青い日記帳 

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「奇想の系譜展」

東京都美術館で開催中の
「奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド」に行って来ました。


https://kisou2019.jp

こんなズルい展覧会などそうそうあるものではありません。勿論ズルいというのは良い意味です。The Tabelog Award 2019 [食べログ]に選ばれた「名店」が一堂に会しているようです。

しかも、若冲、又兵衛をはじめとした奇想の画家たちの「一番良い仕事」と呼べる作品を選び抜いて展示しているのですから、文句のつけようが全くありません。江戸名画の熱いシャワーを存分に浴びられます。


伊藤若冲「紫陽花双鶏図」絹本着色 江戸時代中期(18世紀)
米国・エツコ&ジョー・プライスコレクション

美術史家・辻惟雄氏(1932-)が、今から約50前の1970年に著した『奇想の系譜』で紹介した岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳。

彼らは今でこそ、日本美術ブームの牽引役として高い知名度を誇っていますが、当時は所謂亜流で陽の目を見ることの無かった絵師たちでした。

それが、今では辻惟雄先生が光を当てたことにより、一部の作品は重要文化財指定を受けるまでになりました。国宝指定もそう遠い未来ではなさそうです。


曽我蕭白 重要文化財「唐獅子図」明和元年(1764)頃
三重・朝田寺

「奇想の系譜展」の監修者である山下裕二先生がつい最近出された『未来の国宝・MY国宝』の表紙には長沢芦雪の「錦江山無量寺障壁画(和歌山県串本町、串本応挙芦雪館)のうち『虎図』」(重文)が使われています。


未来の国宝・MY国宝

さてさて、「奇想の系譜展」一体どのような展示構成で魅せてくれるのかと、あれこれ予想していましたが、直球勝負で来ていました。あれこれいじらずに『奇想の系譜』のように、作家(絵師)ごとに紹介するスタイルが採られています。

下手にテーマを設けて奇想の画家たちをないまぜで見せることは避け、非常にシンプルに絵師ごとの展示となっています。確かに「混ぜるな危険」であり、単体で十分に魅了させる力を有している絵師ばかりです。


狩野山雪 重要文化財「梅花遊禽図襖」寛永8年(1631)
京都・天球院

展覧会の構成は以下の通りです。

幻想の博物誌:伊藤若冲(1716-1800)
醒めたグロテスク:曽我蕭白(1730-1781)
京のエンターテイナー:長沢芦雪(1754-1799)
執拗なドラマ:岩佐又兵衛(1578-1650)
狩野派きっての知性派:狩野山雪(1590-1651)
奇想の起爆剤:白隠慧鶴(1685-1768)
江戸琳派の鬼才:鈴木其一(1796-1858)
幕末浮世絵七変化:歌川国芳(1797-1861)


しかし、会場入っていきなり、心の準備が整っていないのに、若冲が待ち受けているのは身体にもよろしくないです。ストレッチせずにいきなり全力疾走です、、、

伊藤若冲の最高傑作の一枚である「旭日鳳凰図」(宮内庁三の丸尚蔵館)が、これまでで最も間近で観られるような展示となっています。もうこれだけでお腹いっぱいです。


長沢芦雪「龍図襖」
島根・西光寺

この展覧会では『奇想の系譜』に取り上げられた各絵師の代表作に加えて、今まで展覧会では観る機会の無かった作品も出ているのが大きな魅力となっています。島根・西光寺に伝わる芦雪初めて拝見しました。

また、展覧会準備中に新たに発見された、若冲や芦雪作品、そして海外の美術館が所蔵しこれまで一度も日本に里帰りをしていなかった鈴木其一の「百鳥百獣図」なども出ています。


鈴木其一「百鳥百獣図」天保14年(1843年)
米国・キャサリン&トーマス・エドソンコレクション

辻惟雄先生や山下裕二先生もこの「百鳥百獣図」はこの会場で初めて目にしたそうです。其一の異常なまでの描き込みが息苦しいほど画面全体に展開されています。そして何よりこの色味!

「今回の展覧会で誰が一番良かったですか?」と不意に質問され即座に答えることが出来ませんでした。帰宅し図録や『新版 奇想の系譜』を読み返して行くうちに、やはり岩佐又兵衛に行き着きました。

辻惟雄先生が大学院時代から追い求めている絵師であり、『奇想の系譜』のトップバッターを飾る存在です。そして会場でも最も「ギョッとする江戸の絵画」が又兵衛でした。


岩佐又兵衛 重要文化財「山中常盤物語絵巻 第四巻
静岡・MOA美術館

源義経の母、常盤御前が盗賊に遭った場面。常盤御前とお付きの女性では肌着の色が違うのがはっきりと分かります。そしてこの後、常盤御前が殺害される場面では、松葉の描写も情景や心情と呼応するかのように劇的に変化しています。

そして、できればこちらで紹介した『絵は語り始めるだろうか』に収録されている岩佐又兵衛「山中常盤物語絵巻」についての論文も是非目を通してみて下さい。作品の見方が更に変わります。


伊藤若冲「石榴雄鶏図
伊藤若冲「雨中の竹図」東京黎明アートルーム

本来ならこの展覧会で取り上げている8人の絵師それぞれ単独展を開いても、多くの方が訪れるはず。それをまとめて見せるなんて、ズルいを通り越して「暴挙」と言っても過言ではありません。

50年前は美術史で無視されていた絵師たちが、今やスーパースターです。昭和の時代に「発掘」され、平成の時代に「醸成」された時の流れと、評価の潮目を楽しみながら、贅沢な展覧会に酔いしれましょう。

江戸絵画の最大のお祭り「奇想の系譜展」は4月7日までです。これは行かないとね!(なんて言われなくても当然行きますよね〜)


奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
Lineage of Eccentrics: The Miraculous World of Edo Painting

2019年2月9日(土)〜4月7日(日)
休館日:月曜日、2月12日(火)
※ただし、2月11日(月・祝)、4月1日(月)は開室
開室時間:9:30〜17:30(入室は閉室の30分前まで)
夜間開館:金曜日、3月23日(土)、30日(土)、4月6日(土)は9:30〜20:00
(入室は閉室の30分前まで)
会場:東京都美術館
https://www.tobikan.jp/
主催:東京都美術館(公益財団法人東京都歴史文化財団)、日本経済新聞社、NHK、NHKプロモーション
共催:朝日新聞社
協賛:凸版印刷、トヨタ自動車、三井物産
協力:日本航空
企画協力:浅野研究所
特設WEBサイト:https://kisou2019.jp


新版 奇想の系譜
辻 惟雄 (著)

江戸絵画ブームを興した名著オールカラー版

半世紀前に刊行された『奇想の系譜』が、新たに図版を加え、さらに4色で大きく見せられるレイアウトに生まれ変わりました。また、若冲をはじめ江戸の絵師たちに起こった絵画をとりまく状況変化を各章最後に新原稿として追記しています。

岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曾我簫白、長沢芦雪、歌川国芳。アバンギャルドな絵師たちの江戸絵画を約130点も掲載。

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本展は、1970年に刊行された美術史家・辻惟雄による『奇想の系譜』に基づく、江戸時代の「奇想の絵画」の決定版です。岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に、白隠慧鶴、鈴木其一を加えた8人の代表作を一堂に会し、重要文化財を多数含む展示となっています。豊かな想像力、奇想天外な発想にみちた江戸絵画の魅力を紹介。現代の目を通した新しい「奇想の系譜」を発信します。

美術史家・辻惟雄氏(1932-)が、今から約半世紀前の1970年に著した『奇想の系譜』。本展はその著作に基づいた、江戸時代の「奇想の絵画」展の決定版です。『奇想の系譜』で採り上げられたのは、それまで書籍や展覧会でまとまって紹介されたことがなかった、因襲の殻を打ち破った、非日常的な世界に誘われるような絵画の数々でした。
本展では、同書で紹介された、岩佐又兵衛、狩野山雪、伊藤若冲、曽我蕭白、長沢芦雪、歌川国芳に、白隠慧鶴、鈴木其一を加えた8人の作品を厳選したラインナップになっています。
近年の「若冲ブーム」、「江戸絵画ブーム」、ひいては「日本美術ブーム」の実相をご存知の方も、またこの展覧会ではじめて魅力的な作品に出会うことになる方にも、満足いただける内容を目指しました。奇想天外な発想にみちた作品の数々を紹介し、現代の目を通した新たな「奇想の系譜」を発信する本展において、江戸絵画の斬新な魅力をご堪能ください。
展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

奇想と云うジャンルに括って観る愉しさがあり鑑賞者の顔も弛む、作品に依っては驚嘆の美術展でした。只、屏風絵は矢張り凡てジグザグに当時の室内装飾の感じで展示されるともっと佳いような,更に立体感が感じられる様な気がした絵も有りました…。
pinewood | 2019/04/03 4:29 PM
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