青い日記帳 

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「印象派への旅」

Bunkamura ザ・ミュージアムで開催中の
「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」展に行って来ました。


https://www.bunkamura.co.jp/museum/
https://burrell.jp/

出展作品80点中、76点が日本初公開作品。ほぼ全て初見という実に初々しい気分で鑑賞できる展覧会です。

タイトルから印象派展と思いがちですが、決してそうではありません。良い意味での裏切りが待っています。

ヤーコブ・マリス、ジョセフ・クロホール、テオデュール・リボー、フランソワ・ボンヴァンといった知名度・認知度の低い画家の作品が三分の一は含まれています。これがとても良いエッセンスとなっているのです。


サミュエル・ジョン・ペプロー《バラ》1900-05年頃、油彩・カンヴァス

それらの作品がまた更に初々しさに拍車をかけ、「バレル・コレクション展」を“これまで観たことない展覧会”としているのです。

モネやルノワールといった誰しもが知る印象派の巨匠たちの作品だけを集めた展覧会も確かに見ごたえはあります。でも、それ以外の「何か」が加わっているとその魅力は一層増すものです。

さて、今回のコレクションを蒐集したバレルさんとはどのような人なのでしょう。


ウィリアム・バレル卿(45歳頃)
© CSG CIC Glasgow Museums Collection

産業革命期に英国随一の海港都市として栄えたスコットランド、グラスゴー出身のウイリアム・バレル(1861-1958)は、海運業で財を成し「海運王」と称されました。

父親は反対したそうですが、バレルは、スコットランド人画家やフランス絵画をはじめとする芸術品を数多く蒐集し、コレクションに囲まれながら暮らしました。


ウジェーヌ・ブーダン《ドーヴィル、波止場
1891年、油彩・板
© CSG CIC Glasgow Museums Collection

バレル・コレクションを観ながら、とても面白いな〜と思ったのは、バレルが英国美術作品ではなく、フランス絵画を積極的に蒐集した点です。

印象派を経済的に支援したアメリカ人コレクターであればそれは何の疑問も抱きませんが、ターナーやラファエル前派には目もくれず、ドガやセザンヌ、ルノワールなど画商アレクサンダー・リードを通じて購入したのです。

スコットランド人であるバレルは陸続きのイングランド(英国)とドーバー海峡を一跨ぎにし、目をフランスに向けていた点に色々と考えさせられるものがあります。


エドガー・ドガ《リハーサル
1874年頃、油彩・カンヴァス
© CSG CIC Glasgow Museums Collection

サッカーの世界でもスコットランドとイングランドは別の国としてW杯に出場していますし、学生時代あるあるで、ひとつ上より二つ上の先輩との方が気が合ったりしたものです。

更に細かく作品を観ていくと、バレルコレクションはフランス絵画だけでなく、オランダ絵画やスペイン絵画に影響を受けている画家の作品も多く含まれていることに気が付きます。この辺りも隠れた見どころではないでしょうか。

「バレル・コレクション展」を観て帰宅してすぐに書棚からこの本を取り出し、読み返しました。展覧会を観ながらある記述が思い浮かんでいたからです。


そのとき、西洋では: 時代で比べる日本美術と西洋美術
宮下規久朗(著)

173ページから「中心と周縁 永遠の周縁国イギリス」と題した文が綴られています。

「イギリスは、日本と同じ島国で、地政学的に日本と比較しうる国家である。同じように大陸との密接な関係によって文化を培ってきたが、なぜか芸術の中心となることはなく、つねに周縁にとどまっていた。」

宮下規久朗先生の慧眼が冴えわたる指摘がこの後にも続きます。三菱一号館美術館「ラファエル前派の軌跡展」やこの「バレル・コレクション展」を観るにあたり必ず読んでおきたい文章です。


アンリ・ファンタン=ラトゥール《春の花
1878年、油彩・カンヴァス
© CSG CIC Glasgow Museums Collection

「バレル・コレクション展」展示構成は以下の通りです。

第1章:身の回りの情景
1室内の情景
2静物
第2章:戸外へ目を向けて
1街中で
2郊外へ
第3章:川から港、そして外洋へ
1川辺の風景
2外洋への旅


バレルは自身の9000点以上にもおよぶコレクションをグラスゴー市に寄付するにあたり、条件を2つ提示したそうです。ひとつが大気汚染の少ない郊外に展示すること。産業革命期らしいリクエストですね。

もうひとつは、コレクションを国外に持ち出さないことでした。つまりフリーア美術館と同じく「門外不出」です。しかし今回、美術館「バレル・コレクション」を改装するにあたりその禁が解かれ、初来日を果たしたのです。


現在のバレル・コレクション(The Burrell Collection)

2020年には改装も終わるとのこと。そうなるとバレルが集めた優品を観るのはかなり難しくなります。スコットランドに旅する目的とするのも悪くはないですが、日本国内で観られるのでしたらそれに越したことはありません。

今回の展覧会には、ケルヴィングローヴ美術博物館からも数点重要な作品が出ている点もお伝えしておかなくてはなりません。


フィンセント・ファン・ゴッホ
アレクサンダー・リードの肖像
1887年、油彩・板、ケルヴィングローヴ美術博物館蔵
© CSG CIC Glasgow Museums Collection

アレクサンダー・リード(1854─1928)は、英国内のフランス美術コレクションの礎を築き、バレル・コレクションの形成に尽力した敏腕画商で、あのゴッホ弟テオとも親交の深かった人物です。

アメリカ人印象派コレクターや「ビュールレ・コレクション」といった展覧会は日本でこれまで数多く開催されてきましたが、スコットランド人コレクターのそれは記憶にありません。

冒頭で「初々しい」と評しましたが、初見作品だけが要因ではなく、「コレクターの眼」所謂審美眼にも初々しさを感じずにはいられません。

大陸(中心)から外れた島国(周縁)に位置し、文化的に大陸への憧れを常に持ち続けてきた者同士ならではの空間を超越した「供視」感覚もそこには含まれています。

長くなりそうなので、絶対見逃せない一枚を紹介して終わりにします。


エドゥアール・マネ《シャンパングラスのバラ
1882年、油彩・カンヴァス
© CSG CIC Glasgow Museums Collection

こんな綺麗な透明感のあるマネの作品観たことありません!「え?何これ??」と実物を前にしたらたとえ画像で知っていたとしても声をあげてしまうはずです。

薔薇の花の描写は実にマネらしいく存在感を示しています。花瓶(シャンパングラス)や水の表現が巧み過ぎて魅入ってしまいます。単眼鏡を忘れたこと酷く後悔しました。これだけの為にもう一度観に行きます!

そして何と言っても背景の描写ね!たまらないな〜もう。

観たこのない優品に出会える「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」展は、6月30日までです。お見逃しなきように!


「印象派への旅 海運王の夢 バレル・コレクション」

開催期間:2019年4月27日(土)〜6月30日(日)
※2019/5/7(火)、5/21(火)、6/4(火)のみ休館
開館時間:10:0〜18:00(入館は17:30まで)
毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)
会場:Bunkamura ザ・ミュージアム
https://www.bunkamura.co.jp/museum/
主催:Bunkamura、毎日新聞社
協賛・協力等
[後援]ブリティッシュ・カウンシル
[特別協賛]大和ハウス工業株式会社
[協賛]大日本印刷
[協力]日本航空


写真撮影可能なエリアも設けられています!

【巡回先】
福岡県立美術館
2018/10/12(金)〜12/9(日)
愛媛県美術館
2018/12/19(水)〜2019/3/24(日)

https://burrell.jp/


心に響く 印象派画家の言葉46

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産業革命期に英国随一の海港都市として栄えたスコットランド・グラスゴー出身のウィリアム・バレルは、若くして家業の海運業を手伝い始めた後、船舶の売買で大成功し「海運王」と称されました。

 少年の頃から美術品に関心を持っていたバレルは、1890年代から1920年代にかけて主に画商アレクサンダー・リードから作品を購入し、ペプローやメルヴィルなどスコットランドの画家をはじめ、クロホールなど特にグラスゴーで活躍した画家の作品を好んで集め、徐々にフランス絵画にも興味を抱くようになりました。同時に古今東西の美術工芸品の収集にも意欲を燃やしました。

 1944年、バレルはコレクションのうち何千点もの作品をグラスゴー市に寄付し、それが美術館「バレル・コレクション」となりました。美術館建設に関しての条件は大きく二つ、「大気汚染の影響が少ない郊外に作品を展示すること」「国外に持ち出さないこと」でした。厳しい条件の中、本展は本国のバレル・コレクション改装に伴い、奇跡的に実現した展覧会。9,000点以上にも及ぶ同コレクションの中から西洋近代絵画を中心に、計80点の作品をご紹介します。英国でしか見ることのできなかった海運王の世界屈指の夢のコレクションを、渋谷でご堪能ください!
展覧会 | permalink | comments(2) | trackbacks(0)

この記事に対するコメント

管理者の承認待ちコメントです。
- | 2019/04/29 1:43 PM
海運王だからか海辺の風景画も多いのですが,馬、牛等の動物画,花等の静物画,ドガのバレエ練習風景図と多ジャンルな珠玉の作品群です。コローの女性ポートレイトも魅力的!
pinewood | 2019/06/30 5:33 PM
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