青い日記帳 

  
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「千住 博展」
そごう美術館で開催中の
高野山金剛峯寺 襖絵完成記念「千住 博展」―日本の美を極め、世界の美を拓く―に行って来ました。


https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/

世界遺産・高野山金剛峯寺の大主殿に奉納する襖絵と床の間からなる障壁画44面の完成を記念し開催されている展覧会。奉納後は一般の人は観ることが出来なくなってしまうので、最初で最後の機会となります。

平安時代のはじめに空海(弘法大師)によって開かれた真言密教の聖地・高野山金剛峯寺。近年では海外からの観光客もぐんと増え日本だけでなく世界中から注目を集めているパワースポットです。

その金剛峯寺にある数ある部屋の中で、長年白襖となっていた「茶の間」と「囲炉裏の間」に千住博に新作の依頼があったのが2015年のこと。

千住博が「茶の間」の襖絵に選んだのが2009年ベネッセアートサイト直島の「家プロジェクト」より積極的に取り組んでいる「断崖図」。今回の作品は、全長は16メートルを超えるまさに大作です。


千住博 高野山金剛峯寺襖絵 《断崖図》(部分)
2018年 182.7×1676.6cm
高野山金剛峯寺蔵

今回の一押しがこの「断崖図」です。正直これを観るためだけに横浜へ行ったとしても、誰も文句は言わないでしょう。日本画がそうであるように、残念ながら画像からではその良さが十分の一も伝わりません。

空海が目にしたであろう山並みを描いていますが、その山肌(崖)の部分に目を凝らすと非常に立体的に表現されていることに気が付かされます。


千住博《断崖図 #2》2012年
軽井沢千住博美術館

それもそのはず。この崖を描くにあたり、まず和紙を千住自らが手で揉んで皺をこしらえ、凸凹の状態にしてから岩絵の具を付着させているのです。「平面の彫刻」です。

言葉で説明するのは容易いことですが、実際に絵画作品ましてや高野山に奉納する全長16メートルを超える作品に仕立てるには、大変な労力と根気、それに集中力が必要なのことは想像に難くありません。

まさに圧巻とよんで良いでしょう。作品の前に立つと身震いしてしまうはずです。


千住博 高野山金剛峯寺襖絵 《瀧図》(部分)
2018年  185.5〜367.0×2590.6cm
高野山金剛峯寺蔵

もう一つの部屋(隣同士)「囲炉裏の間」には更に大きな18メートル超の「瀧図」を描きました。千住博といえばこの「瀧図」ですが、描き始めた頃の評判は決して芳しいものではありませんでした。かく言う自分も瀧ばかり描いている画家として積極的に観ようとしない時期がありました。

ところが、それが大きな過ちだと気づいたのはここ数年です。「瀧図」は年々進化し続けていたのです。会場に展示されている「四季瀧図」(1999年)は1点が5メートルある瀧図4点組から成る作品で、それぞれ春夏秋冬とタイトルが付けられています。

そこには、我々日本人が思い描く四季の様子が瀧の表情だけ(色調は同じ)で現わされています。キャプションが無くても「これは夏だね」とそれぞれすぐに分かるはずです。

20年以上に渡り、思考を重ね深化しながら成長させてきた「瀧図」の最新作のひとつが、高野山金剛峯寺襖絵 《瀧図》なのです。

初めて下地に文化財の修復で用いる特殊な膠「軟靭膠素」(なんじんこうそ)を用いたそうです。これまで使っていた膠と違い、水に対する耐性が強いのが特徴でそれを最大限に生かし高野山に奉納する「瀧図」を描いています。

具体的には「軟靭膠素」を用いた下地に水を垂らし乾かぬ間に、胡粉をといた岩絵具をその上から流すのです。「(胡粉を)垂らすと結局まだ水が流れているから、その流れに沿って胡粉がグニャグニャと動くわけです。」


千住博「龍神」2014年

ヴェネツィア・ビエンナーレで公開された「龍神」と比べると、同じ瀧の流れでもまるで違うものだとはっきりと分かります。

これら最新作の「断崖図」「瀧図」は、会場内のビデオでその制作過程が紹介されています。

松尾芭蕉『笈の小文』に「造化にしたがひ、造化にかへれ」という言葉に感化され瀧図を描いた千住博。還暦を迎えある到達点に立った作品と云えるでしょう。

因みに、「断崖図」にしても「瀧図」にしても多くの試行錯誤や失敗作を経て、今の形があるのです。





2015年のヴェネツィア・ビエンナーレで公開された「龍神」には蛍光塗料が用いられているのでブラックライトをあてることでこのように色が劇的に変化します。

今回の「千住博展」のユニークなのは、まず初めに最新作である高野山金剛峯寺 襖絵をどーーんと見せてしまい、先に進むに従い初期作品に移り変わっていく点です。


千住博「朝に向かって」1989年
軽井沢千住博美術館

この頃の作品にはまだ東山魁夷の影響がはっきりと残っています。魁夷の元へ作品を直接見せに行き指導を仰いだこともあったそうです。

それにしても、「瀧図」や「断崖図」のような画期的で斬新な技法をどのようにして編み出したのでしょう。これまで真摯に千住作品と向かい合ってこなかった自分には、まだ答えが見つかりそうもありません。

懺悔の念を込めつつ、これからしばらく千住作品を意識的に観て行くようにしたいと思わせる、そんな展覧会でした。そしてシンプルに感動します。

高野山金剛峯寺 襖絵完成記念「千住 博展」は4月14日までです。関東圏ではそごう美術館だけでの公開です。お見逃しのなきように。


高野山金剛峯寺 襖絵完成記念「千住 博展」
―日本の美を極め、世界の美を拓く―

会期:2019年3月2日(土)〜4月14日(日)
開館時間:午前10時〜午後8時
※3月2日(土)は午前11時〜午後8時
※入館は閉館の30分前まで
会場:そごう美術館(横浜)
https://www.sogo-seibu.jp/common/museum/
主催:そごう美術館、NHKプロモーション
後援:神奈川県教育委員会、横浜市教育委員会
特別協力:高野山金剛峯寺、軽井沢千住博美術館
協力:アート・コンサルティング・ファーム
協賛:株式会社 そごう・西武


三戸 信惠 (著)

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千住博は、岩絵具という素材や、自然と密接に関わっている日本画の理念をふまえ、世界的視野に立ち、今日にあるべき「美」を追求している画家です。
本展では、千住博が画業40余年の集大成と位置付ける、世界遺産・高野山金剛峯寺に奉納する懇親の襖絵を国内外で初めて公開するとともに、これまでの主要作品を展示。
現代に生きる日本画の新しい可能性を模索する、千住博の世界観を紹介します。
| 展覧会 | 22:33 | comments(1) | trackbacks(0) |
初期作品が東山魁夷の影響下に在るとは知りませんでした。今回のライトアップされて闇に浮かぶwaterfallは一寸マーク・ロスコ絵画を連想させました!
| pinewood | 2019/04/10 5:25 PM |










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