青い日記帳 

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『小原古邨』

青月社より刊行となった『小さな命のきらめく瞬間 小原古邨の小宇宙』と、東京美術より刊行となった『小原古邨 花咲き鳥歌う紙上の楽園』を読んでみました。


小さな命のきらめく瞬間 小原古邨の小宇宙(ミクロコスモス)
小池満紀子 (著)


小原古邨 花咲き鳥歌う紙上の楽園
太田記念美術館 (監修), 浮世絵太田記念美術館= 日野原 健司 (著)

2018年秋に茅ヶ崎市美術館で開かれ注目を集めた「小原古邨展」に続き、現在太田記念美術館で「小原古邨展」が開催されています。

小原古邨(おはら・こそん 1877年〜1945年)は明治から昭和にかけて活躍した主に花鳥画を得意とした版画家です。

20世紀前半に活躍したにも関わらず、小原古邨の名前が同時代の新版画の絵師たちよりも知名度が低いのには、理由があります。

それは主に古邨の木版画は外国人向けの土産物として販売されていたからです。吉田博同様に海外では広くその名が知られているのに日本国内ではほぼ知名度ゼロな不遇な絵師のひとりです。


小さな命のきらめく瞬間 小原古邨の小宇宙』より。

しかし、現代の我々からしても非常に優れた才能を持った絵師であることは一目瞭然です。優れた日本画を描きながら久しくその名が忘れられていた渡辺省亭(1852年〜1918年)と作風や境遇が似ているところがあります。

小原古邨の魅力は「やさしい」ところにあります。自然を観察する「優しい」目、万人受けする「易しい」画風、木版画なのにまるで水彩画のような「やさしい」色調。  

こうして「やさし」をキーワードにして観ていくと古邨ならではの魅力を発見できるはずです。


小原古邨 花咲き鳥歌う紙上の楽園』より。

さて、ここで小原古邨が活躍した同じ時期にどんな版画家がいたのかを年代順にまとめてみましょう。

小林清親(1847年〜1915年)
楢崎栄昭(1868年〜1936年)
土屋光逸(1870年〜1949年)
吉田 博(1876年〜1950年)
高橋松亭(1871年〜1945年)
小原古邨(1877年〜1945年)
北野恒富(1880年〜1947年〉
橋口五葉(1881年〜1921年)
川瀬巴水(1883年〜1957年)
伊藤総山(1884年〜没年不明)
伊藤孝之(1894年〜1982年)
石渡江逸(1897年〜1987年)
伊東深水(1898年〜1972年)
笠松紫浪(1898年〜1991年)

チャールズ・ウィリアム・バートレット(1860年〜1940年)
フリッツ・カペラリ(1884年〜1950年)
エリザベス・キース(1887年〜1956年)

2018年に町田市立国際版画美術館で開かれた「浮世絵モダン」展や2009年の「よみがえる浮世絵〜うるわしき大正新版画〜」展(江戸東京博物館)などでこれらの作家を目にしたはずです。ダイアナ妃やスティーヴ・ジョブスが愛好したことでも知られています。

今回は一覧を作るにあたり、こちらの本を参考としました。


新版画作品集 ―なつかしい風景への旅
西山純子 (著)

小原古邨が「新版画」を手がけるようになったのは昭和に入ってからですので晩年に当たります。展覧会や今回紹介する2冊には新版画ではなく、優れた花鳥画の絵師としての古邨が紹介されています。


小さな命のきらめく瞬間 小原古邨の小宇宙』より。


小原古邨 花咲き鳥歌う紙上の楽園』より。

渡辺省亭が若冲らの流れを継承する濃密な花鳥画であるのに対し、古邨のそれは前述の通りとても「やさしい」花鳥画です。作家の名前を伏せて多数決とったら古邨作品が最も票を獲得するのではないでしょうか。

しつこくなく、元々がさっぱりしている古邨作品。だからこそ木版画に適していたのでしょうね。
伝統的な浮世絵版画の技術を踏まえつつ、明治から昭和の時代の好みに合わせ、まるで水彩画のような、淡く美しい色合いを実現させているのです。動物好きはもちろん、誰からも愛される作品ばかりと言えるでしょう。(太田記念美術館)


小原古邨展」太田記念美術館
2019年2月1日(金)〜3月24日(日)
前期 2月1日(金)〜24日(日)
後期 3月1日(金)〜24日(日)
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/

この2冊を読んでから観に行ったので、ポイント逃すことなく拝見することができました。

小さな命のきらめく瞬間 小原古邨の小宇宙(ミクロコスモス)を書かれた小池満紀子先生は、クリムトとの関連性についても本の中で言及しています。実際にクリムトが古邨作品を持っていたそうです。

となると、「クリムト展」(東京都美術館)や「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」(国立新美術館)が俄然楽しみになってきます。

太田記念美術館の「小原古邨展」とセットで観に行きましょう!!


小原古邨 花咲き鳥歌う紙上の楽園
太田記念美術館 (監修), 浮世絵太田記念美術館= 日野原 健司 (著)

【目次】
第1章 明治期の古邨
花樹と鳥、月下の鳥、雨に濡れる鳥、鳥の家族・つがい、雪景色のなかの鳥、水辺の鳥、鳥百姿、水の生き物、花と蝶、動物、風景、特集]肉筆画稿

第2章 大正・昭和期の古邨
鳥、季節の情景、豊邨落款の作品

評伝 小原古邨の生涯
[コラム]
古邨の花鳥版画の制作過程
古邨の世界を支える伝統木版画の技術
古邨と歌川広重の花鳥画
古邨と明治の花鳥画
古邨、最初の花鳥版画
滑稽堂・秋山武右衛門と大黒屋・松木平吉
新版画を牽引した渡邊庄三郎


小さな命のきらめく瞬間 小原古邨の小宇宙(ミクロコスモス)
小池満紀子 (著)

【目次】
・生きとし生けるものへ
《図版ページ》
・小原古邨 雨と光の系譜
・蒐めた人・原 安三郎

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