青い日記帳 

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「福沢一郎展」

東京国立近代美術館で開催中の
「福沢一郎展  このどうしようもない世界を笑いとばせ」に行って来ました。


https://www.momat.go.jp/

前衛画家・福沢一郎(1898-1992)の大規模な回顧展が竹橋の東京国立近代美術館で開催されています。

多摩美術大学美術館でも昨年から今年にかけ「多摩美術大学美術館コレクション展生誕120年記念 福沢一郎 ― 語りて屈さぬ絵画の地平 ―」展を開催し、多摩美術大学が所蔵する福沢一郎の全作品を一挙公開し話題となりました。

昨年(2018年)は洋画家・福沢一郎の生誕120周年の節目の年でした。多摩美に引き続いての東近美での「福沢一郎展」となります。


福沢一郎《》1936年
東京国立近代美術館蔵

ところで、福沢一郎って誰??ですよね。明治の終わりに生まれ、大正、昭和と激動の時代をキャンバスに表し続けてきた洋画家です。

日本に初めてシュルレアリスムを紹介した画家でもあります。社会に対する批評を独特な視点で描いた作品は抽象と具象の間に位置し、福沢の名前を知らない人にでもすんなりと受け入れられるのが特徴です。


福沢一郎《トイレット・ペーパー地獄》 1974年
群馬県立近代美術館蔵

描かれた時代から、この絵が何を表現しているのかお分かりになりますよね。でも、昭和という時代を知らない若者には「?」となってしまうかもしれません。

1973年に所謂「オイルショック」(第四次中東戦争勃発による原油価格の高騰)により、トイレットペーパーが店頭から姿を消すとの噂が流布し、人びとはこぞって「紙」に群がりました。

そんな可笑しなことがあったのか〜と笑えません。先日も「エゴマ油」に血圧を下げる効果があるとテレビで放送されると、翌日を待たずして棚から商品が消えてて無くなりました。

確かに「このどうしようもない世界を笑いとばせ」と叫びたくなります。今ならチコちゃんに叱られ罵倒されたり、SNSで鬱憤を晴らせますが、福沢はそれを絵筆で表したのです。


福沢一郎《煽動者》 1931年
一般財団法人福沢一郎記念美術財団蔵

「謎めいたイメージ」の中に知的なユーモアをまじえ、社会の矛盾や人びとの愚かさを諷刺的に笑いとばした福沢の多彩な画業を約100点の作品で振り返ります。”とあるように、かなり細かくセクション分けが時代ごとになされています。

物事を斜めに見る。そのスタンスは初めから終わりまで一貫しているので、回顧展としてはとても鑑賞しやすいものとなっています。福沢のブレない姿勢が良いです。きっと生まれ持った気質なのでしょう。

展覧会の構成は以下の通りです。

1. 人間嫌い:パリ留学時代
2. シュルレアリスムと諷刺
3. 帰国後の活動
4. 行動主義(行動的ヒューマニズム)
5. 戦時下の前衛
6. 世相をうつす神話(1)
7. 文明批評としてのプリミティヴィスム
8. アメリカにて
9. 世相をうつす神話(2)
10. 21世紀への警鐘



福沢一郎《Poisson d'Avril(四月馬鹿)》 1930年
東京国立近代美術館蔵

若くしてヨーロッパに渡った福沢が最も感化されたのが、マックス・エルンストの作品でした。庭園美術館で開催中の「岡上淑子 フォトコラージュ 沈黙の奇蹟」でもやはり作家に大きな影響を与えたのがエルンストでした。

シュルレアリスムの画家マックス・エルンストが、ここにきて俄然存在感を増してきています。大好きな作家でもあるので「エルンスト展」などそろそろどこかで開催して欲しいものです。(お客さんは入らないと思うけど…)


福沢一郎《埋葬》 1957年
東京国立近代美術館蔵

ブラジルやメキシコなど中南米に行った影響が色濃く出ている作品です。福沢のこうしたところが素直で分かりやすいので安心して観ていられます。

「埋葬」は90度反転させステンドグラス作品《天地創造》として東京駅に設置されてました。現在も当初の設置場所とは違いますがちゃんと東京駅構内に残されています。

南米での作品はやはり色合いがそれまでにないものが観られました。そして個人的には、ニューヨークに行った際の作品がよても良かったです。ソール・ライターの写真と福沢の絵画が驚くほど雰囲気が似ていたりします。



といった具合に、前衛画家のしかも一般の方には馴染みの薄い作家の展覧会ですが、変に抽象化されていないので全てとても見やすくイメージが掴みやすいので恐れることなく観に行けます。丁寧なワークシートも配布されています。

それと、福沢一郎自身が生まれも育ちもいいので、変に反体制的な作品を描いていたりしないのも気分よく観られる理由かと。

「世の中から一歩も二歩も退いて斜しやに構える。斜に構えただけでも物足りず、その屈託を筆に託する。」と井上ひさしは著書の中で記していますが、福沢のスタンスは同じようでかなり違ったものがあるように感じました。


福沢一郎《敗戦群像》 1948年
群馬県立近代美術館蔵

企画展「イメージコレクター・杉浦非水展」も同時開催されていますし、東近美はとにかく常設展示(MOMATコレクション)がいつも見応え十分で満足度がとても高いです。

4月6日までは毎年恒例の「美術館の春まつり」も行われ、竹橋界隈もとても華やかな雰囲気に包まれています。お花見や散策を兼ねて是非、東近美に!

「福沢一郎展  このどうしようもない世界を笑いとばせ」は5月26日までです。


福沢一郎展  このどうしようもない世界を笑いとばせ

会期:2019年3月12日(火)〜5月26日(日)
開館時間:10:00-17:00(金・土曜は10:00-20:00)
*入館は閉館30分前まで
休館日:月曜(3/25、4/1、4/29、5/6は開館)、5/7(火)
無料観覧日:5月1日(水・祝)は皇太子殿下が御即位されることを祝して入館無料です。
会場:東京国立近代美術館 1F 企画展ギャラリー
https://www.momat.go.jp/
主催:東京国立近代美術館
出品協力:群馬県立近代美術館、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館、一般財団法人福沢一郎記念美術財団


超現実主義の1937年――福沢一郎『シュールレアリズム』を読みなおす
伊藤 佳之 (著), 大谷 省吾 (著), 小林 宏道 (著), 春原 史寛 (著), 谷口 英理 (著), 弘中 智子 (著)

昭和前期における前衛絵画の制作者であり論客でもある福沢一郎が、日中戦争開戦前夜の日本で流行した「シュルレアリスム」にみていたものとは何か――。本書は2013年から4年間にわたって続けられた、福沢の最初の著書『シュールレアリズム』(1937年刊)を精読する研究会の成果を世に問うものである。
20世紀初頭のパリで産声を上げたシュルレアリスムを日本にいち早く導入した福沢が前衛絵画の未来に何を期待したのか、同時代の前衛芸術の展開や思想的背景などを精鋭の研究者たちが多角的に検証した論考集。
第1部では原著『シュールレアリズム』を現代仮名遣いに改め、詳細な注解を付すなど読みやすく復刻再現。第2部では各章の解題を担当執筆した。
前衛絵画運動の指針となった名著の読解と考究により、画家生誕120年を経て日本近代美術史研究の新たな扉が開かれる。


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福沢一郎(1898-1992)は、1930年代の日本にシュルレアリスムを紹介して前衛美術運動のリーダーとして活躍し、生涯を通じて社会批評を作品として表現し続けました。

「謎めいたイメージ」の中に知的なユーモアをまじえ、社会の矛盾や人びとの愚かさを諷刺的に笑いとばした福沢の多彩な画業を約100点の作品で振り返ります。
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