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「ギュスターヴ・モロー展」

パナソニック汐留美術館で開催中の
「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」に行って来ました。


https://panasonic.co.jp/ls/museum/

ギュスターヴ・モロー(1826−1898)の作品だけで構成される久々の「ギュスターヴ・モロー展」がパナソニック汐留美術館で始まりました。

今回のモロー展は大きく二つの特徴があります。まず一つ目が、パリにあるギュスターヴ・モロー美術館所蔵の作品で全て構成されている点です。

ギュスターブ・モロー美術館←モロー美術館については、こちらのレポを参照してください。

ギュスターヴ・モロー美術館から名作が大挙して来日するのは14年ぶりとのこと。(前回2005年はBunkamuraザ・ミュージアムで開催しました。)


「ギュスターヴ・モロー展」展示風景

パリのモロー美術館は、モローが実際に住んでいた自宅兼アトリエを彼の死後、遺言により国立の美術館としたので、そこが美術館だとは思わず通り過ぎてしまいそうな市街地の細い路地沿いに建っています。

美術館は4階建てで、2階はモローが生前生活していた居間や寝室、3・4階がアトリエとして使っていた空間。そこにびっしりとモロー作品が展示されています。


ギュスターブ・モロー美術館

生前から売れっ子だったモロー故、完成した油彩画はそのほとんどが各主要な美術館へ収められています。フランスが国費で買い上げた作品オルセー美術館やルーヴル美術館などにあります。

ギュスターブ・モロー美術館所蔵の作品を鑑賞する面白さは、完成度の高い完璧に描き上げた油彩画だけではなく、描きかけであったり、習作などが多く観られる点にあります。

例えば、女性像を多く手掛けたモローがとりわけ熱心に描いた作品に、洗礼者ヨハネの首を所望した運命の女性サロメがあげられます。


ギュスターヴ・モロー《出現》1876年頃
油彩/カンヴァス 142×103cm
ギュスターヴ・モロー美術館蔵
Photo©RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF

指差した方向に斬首されたヨハネが浮かび上がるという非常に神秘的なシーンを描いています。あまりにも有名な場面ですが、このアイディアを初めて具現化したのがモローなのです。彼の想像力=創造力が如何なく発揮された一枚です。


ギュスターヴ・モロー《踊るサロメ、通称入れ墨のサロメのための習作
インク・鉛筆/紙 54.5×37.4cm
ギュスターヴ・モロー美術館蔵
Photo©RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF

サロメをどのように描くかモローが思考に思考を重ねたことが分かる貴重な一枚です。洗礼者ヨハネの首が落とされ異様な雰囲気の包まれた場面に相応しい表現を模索し、古今東西の様々なイメージで構成された「入れ墨のサロメ」が完成したのです。


ギュスターヴ・モロー《サロメ》1875年頃
油彩/カンヴァス 80×40cm
ギュスターヴ・モロー美術館蔵
Photo©RMN-Grand Palais / Christian Jean / distributed by AMF

サロンに出品された油彩画「ヘロデ王の前で踊るサロメ」の油彩による習作。サイズが同じであるので迫力十分。モローが衣装や持ち物を試行錯誤した後が他の展示作品と比べるとよく分かります。

「描きかけの作品や習作が何点もあった」と嘆くのは、少なくともモロー展に関してはナンセンスです。逆に完成されたピカピカの油彩画だけのモロー展を想像してみて下さい。「サロメ」の比較のような楽しみがなくなってしまいます。


「ギュスターヴ・モロー展」展示風景

今回の「モロー展」のもうもうひとつ、2つ目の特徴はサブタイトル「サロメと宿命の女たち」にも見られるように、女性をテーマにした作品を一堂に集めている点です。

「世界一大切な女性」であった母親や30年共に生活をしたアレクサンドリーヌといった身近な女性から、運命の女・ファム・ファタルまで、モローが描いた多様な女性像に的を絞って構成されています。


ギュスターヴ・モロー《セイレーン》油彩/カンヴァス
38×62cm ギュスターヴ・モロー美術館蔵
Photo©RMN-Grand Palais / Philipp Bernard / distributed by AMF

画像だと小さくて判別難しいかもしれませんが、長く美しい髪をなびかせる海の魔物セイレーンたちの足元は蛇のように滑っとした醜い姿となっています。この美醜のギャップがたまりません。

モローはこうしたコントラストをはっきりした表現が得意な画家です。もしかしたら、一番下に横たわっている彼女たちの餌食となった男性は彼自身の姿を投影しているのかもしれません。


ギュスターヴ・モロー《一角獣》1885年頃
油彩/カンヴァス 115×90cm
ギュスターヴ・モロー美術館蔵
Photo©RMN-Grand Palais / René-Gabriel Ojéda / distributed by AMF

パリ市内にあるクリュニー中世美術館所蔵のタペストリー「貴婦人と一角獣」は、今でも多くの人を魅了してやみませんが、モローもその魅力に取りつかれた人のひとりでした。

モロー作品の中では画中に人物等を多く詰め込み過ぎている感がありますが、それもクリュニー中世美術館所蔵の「貴婦人と一角獣」が元ネタになっていると分かれば納得がいきます。

タペストリーでは表現不可能な微細な部分や少女マンガの主人公のような大きな瞳の女性。そして手懐けられた一角獣。画面左端の一角獣はモローの自画像のようにも思えます。


「ギュスターヴ・モロー展」展示風景

展覧会の構成は以下の通りでした。

1:モローが愛した女たち
2:《出現》とサロメ
3:運命の女たち
4:《一角獣》と純潔の乙女


聖書やギリシャ神話をおもな題材としているにも関わらず、日本人にとても人気のあるモロー。ただ歴史画を描いたのではなく、そこに独自解釈で新たな神秘的で幻想的な表現を加えたりする点がその人気の秘密でしょう。

そうした象徴主義の先駆けと言える表現は、ルオーやマティスといった画家だけでなく、文学者などにも大きな影響を与えました。

モロー作品のみ約70点で構成されるコンパクトながらもとても充実した内容の展覧会です。混雑しそうな予感がします。なるべくお早めに!

「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」は、6月23日までです。是非是非〜(その後、大阪あべのハルカス美術館、福岡市美術館へ巡回します。)


「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」

会期:2019年4月6日(土)〜6月23日(日)
開館時間:午前10時〜午後6時(入館は午後5時30分まで)
※5月10日(金)と6月7日(金)は午後8時まで(入館は午後7時30分まで)
休館日:水曜日(但し5月1日、6月5日、12日、19日は開館)
会場:パナソニック汐留美術館
(東京都港区東新橋1-5-1 パナソニック東京汐留ビル4F)
https://panasonic.co.jp/ls/museum/
主催:パナソニック汐留美術館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本、港区教育委員会
協賛:光村印刷
協力:日本航空
特別協力:ギュスターヴ・モロー美術館

2019年4月1日より、名称を「パナソニック 汐留ミュージアム」から「パナソニック汐留美術館」と変更されました。詳しくはこちら


『世紀末美術の楽しみ方』 (とんぼの本)

※「ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち」の図録に収録されているテキスト読み応えありました。特に「モローの女性像をめぐって」浅川真紀(あべのハルカス美術館)、「油彩画《出現》のサロメと洗礼者ヨハネ―聖なるものの現れ」萩原敦子(パナソニック美術館)は必読です。

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フランス象徴主義を代表する画家ギュスターヴ・モロー(1826−1898)。本展は、パリのギュスターヴ・モロー美術館の所蔵作品より、女性をテーマにした作品を一堂に集め、身近な女性からファム・ファタル(宿命の女)まで、多様な女性像を紹介し、新たな切り口でモローの芸術の魅力をご紹介します。

モローは、産業の発展とともに現実主義的、物質主義的な潮流にあった19世紀後半のフランスにおいて、神話や聖書を主題としながら独自の理念や内面世界を表現した象徴主義の画家です。モローが描く妖艶で魅惑的な女性像は、当時の批評家や愛好家を魅了し、なかでも、《出現》(1876年頃)など、洗礼者ヨハネの首を所望するヘロデ王の娘サロメを描いた一連の絵画は、世紀末芸術における、美しさと残忍さをあわせもつファム・ファタルのイメージを決定づけるものでした。本展では、ファム・ファタルとしての女性の他に、誘惑され破滅へと導かれる危うい存在としての女性、そしてモローが実生活において愛した母や恋人など、彼の現実と幻想の世界に登場する様々な女性を採り上げ、その絵画表現や創作のプロセスに注目します。彼女たちそれぞれの物語やモローとの関係を紐解きながら、油彩、水彩、素描など約70点の作品を通して、モローの芸術の創造の原点に迫ります。
展覧会 | permalink | comments(2) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

記事と ページ全体に圧倒されつつ

なにかお話しをと思いましたが言葉がついてきません
(申し訳ありません)

たしか以前にも拝見していた氣がします
今回 ひょんなことから調べものの過程で
こちらまで辿り着きました


自分に果たして鑑賞眼があるのか不明ながら
一角獣 などに関心もありますので
観てみたい かもと

ご紹介くださり有り難うございます
| 2019/06/03 8:50 PM
今回一時間待ちでしたが小さい美術館故のゆったり感を確保する手立てだったのでしょう。珠玉の美術展です。細部も描かれているので映像ではっきりと拡大されて見えてくる部分も在りました。素描含めモローの創作の秘密に迫ります。
pinewood | 2019/06/19 7:20 PM
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