青い日記帳 

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「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」

東京都庭園美術館で開催中の
「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」展に行って来ました。


https://www.teien-art-museum.ne.jp/

岡上淑子(おかのうえ としこ、1928年1月3日 - )をご存知でしょうか。知る人ぞ知る作家というよりも、御年90歳を過ぎ、近年俄然注目を集めるようになったアーティストです。

彼女の技法はコラージュ。雑誌のグラビアなどを切り貼りして完成させるアナログな手仕事です。


岡上淑子《予感》1953年頃
©Okanoue Toshiko, 高知県立美術館蔵
Premonition ©Okanoue Toshiko, Collection of the Musuem of Art, Kochi

パソコンやタブレットの画面上で画像処理がいともたやすく出来てしまう今の時代だからこそ、はさみとのりを使っての超アナログなコラージュ作品が、とても新鮮に映るのでしょう。

実際に2000年以降になってようやくチラホラと岡上淑子の名前を目にするようになってきました。実際は彼女が活躍していた1950年から60年代には美術雑誌などでも取り上げられていたそうです。

それが一旦下火となり(俗に言う「忘れらた作家」)ながらも、今まさに再注目を集めているのです。


第1部 マチネ 展示風景

戦後国内にあったLIFEやVOGUEといった連合国側の雑誌を素材として岡上はコラージュ作品を独学で作り上げていきました。

気に入った「材料」が見つかるまでは何年もかけて探したそうです。今から画像検索で一発ですが、そんな便利なツールのなかった時代。どこか牧歌的な雰囲気を感じるのはそのためでしょうか。

作風にキレが出てくるのは、瀧口修造に見出された後、マックス・エルンストの作品との出会いによってです。それまで単調だった背景にまで切り貼りがなされるようになります。


岡上淑子《マスク》1952年
©Okanoue Toshiko, 個人蔵
Mask ©Okanoue Toshiko, Private collection

「岡上淑子展」は第1部(本館)と第2部(新館)に分けての展示となっており、これが見事にハマっています。庭園美術館さん新館が出来てからの展覧会で最も上手く本館・新館のそれぞれのメリットを生かしているように思えます。

そして所々にある岡上の詩が更に作品の魅力を引き立てています。

祈祷室の薔薇 

深夜 祈祷室の薔薇は目覚める
野生のヴェールに
巫女たちの愁訴をかき抱き

大理石の舗道は
客席のない舞台に続く

なめらかな足なみは
時間の刺青を消してゆく


展覧会の構成は以下の通りです。

第1部 マチネ
1:岡本淑子とモードの世界
2:初期の作品
3:瀧口修造とマックス・エルンスト
4:型紙からのフォトコラージュ
5:コラージュ以降
6:その他関連資料

第2部 ソワレ
第1幕:懺悔室の展望
第2幕:翻弄するミューズたち
第3幕:私たちは自由よ


昼公演「マチネ」(matinee)、夜公演「ソワレ」(soiree)と洒落た切り口で構成されています。第1部マチネでは、岡上淑子の画業や影響を受けた作家などを交え紹介。第2部では会場内にコラージュ作品だけに絞っています。


第2部 ソワレ 展示風景

もしかしたら、第2部から観る方が面白いかもしれません。岡上淑子の何たるかを知らずともその圧倒的な作品力により魅了されまくります。

第1部でその種明かしが出来ます。例えば1950年に当時お茶の水にあった文化学院デザイン科に進学していること。元々は洋裁を学んでいたのです。

学生時代に目にしたヨーロッパの最先端のモードを紹介した輸入雑誌を素材として、洋服を作るのではなくコラージュ作品を創り出したのです。

生地ではなく、記事を挟みで切り、糊で貼り付けて。


岡上淑子《会議》1955年
©Okanoue Toshiko, ヒューストン美術館蔵
Meeting ©Okanoue Toshiko, Collection of the Musuem of Fine Arts, Houston

海外では早くから評価を受けていた岡上淑子。こちらの作品のように初めてヒューストン美術館から里帰りするものもあります。

展覧会公式図録として青幻舎より刊行となった『岡上淑子 フォトコラージュ −沈黙の奇蹟−』既に重版出来となっているほどの人気です。

それにしてもどうして岡上淑子の名前が忘れられてしまったのでしょうか。それは時代性が色濃く反映されています。

1957年に結婚をしてからフォトコラージュ作品から離れ、1967年には高知県へ帰郷してしまったのです。明治から昭和にかけて活躍した女流画家には同じような道をたどった人が多くいます。


スケッチブック

故郷に帰ってからは自然の花々を写し取り、日本画を手がけるようになります。そうした作品も第1部に出ています。

戦後の浪に上手く乗り、結婚を機にフォトコラージュを手放した岡上淑子。今になり再評価され展覧会が開催されるとは夢にも思っていなかったでしょう。

でも、夢のような世界を作り続けてきたのですから、それが現実になっただけかもしれませんね。

「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」展は4月7日までです。是非是非!


「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」

会期:2019年1月26日(土)〜4月7日(日)
休館日:第2・第4水曜日(2/13、2/27、3/13、3/27)
開館時間:10:00–18:00 (入館は閉館の30分前まで)
*3/29、3/30、4/5、4/6は、夜間開館20:00まで開館(入館は19:30まで)
会場:東京都庭園美術館(本館+新館ギャラリー1)
https://www.teien-art-museum.ne.jp/
主催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都庭園美術館
協力:The Third Gallery Aya
年間協賛:戸田建設株式会社


岡上淑子 フォトコラージュ −沈黙の奇蹟−

「材料はノリとハサミ、それからあなたの指先だけ」

70年の歳月を経た今日もなお新鮮な魅力を放ち、国内外で再評価の高まる岡上淑子。
本書は、1950年代のわずか7年間に制作された代表作約100点を、待望の大判サイズ(A4)で収録。
「懺悔室の展望」「翻弄するミューズたち」「私達は、自由よ」をキーワードに作品を分類し、瀧口修造からの書簡、岡上の詩作などの資料も掲載しながら、シュルレアリストとの交流、文学との親和性など、岡上芸術の謎に迫る画期的作品集。
都内初の大回顧展となる東京都庭園美術館での展覧会の公式カタログ。監修・執筆:神保京子(東京都庭園美術館学芸員)

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1950年代に彗星のごとく登場した岡上淑子は、日本におけるシュルレアリスム運動を先導した瀧口修造に見出され、写真媒体を活用したフォトコラージュ作品によってその比類ない才能を開花させました。1950年から56年までのごく限られた期間に制作された岡上のコラージュ作品は、マックス・エルンストによるコラージュの影響を享受して饒舌さを増していきます。作品は、戦後連合国軍の置き土産として国内にあった、LIFEのような海外のグラフ雑誌や、VOGUEやHarper's BAZAARといったファッション誌を素材とするものであり、戦後復興期の時代を反映した報道写真による背景と、前景に浮かび上がる当時最先端のモードは、鮮やかな対比を描きながら独特の美や世界観を導き出して、私達の心を揺さぶります。

近年になり再注目されている同作家の活動は今や国際的な評価を得ており、現代のコラージュ作家たちにも多大な影響を与えつつあります。本展では、国内所蔵に加えて米国ヒューストン美術館の貴重な所蔵作品が、この度初めて日本へと里帰りいたします。新たな時代への息吹を感じさせるこのユニークな表現世界を、作家による詩篇や後に描かれたスケッチ、関連資料、京都服飾文化研究財団ご所蔵のドレスによる参考展示などとともにご紹介いたします。




展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

実に凝ったフォトコラージュ展!外国の見学者の姿もー。創作室で洋雑誌の切抜きを自分でcollageして見るのも又,愉し…。
pinewood | 2019/03/30 4:07 PM
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