青い日記帳 

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「カラヴァッジョ展」

北海道立近代美術館で開催中の
「カラヴァッジョ展」に行って来ました。


http://m-caravaggio.jp/

西洋美術史の流れの中で大きな比重をしめるのが17世紀初頭にカトリックの首府ローマで始まったバロック美術。

そのバロック美術の契機となった画家がミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ(1571年9月28日 - 1610年7月18日)です。


ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ「歯を抜く人」1608-10年頃 
油彩/カンヴァス フィレンツェ、ウフィツィ美術館ピッティ宮パラティーナ美術館蔵  
©Gabinetto fotografico delle Gallerie degli Uffizi

日本におけるカラヴァッジョ研究の第一人者である神戸大学の宮下規久朗先生は著書『そのとき、西洋では: 時代で比べる日本美術と西洋美術』にて以下のようにこの作家の重要性について述べられています。

「カラヴァッジョは、劇的な明暗法による斬新な宗教画によって写実主義を確立。身近なモデルを用いて卑近な風俗や事物を描くその様式は、若い画家たちや外国人の画家を中心に流行する。」
(中略)
「没個性的な後期マニエリスムは終息し、初期バロックが始まったとされる。それは、宗教美術を偶像だと非難するプロテスタントに対抗して画像の力を最大限に利用しようとするローマ教会の意向に合致し、カトリック改革の成功とともに普及した。」



ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ「瞑想するアッシジの聖フランチェスコ」1605−1606年 
油彩/カンヴァス ローマ、サン・ピエトロ聖堂、カルピネート・ロマーノ(バルベリーニ宮国立古典美術館に寄託)蔵 
©Roma, Gallerie Nazionali d’Arte Antica - Palazzo Barberini. Su concessione del Ministero per i Beni e le Attività Culturali. È vietata ogni ulteriore riproduzione o duplicazione con qualsiasi mezzo.

「西洋美術史上最大の革新者」という枕詞も決してオーバーなものではありません。カラヴァッジョなくして、後のルーベンス、レンブラント、ラ・トゥールといった画家の誕生はなかったはずです。

しかし、カラヴァッジョの作品を日本で目にする機会はまず滅多にありません。

大きな理由としては、38歳で没したため現存する真筆は60点強しか確認されていません。またその中には教会の祭壇画のように移動不可能な作品が多数あります。


ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ「病めるバッカス」1594年頃 
油彩・カンヴァス ボルゲーゼ美術館蔵
©Ministero per i Beni e le attività culturali – Galleria Borghese
※札幌展のみ

過去に東京都庭園美術館(2001年)、国立西洋美術館(2016年)以外「カラヴァジョ展」は開催されていません。国内で作品を観られる機会が非常に少ない画家です。(西洋美術史上最も重要な画家であるにも関わらず…)

3度目となる北海道立近代美術館(名古屋市美術館、あべのハルカス美術館へ巡回)での「カラヴァジョ展」にも「病めるバッカス」「リュート弾き」など日本初公開作品がいくつも含まれています。


ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ「リュート弾き」1596-97年頃
油彩/カンヴァス ロンドン、個人蔵

画像でしか見たことがなかった「リュート弾き」。実物を目の前にすると息が止まりそうな感覚に襲われます。スマホで写真を毎日目にしている現代人の目にも際立って「リアル」に感じられるはずです。

絵であることを分かっていながらも。

楽譜や花瓶の花など周辺の細部の描き込みは勿論のこと、カラヴァッジョの真骨頂である暗闇を背景とした光(人物)の表現には舌を巻くばかりです。

もう少し後に描かれた「歯を抜く人」など、観ているだけで「痛っ!」と叫びたくなってしまいます。



展覧会の構成は以下の通りです。

1:1600年前後のローマにおけるカラヴァッジョと同時代の画家たち
2:カラヴァッジョと17世紀のナポリ画壇
3:カラヴァッジョ様式の拡がり


カラヴァッジョ作品と同時代の画家、また影響を受けた画家と展覧会の作りとしては、カラヴァッジョの場合これしかないでしょう。

注目すべきは「1:1600年前後のローマにおけるカラヴァッジョと同時代の画家たち」のセクションです。ミラノに生まれたカラヴァッジョはそこで画家としての下積みをし、1594年頃にはローマへ活躍の場を遷しています。

1596年にはローマ絵画界の重鎮カヴァエリエーレ・ダルビーノの工房にいたことが記録として残されているそうです。

そこでこの作品に俄然注目が集まります。


ハートフォードの画家/ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ「花瓶の花、果物および野菜」1605-1606年頃より前
油彩/カンヴァス ローマ、ボルゲーゼ美術館蔵 
©Ministero per i Beni e le attività culturali – Galleria Borghese

カラヴァッジョ本人が描いたものかは意見が分かれるところですが、ローマ時代の初期にこうした静物画を彼が描いていたことは間違いないそうです。

これから観に行かれる方は是非、「花瓶の花、果物および野菜」と「病めるバッカス」に描かれている葡萄の描写を見比べて下さい。

幸いなことに、同じ展示室の近くに展示されています。また「リュート弾き」との花の描写の相違にも。こういうことが出来ちゃうのが特別展の良さです。


ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ「聖アガピトゥスの殉教」1606-09年頃 
油彩/カンヴァス パレストリーナ(ローマ)、司教区博物館蔵 
©Museo diocesano prenestino di arte sacra. Proveniente dal Convento di Sant'Antonio abate in Palestrina - Proprietà del Fondo Edifici di Culto, Ministero dell’Interno. Foto di Stefano Pinci - Diritti di riproduzione Diocesi di Palestrina

聖アガピトゥスが首を切られ絶命するその瞬間を描いた作品です。目はもうすでに死人のそれです。

しかし、首から激しく飛び散るおびただしい血液の描写がどうも写実的なそれを得意としたカラヴァッジョらしくないな〜とも感じました。まるで下手な漫画のような描き方です。

このようにカラヴァッジョ作品には常に真贋論争が付きまといます。それも偉大で重要な画家であることの証でもあり、鑑賞者としても「見応え」を感じる点でもあります。


ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ「メドゥーサの楯(第一ヴァージョン)」1596〜1598年頃 
油彩・カンヴァス(盾に貼り付け)個人蔵

「カラバッジョ展」開催の知らせを耳にした時から(2019年「カラヴァッジョ展」開催!)心待ちにしていた展覧会でしたので、いち早く札幌まで飛んで観てきました。

8月10日開幕直前に予定していた8作品が展示に間に合わないと知り、残念ではありましたが、まぁ観に行けて良かったです。→札幌展 作品到着遅延のお知らせ

イタリアの至宝を扱う展覧会ですのでこうしたハプニングも仕方ないかとは思います。ただ会場スタッフの対応・仕事ぶりが、お座なりなのは改善を要すると思います。遠路はるばる観に来た人に対して「作品到着次第このチケットで再入場できます」だけでは何の救いにもなりません。

作品には罪はありません。

「カラバッジョ展」は10月14日までです。(関係者の皆さまお疲れさまでございます。)


カラバッジョ展

会期:2019年8月10日(土)〜10月14日(月・祝)
開館時間:午前9時30分〜午後5時(入場は午後4時30分まで)
休館日:祝日を除く月曜日と8/13(火)、9/17(火)、9/24(火)
※8月と9月の金曜日は午後7時30分まで(入場は午後7時まで)
会場:北海道立近代美術館
(札幌市中央区北1条西17丁目 TEL 011-644-6882)
http://www.dokyoi.pref.hokkaido.lg.jp/hk/knb/
主催:北海道立近代美術館、北海道新聞社
後援:イタリア大使館、イタリア文化会館、北海道、札幌市、札幌市教育委員会、北海道PTA連合会、 北海道小学校長会、北海道中学校長会、北海道高等学校長協会、北海道私立中学高等学校協会、公益社団法人北海道私立専修学校各種学校連合会、北海道日伊協会
協賛:野崎印刷紙業、医療法人さっぽろ脊椎外科クリニック、損保ジャパン日本興亜、大和ハウス工業、トヨタ自動車
協力:アリタリア−イタリア航空、日本航空、日本通運、三本珈琲
特別協力:テレビ北海道
学術協力:メタモルフォジ財団
公式サイト:http://m-caravaggio.jp/

【巡回先】
名古屋展
会期:2019年10月26日〜12月15日
会場:名古屋市美術館
http://www.art-museum.city.nagoya.jp/

大阪展
会期:2019年12月26日〜2020年2月16日
会場:あべのハルカス美術館
https://www.aham.jp/


闇の美術史――カラヴァッジョの水脈
宮下規久朗(著)

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16世紀末、ローマに現れた天才画家ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ。圧倒的な描写力、強烈な明暗、観る者を引き込む生々しさ……。それまでの絵画の規範(きまりごと)を打ち破り、大変革をもたらしました。彼こそ、17世紀バロック絵画の幕開けを告げる革命児(パイオニア)だったのです。

北イタリアのミラノに生まれたカラヴァッジョは、13歳から絵画修業を始め、やがてローマに出てその画才を発揮します。少年像や風俗画の秀作、そして独特な視点と迫真の写実による宗教画の傑作を次々と制作、大評判となりました。まさにリアル、これぞ真実。その斬新な絵画に人々は衝撃を受け、熱狂したのです。

その絵画が型破りなら、その人生もまた波乱に富んだものでした。名声が高まるほど、素行は乱れ、ついに1606年には殺人を犯します。ローマから逃亡した彼は、南イタリア各地を流浪しつつ、深い闇をたたえた数多くの傑作を生み出し続けました。しかし1610年の夏、彼は熱病に倒れます。天才の栄光とともに、狂乱や無頼の伝説がつきまとったカラヴァッジョの人生は38歳で幕を閉じたのです。

本展では、イタリア国内の所蔵作品を中心に、10点あまりのカラヴァッジョ作品(帰属作品含む)に同時代の画家たちを加え約40点の傑作・秀作を公開します。激情と苦難に彩られながら、新時代の潮流を導いたカラヴァッジョの芸術の輝きをご覧ください。
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