青い日記帳 

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「クリスチャン・ボルタンスキー展」

国立国際美術館で開催中の
「クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime」展に行って来ました。


http://www.nmao.go.jp/

仮にボルタンスキーの名前は失念していても、新潟県越後妻有大地の芸術祭の「最後の教室」は仄聞し記憶にこびりついているはずです。


クリスチャン・ボルタンスキー「最後の教室」

廃校となった松之山の旧東川小学校の校舎をまるっと使ったインスタレーション作品は、現地へ赴かないと(冬は豪雪地帯なので観られる期間が限られています)全貌を体感することは出来ません。

動画や画像で伝わるイメージは至極断片的なものに過ぎません。クリスチャン・ボルタンスキー(1944年-)が作り出す作品は、基本その空間でしか味わえません。


クリスチャン・ボルタンスキー
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Photo by Didier Plowy

大阪の国立国際美術館を皮切りに、国立新美術館(東京)、長崎県美術館へ巡回予定となっています。

新美に来るのを待っていても良かったのですが、上記の通りボルタンスキーはその会場に合わせた展示を行う為、展示作品がたとえ同じであったとしても、見せ方が変わってくるのです。

「空間のアーティスト」と自ら形容するだけのことはあります。


クリスチャン・ボルタンスキー《保存室(カナダ)》 1988 / 衣類 / 作家蔵
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, © Yedessa Hendeles Art Foundation, Toronto, Photo by Robert Keziere

この作品も会場では画像とは違った展示となっています。

「展覧会をひとつの作品として見せる」と語るボルタンスキーが国立国際の地下展示空間にどんなインスタレーションを仕込んだのか、やはり実際に行って観ないことには始まりません。


「クリスチャン・ボルタンスキー展」展示風景
(会場内は一部を除き写真撮影可能でした)

これまで、水戸芸術館や東京都庭園美術館等で展覧会を開催してきましたが、今回の展覧会はそれらの何倍もの規模の大回顧展となっています。彼の50年間の活動が空間に凝縮されています。

基本的に会場内は薄暗いので、キャプションは取り付けられておらず入口で「マップ」をもらいそれを頼りに作品を巡っていきます。

子どもが「お化け屋敷のよう…」と言っていましたが、ハズレでもなくアタリでもなく…



ロシア系ユダヤ人の父とコルシカ出身の母を持つボルタンスキー。当初は短編映画の制作を行っていましたが、1980年代後半になると、ナチス・ドイツの犠牲者となった人たちを暗示するかのような写真を作るようになります。

同時に宗教的なメッセージを多分に含んだ作品も手掛けるようになり、国際的な評価を得ていきました。

先ほど会場が薄暗いと書きましたが、彼の作品には「光」が重要なファクターとして取り入れられているため、ホワイトキューブにLED全開では、真の作品と向き合えないのです。


クリスチャン・ボルタンスキー《モニュメント》 1986 / 写真、フレーム、ソケット、電球、電気コード / 作家蔵
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, Photo © The Israel Museum, Jerusalem by Elie Posner

あまり最初は予備知識無しで彼が望むように会場全体をひとつの作品と捉え、意味は分からずとも見てまわるのが良いかと思います。

それだけでも、不思議と心の何かを動かす、そんなアクションを幾つかの作品から確実に得られます。このあたりがボルタンスキー作品の優れた点です。

現代アートはよく分からないと、二の足を踏んでいる方にこそ観に行き体感し心揺さぶられてきて欲しい展覧会です。ある意味で今流行りのインタラクティブな体験型アートとは対極にあります。




この作品を観ていると、ふとここは「教会」なのではと思うと同時に、今我々の世界に存在する宗教とは、違う宗教が存在する世界に迷い込んでしまったような気になりました。

色とりどりのステンドグラスや美しいオルガンの音色が響く教会と同じ感覚を、このアングラで伏魔殿のような作品から得たのです。

映像作家からスタートしたボルタンスキーに視覚だけでなく、感覚まで麻痺させられてしまったかのようです。しかしそれはとても心地よく癖になる感覚でした。

目に見えている世界だけが本当の世界ではありません。


クリスチャン・ボルタンスキー《黄昏》 2015 / ソケット、電球、電気コード / 作家蔵
© Christian Boltanski / ADAGP, Paris, 2019, © Oude Kerk, Amsterdam, Photo by Gert Jan Van Rooij

「黄昏」と題されたこの作品は、電球が毎日少しずつ消えていき、会期最終日には全てが点灯しなくなるそうです。ひとつ消え、またひとつ消え。

この作品を観て何を思い、何を想像しますか。一枚の画像で得た印象と、「展覧会をひとつの作品として見せる」ボルタンスキー展で実際に観た印象とでは大なり小なり確実に違ってきます。



ほんのほんの一部しか紹介していないのに、とても面白そうでしょ!そして何やら心がざわつきますよね。是非会場へ足を運んでみて下さい。

形として残らない、ここだけでした味わえない展覧会です。「クリスチャン・ボルタンスキー展」は5月6日までです。是非是非〜(次は東京展に行きます!果たして新美ではどう変わっているか今から楽しみです。)


クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime

会期: 2019年2月9日(土)〜5月6日(月・休)
開館時間:10時〜17時 
※金曜・土曜は20時まで(入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし、2月11日(月・祝)、4月29日(月・祝)、5月6日(月・休)は開館)、2月12日(火)
会場:国立国際美術館
http://www.nmao.go.jp/
主催:国立国際美術館、朝日新聞社
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
協賛:ダイキン工業現代美術振興財団

巡回:国立新美術館、長崎県美術館


クリスチャン・ボルタンスキー Lifetime

自己/他者の記憶、生/死、人間の不在/存在の痕跡をテーマとし、さまざまな素材、表現方法を用い、世界各地で創作活動を続けてきた作家の1960年代後半の初期作品から最新作までを紹介する大回顧展「クリスチャン・ボルタンスキー ― Lifetime」の公式図録。
展覧会担当者らによる論考、ボルタンスキーと杉本博司の対談、関口涼子のテキスト等掲載。
国立国際美術館(2月9日~5月6日)、国立新美術館(6月12日~9月2日)、長崎県美術館(10月18日~2020年1月5日)の3館の共同企画で開催。


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クリスチャン・ボルタンスキー(1944年-)は、現代のフランスを代表するアーティストのひとりです。1960年代後半より短編フィルムを発表し始めたボルタンスキーは、1970年代に入り、写真を積極的に用いるようになりました。人が歩んできた歴史や文化人類学への関心を土台とし、写真やドキュメントとビスケット缶などの日用品を組み合わせることで、自己あるいは他者の記憶に関連する作品を多数制作し、注目を集めます。1980年代に入り、明かりを用いたインスタレーションを手掛けるようになったボルタンスキーは、子どもの肖像写真と電球を祭壇のように組み合わせて展示した「モニュメント」シリーズ(1985年-)で宗教的なテーマに取り組みます。それを発展させた《シャス高校の祭壇》(1987年)は、1931年にウィーンの高校に在籍したユダヤ人の学生たちの顔写真を祭壇状に並べ、その写真を電球で照らすというものでした。肖像写真を集めて展示する手法は、大量の死者の存在、具体的にはナチス・ドイツによるユダヤ人の大虐殺とその犠牲者のイメージを想起させるものとして解釈され、大きな議論を呼びました。第二次世界大戦期のユダヤ人の大虐殺は、ユダヤ系の父を持つボルタンスキー自身の問題とも結びつきます。パリのグラン・パレの広大なスペースを生かし、大量の衣服を集積させた《ペルソンヌ》(2010年)など、その後もさまざまな手法によって、歴史や記憶、そして死や不在をテーマとした作品を発表します。
1970年代からドクメンタ(ドイツ・カッセル)やヴェネチア・ビエンナーレなどの現代美術国際展に招待され、活躍の場を世界各地に広げたボルタンスキーは、日本でも、越後妻有アートトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭などで積極的に展示活動を行い、2016年には東京都庭園美術館で個展が開催されました。
国立国際美術館、国立新美術館、そして長崎県美術館の3館が共同で企画する本展は、ボルタンスキーの初期作品から最新作までを紹介する、国内初めての大規模な回顧展です。1970年代から近年までのボルタンスキーの様々な試みを振り返ると同時に、ボルタンスキー自身が「展覧会をひとつの作品として見せる」と語るように、作家自身が会場に合わせたインスタレーションを手掛けるという構想のもとに企画されました。半世紀を超える作家活動を経て、いまなお、積極的に創造を続けるボルタンスキーの広大なる芸術世界を紹介いたします。
展覧会 | permalink | comments(1) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

ご無沙汰しております。
わざわざ大阪までお越しいただき有難うございました。
本日2月24日は、天皇様の恩恵で終日入場無料なので、仕事帰りに行く予定です。混まなきゃいいけど(笑)
昔から大好きな作家の一人です。
シルフ | 2019/02/24 5:07 AM
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