足し感があるのは、多神教神話から一神教神話への変容に無理があったせいかもしれません……。」と卑下しながら終えるのも共感を覚えます。


オラース・ヴェルネ「レノーレのバラード」1839年
ナント美術館(フランス)

読んでいて思わず「そうか!」と膝を打つ指摘も随所に。例えばこちらの作品を解説する途中で、欧米では異界から出現するのは専ら男性だが、日本は決まって女性であるとさり気なく書かれています。確かに言われてみればそうですね。

幽霊は女性ばかり。昔話で読んだ、鶴の恩返しや蛤女房、葛の葉狐など異類婚を思い出してみて下さい。

そして最後にヴェルネとシェフェールの作品を「死んでもいい、そう思った瞬間が運命の時だ。」と締めくくります。これまた共感力を呼びます。人生において一度や二度はこんな経験ありますよね。「もう死んでもいい!!」って。


ローザ・ボヌール「馬市」1852年〜55年
メトロポリタン美術館(アメリカ)

美術界は男社会だ」とこの章で鋭く語る訳は、ボヌールが有無を言わさぬ行動力で人生を切り開いた女性画家であることと、いまだ男性社会である美術界で獅子奮迅の活躍を魅せる中野先生自身の心の叫びのように感じました。

『怖い絵』シリーズで一躍名を馳せ、「怖い絵展」も成功させ、今ではマスコミに引っ張りだこの中野京子先生の待望の新刊。本作は「中野京子と読み解く」シリーズの6冊目となる一冊です。それぞれのレビューを以下にまとめておきます。凄いのは10年経っても一向に鮮度が落ちないことです。

『中野京子と読み解く名画の謎 ギリシャ神話篇』(2011年)
『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』(2012年)
『中野京子と読み解く 名画の謎 陰謀の歴史篇』(2014年)
『中野京子と読み解く 名画の謎 対決編』(2015年)
『中野京子と読み解く 運命の絵』(2017年)

気取らない「中野節」が奏でる笑えて泣ける、聖書のドラマ
『中野京子と読み解く 名画の謎 旧約・新約聖書篇』



中野京子と読み解く 運命の絵


グスタフ・クリムト「パラス・アテナ」1898年
ウィーン市立歴史博物館(オーストリア)

「女神とイージス艦」は実に面白かったです!中野先生何でもお詳しくてビックリさせられます。ほんと。今回の『運命の絵 もう逃れられない』も万人を魅了する一冊に仕上がっています。あとがきに「一冊の本にも『運命』があります」とある意味もどうぞお楽しみに!


中野京子と読み解く 運命の絵 もう逃れられない
中野京子(著)

何気なく見ていた有名絵画の奥底を知れば、
もう登場人物の境遇に心を寄せずにはいられない……!

世紀を越えた名画が私たちに突きつけるのは、
〈誰もみな、運命から逃れられない〉という現実。

表紙は印象派の先駆者マネの最晩年の大作『フォリー・ベルジェールのバー』。
華やかなパリの酒場に立つバーガールは、なぜ死んだ目をしているのか?
そして裏表紙に続く絵の右側には、怪しい男の気配……。
実は彼女は追い詰められ、今まさに運命の分岐点にいる――。
〈この作品は2019年9月からはじまる「コートールド美術館展」で来日予定。
本書を読めば、鑑賞が何倍も楽しくなるのでおすすめです!〉


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