青い日記帳 

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映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』

4月19日公開の映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』を観て来ました。


http://hitlervspicasso-movie.com/

権威を得た者は、かつて同じような座にいた人物が行ったことを不思議と模倣するものです。成金たちが、貴族が行っていた鷹狩りやその習慣を涙ぐましいまでに倣ってみせるように。

そうすることにより、自分のポジションを確固たるものとする人の心理なのでしょう。

嘗てナポレオンはヨーロッパを制覇する過程で、膨大な数の芸術品を略奪し我がものとしました。資産価値云々ではなくそれは自らの権威付けの為に行われたと言ってよいでしょう。

ナポレオン失脚後、返還請求が当然のように起こりましたが、フランスという国家は中々狡猾で、全てを返すことはしませんでした。現在のルーヴル美術館にはナポレオンが掻き集めた絵画などが沢山あります。



ナポレオンから丁度120年後の1889年にこの世に生まれたアドルフ・ヒトラー。彼もまた成金の如く過去の偉人たちが行っていた手法を用いて自分の権威を高めた人物です。

しかし、ヒトラーがナポレオンらとは違い、質が悪いのは自身の権威付けの為に美術品を強奪したのではなく、ドイツという国民国家の為に蒐集した点です。

「世界に冠たるドイツ帝国のためには、芸術は美しくなければならない。良き芸術が良き国民を作り、良き芸術と政治が一体化して良き国を作る」

こうした思想の元、ヒトラーのもとに集められた芸術品の中には、彼自身が芸術家を目指していたこともあり、驚くような作品も数多く含まれています。

映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』には目を疑うばかりの数多くの名画が登場します。以下の3点もナチス・ドイツの手に渡った作品です。


ヨハネス・フェルメール「天文学者」1668年頃
ルーヴル美術館所蔵


パルミジャニーノ「アンテア」 1524-1527年頃
カポディモンテ美術館所蔵


フーベルト・ファン・エイク、ヤン・ファン・エイク「ヘントの祭壇画」1432年
聖バーフ大聖堂所蔵

一体、ヒトラーやゲーリングらがヨーロッパ各地で略奪した芸術品はどれくらいの数になるのでしょう。正確な数は分かりませんが少なくとも60万点と言われています。

ルーヴル美術館や大英博物館を遥かに凌駕する「略奪美術館」がナチス・ドイツには存在したのです。

そして恐ろしいことに戦後70年以上が経過した現在でも10万点の行方が分かっていません。闇で取引されていたり、こっそりとナチス・ドイツの末裔たちがどこかに隠し持っていたりするのです。



戦争、とりわけ敗戦国に対してはその後の世間の目は厳しいものとなります。「ヒトラーの略奪芸術品10万点未だ行方不明」と聞くと、まさかそれは流石に無いだろう…と思うかもしれません。

ところがそれが決して大げさでないことを証明する事件がつい最近起こり世界中を驚かせました。

ナチス・ドイツの亡霊が未だに生きながらえていたのです。多くの名画に囲まれながら。それが「グルリット事件」です。



ドイツ・ミュンヘンのアパートの一室からピカソ、マティス、ルノワールなど1280点もの美術品が発見されたのです。そこに住んでいたのはコーネリウス・グルリット(Cornelius Gurlitt)。

齢80を迎えんとする老人のアパートの部屋にあるにはあまりにも不釣り合いな、尚且つ大量の美術品は、彼の父親ヒルデブラント・グルリットはナチス・ドイツ時代ヒトラーのもと画商を務めていた人物です。

この驚きのニュースは4,5年前に盛んにwebニュースでも取り上げられ大きな注目を集めたのでご記憶にある方も多いかと思われます。

発見された経緯やグルリット作品のその後についてはこちらの記事に丁寧に記されています。映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』をご覧になる前に一読しておきましょう。

失われた作品を求めて──ナチスによる略奪とグルリット・コレクション

ナチス・ドイツの手に渡った芸術品を奪還すべく結成されたアメリカの特殊部隊“モニュメンツ・メン”の活躍を描いた映画『ミケランジェロ・プロジェクト』や、クリムトの名画の返還を求めて訴訟を起こしたユダヤ人女性の実話を基にした映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』もこの機会に併せて観ておくことをお勧めします。


映画『ミケランジェロ・プロジェクト
(原題:The Monuments Men)


映画『黄金のアデーレ 名画の帰還
(原題:Woman in Gold)

映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』の一番の見どころは、どのようなえげつない手を使いナチス・ドイツが美術品を自分たちのものにしていったかを暴いている点かもしれません。

嘗てドイツ三大銀行と呼ばれていたドレスナー銀行の創立者ドイツ系ユダヤ人のグートマン一族が蒐集した多くの美術品を二束三文でナチスの息のかかった画商が「合法的」に買い取られてしまいます。

それだけではありません、強制収容所へ送られ「祖父はワイヤーで絞殺され、遺体はどこかへ捨てられたので墓もないのです。」と孫が涙を浮かべ画面で当時の様子を克明に話します。

ナチス・ドイツが戦争中何を行ったのか、そして戦後70年が経過した今でもまだその後遺症は美術の世界に大きな瑕疵として残されていることを、映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』は教えてくれます。

当時の映像も多く取り入れられている点や、かの稀代の贋作者・ハン・ファン・メーヘレン(Han van Meegeren)の動く姿も観られます。


ハン・ファン・メーヘレン「エマオの食事」1937年
ボイマンス美術館所蔵

ところで、この映画のタイトル「ヒトラーVS.ピカソ(ITLER VERSUS PICASS)」のピカソは、どんなポジションで登場するのでしょう。

勿論、ヒトラーに退廃芸術の烙印を押されたことなどは途中触れられますが、最後にピカソの残した言葉が非常に効いているのです。「ゲルニカ」にまつわるやり取りです。お聴き逃しのないように。

ピカソが最後に放ったひと言こそ、この映画のみならず戦争という人間の愚行に対する、絵画の役割を表しています。


「グルリット・コレクション展」、「ラ・ボエシー通り21番」、「略奪された美術品」など2017年だけでもヨーロッパでは、ナチス・ドイツがらみの展覧会が数多く開催されており、映画の中でも紹介されています。

映画『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』は、2019年4月19日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他全国順次公開となります。

ベストセラー「怖い絵」シリーズの著者・中野京子先生が日本語字幕監修を担当しています!



『ヒトラーVS.ピカソ 奪われた名画のゆくえ』
【キャスト】
トニ・セルヴィッロ(『グレート・ビューティー/追憶のローマ』『修道士は沈黙する』)
【スタッフ】
監督:クラウディオ・ポリ 原案:ディディ・ニョッキ
・原題:HITLER VERSUS PICASSO AND THE OTHERS
・製作国:イタリア・フランス・ドイツ
・製作年:2018
・配給会社:クロックワークス、アルバトロス・フィルム
・映画公開日:2019年04月19日
・上映劇場:ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館 ほか全国公開
・上映時間:97分
・公式サイト:http://hitlervspicasso-movie.com/

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ナチの絵画略奪作戦

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1933年から45年にかけて、ナチス・ドイツがヨーロッパ各地で略奪した芸術品の総数は約60万点にのぼり、戦後70年以上経った今でも10万点が行方不明と言われる。なぜ、ナチス・ドイツは、いやヒトラーは、美術品略奪に執着したのか? 本作は欧米で活躍する歴史家、美術研究家を始め、略奪された美術品の相続人や奪還運動に携わる関係者の証言を元に、ヒトラーの思想の背景と略奪された美術品が辿った闇の美術史に迫る。

ピカソ、ゴッホ、フェルメール、マティス、ムンク、モネ…今なお行方不明の名画たち。ナチスに弾圧され奪われた美術品と、それに関わる人々の運命に迫る名画ミステリー
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