青い日記帳 

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「水の上のオフェリア」

夏目漱石の「モナリサ」は以前こちらで紹介しました。

別館でもしばしば取り上げているので、
「また漱石?」と言われそうですが、お付き合い下さい。

1900年、33歳の時、文部省の留学生としてロンドンに渡り、
英文学と教授法研究を学び始めた漱石。
しかし、そのわずか3年後に精神を病み帰国してしまったことは有名です。

それから更に3年後に「坊ちゃん」と「草枕」を世に出しています。
「坊ちゃん」はイギリス留学前松山で過ごした一年がその素材となっていますが、
「草枕」の方はこのイギリス留学の影響が随所に現われているとされています。

夢十夜;草枕
「夢十夜;草枕」夏目 漱石

少しだけ引用させてもらいます。
余はまた写生帖をあける。この景色は画にもなる、詩にもなる。心のうちに花嫁の姿を浮べて、当時の様を想像して見てしたり顔に、
花の頃を越えてかしこし馬に嫁
と書きつける。不思議な事には衣装も髪も馬も桜もはっきりと目に映じたが、花嫁の顔だけは、どうしても思いつけなかった。しばらくあの顔か、この顔か、と思案しているうちに、ミレーのかいた、オフェリヤの面影が忽然と出て来て、高島田の下へすぽりとはまった。


(中略)

すやすやと寝入る。夢に。
 長良の乙女が振袖を着て、青馬に乗って、峠を越すと、いきなり、ささだ男と、ささべ男が飛び出して両方から引っ張る。女が急にオフェリヤになって、柳の枝へ上って、河の中を流れながら、うつくしい声で歌をうたう。救ってやろうと思って、長い竿を持って、向島を追懸けて行く。女は苦しい様子もなく、笑いながら、うたいながら、行末も知らず流れを下る。余は竿をかついで、おおいおおいと呼ぶ。


ミレーのかいた、オフェリヤ

漱石はロンドン留学中に実際にジョン・エヴァレット・ミレイが描いた
オフィーリア」Ophelia(1851)を観ていたのです。


シェイクスピアの「ハムレット」に登場する悲劇のヒロイン、オフィーリア。
いくら精神的にまいっていた漱石でもこの絵を観たら忘れられないでしょう。
胃痛なんてふっとんでしまいます。(逆に胃痛の原因になるかな)

このミレイの「オフィーリア」を山本丘人が「草枕絵巻」に
水の上のオフェリア」として描いています。


オフィーリアならぬ「那美」ですね。

こちらで原画を観ることができます。
草枕絵巻」 
奈良国立博物館所蔵

ラファエル前派の画家、アーサー・ヒューズやウォーターハウスもその題材として
「オフィーリア」を用いています。


アーサー・ヒューズ「オフィーリア」

 
どちらも、ウォーターハウス「オフィーリア」

mixiで「ウォーターハウス」のコミュやってます!

千露さんのサイト「My Sweet Rose」でOphelia作品がまとめてあります。

またlapisさんのblog「カイエ」でも詳しく紹介されています。

月は東に―蕪村の夢 漱石の幻
『月は東に―蕪村の夢 漱石の幻』 森本 哲郎

『草枕』の主人公はいう。
 ――然し苦しみのないのは何故だらう。只此景色を一幅の画として観、一巻の詩として読むからである。画であり詩である以上は地面を貰つて、開拓する気にもならねば、鉄道をかけて一儲けする了見も起らぬ。只此景色が――腹の足しにもならぬ、月給の補ひにもならぬ此景色が景色としてのみ、余が心を楽しませつゝあるから苦労も心配も伴はぬのだらう。……
 けれども、現実の世界のなかに詩を見、画を見ることができるためには、あくまで、それが「わかるだけ丈の余裕のある第三者の地位に立たねばなら」ぬ。それが、彼のいう「非人情」の立場であり、古来、文人たちが求めた生き方にほかならない。そして、その生き方は、ホイジンガがいうように、けっして現実を否定するのではなく、現世を美しく見立てること、生活を美の形につくり変えることによって得られるのである。


最後に以前書いた記事「ミレイと韓流?」もどうぞご覧下さい。

Arthur Hughes: His Life and Works
Arthur Hughes: His Life and Works
Leonard Roberts

J. W. Waterhouse
J. W. Waterhouse
Peter Trippi
その他 | permalink | comments(10) | trackbacks(3)

この記事に対するコメント

Takさ〜ん。こんばんは☆
ミレイの「オフィーリア」・・・・これって、すごいですね。
この絵の前で、身震いしたこと、思い出しました☆
美しい―☆
rossa | 2006/02/17 2:26 AM
おはようございます。

わ・た・しの愛する♪オフィーリアがいっぱいですね。

この草枕絵巻はなぜか奈良国立博物館に所蔵されてましたね。初めて公開する時の博物館のコメントが面白かったことを覚えています。

清方は『金色夜叉』で宮をオフィーリアに見立てた絵を描いてましたし・・・
川崎小虎の「オフェリア」も素敵です。

日本画家のほうが描いている題材なのでしょうか。
遊行七恵 | 2006/02/17 9:38 AM
「水の上のオフィーリア」これを見ると女はどうしても、
我が身をそこへ重ねたくなります。私の愛する「赤毛のアン」も
オフィーリアごっこをして大騒ぎを起こしましたっけ。
山桜 | 2006/02/17 11:38 AM
Takさん、こんばんは
オフィーリアつながりということでTBさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
山本丘人の「水の上のオフェリア」、素敵ですね!機会があったら実物を見たいものです。
遊行七恵さんが仰っている鏑木清方の絵、僕も好きです。
lapis | 2006/02/17 11:47 PM
こんばんは。私のサイトのご紹介ありがとうございます。

今回Tak様がご紹介なさっているオフィーリア作品は山本丘人作品以外すべて見ています。

漱石はオフィーリアのイメージだけではなく、「薤露行」ではシャロットの女を題材にしています。
テイト・ギャラリーではウォーターハウスの「シャロットの女」はミレーの「オフィーリア」と並ぶ人気作品ですから、
きっと漱石も「シャロットの女」も見ていたことでしょうね。

私は愛媛県民のため、漱石といえばまず「坊っちゃん」が連想されるのですが、
「夢十夜」や「薤露行」のような幻想的な世界も、漱石の魅力の一つだと思います。

オフィーリア関連の記事をTBさせていただきます。
千露 | 2006/02/18 9:22 PM
@rossaさん
こんばんは。

この絵の前に立つと
漱石ならずとも
誰でも「おおっ!」と
気持ち動かされますよね。
また本物見たくなりました!美しいです!!

@遊行七恵さん
こんばんは。

七恵さんもオフィーリアお好きなのですね!
(^^♪
これって万人受けする絵ですよね。
「物語性」もじゅうぶんあるし。きれいだし。

草枕絵巻は知らなく調べてはじめて
奈良にあることが分かりました。
どんなコメントだったのでしょう?

ラファエル前派の発生からして
文学との接点が濃くあるのでしょうね。

@山桜さん
こんばんは。

>我が身をそこへ重ねたくなります。
そんなものでしょうか。
なるほど〜
赤毛のアンでも登場していたとは知りませんでした。
「ごっこ」で終わればいいですけどね。。。

@lapisさん
こんばんは。
TBありがとうございます。

リンク貼らせていただきました。
鏑木清方も、山本丘人のオフィーリアも
まだどちらも観たことありません。
観たいです!!
またしても観たい作品が増えてしまいました。。。
嬉しい悲鳴です。

@千露さん
こんばんは。
TBありがとうございました。

リンク貼らせていただきました。
ラファエル前派といえば。。。千露さんですからね。

>「薤露行」ではシャロットの女を題材にしています。
そうなのですか!
それは初耳。
さっそく月曜日にでも。
漱石も外さないで観るべきものは
ちゃんと観ていますね。

ロンドン行って落ち込んだ漱石も
絵を観られたことはプラスでしたね。

漱石に詳しい友人にこの辺のこと
もっと詳しく聞いてみることにします。
Tak管理人 | 2006/02/19 12:38 AM
こんばんは。
ミレイうあウォーターハウスのオフィーリアも大好きですが、
日本のオフェリアも幽玄な雰囲気で素敵ですねー。
漱石も久し振りに読みたくなってきました!
とりあえず『夢十夜』からになりそうです。
リカ | 2006/02/19 11:51 PM
@リカさん
こんばんは。

「夢十夜」ならすぐ読めますよね。
飛行機の中で江国さん久々に読みました。
短編集です。
ウォーターハウス観たいですねー
日本で展覧会やってくれないかな〜
Tak管理人 | 2006/02/20 10:12 PM
Takさん、はじめまして。

オフィーリアの緻密さには、もう感嘆するばかりですね。
ただ風景を描写するだけでなく、生々しさまでも表現しているのが凄いですよね。
水面の感触と冷たさはもちろんのこと、茂みの感触までもが直に伝わってきそうです。
だからこそ、夏目漱石は強烈なインスピレーションを受けたのでしょうね。

これからも見ごたえのある作品を紹介していって下さいね。
透 | 2008/08/31 9:45 PM
@透さん
こんばんは。はじめまして。
コメントありがとうございます。

草花好きな自分としては
オフィーリアは勿論ですが
周りの植物たちに関心が
行ってしまいます。

鬱とした毎日を過ごしていた
漱石にどんな影響を与えたのでしょう。

今後とも宜しくお願い致します。
Tak管理人 | 2008/09/01 9:07 PM
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