青い日記帳 

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「へそまがり日本美術」

府中市美術館で開催中の
「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」展に行って来ました。


https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/

毎年恒例となった府中市美術館の春の江戸絵画まつり。今年で何年目となるのでしょう。継続は力なりを証明しているようで、今回もそうですが初日からとても多くの来館者で賑わっています。

都心の大型展覧会に比べると、何分の一かの広告宣伝費でありながら、ここ数年毎回スタートダッシュを見事に決めているのは、やはり「桜の便りが聞こえてきたら府中市美術館へ行こう。きっと面白いものが観られるはず。」という意識が根付いている証です。



平成20年(2009年)から毎年この時季に開かれた展覧会をざっと振り返ってみても、よくぞ絶やすことなく続けてこられたものだと感心してしまいます。

「山水に遊ぶ―江戸絵画の風景250年」
「歌川国芳─奇と笑いの木版画」
「江戸の人物画 ―姿の美、力、奇」
「三都画家くらべ 京、大阪をみて江戸を知る」
「かわいい江戸絵画」
「江戸絵画の19世紀」
「動物絵画の250年」
「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」
「歌川国芳 21世紀の絵画力」
「リアル 最大の奇抜」


視点を変えつつ、日本美術、特に江戸絵画の魅力について地道に展覧会を積み重ねてきたからこそ、今回の「へそまがり日本美術展」も成立しているのです。

こうした「歴史」なく、いきなり江戸絵画ブームに便乗して「へそまがり日本美術展」を開催したとしても、決して好評価を得られないばかりか、批判を喰らうことになるでしょう。



特に注目すべきは、昨年同じ時季に開催された展覧会が「リアル 最大の奇抜」であった点です。昨年のリアル展があって初めて今年のヘタウマ展ならぬ「へそまがり日本美術」が成立するのです。

単に江戸時代に描かれた、滑稽な絵やゆるい作品をざっくりと集めてきて展示しているわけではありません。しかも親切なことに昨年の「リアル展」を観ていない方にも、それが分かるよう要所要所で比較展示がなされています。

比べてみる

左:伝 呂健「百鳥図」絹本着色 1幅 明時代(16世紀) 個人蔵
右:徳川家光「鳳凰図」紙本墨画 1幅 江戸時代前期(17世紀前半) 徳川記念財団蔵

例えば「伊藤若冲展」であれば、この伝 呂健「百鳥図」の隣に若冲が描いた鳳凰図を並べて展示し、如何に彼が中国絵画から影響を受けているか、またそれをブラッシュアップしているかを比較して見せるでしょう。

ところが、今回はこうした中国絵画の名品を目にしていたにも関わらず、どうしてそんな絵を描いたの?何か悲しいことあったの?それとも全力…まさかね〜等々様々な憶測が飛び交う作品が今回比較展示されています。


徳川家光「鳳凰図」紙本墨画 1幅 
江戸時代前期(17世紀前半) 徳川記念財団蔵

しかも描いたのはあの三代将軍家光さま。へらへらしながら観ていると頭が高い!と叱責されちゃいます。

それにしてもどうしてこのような絵を描いたのでしょう。解説には、禅の影響からこうしたゆるい絵を家光が描いたのではと書かれてありましたが、果たして真相や如何に。


徳川家綱「鶏図」紙本着色 1幅
江戸時代前期(17世紀後半) 個人蔵

家光の子であり、四代将軍でもある家綱も同じような絵を残しています。子供の頃に描いたものではないそうです。

しかも、描いた作品を大名や家臣に下賜していたそうで、もらった方としてもさぞかし扱いに困ったことでしょう。譲り受けた大名が一度観ただけで二度と開かなかったのか、今描かれたかのように保存状態の良い作品でもあります。

しかし、家光、家綱のころは御用絵師として狩野探幽がおり、彼の作品も何度も目にしているのにどうして…狩野派の粉本主義を密かにディスっていたとか?!想像はいくらでも膨らむお殿様絵画です。

さてさて、他にも紹介したい作品沢山あるので手短に。


祇園井特「墓場の幽霊図」紙本着色 1幅
江戸時代中期―後期(18世紀後半ー19世紀前半)福岡市博物館

デロリ系の美人画を描いた祇園井特の幽霊図。とても特徴のある鼻と口(顎)ですが、祇園井特の独特な美人画を知っているとニヤリとしてしまうはずです。


中村芳中「十二ヶ月花卉図押絵貼屏風」献本着色 6曲1双
江戸時代中期―後期(18世紀後半―19世紀前半)個人蔵

皆大好き中村芳中!琳派の系譜に属してはいますが、彼のセンスは他に類を見ないものがあります。何て言うかいやらしさがないんですよね、こういう絵を描いても。


狩野山雪「松に小禽・梟図」紙本着色 1幅
江戸時代前期(17世紀)
摘水軒記念文化振興財団(府中市美術館寄託)

東京都美術館で開催中の「奇想の系譜展」にも名を連ねている狩野山雪。江戸狩野派とは違い、「老梅図」(メトロポリタン美術館)などダイナミックな画風の作品が目立つ山雪も時にこんな可愛らしい絵も手掛けていたのですね。

【衝撃の破壊力】「へそまがり日本美術」展を見逃すな!



あまりにも作品が面白くて展覧会の構成を紹介するの忘れていました。

1:別世界への案内役 禅画
2:何かを超える
3:突拍子もない造形
4:苦しみとおとぼけ


紹介した作品がどのセクションにあったのかが全く想像できない(どこにでも当てはまる)ところにもこの展覧会の面白さと難しさがあります。

「へそまがり日本美術展」は5月12日までです。世田谷美術館のルソー作品や村山槐多の“スナフキン”なども出ています。


春の江戸絵画まつり
へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで

会期:2019年3月16日(土)〜5月12日(日)
開館時間:午前10時〜午後5時
(入場は午後4時30分まで)
休館日:月曜日(4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)
会場:府中市美術館
https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/
主催:府中市美術館

公式図録は講談社より一般書籍として出ています!(以前は図録売切れて大変でした…)

へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで
府中市美術館 (著)

毎年同時期に開催される府中市美術館の「春の江戸絵画まつり」。2019年のテーマは「へそまがり」。中世の水墨画から江戸絵画、そして現代のヘタウマ漫画まで。不可解な描写、技巧を否定したかのようなゆるい味わい……「へそまがり」な感性から生み出された、常識を超えた、美術史に新たな視点を与える展覧会です。
また、同展覧会は長沢蘆雪、伊藤若冲を含む44点もの新発見作品が出品される予定で、さらに、徳川家光、家綱など、お殿様の絵も多数展示され、その「ゆるカワ」な世界観が話題沸騰! 2019年注目の日本美術展となっています。

同展担当学芸員金子信久氏をメインの執筆者に、単なる作品解説にとどまらない、エキサイティングな日本美術評論としてお楽しみいただける一冊です。


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 人は、見事な美しさや完璧な美しさに、大きな感動を覚えます。しかしその一方で、きれいとは言いがたいもの、不格好で不完全なものに心惹かれることもあるでしょう。「へそまがりの心の働き」とでも言ったらよいでしょうか。

 例えば、禅画に描かれた寒山拾得の二人は、不可解さで見る者を引きつけます。また、江戸時代の文人画ぶんじんがには、思わず「ヘタウマ?」と言いたくなるような作品があります。文人画ぶんじんがの世界では、あえて朴訥に描くことで、汚れのない無垢な心を表現できると考えられていたのです。

 あるいは、徳川家光が描いた《兎図》はどうでしょうか。将軍や殿様が描いた絵には、ときおり見た人が「???」となるような、何と言い表せばよいか困ってしまうような「立派な」作品があります。描き手が超越した存在であることと、関係があるのかもしれません。更に近代にも、子供が描いた絵を手本にして「素朴」にのめり込む画家たちがいました。

 この展覧会では、 中世の禅画から現代のヘタウマまで、 日本の美術史に点在する「へそまがりの心の働き」の成果をご覧いただきます。へそまがりの感性が生んだ、輝かしくも悩ましい作品の数々を眺めれば、日本美術のもう一つの何かが見えてくるかもしれません。
展覧会 | permalink | comments(4) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

「以下に彼が中国絵画から影響を受けているか」は、「いかに彼が〜」かと…。
お世話になります。 | 2019/03/25 9:07 PM
ありがとうございます。訂正致しました。
Tak | 2019/03/25 9:08 PM
はじめまして
こちらの美術展に興味があり参考にさせていただいています!
個人差があるとは思いますが、だいたいの所要時間を教えていただけますか?
usamimi | 2019/03/27 4:16 PM
ざっと流して60分で観た後に、気になった作品などを60分かけて観ました。
Tak | 2019/03/27 9:25 PM
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